魔法科高校の劣等生 黒羽の姫と焔の絶対王者   作:レオ2

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今回は少し原作キャラが出てきますが,話し方など不安でしかないのでこの人ならこう話すはずだとかは少し多めに見てもらえると嬉しいです。

では!


The Last Resort

 まさか,自分がここに来る日が来るなんてなというどこか感慨にも似た思いを今焔矢は感じていた。

 作曲作業を進めた次の日の放課後,焔矢は制服姿のまま――音楽科高校の制服は無難なブレザーにスラックスにシャツというオーソドックスのもの――国立魔法大学付属第一高校の門の前へとやって来た。

 

 自分の音楽の師匠とも呼べる紅羽の母校であり,魔法教育を受けるエリートである少年少女たちが通う全国に9つしかない高校の1つ。

 魔法科高校と言っても,魔法以外の事もこの高校はハイレベルであり音楽についても焔矢この学校の部活についてはある程度知っていた。

 今では吹奏楽と軽音楽が合わさった様な音楽全般を扱う部活らしいが,今日は部活見学に来たわけではない。

 

 焔矢は魔法科高校の警備員に見学の旨を伝え,関係者であることを示すカードを受け取り首から下げてどこから回ろうか…そもそもこの学校でかすぎね?と思っていると

 

「音羽焔矢さんですね」

「…貴方は?」

 

 まるで焔矢を待っていたかのような2人組が…焔矢に声をかけて来た方の女性はこげ茶色の髪に華奢な身体つきでどこか愛玩動物を思い出させるほんわかな雰囲気を纏っていた。…最近では心がそんなイメージだったせいで一瞬内心で警戒してしまったのは許して欲しいと焔矢は本気で思った。

 そんな彼女の事で目を引いたことと言えば,イヤーカフ…それも焔矢が見たことのあるものでは確かどんな音も自分が設定した音量まで調節してくれるという高級仕様のものだ。マイクとスピーカーが一緒になっている奴で昔焔矢も買おうかなと思ったことのあるやつのお高いバージョンである。 

 

 そして,彼女の背後にまるで仕えるように――というか,どちらかというと護衛のように立っていた男は焔矢の事を観察していた。

 だが焔矢はレーベルから正式なアポを取ってもらいここにいる。決して不審者ではないし,ドンパチしに来たわけではないのである。

 だから少し観察はやめてもらいたいなと言うのが本音だったのだが,魔法科高校に魔法師じゃない人間が来ることの方が珍しいので仕方がないなとも思ったので放っておいた。

 

 焔矢が一瞬怪しんだような目をしたのにも彼女…そして護衛の彼も気がついたが彼女達も自分達がいきなり声をかけて来た自覚はあったので特に気にする事も無く人当たりの良い笑みを浮かべた。

 

「私は生徒会長を務めてる三矢詩奈って言います。こっちは会計の矢車侍郎君です」

(三矢…数字付き,今の日本の魔法界を率いる十師族の1つか)

 

 魔法に興味が無かった焔矢だが流石に十師族の事は知っていて,最近は四葉の事もあって亜夜子にそれなりに教えられたこともあって直ぐに彼女がその類の人間だと分かった。

 もっとも見破れるのが普通なくらいがあるし,そもそも四葉の秘密主義と違って三矢家は割とオープンな所なので逆に見破れなかったら亜夜子に教養不足で一から叩き込まれる所ではある。

 

 閑話休題

 

 人とのコミュニケーションの上で名乗りと言うのは相手の緊張をほぐす意味もあり,彼女が先手を打つかのように言ってきてくれたのは焔矢としても好都合だった。

 

「<エクセリクス・レコード>から第一高校に見学に来ました,音羽焔矢です。生徒会長が自ら来てくれるなんて…少し意外でした」

 

 そう言ったら詩奈は詩奈の方で焔矢の言葉遣いの方が意外だったのかすっかり目を丸くしていた。ステージ上では焔矢は”王”としての唯我独尊味を感じるMCが詩奈には印象深かったから実はと言うと会うまで怖かったらどうしようとビクビクしていた事もある。

 だが,流石生徒会長と言うべきなのか直ぐにそんな感情の機微を隠しにこやかに告げた。

 

「音羽さんは今有名人ですし,折角私達生徒の為にイメージソングを作ってもらえるんですから出来る限りの事はしようと思いまして…今日は私と侍郎君が校内を案内しますね」

 

 焔矢は,それを一目見て嘘だなと直感した。

 彼女の眼が一瞬泳いだのもそうだし,身体の些細な変化によって少し硬直しているのを見れば誰だって彼女の言う事が嘘だというのは分かるのではないかと思った。

 

 そして,焔矢には彼女が嘘をついていると考えるにはもう1つ理由があった。

 それは前々から亜夜子にしつこいくらいに言われていた十師族が焔矢の動向を調べようとしていた件についてであり,四葉が焔矢の2ndライブ前に彼の情報のほとんどを世間からシャットアウトし今ではレーベルの個人情報も四葉が握っている為他の十師族と言えど四葉の情報操作を突破する事は出来ない。

 

 最初こそ,焔矢の未知の魔法についてリモートの師族会議が行われようとした事もあった。それは当時はまだ焔矢に後ろ盾が無く魔法師の保護という十師族本来の役割を行う為に,焔矢の扱いについての会議だ。

