魔法科高校の劣等生 黒羽の姫と焔の絶対王者   作:レオ2

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アンケートでの亜夜子,お仕置き回です!
時系列は再誕の焔で飛ばした2週間の時間です。
あの時点で亜夜子はライブをすれば焔矢を四葉連行だと思っていたので,寧ろこの2週間しか時間が無かった感じです。
なので今回の話は婚約する前のお話です。

飛ばしてくれて構わないのですが,焔矢の容姿は本編でも書いた通り白髪にステージ上では全部を睨みつけるくらいの事をするせいで年齢よりも老けて見られる事があります。

では!


本編 幕話
陥落の王者


 これは,焔矢の2ndライブが行われる2日前の話。

 一応,焔矢の監視は強化する形で彼の自由にさせるという現当主四葉真夜の指示により,焔矢は取り合えずある程度自由な生活を送っていた。

 と言っても,焔矢はあの時点では2週間に迫ったライブの新曲や既存曲…Alter Ego時代の曲も合わせる必要があった為一日中スタジオに籠る事はザラではなく監視をしている亜夜子から見ても無理をしているんじゃないかと思うほどだった。

 あの激辛ラーメンを食べた日…ではなく,焔矢や大原たちのライブについての会議を長時間見せられた日から焔矢のスケジュールは正直四葉もビックリなハードスケジュールだ。

 曲だけじゃなく,演出の人達とも相談する必要あるし今回は前半は打ち込みによるもの――ただし機械学習によるものではなく焔矢が作ったものだ――を使う事もあって音響の響きや確認も焔矢はしなくてはならなかった。

 

 普段のライブで彼は消耗が抑えられるという理由で彼らを霊体…他の人からは見えない状態で演奏していた訳だが,今回の一件で自分達で辿り着いた真実によればその状態は危険なものになるという事で今回のライブは前半それを封印する事にした。

 代わりに後半,過去にAlter Egoとしてステージに君臨する事を決めた。

 彼らを霊体にしたままでは,本当の意味で天王達は救われないからだ。

 

「はぁ…はぁ…」

 

 仲間達の姿を保てなくなった焔矢は,たまらず襲って来た脱力感にギターを持ちながら膝をついた。

 精神の中に戻った仲間達が口々に心配してくれるが,焔矢は大きく深呼吸して大丈夫だと伝える。

 今日もスタジオに入って4時間は経っている,時刻は既に22時で自社のスタジオとはいえ閉まる時間だ。そもそも無理を言って21時に閉まるここを明けてもらっているのだ。

 これ以上は流石に不味い。

 

(カラオケ行くか…あまり好きじゃないけど)

 

 そう胸の中で呟く焔矢,今時の個別電車は無人運転なのもあってほぼ24時間で稼働している為終電と言うのももはや死語である。だからこうしてやろうと思えば夜中に帰る事も出来るのだ。

 ライブまであと2日…もう少しで1日だが,焔矢は新曲が自分の納得できる歌に出来ていなかった。

 演奏は…妥協する所がそもそもなくなった。胸を張って新曲と言えるだけの演奏が出来ると自分も含めて想っている。

 

 だけど,焔矢はあの英語の詠唱の所がイマイチしっくりと来なくてどこかのカラオケで詰めようと思った。デモは既に作っているし,歌だけなら魔法を使う必要はない。

 そうと決まれば,預かっていた鍵を使ってスタジオを閉じて外に出て駅の近くにあるカラオケ店——言うまでも無く無人店だ――に向かおうとした所…

 

「帰るわよ」

「いやいやなんで?!」

 

 これ以上付き合ってられないとばかりに亜夜子が姿を現して焔矢の腕を引っ張った。

 亜夜子は呆れ100%の眼で強引に引っ張りながら言い放った。

 

「約束をお忘れ?」

「約束…何かしてたっけ」

 

 焔矢は素で何を言っているのか覚えていない。

 亜夜子と約束をした事はそれこそ出かける際の連絡とか位しか思い浮かばない。他に何があったかと思い出そうとしても,そもそも現在はほぼ練習にしか時間を費やしていない為約束をする暇がないというのが偽らざる本心だった。

 

 だが,亜夜子はニヤリとした笑みを浮かべて…まるで今までの鬱憤を晴らすかのように

 

「『罵倒も誹りも今度受けるから取り合えず学校行ってくる』」

 

 いきなり言い出したワード,それもどこかで聞いたような言葉に焔矢は首を傾げたが…直ぐにそれが亜夜子が激辛ラーメンによって気絶した次の日に焔矢が送ったメールの最後の一文だというのを思い出した。

