ヒロアカ世界なのにスパイダーマン世界だと勘違いしてる精神異常者   作:醤油でした

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決戦!vsライノ!

細蟹がライノとの烈戦を繰り広げているのと時を同じくして———

 

 

 

「さぁ、みんな、もうすぐ出口です!———急いで!」

 

 

13号は、A組の生徒たちと共に出口へと向かっていた。

もう少しで出口に到着する所まで来たところで、黒い渦がまたもや彼らの前を立ち塞ぐ。

 

 

「——!!みんな、とまっ——」

 

 

13号が生徒たちに制止の声をかけるよりもはやく、黒いモヤが13号とA組の面々を覆う。

生徒たちはそれぞれ逃げようとしたり、立ち向かおうとしたり、いきなりのことで立ち止まってしまう。

このままではいけないと思った13号は近くにいた数人の生徒を掴んで、黒いモヤから脱出した。

しかし、プロヒーローである13号であっても流石に生徒全員を一瞬で運ぶことができなかった。

 

13号と数人の生徒を除き、黒いモヤに包まれた生徒たちは忽然とその場から消えてしまった。

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

**************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しいなァ!!———スパイディ!」

 

「そりゃあ良かった…じゃあ、そろそろお代をいただこうかな!———お代は君の身柄で結構だよ!」

 

 

ライノと細蟹の戦いの激しさは増していた。

元々、燃え盛っていた火災ゾーンの建物が数多く崩れているのがその戦いの激しさを表している。

 

ライノの突進の破壊力はエゲツなく、以前細蟹が戦った頃よりも明らかに強くなっている。

その突進を危険であると判断した細蟹により、両者は接近戦による殴り合いを繰り広げていた。

 

 

 

 

「そんじゃ、コイツはチップだァ!」

 

 

 

 

殴り合ってる最中、不意のライノの頭突きによって、またもや吹っ飛ばされる細蟹。

吹っ飛ばされながらも、細蟹はライノに糸を放つ。

 

 

 

 

「———それなら、これはお釣りかな!?」

「?!」

 

 

 

 

吹っ飛ばされた衝撃を利用しながら糸をつけ、糸を引かれたことで、ライノは踏ん張りが効かず、細蟹と同じように宙に浮く。

宙に浮いているこの状況のライノには攻撃の手段がないため、糸をどうにかしようと掴もうとするが、細蟹はそれを許さない。

吹っ飛ばされながらも建物の上層部にあいた左手で糸を放ち、さらに上空にとび、ライノを建物にぶつけ、建物の内部へライノを押し込んだ。

 

 

 

 

 

「さぁ、そろそろ退店時間ですよっ!お客様っ!!」

 

 

 

 

ダメージを受け、頭をブルブル横にライノが振っているところを細蟹は見過ごさなかった。

両手から、シュッ、シュッと糸を出し続け、ライノを糸で壁に貼り付け身動きが出来ないようにする。

 

 

 

「クソがっ!!!動けねぇ!!」

 

「そのまま大人しくしててね」

 

 

 

 

ジタバタと糸から抜け出そうとするライノであったが、どれだけを身をよじろうとも後からは抜け出せそうにない。

そんなライノを見て、次に周りにいる(ヴィラン)たちを拘束しようと建物の外に出る。

 

 

 

 

「…っ!?ライノの野郎、やられたのか!?」

「ウッソでしょ?!」

「んなこといいから、個性つかえ!くるぞ!!」

 

「さぁ、今度は君らの出番だよ!」

 

 

 

 

建物から出てすぐに固まっていた(ヴィラン)たちの前に現れた細蟹。

(ヴィラン)たちは個性を使おうとするが、それよりも先に細蟹が糸を放つ。

その糸により、個性を使おうとしていた2名を先に糸で巻きつけ、身動きの取れないようにする。

しかし、それでも全員を捕縛できた訳ではなく、残った4人がそれぞれ個性を使い、既に戦闘態勢に入っている。

 

 

「くっそが!!もう2人捕まったぞ!」

「落ち着け、数ではこっちが上。しかしも、コイツの戦い方はイヤってほど俺らは知ってるだろ?」

「あぁ、そうだな、落ち着いて連携すれば勝て——「連携するのはいいけど、喋りすぎだよっ!」

 