 しかし,その会議自体は四葉真夜の「魔法師と言えど,彼は十師族の”物”ではありませんので私達が彼のいない所で彼の処遇を決めるのは失礼ではなくて?」という声によって有耶無耶にされ――焔矢の情報が出回る事は無くなった。

 

 実際は焔矢が亜夜子と婚約したことによって身内となり,身内なら情報を隠すよね?という流れでの情報シャットアウトであるのだが他の十師族もこれが真夜の仕業だなんて分かっていた。

 しかし,正当な手段で焔矢が縁者になったのなら他の十師族もどうこう言う事は出来ない。達也と深雪が婚約した時のような事なんてもってのほかだろう。

 

 つまり,他の十師族から言わせれば焔矢の事を推し量る機会が無くなったのである。

 そんな時に焔矢が公に魔法科高校に来たのであれば,焔矢の事を見るために誰か接してくるかもしれないと亜夜子に予め言われていた。

 最初は焔矢は1人でぶらぶら見て回ろうと思っていたし,それは案内役について大原から何も聞いてなかったからである。だがこのタイミングで詩奈が生徒会長という役職を利用して焔矢に接近してきたのはそう言う事だろうと焔矢は思ったのである。

 

「ありがとうございます。正直構内図見た時でかすぎて九校戦に関係のある場所が分からなかったので助かります」

 

 しかし,焔矢はそれが分かっていながらも単独行動を取ろうとは思わなかった。それには詩奈に言ったように想定以上の大きさに道案内が必要だと思ったからである。

 もちろん亜夜子からは現在第一高校に在学している十師族の人間を予め教えられてもしあうような事があればまだ四葉との関係は悟らせないようにと命令されていた。

 まだ他の十師族は焔矢の情報を隠したのが四葉だと思っているだけでありそれには何の確証もない。ただただ真夜のこれまでの行いからの判断である。

 

 今ここで焔矢と四葉の関係が他の十師族にバレてしまったら後々面倒なことになってしまう。だからまだ焔矢と四葉の関係は来年の彼の誕生日と同時に発表する婚約まで待たなければならなかった。

 焔矢も亜夜子から散々その事は言われたので漏らすようなへまはしない。そもそも焔矢にとって今日は”仕事”で来たのであって関係のない十師族の話題なんて出たらとぼけたら良いだけである。

 

 …それを差し引いても,焔矢は詩奈が嘘をつくのに向いている人間だとは結局この一日を通して思えなかったが。

 

 

 ★

 

 

 十分な日が当たり,しかしそれでも必要最低限なものしか揃えられていないどこかのホテルの部屋で心は憔悴したようにベッドに座って何も考えていなかった。

 それはボーっとしているとも言い換える事ができ,ここ数日は自分の人生の意味について考えていた。

 

 天霧心は,先祖に…言ってもまだ魔法が発達してようやく1世紀経とうとしている段階なので先祖と言ってもまだ代は近いのだかいわゆる超能力者を持つ女性がいた。

 今では超能力が魔法に技術体系化しているので大体は魔法と呼ばれてしまうのだが,彼女の先祖である女性は本物の超能力者であった。

 しかし,先祖の家系にあたる心の父親は魔法的な因子は引き継がれず,隔世遺伝のように心と兄に魔法の才能は引き継がれた。

 

 そうはいっても強い魔法は使えないし,そして何より心の本当の魔法は超能力で…人間の心の声が聴こえるものだった。

 心は物心がついた時からヴァイオリンに惹かれ,魔法的な才能を伸ばす事はしてこなかった。魔法を使う事が出来るのは希少な才能と言われている現代で国のお偉いさんからすれば困るものだろうが,心に言わせればそんなの知った事ではないし自分のやりたい事をやりたかった。

 まあ,兄の方は魔法の才能に拘っていたが。

 両親は心の能力の事を知っても,自分の好きな事をやればいいと言ってくれその愛が本物だと知っていた。魔法という希少な才能を伸ばさなくても良いと言ってくれた。

 利己的な人間であるならば出ないような言葉言ってくれて心は両親の期待に応えようとした。

 

 それを有言実行するように心はヴァイオリンのコンクールに幼少期から出場し始め,最初の内は落選も多かった。認められなかった理由としては年齢に相応しくない”子供らしくない”とかいうふざけた理由だったのを心は”聴いて”知っている。

 嫉妬による声も,出来過ぎる事の罵詈雑言もあった。

 だから…心は自分のヴァイオリンの音を捨てた。

 

 そうして審査員の人達が望む音を出していけば,いつしか自分はヴァイオリンで認められ”天才児”だと言われるようになった。それが心の本当にやりたい音楽だったのかと言われたら否定するしかない。

 だけど,自分の音楽ではコンクールを取ることも出来なかった。だけど世界が望んだ音は認められる。

 世界に心は変えられたと言ってもいいかもしれない。

 

 それでもヴァイオリンは大好きだった。家の中では自分のやりたいようにヴァイオリンを弾いて,自己満足でそれを堪能し外では音という仮面を被って大衆に受ける演奏をする。

 そうして心はある日日本でも有数の大きなヴァイオリンのコンクールに出場する事が決まった。

 

 自分の音楽をすることは出来ないけれど,その代わりに自分の夢がどんどん大きくなっていくのを感じていた。自分を騙すような事は沢山してきた心はこの頃になるとそれにすら慣れてしまって息苦しさを誤魔化す事も上手くなってしまっていた。