 だがそれは別に約束では無くないか?というのが焔矢の正直な思いだったし,それなら今言ってくれとも思ってしまった。

 それが顔に出ていたのであろう,亜夜子は悪びれる様子も無く

 

「考えたのだけれど…そんなのじゃわたくしの気が収まらないのよね」

「えぇ…」

 

 焔矢はそう言う考えに至っていないだけだが,魔性の女を地で行っている亜夜子の罵倒や誹りというのはむしろ人によってはご褒美になってしまうので激辛ラーメンの仕返しとしては威力が心もとない。

 そもそも折角焔矢が一度は何かしらを受けると言ってくれたのだから(拡大解釈である),そんな罵倒とかでその機会を消費するのは亜夜子の腹の虫がおさまらなかった。

 それ位亜夜子にとってあの日の事は屈辱的なのだ。

 

「だから今日はもうわたくしに時間頂戴」

「いや…ライブが終わった後じゃダメか?」

 

 だが焔矢からすれば,直近の…それももうほぼ明日の夜に迫ったライブに時間を使いたいというのはその通りだったし練習のスケジュールは焔矢に一任されているのもあって明日も普通にスタジオに行こうと思っていただけに今日の時間をあげるのは不本意だった。

 

「ダメです。ライブが終わったらきっと焔矢さんは忙しくなってしまいますから」

 

 亜夜子もあの会議を見ていたので焔矢がどんなセトリで行くのか,どんな演出をするつもりなのか,そして何をするつもりなのかをある程度なら知っている。

 そしてUnlimited Flame Worksを使う事も。

 

 あんな今までにない魔法を使えば,ライブが成功するかは別にしてもきっと世間での彼の動きは注目されることになってしばらく焔矢は亜夜子に構う時間が無くなるというのも間違っていない評価である。

--それに,四葉に連れて行かなければならないかもしれない。

 

 最後の考えは,声に出す事は無かったが,だから今しかないのだと亜夜子は言う。

 

 この時点で,亜夜子にそれなりに甘くなった焔矢はそう言われてしまえば断る理由が特に見つからず――思えばこの時から焔矢は亜夜子には弱かったのかもしれない。

 練習を諦めて,2人は調布にある黒羽家のビルへと帰る事にしたのである。

 

 当たり前のように2人で並び,2人で同じ個別電車に乗り,他愛のない話をする。

 

「…一応聞いておくが,ろくでもない事考えていないだろうな?」

 

 だが,結果的に亜夜子の何かの為に早めに帰る事になったのだからこれから自分は亜夜子に何をされるのだろうかと不安な気持ちも確かにあった。

 自分は前に知らないとはいえ激辛ラーメンを亜夜子に食べさせた身,普通のラーメンはメニューの端っこから見ていれば「醤油ラーメン」とか「豚骨ラーメン」とかきちんとあるのだが,普通のラーメンはあの店の常連からしたら邪道であるのでメニューの写真がないのもうなずける話ではあった。

 亜夜子はその真っ先に目に映ったメニューを注文してしまったことに過ぎず,真面目に自爆しただけなのだがそれで知らない顔するほど焔矢は薄情者ではなかったのである。

 

 しかし,だからと言ってどんな仕返しも進んで受けるという訳ではなくあの亜夜子がする仕返しとかどんなに恐ろしいものなのだろうという思いもあった。

 焔矢がそれを碌でもない事と表現するには,あまりにも適切な表現だった。

 亜夜子は焔矢が自分に対してどのような評価をしているのか,この言葉から大体察していたが艶やかな笑みでそれを受け流す。

 彼女もこの2週間,何もしてこなかった訳ではない。焔矢にどのような悪戯をしようかと密かに画策していたのである。

 

 そして,昨日ようやく見つけ昼の内に届いたと聴いている。それを見た文弥は思わず焔矢に同情してしまうのだった。

 そうしてビルに着き,焔矢は部屋で軽く用意しておいたご飯を食べて件の歌い方を考えていた所…亜夜子が許可も取ることもせず堂々と部屋に入ってきて――何か吹っ切れているのか”ニマ~”と言う言葉がよく似合う清々しいまでの悪魔の笑みを浮かべて…それを持っていた。

 

「え,なにそれ」

 

 それは…多分,よく見たらパジャマなのだろう。というかよく見なくてもパジャマだった。

 では普通のパジャマなのかと言われたら絶対にそうではないと断言できる。

 

「焔矢さんには,今日はこれを着てもらうわね!」

「いやいや可笑しいだろ?!!」

「どこがですか?お揃いで良いじゃありませんか!」

 

 この場合のお揃い…というのは亜夜子と,ではなくヨルとという意味である。

 そう,亜夜子が焔矢に持って来たパジャマというのは小学生ならばあり得ただろう犬のパジャマなのである!