 

連携しようとする(ヴィラン)たちだったが、連携するために話しているところを細蟹によって阻止される。

異形型の個性の2人を両手から出した糸で掴み、周りの(ヴィラン)たちにぶつける。

異形型の個性は大体普通の人間よりも頑丈で硬い。そんな人間をぶつけられた2名はあまりの衝撃に気を失う。

 

そして、そのまま残りの異形型のふたりも糸を使い地面にくっつける。

 

 

 

「またこれかよ!!」

 

「前も言ったけど、今度は良いことにその力を使いなよ」

 

「……俺たちゃ、(ヴィラン)だ。

しかも、これで捕まりゃ2回目の逮捕。もう人生終わり——「終わり?いいや、違うでしょ。ここからが始まりなんだよ」

 

 

 

糸に巻かれた異形型の(ヴィラン)の返答を遮る細蟹。

 

 

 

「君たちが(ヴィラン)になった理由とか気持ちが分かる、なんて言わないよ。

でも、そんなに個性を上手く扱えるんだ。

 

罪を償って、今度は自分のためじゃなくて誰かのためにその力を使ってみなよ———僕みたいにね!」

 

「……」

 

「大丈夫、君たちなら出来る」

 

 

あまりにも自信満々に答える細蟹に(ヴィラン)たちは何も言葉を返せないでいた。

彼らは今までの人生で、人に恨まれたり、さげずまれることが当たり前だった。

両親や家族、先生などの大人や周りの同級生やそれよりも幼い奴らも彼等には冷たかった。

 

そんな彼らを認めてくれたのは、目の前にいるこの男と彼らの仲間であり、リーダーともいえるライノの2名だけであった。

 

 

 

「スパイディーーーーーー!!!

俺は…オレ様は、まだ負けちゃいねえぞォーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

 

(ヴィラン)たちが細蟹の言葉に心動かされていたところ、建物から飛び降りてきたライノが彼らの前に姿を表す。

ライノは壁に貼り付けられていたがそのとてつもないパワーを使い、無理やり壁ごとくり抜いてきた。

そして、先程は飛び降りている間までは彼の背中にあった壁や糸も落下の衝撃で崩れてしまっている。

 

 

 

「Wow!なんというタフさと根性!!すごいなっ!」

 

「……おい、スパイダーマン。ちょっと待てよ」

 

 

 

突如現れたライノに向き直り、戦闘態勢をとる細蟹を先程まで喋っていた見た目がネズミの男が止めた。

 

 

 

「どうしたんだい?おしゃべりなら、事が終わったらいっぱいしてあげ——「(ヴィラン)である俺がいうのは、違えかもだけどよ———あいつ……来野を助けてくれ。

 

あいつ、最近ずっと様子がおかしいんだ。

その結果、(ヴィラン)連合なんて訳わかんねえとこに入っちまった。 ……どうか——頼む…!」

 

 

今まで人に頭を下げるなんてことはリーダーであり、仲間であり、そして親友の犀藤来野にしかしてこなかったネズミの男の言葉はたどたどしかった。

しかし、彼のその言葉と表情から【犀藤来野を助けたい】という気迫が伝わってくる。

 

 

 

「うん、わかった!僕に任せて!」

 

「……あんがとな」

 

「———来ねえならこっちからいくぞォ!スパイディイイーーーー!!」

 

「お礼の言葉は、僕が彼を助けた後にまた聞かせてね!」

 

 

 

(ヴィラン)の男と話していた細蟹だったが、雄叫びを上げながら突進するライノ相手に何もせず待つということをしないため、(ヴィラン)の男との会話を切り上げ、ライノの元へ走る。

 

 

 

「Hey!ライノ、第二ラウンドといこうじゃないか!」

 

「ヘッ!!次こそK.Oしてやるよ———!」

 

 

ライノは頭突き、細蟹は右ストレートを繰り出す。

両者の攻撃を互いに受けあう。

そして、そのまま2人は殴り合いを再開する。

 

 

 

「こんなモンじゃねえだろ、スパイディ!!!」

 

「そっちこそそうだろ、ライノ!!!」

 

