星界の輪廻   作:oosima

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今回、主人公の過去の話が出てきますが、パロディも交えつつも政治とかのブラックな要素が出てきます。


010 勘とは自覚の有無や距離を超える時がある

 ○帝国暦943年1月5日昼 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) 某宙域 技術特区 地球 コペルニクス区 コペルニクス工科大学 某食堂○

 

「…いやー、研究に参加していればここの食堂へのフリーパス券を在学期間中貸してもらえるなんてよかったねーガルマ」

「そうだねー、帝国ドイサック産スイートポテト使用の甘藷アイスクリームも含めて無料で食べられるもんねアスラン」

 

 ドゥリュースの脳裏に浮かんだ6年前のその記憶の中で、その時の彼が過ごした地球の良く入り浸った食堂で友人のアスランは、同じプラントから来ている同年齢の友人ガルマと共に昼食をとっていた。

 ガルマは青紫色の髪が特長的で、アスランと同じコーディネイターだけあって幼さと共に整った容姿をしていた。

 

「あー、アスラン、こっちにいたんだ」

「あ、こんにちわーリュースー(ドゥリュース)、そっちも終わったんだ」

 

 当時7歳のリュース(ドゥリュース)がガルマと出会ったのは、アスランと共に彼が昼食をとっていた時のことであった。

 

「ん? そっちの子は…?」

「ああ、こっちは文系のゼミで同じ科目を選んでる友達のガルマでー…」

(…え? 何で種だけじゃなくてファーストの方のキャラまでいるの―――!?)

「何故我々コーディネイターはここまで搾取と抑圧に苦しまねばならぬ!?」

「―――お…え!!??」

 

 始めて見るこの世界のガルマにリュース(ドゥリュース)は気にかかり、その名をアスランから聞かされて内心で慣れた引き攣りを覚えたが、残念ながらそれを強めさせてくる演説が急に響いてきた。

 

「…え!? 何この大きなマイク越しの演説…?」

「あ、兄さんだ」

「……え…!?」

 

 それに驚いた顔を見せたアスランに対してガルマがなんなく呟いたその単語に、リュース(ドゥリュース)が嫌な意味で確信に近づかせられている感覚を覚え、恐る恐る窓辺に近づいて窓の向こうを見やると、そこから見える大学の公園には結構な数の人だかりとそれに囲まれた選挙カー、それに乗ってマイク越しにキレのいい演説をしている20代の大学院生と思わしい青年の後ろ姿があった。

 

「…何故我々コーディネイターはここまで搾取と抑圧に苦しまねばならぬ!? 大半が堕落し嫉妬と恐怖に支配されたナチュラルのナチュラルによるナチュラルの為の衆愚政治の場と化した銀河連合にもはや存続の価値など無いというのに!」

(…お、おい…この内容って…あのギャグマンガ系スピンオフとかじゃないけど…まさか―――)

「敢えて言おう! 我々コーディネイターにとって銀河連合などもはやカスであると!!」

「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」

(―――あってやっぱニートじゃないけど総帥じゃないかアアアァアアアァ!!??)

 

 そして、そのきめ台詞的な演説の最後と同時にこちら側に向けてきた鋭い悪人風味ながらも整った顔を見て、リュース(ドゥリュース)は内心では公園より上がる歓声に引けを取らない絶叫でその悪い意味での確信に至った。

 これが当時コペルニクス大学の理学部先駆者(フォアランナー)技術遺物研究学科大学院生である23歳のギレン・ザビと、リュース(ドゥリュース)の邂逅の切っ掛けになった出来事である。

 

「いやー! 彼は本当に凄いです! 今回の演説する予定のミガル氏が急病で立てなくなったから代わりを探していたら立候補してきたので…半分やけっぱちに代打として立たせたらまさに演説と人心掌握の天才ですよー」

 

 ちなみに、その演説の様子を大学に近いプラント系移住者の区域より見守る一団がいた。

 

「………」

 

 ギレンの演説に周囲が好感触を見せている中で、その一団に混じる当時のシーゲルは彼の主張に幾つか共感を覚えつつも危険さもまた感じていた。

 ちなみに、シーゲルたちのいる事務所の別の一室にも人だかりが出来ていた。

 

「…いやー! 今回のプラントのコロニーの各市責任者選挙はあんたらここ地球に赴任している面々の票が無ければ危なかったよデギンさん!」

「はっはっは、そんな大したことはしとらんって」

 