 だからこそ…この時の事を心は後悔した。

 

 コンクールの場所は北海道の札幌であり,彼女は両親の”前祝だ!”という謎のテンションでカプセルシートの席を取り…あの自爆テロに見舞われた。

 燃え盛る炎の中で,彼女は様々な人間の”死にたくない”を呪いのように”聴いた”。

 

 思えばその時だったかもしれない,心が壊れてしまったのは…気がつけば虚ろな目で誰かに助けられた。

 それが誰なのか,心は既に思い出せなかった。消されたという方が正解かもしれない。

 気がつけばどこかのアジトにいて…あの時には既に洗脳されていたのだと思う。一から魔法と,軍用体術を意味も分からず叩き込まれながら日常生活に送り出され音楽科高校に進学した。

 魔法科高校じゃないのは,中学三年の夏に事故にあいそこから魔法を学んだとしても合格ラインに辿り着くことが出来なかったからである。

 お金は彼らに出してもらったし,必要な衣食住も彼らに提供してもらった。そう言う意味では感謝するべきなのかもしれない。

 

 例え…将来的に殺し屋になる事だったとしても自分は学生生活を楽しむ事が出来たのは嘘偽りのない事だったし,沢山の同級生に囲まれた日々も今では思い出だ。

 

 そんな高校生でありながら,裏社会にいた心に転機が訪れたのは今年の2月だった。

 

「凄い…」

 

 生徒会長として,そしてこの学校が好きという嘘偽りのない気持ちの下で入学試験のお手伝いをしていた時に”それ”を聴いた。

 生徒達が自分の得意な楽器で実技を行う教室の前で,今か今かと待っている生徒達を見守るという役目を果たしていた心は1人の男子生徒に目を奪われた。

 白髪で逆立った髪,ワイルドとも言える雰囲気を持つ彼は容姿に違わない眼光で時に身をゆだねて…そんな彼が実技で選んだ楽器はエレキギターでそれも心の眼を引いた理由の1つでもある。

 

 現代でエレキギターは趣味の人間しかやらないのが通説だったし,作られた音で代用できるものなので(なんならクオリティという意味では作られた音の方が良い)それを入学試験というこの大事な時に引っ張ってくることに驚きを隠せなかった。

 実際他の生徒は心と同じようにヴァイオリンだったり,管楽器と言った現代の機械的技術では再現が難しい楽器を武器にやってくるものが殆どだった。ギターもいない訳ではなかったが,それでも圧倒的少数派だ。

 興味を持った心はそっと名簿から彼の名前を探した

 

(音羽…焔矢君)

 

 そして,その名前を見た心はそれが去年の冬に元は北海道にあり,そして今は東京に拠点を移した老舗のレーベル<エクセリクス・レコード>と契約した()()ロックバンドのギターボーカルというのを思い出した。

 ニュースには小さくしか乗っていなかったし,注目はそれほどされていなかったが音楽系のニュースに眼を向ける余裕が出て来た心は知っていた。

 

 そんな彼は眼を静かに閉じて他の生徒達が弾くなり吹くなりしている楽器の音を聴いていて…

 

(今…何を考えてるんだろ?)

 

 そうやって心はほぼ無意識に彼の心の声を聴こうとして…

 

(え?)

 

 全く聴こえなかった。否,全くというのは語弊がある。聴こえるには聴こえるがそれが言葉としての意味を伴っていないノイズだらけの声だった。

 こんな事は心の人生においても初めての事で戸惑いを抑えきれず思わず焔矢の事を凝視してしまう。

 その視線に焔矢は当然気がついていたが,目立っている事は自覚していたので特に気にも留める事は無かった。

 

 そうこうしている内に焔矢の出番に迫り,心は彼の名前を呼んだ

 

「音羽…焔矢さん」

 

 眼を閉じていた彼はゆっくりとその金色の瞳を見せ,ゆっくりと立ち上がった。ギターバックを背負っている彼を嘲笑するような他の受験生たちの視線をものともせず焔矢は堂々とした歩みで心の横を通り過ぎ礼儀作法をしっかりとしながら入室していった。

 焔矢の心が聴こえなかった事に戸惑いつつも,心はなんとか仕事を全うしようとして…その決意があっという間に瓦解した。

 

 生ではほぼ初めてと言っても過言ではない苛烈で,重厚感のある凄まじい音が心の背後にある教室から聴こえてきて心は一瞬にしてそのギターに心を奪われ度肝を抜かれた。

 常にアップテンポでありながらも,飽きる事を許さないとばかりの圧倒的な技術に手数…今まで心が聴いたこともないかのような音の連鎖。

 防音機能を兼ね揃えているはずの教室から聴こえる圧倒的な音。

 

(凄く…見たい,直接聴きたい)

 

 受験生を見守る立場でありながら,心は本気でそう思っていた。彼の楽器の音はアンプの力もあるのだろうが,鮮明に心の魂に響いてそれは他の受験生も同じようだった。

 さっきまでギターをする事を嘲笑するように見えていた他の生徒達も,たった1つの教室から放たれるギターの音に眼を大きく見開いて他の教室で待っている生徒達も含めこの音に聴き入っていた。

 

 到底世間的には受け入れられないような,世紀末のような音…だけど彼のギターは聴く聴かないという次元ではなく問答無用に”聴け”と言っているようであり音楽性の押し付けとも言い換えられる。

 だけど,反論は許さない。何故ならそもそも彼の音の虜になるから。

 