 人間工学に基づく設計であり,成人男性の平均身長にフィットするように作られたそれはどうやっても焔矢には似合わない代物であり亜夜子が選んだチョイスにしてはまだ大人しい方なのだが…それはそれ,これはこれである。

 

「だからってなんでそれなんだよ?!」

「最初は文弥と同じく女装をしてもらおうかと思ったのですが…ライブ前にそんな事をするのは申し訳なかったので妥協点として選ばせていただきました」

「そこまで考えてくれたのなら悪戯自体踏みとどまってくれません?!」

「それは嫌です。わたくしが受けた屈辱はこの程度で清算出来るものではありません」

 

 本当に屈辱だったのか,最後の言葉にはもはや憎しみすらも感じられるほど低い声で焔矢は「えぇ」と呆れた眼で見ていたのだが当人はそれをどこ吹く風と受け流し,そのパジャマ…「柴犬なりきりパジャマ」を差し出したのである。上と下で別れている奴ではなく,完全に1つのパジャマである。

 因みに亜夜子がこれを探すのに時間がかかった理由は,子供用の物なら直ぐに見つかったのだが成人用の物は手こずってしまったのだ

 

「何でもすると言ったじゃありませんか」

「言ってねえからな?!」

「良いから着なさい,そして写真撮影会しましょ?」

 

 焔矢を辱める事を楽しみにしていたのか,それとも当時の鬱憤を晴らしたいのか…多分どちらもだが亜夜子はズンズンと焔矢に迫り悪戯心全開でそれを差し出す。

 焔矢は…普段のプライベートではある意味人間らしい生活を送っているので人並みに羞恥心はある。大体なくなるのはステージ上だけで今は思いっきりプライベート,それを着る羞恥の方が上回っていた。

 

「いや…その,もっと別の無い?」

「まぁ!女装の方が好みでしたか?」

 

 それは知らなかったとでも言いたげにわざとらしく眼を大きくし,大げさに驚いた様子を見てこのままでは本気で女装の方が良いと思われそうで慌てて取り繕う。

 

「そうじゃなくて…あの報復なら普通激辛な何かだろ?」

「それでは大した仕返しにならないじゃないですか」

 

 それはそうである。亜夜子とて一度は自分が食べた激辛ラーメンを焔矢に食べさせようかとも思ったのだが,そもそも焔矢は多分あのラーメンを普通に食べられる。

 偶に黒川が護衛兼監視役として亜夜子の代わりに焔矢につくことがあるのだが,焔矢はあのラーメン屋のスペシャル激辛ラーメン…つまり亜夜子が撃沈したあのラーメンを黒川の隣で普通に完食したという報告を受けている。

 …因みに,黒川は亜夜子と同じ轍を踏むことなく普通のラーメンを食べて今ではなぜか常連になっている。

 

 そんな訳で,あのラーメンを食べさせたところで寧ろただのご褒美なのである。ではとびきり甘いものを食べさせるというのもライブが差し迫っている現状では身体に不調をきたす事になるかもしれないと足踏みしてしまった。

 だから妥協案としての柴犬パジャマ,焔矢は姿を羞恥に染めた方が良いと亜夜子は考えて実際それは正解とも言えた。

 

「ほらヨルちゃんも着てほしそうに見ているじゃない。」

 

 亜夜子が愉しそうに言うのを聴いて焔矢は足元で亜夜子の援護をするかのように焔矢をキラキラした眼で見ていた。…いつの間にそっちの味方になったんだ,これが「ブルータスお前もか」状態かとか現実逃避して必死に逃げ道を探そうとする焔矢。

 亜夜子は途端に眉を顰め,あるものを懐から取り出した。

 それは小瓶で,中には何かの液体が入っている。普通の人間ならばともかく,少なくとも亜夜子は魔法師と意味でも四葉という意味でも普通の人間ではない。到底ただの水とかと思う事が出来なかった焔矢は恐る恐る問いかける。

 

「え,なにそれ」

「焔矢さんにはわたくしの魔法をお話したことはありましたっけ?」

 

 焔矢の問いには答える事はせず,代わりに意味深な笑みを浮かべた亜夜子はそんな質問をした。

 

「いや…したこと,ないけど」

 

 聞いた所で自分ではどうもできないし,仮に亜夜子を退けた所で文弥がいるのだからもはや勝とうと思っていない…どちらかというとそんな事よりもライブの方が焔矢の優先順位が高かった為,亜夜子の魔法を聴こうとは思わなかったのだ。