 

両者の殴り合いの速度、パワーはどんどんと苛烈さを増していく。

糸でぐるぐる巻きになっている(ヴィラン)たちは、「すげえ…」と自分の親友の本気と自分を認めてくれた存在の戦いに感想を呟くしか出来ないのであった。

 

 

「やっぱり———最高だ!最高だぜッ!!」

 

「あぁ、最高だね!ライノ!!君は、やっぱりライノだっ!!!」

 

 

ライノはこの戦いを心底楽しんでいる。

どんどん上がるライノの攻撃のボルテージ。

それに食らいつくように細蟹の速度が増していく。

細蟹はライノの攻撃を避けているが、ライノは細蟹の攻撃を全てまともに受けている。

なのに、ライノは倒れる気配すら見せない。

 

 

細蟹の攻撃がライノにとってダメージがない訳じゃない。

先程建物から飛び降りるという行為も彼にとってはかなりのダメージだった。

 

 

しかし、ライノは倒れなかった。

 

 

 

 

「さぁ、そろそろおしまいにしよう!」

 

 

 

だが、そんなライノにも限界は近づいていた。

ライノの両腕に糸を出し、その糸をひいて加速して突進してきた細蟹の拳がライノに迫る。

 

 

これを食らえば、この戦いが終わる。ライノにはそんな予感がした。

 

 

 

そんな予感の中で、ライノは自身の過去を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

**************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———ライノ、いや、犀藤来野は母親の浮気相手の子供であった。

母が離婚した後、祖父や祖母、そして母親にさえも疎まれて、母親には「お前がいなければ…!」と首を絞められたことさえもあった。

 

そんな家から逃げ出した犀藤だったが、社会も彼のことを認めなかった。

異形型の個性というだけで周りに疎まれて、働くこともできない。

学校になんて行ったこともなく、勉強なんて一つもわからず、友達なんて1人もおらず、愛なんて微塵も知らない。

ないないないない———ないない尽くしの犀藤が行き着いた先が(ヴィラン)であった。

 

 

そんな中で、当時名もなき敵であった彼は細蟹———スパイダーマンに出会い、犀藤は彼にライノとしてだが、認められた。

彼を認めたのは自警団(ヴィジランテ)であったスパイダーマンと仲間であり親友のネズミの男——フレディの2人しかいなかった。

 

犀藤は(ヴィラン)として戦いながらも、自分のことを認め、今まで出したことのない自身の全力を本音をぶつけ合える相手との闘いに心が躍った。

 

自分の怒りに、自分の言葉に、自分の心の内からの声に対して明るく軽口をたたくスパイダーマンと喋り、戦うことが何故か心地いい。

『この時間がずっと続けばいい』と思うほどに。

 

何故、そんなことを思うのか———答えを出せないまま、犀藤は細蟹に拘束され、戦いが終わった。

 

 

 

 

それからは地獄だった。

監獄に送られ、犀藤の心は退屈で仕方なかった。

 

どんだけ仲間を作って、他の奴らに認められてもあの時の戦いのようには心が満たされない。

むしろ、時が経てば経つほど、彼との戦いを心が砂漠のように乾き、求めてしまう。

 

 

 

そんな乾きを持ったまま、出所した犀藤は絶望した。

スパイダーマンは捕まり、自分だけが外に出てきてしまったのだ。

もう一度スパイダーマンと戦うことだけを考えていたのに、肝心のスパイダーマンはいない。

 

 

犀藤は、どうにかスパイダーマンともう一度会って戦いたかった。

この心の乾きを潤したかった。 

 

 

 

あの興奮を、あの自己肯定感を、あの高揚感を、あの男の言葉を、あの痛みを、あの優しさを、あの血湧き肉躍る戦闘をもう一度味わうために、様々な情報を収集していた。

 

 

 

 

結果、犀藤は【(ヴィラン)連合】に行き着いた。

(ヴィラン)連合】に入ったのはスパイダーマンの情報を得るためだったが、思わぬ形でスパイダーマンが現在雄英高校にいるという情報、【(ヴィラン)連合】が雄英襲撃をするということを知った。

