魔法科高校の劣等生 黒羽の姫と焔の絶対王者   作:レオ2

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はい!
そんな訳で,言ったように今回のお話では焔矢は出てきません。亜夜子オンリーです。
といっても裏側の話でもなく,学友たちとの集まりのお話です。オリジナル設定がありますのでご了承ください。

では!


制御不能な心

 国立魔法大学——全国に9つある魔法科高校の卒業生或いは魔法の分野で何か突出しまくったものだけがその門をくぐる事が出来るといういわばエリート中のエリートの魔法大学。

 ここに通う生徒達は,大なり小なりが日々魔法を研鑽し,研究し,その才能を世界へ遺憾なく発揮させる為に通っている。

 

 しかし,年頃として他の大学生と変わらない年代の生徒達だ。

 例え魔法が使えたとしても,彼らの精神性までが進歩する訳ではない。十師族…その中でも四葉家のような家庭じゃない限り魔法という才能を持った普通の大学生が多い。

 否,なんなら魔法を使えるという事だけで一般人とは違うという優越感を持つ人間もいるが。

 

 そんな訳で,学友たちとの集まりというのも恐らく周りから見れば平凡な大学生集団に見えるのだろうなと亜夜子は集合場所に既に集まっていた5人の人達を見ながら思っていた。

 集合5分前だが,彼ら彼女らは楽しみにしていたのか亜夜子が来る前から集まって話していたらしくその顔からは楽しそうな雰囲気が伝わって来た。

 

「あ,黒羽さん」

「遅くなって申し訳ございません。お待たせしましたか?」

「いやいや,全然待ってないっすよ。」

 

 集合5分前なのだから本来亜夜子に謝る義理はないのだが,形式として一応謝罪すると男子生徒…亜夜子の姫グループのリーダー格の男が滅相もないと言った様子で首を振った。

 彼は魔法大学内ではそれなりの実力者,九校戦にも出ていた事がありそれなりの家のものだ。ただ,家柄のせいなのか彼の問題なのか,若干人を見下す嫌いがあって亜夜子は正直余り一緒にいたくない。

 ついでに言うと,偶に亜夜子を卑猥な眼で見てくることもあって余計に。

 

「今日はどちらに行くのでしょう?」

 

 しかし,亜夜子はそんな態度はおくびも出さず至って平常運転で今回のお出かけ…女性3人男性3人の集まりを提案したそのリーダー格を見ると彼は亜夜子に見られたことに照れたような反応をしながら胸を張った。

 

「今日はスポッチャに行こうと思ってます!」

 

 スポッチャ…現代においてもある様々な屋内スポーツが出来る場所であり一種のアミューズメントパークだ。

 スポーツだけでなくカラオケやダーツなどと言った遊びもある所が多く交流するにはうってつけの場所だと彼は考えたのかもしれない。

 ただ,亜夜子は誰にも気がつかれないように眼を細めた。

 今日の予定に関しては,服装を考える事もあって予めそれとなく聞いておいたのだが彼は”秘密”の方が楽しいからとか言う子供っぽい理由でそれを教えてくれることはなかった。

 

「それは楽しそうですわね」

 

 だから亜夜子は普段通りの清楚な大人らしいファッションで来たのだが,逆に言えば動きにくい恰好とも言い換えることができる。

 スポッチャで遊ぶと分かっていたのなら,それなりに動きやすい服装で来ることが出来たのに彼が変な感情で隠したせいで早速亜夜子の気分は沈んでしまっていた。

 見れば,他の女性二人も意気揚々としている男性を戸惑ったように見ていた。彼女達の恰好もロングスカートだったりするので動きにくいのだろう。

 

(焔矢なら,こんなミスしないのにね)

 

 そこで亜夜子は婚約者の事を考えた。

 焔矢は基本的に女性の扱いと言うのはどちらかと言うと下手な分類に入る。エスコートも苦手だし,女心が分からない時の方が彼には多い。

 だけど,それでも亜夜子は焔矢の方が評価が高かった。

 

 これは四葉と焔矢の関係の問題もあるのかもしれないが,基本的に焔矢は亜夜子に隠し事を余りしない。彼はプライベートも,そしてその思考に至る考えも亜夜子にはしっかりと話す。

 昨日のようにお墓参りに行く事をサプライズのようにするのではなく行っても良いのか普通に聴いて来るし,彼は自分の中で自己完結するのではなく言葉として亜夜子に伝えるのだ。