 自分のやりたい音楽をやる焔矢の音楽は,心には酷く眩しく映った。

 なぜなら,それは自分が捨てた”音”であり彼は自分の音楽を貫き通す意志を感じて自分が惨めに思ってしまったのだ。

 

「はぁ」

 

 過去に思いを馳せていた心は,意識を現実に戻した。

 もう,自分を拾った人達のアジトは全滅しているのだろうかとか考えたがどの道自分は焔矢にとってもロシアンマフィアにとっても裏切り者だ。

 そんな事を気にするのはおこがましいし,もう意味のない事だ。

 

「私はどうなるんだろう」

 

 死ぬとは思う。

 ではどうやって死ぬのだろうか…そんな物騒な事が頭に浮かび始めた時,1人の筈のホテルの部屋の扉が開いた。心は長年叩き込まれたことによる臨戦態勢を取ってしまった。

 

「あ…ご,ごめんなさい!」

 

 しかし,相手を見た彼女はその事にロケット級のスピードで謝罪する。

 

「お気になさらず,どうぞ楽にしてくださいな」

 

 相手は…亜夜子はその事に嫌な顔を1つもせず立ち上がった心に座るように言う。

 しかし心としては彼女に色々な意味でへりくだってしまっている現状で,その言葉を素直に聞くことは出来なかった。

 そんな心を亜夜子は困ったような顔で見た。

 

「心さん,そんなに固くなられてはわたくしも困ってしまいますわ。どうか普通にしてください」

「分かり…ました」

 

 心にとって亜夜子は得体のしれない女性である。

 四葉の人間は得てして得体のしれないのは今に始まった事ではないのだが,それを最近は再確認しているような状況であった。なんなら,何故か今では焔矢も彼女の婚約者として四葉の身内になっている事を彼女の声を聴いて知った時は本気で驚いた。

 そして…それは自分の失恋でもあった。

 

「あの…どうしたんですか?」

 

 一応,今は自分の対応についてあれこれしている最中というのは昨日彼女に尋問された時に聴かされていた。本当はこんな事を聞くのですら今の自分の状況を鑑みればよくないのだが,遅かれ早かれ自分は死ぬのだろうと思っている心はある意味神経が図太くなっていた。

 それに,亜夜子は敵対しない限りは何もしてこないというのは昨日の事情聴取と言う名の尋問から分かっていた。

 

 殆ど焔矢と同じで”なるようになれ”精神であるのだが彼女の場合は自虐が多分に含まれているので,やはりメンタルは焔矢には及ばないのかもしれない。

 

「焔矢から伝言を預かったから伝えに来たのよ。」

 

 焔矢…彼の名を呼び捨てにしている事からも本当に婚約者なのだと知り,胸が締め付けられるが今はその伝言という言葉の方が気になった。

 そしてつい聴こうとして,慌てて首を振った。こうやって何度も人のプライバシーを聴いて何度も後悔したではないかと自分を叱咤する。

 

「良いのよ,話すよりも手っ取り早いから聴いてもらって」

 

 しかし,亜夜子は同性の心から見ても美しい色っぽい笑みを浮かべそんな事を言っている。普通自分の心が聴かれると知った人間なら恐怖するのが心のいつも通りだというのに,亜夜子はまるで面白いものかを見るかのように却ってそんな事を言っている。

 そして心は亜夜子の言葉を聴いてつい彼女の言う通りに亜夜子の心を聴いて…あっと眼に涙が滲み始めた。

 

「なんで…なんであの子はそんな事するの…?」

 

 亜夜子が受け取った伝言とは,昨日の夜に亜夜子に言ったように心の世界を変える為の新曲…それも心も今初めて知った事だが九校戦のイメージソングのタイアップとして作る曲をダブルミーニングとして作る。

 焔矢がそうしようと思った自分の音楽が,世界によって変えられたのではないかという予想も正しい。

 

 だけど,だからこそ心はどうしてそんな事をするのか分からなかった。自分は敵として,焔矢に襲い掛かった。いくら大亜連合からの情報漏洩で分かった事とは言え,魔法力増幅という焔矢の能力欲しさに自分は命令されて彼に攻撃した。

 実際焔矢は怪我をして,自分にそんな資格はないと分かっていながらも心配して…亜夜子から無事を伝えられた時は本当に安心した。

 

 でも,焔矢が自分を気に掛ける理由なんてなに1つもない筈なのに大事な新曲を自分の為にも充てたいなど心からすれば本当に意味が分からなかったのである。

 そして,それ自体は亜夜子も同感だったので艶やかな笑みを浮かべて答えた。

 

「馬鹿だからだと思いますよ。」

 

 成績とかそう言う意味ではなく,音楽に関してはバカだとは亜夜子は割とマジで思っている。それ位婚約した今でも音楽について考え,ライブを考え曲を作っている。

 亜夜子が彼に会いに行く時は練習を終えた後だったりするからマシなだけで,休日はヨルの散歩と筋トレ以外は殆ど音楽に時間を充てているのを亜夜子は知っている。

 なんなら,一度焔矢が練習中に部屋に入った事があるのだが彼は亜夜子の存在に休憩に入るまで気がつかなかった事もある。それ位,焔矢は音楽に向き合って”バカ”という評価は,自分に構ってくれない事へのあてつけもあるが,彼の音楽に対しての真摯さも褒める意味もある。

 