死柄木、そして、黒霧に人生で初めて人に頭を下げてお願いをし、ようやく念願のスパイダーマンと戦うということが出来るようになった。

 

 

 

 

 

 

なぜ、スパイダーマンとの戦いをこんなにも求めるのか———その答えをずっと探しながら、犀藤はここまできたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

細蟹の拳を受け、地面に倒れ、起き上がる素ぶりすら見せないライノ。

細蟹はそんなライノに糸を放ち、拘束をしていく。

その状況に抵抗するでもなく、地面に寝そべり、ただ上を見上げながら、ライノは語り始めた。

 

 

 

「……なンか、ようやく分かった気がする。オレ様は———オマエに憧れてたんだ」

 

 

 

独り言のように喋るライノを細蟹は何も言わずに見守る。

 

 

 

 

「きっと——みんなに認められて、いつも明るく楽しそうなオマエみたいな人生を送りたかったんだ。

オマエと戦って関わることで、オレ様もオマエの人生を歩んでいける————そう思えた」

 

 

「……僕は僕だし、ライノ。君は——君なんだ」

 

 

「……あァ、そうだな。全くもってその通りだ、オメエはいつも正しいなァ——」

 

「いつも正しかったら、警察に捕まってないさ——僕も君もね」

 

「……」

 

「正しくないことをしたのなら、その後が重要なんだ。

間違った道にいることに気付いたなら、正しい道へ向かう。それが必要なんだ。

 

ライノ、君も———そして、僕もね」

 

 

 

 

ライノは細蟹の言葉をただ噛み締めるように聞き入っていた。

先程までの悪どい表情など微塵も感じられないほど、彼の表情は穏やかな微笑みへと変化していた。

 

 

 

 

「……その正しい道っツーのは険しく、とても困難な道だろ。

そんな道を歩き続けられるのか、スパイディ?」

 

「あぁ———もちろん!なんたって、僕はスパイダーマンなんだからね!」

 

「———フッ…そうかよ、なら頑張りな。お人好しの蜘蛛さんよォ……」

 

「君もこれから頑張るんだよ、ライノ!——また会おう!!」

 

 

 

そう言って、細蟹はその場を離れていった。

不思議とこの状況が心地良い。

あの時のスパイダーマンとの戦いを渇望していた荒んだ心は、もう微塵も残っていなかった。

 

そんなライノの胸に新しく芽生えた感情、それは———

 

 

 

 

「オレ様も……歩んでみるかァ——その、道ってやつを…」

 

 

 

 

 

1人呟くライノ——彼にしか分かることが出来ないものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手ぇあげろ。

個性は禁止だ、使えばこいつを殺す」

 

「ウェ……ウェ〜〜〜〜イ…」

 

 

耳朗、八百万、上鳴の3名は黒いモヤに包まれ、山岳ゾーンへと飛ばされていた。

数多くの(ヴィラン)を八百万の発想、そして、上鳴の個性によって一網打尽で戦闘不能にすることができた。

 

しかし、一つ想定外なことが起きた。

 

全力の個性の使用により脳がショートし、一時的に著しくアホになっている上鳴が身を潜め、隠れていた(ヴィラン)に人質に取られたのだ。

 

 

 

「上鳴さん…!」

 

「やられた…!!完全に油断してた……」

 

 

 

八百万と耳朗は、上鳴を人質に取られたことで抵抗もできず、(ヴィラン)の言葉に従うように手を上げることしかできなかった。

 

 

 

「そっちへ行く———決して動くなよ」

 

 

 

そう言って、(ヴィラン)の男はウェーイな状態になっている上鳴を片手で持ち上げながら耳朗と八百万に近づく。

どうにかこの状況を打破できないかと耳朗と八百万は策を考える。

 

 

そんな2人の後方から——白い糸が上鳴目掛けて飛んできた。

 

 

 

「っ!?なんだてめっ——「ごめん、今ちょっとお話ししてる余裕がなくてさ!」

 

 

 

急に現れ、糸を放った全身スーツの男。それは、細蟹であった。

火災ゾーンから取り逃がしてしまったモヤモヤ(ヴィラン)がおそらく移動したであろうみんなの元へ急行していた細蟹は、道中で耳朗の個性によって生み出された爆音を聞きつけ、山岳ゾーンへ行き着いたのであった。