 

 プライベートの事は監視しているからだが,内面の事についても彼が話すのは恐らく両親や仲間が死んだことが尾を引いているからだと亜夜子は思っている。

 夢に向かっていた途中で,いきなり全てを失った彼はいきなり誰かがいなくなってしまう事を怖がっている節がある。だから生きている内に,自分が伝えたい事を伝える癖のようなものが出来たのかもしれない。

 彼が亜夜子に対して珍しく黙った事があるのは,心に九校戦の場での新曲を悟らせないために秘密にしていたあの時位だろう。

 ただあれだって心の能力のせいで驚きが半減してしまうのを防ぐためだった。

 

 そんな何事も真っすぐ言葉として伝えてくれる焔矢は,亜夜子にとっても一緒にいて心地いい人間だ。

 彼と比べた時,目の前の男は品格も性格も劣ると思ったのだ。

 

「ふぅ…」

 

 そんなこんなで,亜夜子の中での格付けが男性陣中心に最低に成り下がらせながらもスポッチャでグループは遊び始めた。

 ただし,亜夜子が人心を掌握する事で激しく動くような遊びはやんわりと断り余り激しく動かないような,それでもそれなりにウケが良い遊びを中心にグループは親睦を深めていた。

 

 そんな中,亜夜子はスケートで遊んでいる女性陣と,2人の男性陣を眺めながら1つため息をついた。

 彼ら彼女らは,今日は合コンでもしに来たつもりだったのか何やら良い雰囲気だ。

 というよりも,最初から今日はそう言った雰囲気になるであろう集まりなのは予感していたのだ。男女3人づつの集まりなど,男性陣に…或いは2人の女性に下心があると言われても仕方がない人数比だ。

 

 亜夜子が今回この集まりに来たのは,焔矢に言ったように学内での情報収集を担当するからであり出来るだけ遊びの誘いは断らないようにしている。

 今回の集まりだって,元はと言えばあの今スケートリンクで良い感じになっている女性陣達に誘われてきたのだが…そこに男性陣がいる事は2日くらい前に知った事だ。

 そしてその指図をしたのが…

 

「黒羽さん,よかったらこれどうぞ」

 

 さっきのリーダー格…因みに言っておくとこのリーダー額というのは亜夜子がヒエラルキートップの姫グループの中での自称亜夜子の側近を名乗っているだけであり,亜夜子自身はそんなもの任命した覚えも無ければ彼が勝手にリーダーを名乗っている事にも辟易としている。

 

 そんな彼が差し出してきたのは自販機で売っている水であり,遊んでいて喉が渇いたであろう亜夜子を気遣ったであろうものだった。

 

「お気遣いありがとうございます。わたくしは水筒をもって来ていますので,どうぞご自分で飲んでくださいな」

「あ…そうです,か」

 

 しかし,亜夜子は遠回りにそれを辞退した。元より他人がどこからか持って来たものに口を付けるなど言語道断だ。

 少なくとも裏の世界で生きて来た亜夜子にとってはそうで,彼はもしかすると善意100%なのかもしれないが悪意100%の可能性もある。

 中身が睡眠薬とか媚薬とかならシャレにならない。…まあ,その場合彼の家を四葉が破壊するだけなのだが。

 

 亜夜子は彼に見せるように小ぶりな水筒を見せつけ,少し口を付けた。

 そうしていると,スポッチャ館内で流れていたBGMが変わり始めなんとなしに亜夜子は隣の男から眼を背けるついでに耳を澄ませた。

 

(…あ)

「あ,この曲俺知ってますよ」

 

 いきなり変わったBGM…その特徴的な爽やかさの中に重みのある音は間違いなく今年の…そしてこれからの九校戦イメージソングとなったであろう”The Last Resort”だった。

 流石に九校戦始まって以来のタイアップ曲だったというのもあって,OBである彼も九校戦はチェックしていたのかもしれない。

 シングルオリコンチャートで1位を記録していたし,九校戦のイメージソングになってるからかこのスポッチャでもBGMとして取り入れたのだろう。

 亜夜子は目の前のスケートリンクで遊んでいる若者たちの方へ目を向けると,驚いたことにBGMが焔矢の曲に変わった瞬間にピタリと人の動きが止める人がちらほらといた。今までにないBGMだったのでビックリした人かもしれない。