 だからこそ,本当の音楽を奏でられなくなった心を助けたい。心が本当は凄い人だと,焔矢は知っているから。

 亜夜子に言わせれば甘すぎるし,狙われた危機感も持って欲しいと思うのだが…焔矢が頑固なのも亜夜子は知っていた。それにここで彼を止めればしこりを残す事になる。

 彼の目的の為にも,黒羽である前に妻になる身としては焔矢の自由にさせる方が精神衛生上良いのだと亜夜子は焔矢の好きにさせていた。

 

 …焔矢にはその気はなくても,たった1人の女性の為にあれこれしているのは思う事はある。

 

「…」

 

 亜夜子の心を聴いた心は,意外そうに亜夜子の事を見つめていた。まさか四葉の人が,嫉妬なんてするのだと知って意外な気持ちが抑えられなかったのである。

 亜夜子はそんな彼女の顔を見て余計なことまで聴かせてしまったのだと悟り,少し咳払いをして心の安寧を保った。

 

「さて,伝える事は伝えたから行くわ。」

 

 元々焔矢の伝言を伝える為しか来なかったのでそう言うと,亜夜子はそそくさと部屋を出て行ってしまったのだった。

 

 ★

 

 陽が沈み始める夕方の時間帯,焔矢の姿は第一高校の校門の前に詩奈たちに送りだされる所だった。

 

「すいません,こんな時間まで案内してもって」

「いえいえ,良い歌詞はかけそうですか?」

「はい,おかげさまでインスピレーションは湧いてきました。」

「そっか,良かったです。」

 

 本当に心から安堵しているのだろう,詩奈は胸を撫でおろしていた。彼女の体質的には音楽と相性が悪いのだが,彼女は心から人の事を応援できる人間なので安堵するのである。

 そんな詩奈の人当たりのよさに焔矢もそれなりに彼女には気を許していた。

 

「イメージソングを作る身としては第一高校だけを応援する訳にはいかないんですが,個人的には第一高校を応援してますね」

 

 一応,焔矢が今回作る曲は九校戦に出場する高校と選手に向けてのもの,今回は焔矢が東京にいるから第一高校を参考にさせてもらったが第一高校だけを応援する訳にはいかないというのは焔矢のいう通りである。

 だから個人的に,という言葉である。焔矢の事情も分かっている詩奈は笑った。

 

「はい,それでは私達はまだ仕事がありますのでここで」

「はい。今日はありがとうございました」

 

 詩奈たちに一礼した焔矢は踵を返し,最寄り駅にまで歩みを進めた。焔矢を見送った詩奈と侍郎も踵を返し詩奈は安堵するかのように大きく息を吐いた。

 

「はぁ…兄さんたちもいきなりこんな事を頼んでくるなんて」

「それは仕方がないんじゃないか?彼の情報がいきなり探せなくなったんだろ?」

 

 詩奈は亜夜子や焔矢の予想通り家族から焔矢に接触するように命令されていたのである。普段は兄や姉が外交の場に行く事が多いためこういった仕事は本来詩奈の役割ではないのだが今回は第一高校が舞台の為自然と詩奈しかその仕事をする人間がいなかったのである。

 別に焔矢自身は正直それほど悪い事をしている事でもないので,人の良い詩奈はそんな彼を疑うかのような事をしている事に罪悪感がそれなりにあった。

 ステージ上とは違って言葉遣いも外交用とは思うがそれなりに丁寧で,思っていたよりも人当たりも良かったから余計に感じてしまったのである。

 

「うん。彼の2ndライブの直ぐ後にパーソナルデータが殆ど見られなくなってたんだって」

 

 詩奈の身内も気になっているのはそれであり,当主に関しては四葉真夜の意味深に焔矢を庇ったことからも半ば確信しているが…今日接してみた限りではそれほど悪い人間には見えなかった事が唯一の報告出来る事か。

 

「あっ…でも校長先生と何か話してたよね?」

「ああ。音羽さんはなにやら驚いている様だったな」

 

 2人が焔矢を校内を案内していた所,普段は滅多に姿を現さない第一高校の校長百山が3人の前に現れて焔矢は彼と少し話をしていたのだが,詩奈と侍郎は百山に少し2人で話したいと言われた事もあって遠目に見守っていたのだが焔矢は百山の何かの言葉を聴いて驚いていたのである。

 

「でも音羽さんって第一高校は初めて来たって言ってたよね?」

「ああ。」

「どうして校長先生と知り合いみたいだったんだろう?」

 

 ここに来て,2人の中にはまた新たな謎が産まれてしまっていたのだった。

 

 2人にそんなうわさ話をされているとは露知らず,焔矢は個別電車の最寄り駅まで歩きながらある意味今日一番衝撃的だったことを思い出していた。

 

「まさか…紅羽さんを知ってるなんてビックリしたわ」

 

 焔矢が百山校長と話していたのは,まさかの紅羽の話だった。確かに第一高校であるならば接点はあったかもしれないが,普通ただの生徒と校長が接する機会と言うのはそうそうない。

 だが,紅羽と百山校長は色々あって知り合いだったそうで紅羽がよく焔矢の事を話していたと怖そうな顔であるにもかかわらず優し気な笑みを浮かべて話していた姿が印象に残っている。

 百山校長は,紅羽の葬式にもいたらしく焔矢の姿もそこで見ていてらしい。

 

「どこで縁が繋がるか,分からないものだな」

 