 

 

彼は(ヴィラン)の男が動くよりもはやく、上鳴を救出し、(ヴィラン)の男を糸で引きつけて殴り意識を落とした。その後、素早く糸で巻きつけ、身動きの取れないように細蟹が捕縛した。

 

 

 

「ささが——スパイダーマン!あんた、大丈夫だったの!?」

 

 

 

その一瞬の出来事により、細蟹によってこの危機的状況を脱することが理解できた八百万、耳朗、上鳴の3名であったが、細蟹のボロボロ具合を見た耳朗が本名で彼を呼ぼうとしたが、まだ他にも(ヴィラン)が隠れていたら、細蟹が今まで隠していたスパイダーマンの本名をバラしてしまうと思ったため、慌てて呼び直した。

 

 

 

「うん!見ての通りピンピン!!元気いっぱいさ!」

 

「……そうは見えませんわ」     

 

 

 

ボロボロのスーツからは、細蟹の肌が見え、そこからは血が流れている。

それを見た八百万が細蟹の言葉を嘘だと感じていた。

 

 

 

「みんな、ケガしてない?大丈夫??」

 

「ウェ〜イ…」

 

「上鳴さんは、個性のせいでショートしてしまっていますが…」

 

「それ以外なら、ウチらは大丈夫だよね」

 

 

 

そんな八百万の心中を無視するように、細蟹はみんなに問いかけたのであった。

細蟹は3人の無事を確認し、何故彼らがここにいるのかを知るために3人に質問する。

 

 

 

「うん、みんな怪我がなくて無事でよかった———とりあえず、僕が消えた後の状況について聞かせてくれないかな?」

 

 

 

そんな細蟹の言葉に八百万、耳朗の2人が答え始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*********************

 

 

 

 

 

 

 

 

噴水のあった広場——セントラル広場では、妙な胸騒ぎがしたためUSJにきたオールマイトによって、(ヴィラン)連合の切り札であった脳無が吹っ飛ばされていた。

 

 

 

「さてと、(ヴィラン)。お互い、早めに決着つけたいね」

 

 

「チートが…!」

 

 

 

(ヴィラン)連合の切り札をオールマイトの手で倒されたことにより、全身手だらけの男——死柄木弔は焦っていた。

オールマイト専用の脳無でさえ、オールマイトを倒すことができず、全身モヤモヤの(ヴィラン)——黒霧がヘマをしたせいで、生徒を逃してしまったせいでプロヒーローがこの場に駆けつけることが確定している。

 

しかし、そんな死柄木を落ち着かせるように黒霧は話す。

 

 

「落ち着いてください……死柄木弔。

よく見れば、オールマイトも脳無によるダメージが確実に現れている。

 

私と貴方で連携すれば、まだヤれるチャンスは充分にあるかと…」

 

「そうだな、そうだよ、そうだ…やるっきゃないぜ、目の前にラスボスがいるんだから…」

 

 

黒霧の言葉により冷静さを取り戻した死柄木は、黒霧と共に攻撃しようと動き始める。

 

 

『オールマイトはもう活動限界なんだ…僕だけが知ってるオールマイトの危機!』

 

 

それを思った緑谷は———個性で足を折りながらも、その場へ割り込んだのだった。

そして、もう1人。その場は割り込んだ者がいた。

 

 

「やぁ——モヤモヤ(ヴィラン)!さっきぶりだねっ!!」

 

 

山岳ゾーンから八百万、耳朗、上鳴と共にセントラル広場へきた細蟹であった。

緑谷の飛び出しを見ていた細蟹は、このままでは(ヴィラン)の2人に緑谷が迎撃を喰らうと思い、死柄木と黒霧の前に現れたのだ。

 

急に現れた細蟹に一瞬、気を取られる死柄木と黒霧。

その隙を緑谷は逃さなかった。

 

 

「オールマイトから——離れろ!」

 

「もう逃さないよっ!」

 

 

緑谷も細蟹も移動系の個性を持っている黒霧を危険に思い、緑谷は個性を使い右手でパンチを放ち、細蟹は逃げられないように黒霧の実体部分へ糸を放つ。

 