 亜夜子たちは自分の魔法についてある程度しっていて,亜夜子たちの魔法は知らない。情報戦の観点から言えば焔矢は圧倒的不利,そもそも知った所でどうする事も出来ない。

 

「わたくし達だけ焔矢さんの魔法を知っているというのも,いささか不公平だと思いますので特別にわたくしの得意魔法を教えましょう」

 

 どう考えても嫌な予感しか感じない。脳が危険信号を解き放ちまくっているが,ここは既に亜夜子によって密室にされているし目の前の亜夜子を退ける事は多分出来ないし,そもそもヨルを置いて行けないしで聞くしかなかった。

 

「わたくしの魔法は”極致拡散”,任意のエリアの物理的なエネルギーや…気体や液体の分布が識別出来なくなるまで平均化する事が出来る魔法です。」

 

 言いながら亜夜子はその小瓶の蓋を開けて焔矢に見せびらかす。焔矢は絶対ヤバい事しようとしているぞこの人と思いながらも,何故か頭だけは冷静で亜夜子の魔法の説明を脳内で自分流に翻訳して…

 

「つまり,音楽がその亜夜子が指定した領域内では聴こえなくなるって事か?」

「ええ,その通りです。貴方の理解は正確で助かるわ。」

「うん,よく分かった…取り合えず,その気化させようとしているのはなに?」

 

 焔矢もここまで説明されたら,彼女が何をしようとしているのかが分かる。その極致拡散とやらで,その液体が気化したものを焔矢が識別しにくくして――恐らく,気流操作か何かで身体に吸い込ませようという魂胆だろう。

 極致拡散でどこまで気体化したのが分からなければ逃げようがない。というか,この部屋を全体で極致拡散で覆われたら普通に終わりである。

 

「大丈夫,身体に後遺症が残るものではないから。ただ恥ずかしい気持ちが普通にやるよりは倍になるかもね」

「絶対痺れて動けなくなる奴じゃんか!」

「ふふ,わたくしから逃げおおせると思わない事ね。さあ選びなさい?これで身体を封じられてわたくしに身包みを剝がされて着替えさせられるか,自分から着替えるか…10秒よ」

「わ,分かった!分かった!もう着るからそれはやめて!」

 

 健全な男子高校生である焔矢は,亜夜子に服を剥がされると言われて直ぐに掌を返した。どこかの変態であれば寧ろ前者を選んだのかもしれないが,焔矢にそんな露出性癖はない。

 この時点で焔矢は亜夜子の事が好きだったし,そんな人に身包みを剥がされるとか屈辱的なものの前に男としての敗北にしかならなかったのである。

 

 結局,焔矢は亜夜子に抵抗する事が出来ずに柴犬パジャマ…ご丁寧に豆柴を着る事になったのである。

 

「ふふっ…よく…似合ってるわよ」

 

 そうして,亜夜子とヨルの前に柴犬パジャマを着た焔矢が姿を現すと,亜夜子は肩を震わせて…寧ろその面白さに涙まで滲ませて笑うのを堪えている様だった。

 焔矢はそんな亜夜子を,パジャマを握りしめて必死に屈辱に耐えて羞恥の顔で声にならない悲鳴をあげていた。

 普段,珍しい白髪のせいで見た目よりも老けたように見られる事が多い焔矢だが,普段から一緒にいる亜夜子には彼の普段の顔を知っている為きちんと年下の男として認識している。

 そんな彼が,数段子供っぽい姿に戻ったかのような姿に亜夜子は笑いを抑える事が出来なかったのである。

 

「も,もう良いだろ!」

「ダメよ,寝るまではその格好ね」

「なななんでだよ」

「そんな直ぐに終わったら罰の意味がないじゃない」

 

 何を言っているのだあなたはと言いたげに呆れた眼を向ける亜夜子だが,焔矢としては即刻普通の服かパジャマに着替えたいというのが本心だった。

 だが亜夜子は痺れ薬?をチラつかせ,結局焔矢は亜夜子に屈服するしかなかった。

 

「はい,じゃあフード被って」

「うぅ…」

 

 楽しそうな亜夜子の声とは裏腹に焔矢はそっとフード…言うまでも無く豆しばの顔と耳が付いているフードを被って全力で顔を下に向けて羞恥の顔を亜夜子に見せないようにした。

 だが,その程度の事では亜夜子は動じない。…因みに,なぜかもうカメラをどこからか持ってきて撮影している。

 