 自分と魔法科高校を繋ぐ不思議な縁にそう思わずにはいられなかった。それはそれとして,これで歌詞に必要なピースは揃った。

 

「早速帰って作詞を…なんか狙ったようなタイミングだな」

 

 気を取り直したようにした焔矢の情報端末に着信がなり,もはや昨日も同じパターンだったのでどこか呆れの気持ちもあるが,それでも嬉しくなってしまう辺り虜になってしまっているんだよなぁと自己分析をしながらもそれに出た。

 

『次の角を右ね』

 

 電話に出るなり挨拶とかではなくそう言われるのはもう完全に位置把握されているという事なのだが,もはや何もツッコむまいと思いながら言われた通り最寄り駅に向かう為の直線ではなく,角を右に曲がると黒塗りの高級車があった。

 周囲に誰もいないから良かったものを,こんな目立つ車で来られるとは思わなくてげんなりとした顔を見せてしまったが車の後部座席に座っている亜夜子が色っぽい笑みで手を振る。

 それで何となく許してしまい,大人しく後部座席に一応周囲を確認してから乗り込んだ。

 

「お疲れ様」

「亜夜子もお疲れ」

 

 そう言ってから運転手にもミラー越しに頭を下げ,それに答えた黒服も頷き車が発車した。エンジン音もタイヤの音も聴こえない滑らかな動作で動き出したことに内心スゲーと思いながら亜夜子の方に向いた。

 

「亜夜子の予想通り,だったな」

「ええ」

 

 亜夜子は言葉足らずの焔矢の言葉に”当然”とも言いたげに頷き,次に焔矢の方に微笑みながら答えた

 

「焔矢も流石ね,三矢さん相手に平常運転だなんて」

 

 三矢詩奈は幼いころから魔法研究第三研究室に通っていた事もあって魔法の戦闘力自体は高い。そう言う意味ではい出しまくってる人間ではあるのだが焔矢は亜夜子から見ても”いつも通り”で過ごしていた。

 因みに亜夜子がその事を知っているのは焔矢の情報端末に(以下略)

 

「まあ,流石に校内で踏み入った質問はしてこないだろうとは思っていたしあくまでも仕事で来ているスタンスを押し付けただけなんだがな」

 

 だが,焔矢は別に亜夜子の賞賛ほど凄い事はしていないという。なぜなら例え詩奈に自分の事を見極める命令が課されていたとしても,そんな踏み込んだ探りをしてこないだろうというのは焔矢は最初から考えていた事である。

 実際詩奈も”仕事で来ている”オーラを出しまくっている焔矢にそれ以外の質問は憚れた。それを狙っての行動で詩奈に自由に質問を指せなかったのが今回焔矢の立てた作戦である。

 

「ていうか,亜夜子。平常運転って俺が神経図太いって言ってる?」

 

 そこで先程の亜夜子の言いぐさについて思い出したかのように抗議の眼を向ける焔矢。

 しかし亜夜子は特に気にも留めていないようで肩を竦めた。

 

「実際その通りなんだから良いでしょ?」

 

 焔矢の神経とメンタルが化け物じみているのは亜夜子も散々思い知らされた後である。焔矢ももしかしたらネゴシエーターとしては優秀な部類なのかもしれないと亜夜子は割と本気で思っていた。

 相手の行動に左右されないのはネゴシエーターとしての資質の1つとも言えるからだ。…まあ,そもそも焔矢はレーベルに所属する時とかも大体1人で交渉事に当たって来たので亜夜子の見立ては間違いではない。

 

 お茶目にウインクしながら答えて来た亜夜子を微妙な眼で見ていたのだが,やがて時間の無駄だと悟ったのかため息をつく。

 それを見て諦めたのだと亜夜子も悟り話題を変えた。

 

「それで,良い歌詞は出来そう?」

 

 亜夜子が焔矢の音楽について進捗を聴いてくることは珍しく,思わず焔矢も少し目を丸くしたが興味を持ってもらえるのは嬉しいので”バカ”と形容されても仕方がないほど目を輝かせた。

 

「ああ,面白い物は色々見られたしインスピレーションも貰えた。Alter Egoらしくないと言えばらしくない歌詞かもしれないけど,良いものにするよ」

 

 本当は既に頭の中で歌詞の事を考えているのが丸わかりな様子で,子供っぽい仕草に亜夜子は微笑ましいものを見るかのようだったが内心では「ヨルちゃんは今日もお泊りね」と思っていた。

 2人はそのまま調布にあるビルに帰っていくのだった。

 

 ★

 

 約3週間後,焔矢の新曲が出来上がりレーベルを通じて魔法協会側に提出した曲は協会内で絶賛され大々的に九校戦タイアップとして世間へ公開された。

 焔矢の動向は魔法師じゃなくとも注目されていて,彼の次の試みが九校戦のタイアップということもあってハードル自体はとても高いものだったのだが焔矢は…Alter Egoはそのハードルをいとも簡単に超えて見せたのだ。

 

 だが,全ての人間が焔矢達の曲を聴いたかと言われたらそうでもなく聴いていない人間はいた。

 それは黒羽の下で,実質的に亜夜子の部下になった心だった。

 

「あの…どうして私をここに?」

 