 音羽焔矢の…Alter Egoのサウンドはこんな大勢の人達の動きも止めるのだと亜夜子は知って人知れずその口元に笑みを浮かべた。

 

「そうだ,次はカラオケに行きましょう!」

 

 そこで何を思ったのか,隣の男はそんな事を言い出した。

 彼は亜夜子の答えを聞く前にさっさとスケートリンクに入って残りの4人の所へと行ってしまった。

 自分が今回の集まりを企画したことにプライドでもあるのだろうか,亜夜子がいても彼は強引に物事を進めようとするきらいがあった。

 どうして焔矢よりも年上なのに対応はこんなにも酷いものなのか,辟易としてしまうのは仕方がないと亜夜子は割と本気で思っていた。というか,そもそもまだそれほどの関係値を築いていないにもかかわらず密室にならざる負えないカラオケに行きたいなど言語道断だろう。

 これが焔矢なら,,彼の場合は亜夜子を卑猥な眼で見る為ではなくただただ歌いたいからって言うのを知っているしそもそも焔矢と密室でいることなんてもう日常茶飯事な為なんとも思わない。

 

 結局,亜夜子を含めた6人はスポッチャの中にあるカラオケに行く事になったのだが…本日亜夜子の機嫌が悪くなってしまった最大の要因はここだったかもしれない。

 今時のカラオケは全自動のセルフなので,セルフマシンに指示されたルームへ行き歌い支払いもセルフで行う完全自動型へと変わっている。

 その為,彼ら彼女らはカラオケに入るまでに誰とも会う事なくルームに入った。

 

 カラオケを利用する際の手順などは色々変わってしまった所があるが,醍醐味である歌うまで変わった訳ではない。そして,それなりの人数でカラオケに来た時の1人目にかかるプレッシャーと言うのも多分変わっていない。

 亜夜子も高校の同級生との付き合いでカラオケに来た事はあったが,あの1曲目誰が歌う?みたいな間は正直苦手だ。亜夜子が好きな音楽の趣向としては,当時は恋愛ソングだったりしていたがそれを歌うのは気恥ずかしかったからとんでもなく無難な選択ばかりしていた。

 

「はいはい!じゃ,俺一曲目やりまーす!!」

 

 だが,良かったというべきなのかリーダー格の…以降A君は亜夜子とカラオケに来られた事がよほど嬉しかったのかトップバッターに名乗り出た。

 彼が曲を選んでいる間に,女性陣はドリンクバーで飲み物を入れて部屋に戻って来ると男性陣は何かの話題で盛り上がっていたのか…下賤な眼をしていたのを亜夜子は見逃さなかった。

 

「じゃあ女性陣の皆さんが帰ってきた所で,この曲を歌おうと思います!」

 

 そうして彼が一曲目に選んだのは,まさかの"The Last Resort"…つい先日楽曲追加されほやほやのものだった。

 さきほどスケートリンクでも流れていたからか,それとも後輩たちの事で知っていたのかこの曲を知らない人間はこの場にはいなかった。

 まあ,そうじゃなくとも焔矢の動向は音楽業界に留まらず今や魔法師界隈でも注目されている人間なので当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。

 

 閑話休題

 

 亜夜子自身は普段は余り音楽を聴かない側の人間だ。それこそ聴くとしても,世間を賑わしている恋愛ソングだったりするくらいだ。

 だが最近に限って言えば焔矢達の曲をこっそりと情報端末にダウンロードして,1人の時に聴くことをしている。焔矢には言っていない亜夜子の秘密だが,最近の亜夜子の趣味は焔矢の曲を聞いて「この歌詞はこういう思いだったんだろうな」とか,焔矢がその曲を作った過去についてあれこれ考えを巡らせることである。

 

 そんな訳で,亜夜子は焔矢の楽曲限定で言えばエキスパートとも言える。婚約者の歌声は,自分が一番聴いているという自負もあった。

 だからこのA君が歌うThe Last Resortは…凄まじく違和感しかなかった。

 

「ふぅ,どうよ」

 

 本当のThe Last Resortを知っている亜夜子に言わせれば違和感以外を感じなかったのだが,カラオケという普段は来ない場所に来た弊害なのか亜夜子以外の少年少女——大学入りたてなんて少年少女である――達は拍手を送っていた。

 亜夜子も場の雰囲気を壊さない為だけに拍手はしておいた。

 

 しかし,それが良くなかったのかA君はだらしなく頬を緩め席に座りながら…今の亜夜子にとって禁句とも言える話題を繰り出した。

 