 

しかし、黒霧は細蟹の糸に捕まることの危険性を充分理解していため、瞬時に個性を使い、死柄木と共にその場から少し離れたところにワープしたため、緑谷の攻撃は避けられてしまった。 

 

空振りに終わった緑谷の攻撃だったが、緑谷の右腕は相当な損傷を受けながらも、その場に凄まじい衝撃を残した。

 

そして、ワープゲートを閉じるよりもはやく細蟹の糸は黒霧の身体を捉えていたのだが——横にいた死柄木の個性【崩壊】により、糸に触れられ、糸が崩れ落ちてしまった。

 

 

「そ——んな……!」

 

 

 

緑谷は自身の攻撃が避けられたことを驚きながらも、そのボロボロの手足でどうにか立ちあがろうとするが、足が折れているため、立ち上がることはできなかった。

 

 

 

「今のは危なかった——助かりました、死柄木弔」

 

「ホント最近のガキどもはムカつくな…てか、アイツいるじゃん。

なんだったっけ…ホラ、えっーと……スパイダーマン?」

 

「えぇ、そのようですね。やはり、あの男では彼を殺すことは無理だったようですね」

 

「なんだよ、ソレ。

あんなうざったいほどスパイダーマンと戦いたいとか言ってたのに負けたのかよ、使えないな——アイツら」

 

 

死柄木は、スパイダーマンがこの場に現れるというイレギュラーに怒りを募らせていた。

『スパイダーマンはオレ様が必ず倒す』と言っていた犀藤とその仲間たちならば、『スパイダーマンの相手は充分だろう』と彼の先生も言っていたのに、奴はスパイダーマンを倒せず、スパイダーマンはオールマイトの殺害計画に茶々を入れてきた。

『スパイダーマンもオールマイトも殺せてない。あいつ……俺に嘘を教えたのか?』と彼の先生へもその怒りは向いていた。

 

 

しかし、死柄木以外にも、怒りを募らせていた人物がいる。

 

 

 

「いいや、ライノは強かったよ——だから、これ以上彼や彼の友達の悪口を言うのは許さない」

 

 

 

そんな死柄木へと怒りを向けているのは、細蟹であった。

自身をこれほどボロボロにするまで成長してきたライノ。 

そして、彼のことを信じている彼の仲間をバカにした死柄木の発言に細蟹は憤っていた。

 

 

「はぁ?使えない奴に使えないって言って何が悪いんだよ」

 

「僕はさっき——警告したんだよ!!!」

 

「!——きます、死柄木弔!!」

 

「うるさいなぁ……わかってるよ、そんくらい」

 

 

またもライノたちをバカにする発言をした死柄木の言葉を皮切りに、細蟹が飛び出しながら右手で糸を出し、攻撃を始める。

黒霧の注意を流しながら、死柄木は自身の身体にくっついた糸に触れた。

すると、またもや糸はボロボロになってしまった。

 

 

「世間で持て囃されてるスパイダーマンだって、結局ただのガキ。

この程度の雑魚じゃん…それに負けたアイツらの程度が知れるな」

 

「じゃあ、これで僕に負けたら——君は何魚になるのかなっ!」

 

 

瞬間、死柄木の目の前に瓦礫が現れた。

先程の細蟹の攻撃であった一本の糸は、死柄木たちの注意を引かせるフェイクであった。

本命は、飛び出したことにより彼らの死角になっていた細蟹の背後で左手からだした糸で引っ張ってきた瓦礫を投げつけることだった。

 

 

「っ!?」

 

 

いきなり現れた瓦礫に反応することができず、死柄木はモロに喰らってしまう。

 

 

「やっぱり!——君の個性、物をボロボロに破壊する系統のものなんだろうけど、手で触れることが発動条件なんでしょ?

なら、君が反応できない攻撃とかには個性が使えないよね!」

 

「クソガキが…!」

 

「すごい個性だけど、それってつまり、手で触れられさえしなければ僕の糸でも拘束可能ってことだよね!