 亜夜子と心は今,富士演習場…つまり九校戦の会場へやって来ていた。もちろん観戦しに来たわけではなく,亜夜子に関しては焔矢絡みの仕事である。

 だがそれとは別に亜夜子には焔矢の約束の為に心をここに連れてくる必要があったのだ。

 それは焔矢に頼まれた事であり,サプライズにしたい事だったので亜夜子も詳細は聴かされていない。どうやっても心に質問をした時点で心を読まれてしまうからであり,逆に文弥には何が行われるのかを話していて彼は今裏で動いている状態だ。

 

「焔矢からの頼みよ。」

「音羽君の…?」

 

 ほとんど条件反射に亜夜子の心を聴こうとしてしまったが,こればかりは亜夜子も本当に知らないので読みようがなく疑問符を命一杯浮かべて魔法科高校の選手たちが開会式を今か今かと待っているのを眺めていた。

 そんな複雑な表情を見せている心を横目に見た亜夜子は,インカムから流れてくる黒服たちにあれこれ指示をしている文弥の声を聴いていた。

 彼らは今,選手たちの真正面にあるステージの裏で…ある人物と対峙していた。

 

「やめなよ,彼を捕らえようとするのは」

 

 インカムの向こうで,文弥は焔矢を狙う輩と会話を始めていた。

 

「なんだね君は…ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」

 

 文弥の背後に付いている黒服たち,そしてジェンダーレスな格好をしているせいで女性にも男性にも見える文弥の恰好に虚を突かれたような声色で話したのは新城巳…魔法協会関東支部から焔矢に直接九校戦のタイアップを持ちかけた本人だった。

 文弥は新城巳の抗議を無視し淡々と告げた。

 

「僕達に尻尾を掴ませないのは流石協会の人間って所だったけれど,甘かったね。」

「なんの話かね?」

 

 インカム越しでも分かる位新城巳の声は震えているが,彼を捕らえるのは既に決定だった為次の瞬間新城巳のくぐもった声が聴こえインカム越しに文弥が撤収を指示しているのを聞いて亜夜子はインカムを外した。

 一応逃げられた時用に亜夜子も来ていたのだが,その必要は無くなった。

 

 弟の成長を嬉しく思いながら,どこか寂しくもあるが黒羽の次期当主として相応しい振る舞いが出来ているので子離れに近い気持ちで気持ちを切り替えていると…グラウンドに出ている魔法科高校生たちが整列し終わって,いよいよ九校戦が開幕されようとしていた。

 天気は良好,太陽の日差しがじりじりと選手たちを照らしていて,見るからに暑そうなのだが選手たちは違う意味で熱くなっているようで開会の挨拶などを聴いていて…

 

「え?」

 

 隣で心が呆気にとられたような声を出したが,亜夜子も内心では同じことを思っていた。

 開会の言葉を頂き,後は選手宣誓をすれば直ぐに競技が始まるというのがいつもの九校戦の流れだったのだが…何故か今目の前のステージには

 

「Alter Egoギターボーカル,音羽焔矢」

 

 いつものような焔を思い起こさせる真紅の革ジャケットに,黒のパンツという出で立ちの焔矢がギターを携えて魔法科高校の生徒達の前に姿を現したのだ。

 これから競技だと思っていた生徒達はどよめきを起こし,これまでの九校戦を知っている他の観客達からも戸惑いの声が溢れた。

 

 焔矢が今回の九校戦のイメージソングを作ったというのは殆どの人達が知っていたが,本人がこうして生徒達の前に現れるというのは予想外であり戸惑う声が多いのは必然である。

 だが,次の瞬間焔矢はその手に持っているギターを弾きそれらの戸惑いの声全てを黙らせた。

 

 彼の雰囲気は既に普段の人当たりの良さは無く,金色の瞳は人々に”聴け”と言っている王のようだった。

 

「こいつを思い出に聴いていけ,『The Last Resort』」

 

 次の瞬間,焔矢から強烈な想子の嵐が吹き荒れた。それはやがて炎へと変わり,焔矢の周囲に4人の姿が浮かぶと同時に焔矢はギターを弾き始め…Unlimited Flame Worksが英語の詠唱をする事なく発動させた。

 なにかが始まる予感を思い起こさせる印象的なイントロから,焔矢はマイクスタンドを力強く握った

 

「To get up! Turn up Voltage!Young blood!Now open the eyes!」

 

 まるで目の前の選手たちに話しかけるような調子の歌詞,これから熾烈な争いを繰り広げる選手たちに向けての焔矢なりのメッセージ。

 

「we are the king!Still No.1.Burn it dawn!Now king is back! Hell year!!」

 

 瞬間,焔矢の代名詞でもある大気をも震わすほどの圧倒的なシャウトが放たれ否応なく生徒達も,観客たちの視線も焔矢達に集まった。

 

 今回の焔矢の楽曲の名は「The Last Resort」,頼みの綱や…焔矢は「最後の切り札」という意味で付けたいつもの世紀末観とした曲ではなくただ純粋に熱く激しく,聴く人間全ての闘争本能をかきたてるような曲へと仕上がっていた。

 ある意味青春系の曲とも言えるが,それでAlter Egoらしさが失われたと言われればそうでもなく寧ろ新たなAlter Egoの可能性を見せつけたと言っても過言ではない。

 

 

 ——掴み取る為の切り札

 

 

 この曲のテーマは”セオリーはぶち壊すもの”であり,元々焔矢達の音楽はあまり受けない音楽性である。それは口が悪いからとか軽音楽を使っているからだったり色々な理由がある。