 当時のリュース(ドゥリュース)は知る由もなかったが、プラントの地球派遣組の取り纏め役にして現地の先駆者(フォアランナー)遺跡を調べる考古学者とそこのロスト・テクノロジーの研究者をしていた、デギン・ソド・ザビの姿がそこにあった。

 彼に感謝しているのはプラント本土から来た自治拡大要求運動のメンバーであるが、その顔には苦労の色も浮かんでいた。

 

「グレンさんは人の悪意に警戒心なさすぎ、ダイクンさんは理想を追い過ぎ、シーゲルさんは温和過ぎ、パトリックさんは強硬すぎるんだ。自治とか独立とは言っても経済は銀河連合に依存していて且つBETAなんてものがあるから防衛面では協力して折り合いをつけないといけないし、科学技術とかでも帝国にはまだまだだし…あの四人もその辺りがわかってくれれば…アンタも加わってくれたらと思うと…」

「そんな事を言っても政治家なんて柄じゃないと思うんだがなあ…」

 

 後にリュース(ドゥリュース)はこのやり取りを知って、ぜひともデギンにはそのまま政治に興味がない、太っているが懐の良いおっさんのままでいてほしかったと何度も願ったりもした。

 

 

 

 

 

 ○帝国暦949年4月11日夕刻 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) スュルグゼーデ王国 ウルス大公国 惑星サンヘリオス軌道上 衛星クィコスト スュルグゼーデ修技館(ケンルー)近隣 商業都市ヒェーデル コゼル商店館(イレーヴ) 伽藍の堂○

 

「…何というか、君って平穏なままでいた方が巻き込んだりする人を増やさずにいる人と縁ができやすい体質というか…」

 

 時は戻って6年後の現在、後から聞いた知った話も加えたその話(前世知識系のネタは省いてはいるが)をドゥリュースから聞かされて、レイカは微妙そうな顔を向けていた。

 

「それは言わないでよ…何度も言われて気にしてるんだから…」

 

 そのレイカと共に今宵の夕食の準備を進めていたドゥリュースは何とも言えない表情になっていた。

 

「レイカ様、貴方の御荷物がこちらに届きました。あとの夕食の作業はこちらでしますのでお荷物の方をお願いしてもいいですか?」

 

 そんな所で、ある漫画の神様のSF系作品で人間味の強いロボットとして有名である、ロビタの伽藍の堂所属の個体が加わってきた。

 

「あ、ありがとうロビタさん」

 

 そのロビタが持ってきた荷物を見てレイカは台所から離れるが、荷物を見てドゥリュースは意外そうな顔を浮かべた。

 

「スポール宗家って所持品には質も物も費用を掛けている場合が多いけど…何かレイカには質と趣味は良いけど量は良くて普通かそれより少し少ないって感じがするね…」

「敢えてものを少なくして認識の範囲内をスッキリさせた方が本当に欲しいものが見えてくるかもしれないでしょ。実際に私もそうだったし」

「へー、何か深いなぁ…で、その欲しいものって何…!?」

 

 レイカのスポールらしくない特徴とその言い方にドゥリュースは感心したような顔を見せつつも疑問も軽く口にするが、その直後に彼女の手からすっぽ抜けた紙テープが台所の一角で泡立っている中華鍋を一つ揺らして熱い油の飛沫を幾つか飛び散らせた。

 

「のわ!? ちょ…注意力が機械甲冑機(ソウォーヴィ)を動かしている時に比べて鈍くない?」

「ごめんなさい。知力は首切り包丁のように大きく鋭くても女心には冷凍果実並みに甘くも冷たい男性の知り合いのことを急に思い出してたらつい…」

「……っ!? あ、はい…何かよくわかりませんけど…すみませんでした…」

 

 油の飛沫は空識覚(フロクラジュ)があるので難なく避けたドゥリュースだが、続けてレイカが静かな笑みと同時に向けてきた静かだが重い威圧感は避けきれず、それを浴びせられる直前に覚えた悪寒もあって陳謝を口にするほかなかった。

 

 

 

 

 

 ○銀河連合圏内 大星洋連邦 某保養惑星○

 

 国力という点に比べれば帝国には大きく差を付けられているが、銀河連合圏内に置いて最大を誇るのが大星洋連邦(たいせいようれんぽう)である。

 地球時代における銀河系の自由と民主主義の擁護者を名乗っていた国を起源と主張し、現在でも同じ理念を掲げる国々の盟主として(内心は色々あるが)自他ともに認められるその国は、自由主義経済で得た富を象徴とする保養惑星が幾つかあった。