「ほら顔あげて,さもないと…」

「ちょ,それずるいって」

 

 たまらず顔を上げて亜夜子にその姿を晒す。ケラケラと笑う亜夜子を恨めしそうに見る焔矢だったが,そんな視線亜夜子にとっては日常茶飯事だったので気にする事も無く次の指示を出す。

 ヨルを連れてベッドに行くと,ヨルはもう寝る気満々だったのかいつものようにベッドに入り込むのだが…

 

「はい,じゃあヨルちゃんを抱えてこっち見て」

「鬼かよ」

「いやね,正当なお仕置きよ」

「だったらその瓶を捨ててくれませんか」

「丁重にお断りします。早くしないと…」

「んああああ!!」

 

 もはや少し焔矢は壊れてしまっているのだが,それでも尚亜夜子は止まる事はなく写真撮影会は続いた。主にヨルとのツーショットで,あんなポーズやこんなポーズも指示し着々と焔矢の弱みが増えていったのである。

 時刻は既に日付を越えるという時まで行われ,やがて焔矢は睡魔に襲われて亜夜子の目の前でヨルを抱えて寝てしまった。

 

「あら,寝ちゃった…当然か」

 

 だが,亜夜子は焔矢を弄ぶことが出来なくなって残念がることなく当然と言い放った。

 何故なら――

 

「ごめん,少し嘘をついてたわ。これ…ただの睡眠スプレーなの」

 

 そう,亜夜子が持っていた小瓶に入っていたのは睡眠スプレーの中のもの。既に亜夜子は極致拡散でそれらを識別出来なくして焔矢が徐々に眠気に襲われるのを待っていたのである。

 

「こうでもしないと貴方ずっと起きてるから監視する私の身にもなって欲しいもの」

 

 ここ最近の焔矢は,防音室に籠り深夜にずっと何か作業をしていて一応焔矢の監視役になっている亜夜子なので彼が眠るまでは眠れないという制約がある。

 そして焔矢は最近は4時とかに寝て7時に起きるとか言う本当に人間なのかと思うほどの睡眠スケジュールをしている。

 いくら亜夜子でもそんな生活ペースに付き合わされたらたまったものじゃない。

 

 そう,だから今回眠らせたのは自分の睡眠時間の確保の為…決して無理をしているように見える焔矢を気遣った訳じゃない。

 少なくとも亜夜子は表面上はそう考えてこんな事をしたのだ。

 そして亜夜子は優し気な笑みを浮かべると,ベッドで眠ってしまった焔矢の頭を一撫でし,ヨルと一緒に布団をかけてあげた。そうして次に亜夜子は懐からボイスレコーダーを取り出して彼の枕横に置く。

 それは焔矢がさっきまで悩んでいた,Unlimited Flame Worksの英語詠唱の部分。焔矢は色々な歌い方を試していたが,どれもしっくり来ていないようだった。

 だが,第三者である亜夜子から言わせれば…

 

「私は…3番目の歌い方の方が好みよ」

 

 3番目の歌い方…初めて焔矢が亜夜子の前でやったあの英語の詠唱をリズム感とかなんも関係なしに呟いたような詠唱だ。亜夜子の眼には,あの時の焔矢の背中が今から何か壮大な事をやってくれるというものが映っていて,あれが印象的だったからだ。

 あの方法はリズム感が取りにくいという理由で焔矢は却下したが,まるで孤独だった彼が,詠唱を進めるごとに熱く激しく,大気をも震わせる力強さを増していくあの詠唱が亜夜子にはお気に入りだったのである。

 

 だからそう言って亜夜子は踵を返し,焔矢とヨルを起こさないように部屋から出ていくのだった。

 

 

 ——因みにしっかりと柴犬パジャマon焔矢の写真は,データ化は勿論現像もされ更にはいくつものバックアップが取られてしまっていて婚約した後の焔矢の弱みの1つとなってしまっている。




お疲れさまでした!

ちょっと皆さんが望んだお仕置きだったかは別として,取り合えず焔矢は普段は絶対にしない恰好をして羞恥心ぶっ壊す方が亜夜子の得意そうなお仕置きだなと思ってこうしました。

ただ,最終的に無理をしていると思った焔矢の為を思っての睡眠薬です。亜夜子自身は自分の為と言っていますが…。


はい!そんな訳で,次回はアフターストーリーです。と言ってもそんなに時間は鳴れている訳でもないですが。

ではでは

どのお話見たい?

  • 達也&焔矢(UBW強化話?)
  • 空澤&焔矢(亜夜子についてあれこれ話す)
  • 貢&焔矢(修羅場)
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