 

「それにしても,音羽焔矢って調子乗ってるよな」

 

 

 …亜夜子は素で彼が何を言っているのかが分からず,思わず顔が睨み聞かせそうになってしまったのを懸命に耐えた。

 その甲斐あってか,亜夜子の変化には気がつかなかったA君がその言葉の真意をあっさりと話した。

 これまで音羽焔矢を肯定する人間を多く見て来た亜夜子にとって,彼のその言い分は凄まじく腹立たしいものだった。

 

「なんだっけ?Unlimited Flame Worksだっけ?あんな凄い魔法がなんであんな奴に使えるんだ?他の魔法を使えない癖に」

 

 元々亜夜子はこのA君に対して高い評価をしていた訳ではない。寧ろ卑猥な眼で見た事があるという点や,自分と接点を無理やりにでも作ろうとしてくるのは苦手だったとも言えた。魔法の成績が優秀?んなもの自分や達也,それに深雪とかと比べたら屁でもないだろう。

 だから,この一言だけで亜夜子のA君に対しての評価は奈落の底に沈んだ。

 亜夜子の心の冷気が凄まじく下降している中,雰囲気がそうしてしまっているのか彼の酔いは続いた。

 

「それに今時ギターとか時代遅れだろ。歌詞も”世界に反抗している俺かっけー!”みたいなの?音楽でしか吠えられないだけだろ」

「あ…黒羽さん?」

 

 亜夜子の向かいに座っていた女性が,唐突に立ち上がった亜夜子を訝し気に見る。自分に酔っていたA君も亜夜子が立ち上がったのを見て焔矢に対する戯言を止めて彼女を見上げた。その顔は戸惑いしかないものだった。

 亜夜子の真正面に座っていた女性は,亜夜子の表情が感情の一斉籠っていない仮面を被った偽りの笑顔をしているように見えた。ただ,顔は笑っているはずなのにその下の絶対零度を感じて背筋が凍り付いた。

 そして,その考えに違わず亜夜子は普段よりも数段低い声でわざとらしくスマホ型の情報端末を見せた

 

「皆様申し訳ありません,文弥から連絡が急遽入ったのでわたくしはこれでお暇させていただきます」

 

 嘘である。

 文弥から連絡が入ったなどそんな事はない。言うまでも無くこの集まりから抜ける為の口実だった。

 これが亜夜子になんの後ろ盾もない家の子女であればA君は引き止めたかもしれない。

 

 しかし,亜夜子は四葉の一員だという事を知らない者はいない。それに文弥という弟がいることも当然知っている。

 よほどの馬鹿じゃない限り亜夜子を引き止める人間はいなかった。

 

「あ,えっと…黒羽さん。もしかして今のご気分を悪くされました…か?」

 

 亜夜子の出す余りの冷気に,A君は何らかの地雷を踏んでしまったのではないかと戦慄し恐る恐る亜夜子に問いかけた。

 だけども,亜夜子は見惚れる程にこりと妖しい笑みを彼に向けて…A君は金縛りにあってしまったかのように動けなくなった。

 亜夜子の出すプレッシャーに,彼が飲み込まれたのだ。

 

「なんのことでしょう?わたくしはただ,文弥に呼ばれたから帰るだけですよ?」

 

 そう言って,亜夜子は残りのメンバーにも軽く謝罪した後1人スポッチャを出て早めの帰路についたのだった。

 元々今日は晩御飯までが集まりのワンセットだったのだが,既に亜夜子にそんな気はなくしていた。

 それどころか一瞬でもあんな人間と同じ場所にいたかと思うと寒気すらも覚えた。

 

 A君自身は,もしかしたら亜夜子と遊んだことで勝手に心の距離が近づいたかと思っていたのかもしれないが,人の…それもよりによって焔矢の事をダシにして場を繋げようとした事に憤りを覚えた。

 なにかをやらかしている人間なら兎も角,焔矢に関しては別に何も悪い事をしている訳でもない。

 彼は,ただUFWという唯一無二の魔法を使える焔矢を妬んだのか,それとも年下ながら音楽で成功している事を妬んでいるのか…どちらにせよ亜夜子はもう彼には近づかない事に決めた。

 

「はぁ…私,最近自制心が無くなってる気がする」

 