じゃあ、それならまずは——その手に手錠をかけさせてもらうよ!」

 

 

細蟹は倒れ込んだ死柄木とその近くにいる黒霧との距離を詰める。

黒霧はこのままだと死柄木が危険であると個性を使用しようとした時、USJの出口が開いた。

 

 

「1年A組クラス委員長——飯田天哉…ただいま戻りました!!!」

 

 

出口から出てきたのは、飯田と彼からの助けを聞きつけて駆けつけたプロヒーローの先生たちだった。

 

 

「チっ…ふざけんなよ!!——今、良いところだったのに…!」

 

「死柄木弔、これ以上はもう無理です!撤退を!」

 

「……ここでゲームオーバーかよ、クソ…」

 

 

その状況を理解した死柄木と黒霧は撤退しようと、黒霧の個性で出来た黒いワープホールの中に入る。

2人が逃げることを許さない先生たちは、個性を使い、彼らの拘束を行おうとしていた。

そして、その様子を見ていた細蟹は『あとは先生たちに任せて…』と思い、負傷して動けなくなっている緑谷の元へ移動した。

 

 

「緑谷くん、無茶しすぎだよ!——でも、すごいカッコよかった!

立ては…しないよね?ホラ、僕の肩に掴まって」

 

「ごめん、ささが——スパイダーマン、助かるよ…」

 

「ははっ、さっきの君との攻撃のおかげで(ヴィラン)の個性や弱点がわかったんだよ。

僕の方こそ、助かったよ!ありがとう!」

 

 

緑谷をおぶりながら、細蟹たちはこの場を離れようとしたその時、危険信号をキャッチした。

 

 

 

「———俺をムカつかせたクソガキ2人に嫌がらせしてから帰ろう…黒霧」

 

 

緑谷と細蟹に煮湯を飲まされたと考えている死柄木の指示により、細蟹と緑谷を黒いモヤが包んだ。

 

 

『また何処かに転移させるつもりか!!

今、2人でこのモヤを抜け出すのは不可能……僕、1人でまた(ヴィラン)たちに囲まれるのなら———ボロボロの緑谷くんを一緒に連れていくのは危険だ!』と思った細蟹は、黒いモヤから緑谷を逃がすために、背中におぶさっている緑谷を滑らせるようにオールマイトの方へ押し出した。

 

 

「ケガしてるのに投げちゃってごめんね!——」

 

「っ!——ささが…!!」

 

 

緑谷は自分のせいで細蟹は黒いモヤから抜け出せなかったことを押し出された時に理解した。

その上で、足手纏いである自分を置いて1人で何処かへ飛ばされようとしていることに責任を感じていた。

 

緑谷の言葉が細蟹にかけるよりもはやく、細蟹はUSJ内から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*********************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に細蟹が移動させられたのは——雄英の校門前であった。

『なんでこんなところに…?』と細蟹が思うよりも先に、周囲はもはや叫び声に近い大声を発していた。

 

 

 

「「「「「———スパイダーマン!!!???」」」」」

 

 

それは、元々オールマイトが雄英の教師をやるというニュースをするために、オールマイトや雄英生徒の声を聞こうと周りでスタンバっていたマスコミたち、それと野次馬たちによるものであった。

 

 

「なぜ、スパイダーマンがこk「今まで姿を消していた理由はなんなのでs「その傷跡はどうしたn「本当にスパイダーマンなんですか!!??」

 

 

彼らは目の前に、今まで消えていた自警団(ヴィジランテ)スパイダーマンが現れたことに驚きながらも、彼ら自身の仕事を再開した。

 

スパイダーマンの象徴とも言える赤と青の全身スーツは所々傷ついており、彼の素肌が少々見えている。それがまた彼らの興味を引く。

 

明日は、『スパイダーマンの帰還』という記事を書かなければと思うマスコミの人々に何本ものマイクを顔の前に向けられた細蟹は、『嫌がらせって、こういうことか……僕の存在はまだバレちゃダメだって先生たちが言ってたし……』と思いながらも、黙ったままでいることはよくないと考え———

 

 

 

「僕へのインタビューは——マネージャーを通してからにしてね!」

 

 

細蟹は自身の後ろにある雄英を指差しながら、そう言った。

その言葉を受けたマスコミや野次馬の人々は、また大声をあげたのだった。

 

 

 

 

 

 

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