 その中に”当たり前”の事をしていないからというのもあり,いわゆる邪道とも言える事も平気でしている。焔矢達はその邪道とも言える音が必要だから取り入れているだけであり焔矢達からしたら別に邪道でもなんでもないのだが,それが世間の人間には許容されないのが普通である。

 

 だが,今現在焔矢はオーソドックスなものも邪道でも取り入れ圧倒的な技術でその人間達をねじ伏せていく。

 人受けしやすい音や歌詞なんて入れないし,焔矢達の音楽は精神に直接音を叩きつけるというUFWの性質も合わさって究極の音楽の押し付けと言ってもいいかもしれない。

 そうして押し付けられた人間は,その音の虜になっていくのである。

 

 

 ――突き抜けろ時代を 予測可能な未来? つまらねえだろ 

 

 

 それは,一部を除いた魔法科高校生も同じくでありあっと言う間に心を掴み取り全員が聴き入るように焔矢達の音楽を聴く。

 薫の常にアップテンポで,まさに駆け抜けるような爽やかさと熱が入り混じった音に聡の思わず聴くものを自分達のテンションに乗せるようなベース,そうして乗せられたテンションを更に豪快に上げる大地のドラムに,零士の霊体だからこそ出来る千差万別のキーボードの重なり。

 

(…っ!)

 

 Bメロに移る最中,焔矢は薫のギターの音がアドリブによって新たなアレンジが加えられたのを聴き知らず知らずの内に口角をあげた。

 

(上等!!)

 

 焔矢は薫に合わせるように更に激しくギターを動かし,如実に今配信されているこの曲と違う事を示し始めた。他のメンバーはギター同士で喧嘩し始めた2人を笑って見て…2人のギターが盛り上がるようなメロディーに急遽変えた。

 だが,それは到底その場で合わせたと思えないほどの完成度で2人のギターがどんな音を出すのかが分かっていなければ出せないような爽快感と疾走感がかけ合わさった音だ。

 

 観客達にも,焔矢達がこの曲のセオリーをぶち壊したことが分かった人はいてそれは亜夜子だったり音と音の連なりから予想した心だったりしたが,彼女達はそれが失敗という考えはなかった。

 確かに今のツインギターは,亜夜子も予め聴いていたものと違ったが違和感も無く寧ろ良くなっていた。

 

 

 ——取り戻していくための切り札

 

 

 そこで,心にとって自分の中に来る歌詞…まるで焔矢は心に自分の音を取り戻せと言っているようなフレーズに心は一瞬胸がぶわっとした感動にも近い感情が沸き上がった。

 今回の曲は,焔矢にとって九校戦のタイアップ曲であると同時に心の音楽を取り戻すための曲でもある。

 

 

 ――塗り替えろ世界を セオリーぶち壊してく道だってあんだろ?

 

 

 世界への宣戦布告という音羽焔矢の音楽の在り方が,これでもかと練り込まれている楽曲であり九校戦のタイアップ曲,そして心の音楽の破壊という目標と…Alter Egoの音楽性が見事にマッチした楽曲である。

 

 

 ――何度でも刻み付ける ”約束”と”誓”を 守り抜くための切り札

 

 

 一番は九校戦に参戦する生徒達に向けて,二番は心に向けて,そうして最後は 自分と紅羽,そして自分と仲間達の”世界を変える”と言う焔矢の決意と覚悟を示した文言。

 世界を変える為の,焔矢達の音楽と言う名の最強の切り札がまた新たな1つの曲となって――聴くもの全てを圧倒した

 

「…あ…うぁ…」

 

 亜夜子は,隣で色々なものを感じたであろう心が涙を流しているのを横目に見ながら会場全ての人間が割れんばかりの拍手をしている相手であるステージに立つ焔矢を見て,静かに微笑んだ。

 

 

 




お疲れさまでした!

心は結局亜夜子の部下になるという事で落ち着きました。文弥で言う有希みたいなポジションですね。こんなヤバすぎる能力を見逃す手はないよねって感じです。
心的には一度は好きになった人の部下になるとかいう状態なのですが,折り合いをつけて生きてもらおうかなと思ってます。
ついでのように新城巳が捕まっていますが,新城巳捕縛劇は大して重要じゃないのであっさり終わらせました。彼がどうして捕まったのかは次話で明らかにするつもりです。

そして焔矢達の音楽は「究極の押し付け」と形容しました。耳を塞ごうが平気で人の心にズカズカ入って荒らしていつの間にか好きになっているみたいな感じです。

あとがきはここまでで以後超長い今回の楽曲の歌詞と,イメージサウンドです。物語に直接つながるような事は書いていないので気が向いたらでどぞ!


初めての挑戦としてAIの力を借りながらやったので違和感満載かもしれませんが焔矢の音楽のイメージがどんなものかが気になった人は,是非歌詞を見て曲を聴いてみてください!焔矢のCVではなくただのイメージですのでそれはご了承ください。


焔矢達の新曲,The Last Resortは元になった曲の歌詞を少し弄らせてもらって新たに私が書いた歌詞になります。作曲はAIが提示してくれたものから一番イメージに近いものを選びました!
以下の楽曲名をクリックすれば聴けるようになってます。

[The Last Resort]

どのお話見たい?

  • 達也&焔矢(UBW強化話?)
  • 空澤&焔矢(亜夜子についてあれこれ話す)
  • 貢&焔矢(修羅場)
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