 

「…全く、プラントに投資した分が守られたのは良いですが…」

「今度は別の問題が出てきましたなぁ…」

 

 ドゥリュースが悪寒を感じつつもが夕食の準備を進めている頃合いにて、そうした保養惑星の一つにある現地時間では昼になっている高級ホテルの大広間にて特上の礼服に身を包んでいた男達が集まっていた。

 彼らの視線の先には、プラントに侵攻してきたBERAとそれを迎え撃つザクウォーリアの姿が映し出された画面があった。

 

「…ところで例のBETAを腐るほど無力化したという例の兵器は何かね? 君なら何か知っているのではないかジブリ―ル?」

 

 その男達の中に同様の格好に身を包んだジブリ―ルの姿もあった。

 

「元よりあそこはトロント星系に飛来したBETAの着陸ユニットより抽出されたG元素の研究も依頼されていました。彼らの能力を考慮すれば大星洋連邦にあるノイマン研究所のものより進んでいる結果の1つかと…。どうやらBETAの個体ならば程度の差はあれその体内に持つ()()()()の活動を意図的に暴走させて内部から細胞破裂を促すと言うものらしいです」

 

 そう語り返すジブリ―ルの背後には、先日におけるプラントとBETAの戦いで後者の大半を絶命させた兵器の映像が映し出されていた。

 

「…だとすればあれは今現在の大星洋連邦で実験中の()()()()を使用した爆弾と同類か? だがそうだとすればー…?」

 

 それに男達の何名かが機嫌の悪そうな顔を浮かべた時、机上がカタカタと鳴らされて彼らの視線はその音源が向けられる。

 

「皆さん、何をそんな後で考えればいいことを考えているのですか? 今はその我々が無視できない兵器が何の手にあるかが重要でしょう?」

「…ムルタ…」

 

 その机上を鳴らす指をカタカタ動かしているのは、短い金髪と整っているが人を小馬鹿にした雰囲気が強い面貌をし、実年齢よりもかなり若々しい風貌をした、ムルタと呼ばれた男であった。

 

「我々があそこに多大な投資をしてきたのは()()()()()に力を持たせるためではないでしょう?」

「ムルタ…その言い方はこの場では止めんか? 我々全員がブルーコスモスというわけではないし、それも皆が皆で君ほど熱心というわけでもあるまい」

「いやいや、これは失礼しました」

「…………」

 

 同席している老人の一人に窘められてムルタは陳謝するが、その顔は冷ややかな笑みを浮かべてジブリ―ルに向けられて詰まらなさそうな顔をさせる。

 

「我々があそこに投資をしてきたのはこの銀河系を蝕む()()()()()を倒すためでしょう?」

「…むぅ…まぁな…」

「BETA共には散々に我々の資産を色々と食いつぶされてきたからな。元から有る銀河の半分はアーヴ共のせいで手が殆ど伸ばせておらんし…」

「だが、今の我々には二正面以上に戦線を拡大したがる顧客はいませんよ」

 

 ムルタの問い掛けに他の面子は幾分か同意しつつも懸念もまた表明するが、ムルタは構わず話を続けていく。

 

「…ですがねー皆さん、人類を絶滅させかねない化物を我々諸とも容易く屠る技術がー、人の形をした出来損ないが手中済みで、しかも青い髪を被った化物共みたいに我々の手の内から離れようとしているのと並行中というのは問題ではありませんか? 我々の投資したコロニーを勝手に使われてねぇ?」

「まあ、それはねぇ…」

「とはいえ、確かに人間同士での戦いをしている暇じゃないって主張の対象範囲を広げようって人もいますからねぇ。ですからぁ…まずは例の技術と兵器は()()()()()()()()って働きかけていきましょうか? 幸いにもあいつ等よりももっと強く出来そうな方々の一人がここにだっていますし♪」

「…素直に共有させてもらえるように話が進めばよいのですが…」

 

 結局、この場の話し合いはジブリ―ルが苦そうな表情を浮かべつつもムルタのペースで話し合いは進んでいった。

 そして、この場の決定が帝国を巻き込んである集まりを起こし、それはまたあの死亡フラグ満載な一族に生まれたあの少年も巻き込むことになる。




次回、ようやく帝国で始まった主人公の学校生活で、また新たな暗雲の誘いが忍び寄ってしまいます(笑)。
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