 昨日の夜と言い,今日の事と言い亜夜子にしては珍しい感情に従った結果を見て自分の事をそう自己評価した。

 焔矢の事となると最近はいつもそうで,もちろん焔矢が好きだという自覚はある。

 彼といると,達也に失恋した時点で自分には訪れないであろう恋を彼は再び思い出させてくれたのだから。

 だけど,だからだろうか…焔矢の誓も,背負っている覚悟も知っているからこそさっきの軽薄な言葉を許せなくて,聴きたくなくてつい嘘をついて出て来たのだ。

 

 「焔矢の事何も知らない癖に」

 

 余りに腹立たしかったため,ついそんな言葉が飛び出してしまう。

 それ位亜夜子にとって焔矢は大切な存在であり,馬鹿にされたくない人である。

 というか,そもそも焔矢の曲を何を思ったのか歌っておいて,その焔矢の事を侮辱する等一体あの人はなにがしたいのかと思うし,そもそも焔矢が世間の表側の理由としてのUFWの会得理由は既に2ndライブ後の記者会見にて明らかにしている。

 その神秘的な現象も相まって,奇跡の魔法として知られている。

 なんでUFWを使えるか?そんなもの使えるから使えるとしか言いようが無いに決まっているだろうにと。

 

 多分…もしも焔矢との関係を胸を張って公表出来ていたのなら,こんな事にはならなかったのかもしれない。

 別にまだ婚約関係を発表していないこと自体は亜夜子も焔矢が未成年なのもあって何の疑問持っていなかった。隠すのも理由としては分かるつもりだった。

 だけど,焔矢の何が気にくわないのか彼を侮辱する人間が当たり前だがいることに亜夜子は言いようのない悔しさを覚えた。

 

「ほんと,なんであんな人もいるのに」

 

 そして,同時に焔矢ならこんな事はいちいち気にせず取り合えず歌うんだろうなと考え思わず苦笑した。

 焔矢は新城巳のような最低な人間がいたとしても,それでも歌うと彼は言った。全員が全員,焔矢のファンという訳ではない。

 そんなものは当たり前で,焔矢はそれでも歌う事を止めないと言うのだろうと思うとドライな性格をしている亜夜子にしてみれば”どうして”となる。

 

 それでも歌うという焔矢に呆れてしまうのは仕方がないのかもしれないが…そんな焔矢の事を悪く言われてどうしようもなく苛立った自分も,彼の事が好きなんだと突きつけられているようで苦笑いしてしまう。

 そんな事を考えていたせいか,亜夜子はさっきのA君の事なんて頭の中から追い出して今日の晩御飯は何にしようかと献立を考える事にした。

 

 そうして焔矢との事を考えている亜夜子の表情は,先程の集団にいた時とは違いどことなく楽しそうなものだった

 

 

 

 ——因みにだが,このA君は1年修了時学業の単位を取る事が出来ずに無事(?)に魔法大学を退学した。

 元々素行が悪かったらしく,大学生になった解放感か何かで勉学を怠けていたからである。

 彼が焔矢の事を貶そうとした理由は,結局分からずじまいである。

 

 

 

 

 

 

 




お疲れさまでした!

亜夜子が焔矢の事を悪く言われて心の中でブチ切れるお話でした!
A君のキャラ設定とかないですが,まあ大学によくいる無駄に自尊心が高いのに実力が伴っていない人間をイメージしました。
A君が焔矢を貶した理由は,これもよくある名前が売れている人間への妬みです。焔矢の場合は自分よりも年下で,固有魔法が使えるというだけで世間にもてはやされている事が気に入らなかったのでしょう。その割に曲は気にいっているとか言う意味分からん人間です。

そして,亜夜子は最近焔矢の事になると自制心が無くなって衝動的になってしまう自分の事を苦笑いしてます。焔矢への好意の裏返しです。普段の亜夜子なら帰って愚痴るだけでその場では耐えるくらいはします。



はい!ここからはあとがきではないんですが,夜の帳の新刊が出ましたね!今回もお話のイメージが広がる良いお話でした!
亜夜子のピアノ伴奏する際のスタイルが分かったのも良かったですし,亜夜子が社交場によく行くイメージがついたのでせっかくなら使わせてもらおうと考えを練っています!楽しみにしてくれていたら嬉しいです!
では,また次回!

どのお話見たい?

  • 達也&焔矢(UBW強化話?)
  • 空澤&焔矢(亜夜子についてあれこれ話す)
  • 貢&焔矢(修羅場)
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