星界の輪廻   作:oosima

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今回、前回の終わりで登場したあのエヴァのオマージュっぽいあれが猛威を振るいます。


101 巻き込み広がる巨人の嵐

 ○C.E(コズミック・イラ)71年2月23日正午前(帝国暦952年2月20日正午前)現地時間正午 銀河連合 旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 密林高山地帯 レース可能領域内○

 

「…ち! 何なんだありゃあ…!?」

「この辺りには昔の先駆者(フォランナー)の遺跡があって大戦期にドクツがその極秘研究施設を建造していたという都市伝説があるというのは聞きましたが、ザフトがそれに確証を得てここに基地を設けた時にまさかと思いましたが…どうやら本当だったかもですねぇ…」

 

 リュッカ(リュール)がジ・アースと無意識に呼んだその昆虫の人型のような巨人に、ノーヘッド・ゲンとヤング・ケンジはしかめっ面を浮かべ合った。

 

「…ん? あいつ何かー…あの前足みたいに長い腕を振り上げてー…!?」

 

 そのしかめっ面を浮かべているレーサー達の一人、レヴィは巨人の奇妙な動作に嫌な予感を覚えた。

 

「…いやー、本当にこいつが導入されて良かったですよー」

 

 一方その頃、ザフトが遺跡を調査している駐屯地がある密林の近くにあるその乾燥した砂漠地帯では、帝国星界軍(ルエ・ラブール)空挺科(ワーキア)の大部隊が訓練を行っていた。

 その中には他国のMSにあたる機械甲冑機(ソウォーヴィ)の姿も多くあったが、それは星界軍(ラブール)が宇宙空間で用いている汎用型スローディスやザフトのザクと違い、両機に比べて背は低いが横幅は増えていて両腕が長く太くなって地についており、まるで地球に生息している類人猿のような構造になっていた。

 

「ああー、そうだなー。俺たち地上人(アイプス)が地上戦で欲しいものをよくわかってるよこいつはー」

「見た目は四本足だからけったいなものだからと思ったけどー…」

「そうそう、これを作った人は地上戦を嫌ってほど経験したに違いないよ」

「どんな環境にも汎用性が高くて修理もしやすくてそもそも丈夫だから修理も楽だしな」

軍匠科(スケーフ)が言うと説得力が強いなー…」

 

 だが、異形のわりに空挺科(ワーキア)からの評判は出身種族や階級問わず上々であった。

 

(…軍士(ボスナル)達からの評判は良好…。()()が残した疑似星核粒子技術…相性と成績から、私が後任の研究者の一人に選ばれて、同期だけでなく先達や後輩の方々とも今は上手くいっているが…)

 

 そうした兵士たちの反応を見る技術者の中に、表向きは訓練生(ケーニュ)であるアブリアル・ネイ=ドゥアセク・メルキア子爵(ペール・メリュキィア)・ラマウアの姿もあった。

 

「…なー、知ってるかーこの都市伝説ー?」

「どんなだー?」

「今現在、帝国の軍事計画を根本規模で変えている疑似星核技術…それを考え付いて実用化したのがーたった二人の兄妹だって話―」

「あー? 知ってるぜー。何だったらよー俺が聞いたのにはーその二人ってーそんで“旧世界政府”を滅亡させた()()()の血を引いてるとか何とか―…」

「何だよその都市伝説ー…?」

(…市井の者達の耳と口の早さは時に諜報機関を時としてしのぐと兄様が言っていたが…真実はもっとやばい意味で凄いのだがな…!?)

 

 ラマウアは吹き抜けの上層廊下から下に見える軍士(ボスナル)達の休息中のおしゃべりに苦笑していたが、そこで彼らが載る愛機ごと揺れる地鳴りが襲い掛かってきた。

 

うわぁ!? な、何だぁ!?」

「お、おい! あっちを見て見ろぉ!!」

「…!? あれは…!?」

 

 ラマウア達が驚いて見やったその方角には、先ほどザフトによる発掘現場の近くから現れた異形の巨人が片腕を真横に薙ぎ払った後の姿があり、その進路上にあったものは三日月状に大地が深く抉られて土煙を上げ、その中には傷ついている先の機械甲冑機(ソウォーヴィ)の姿が幾つかあった。

 

「は、反応からしてあのこっちの巡察艦以上くらいはありそうなあの馬鹿でかい機械甲冑機(ソウォーヴィ)もどきが腕を振って出た衝撃波みたいです!」

 

 比較的だが距離のある星界軍でも小さくない被害を与えたのがその叫びでもわかるその巨人の脅威は、より近くにいる密林地帯で競い合っているレーサー達やザフト、レジスタンス達がより実感していた。

 

「きゃー!」

「うわー! 逃げろー!」

「皆さん! 落ち着いてこの通路から奥のシェルターに!」

 

 巨人が腕を振るうたびに発する衝撃波は巨大な岩山も揺らしてその表面を削り、その強固な内部の岩盤を削って内部にアリの巣の如く張り巡らされて強化コンクリートで塗り固められた通路も激しく揺れ、ひび割れて落ちる埃や破片が逃げる妖怪狸の避難民たちに降り注ぐ。

 

「何だぁこいつは!? ザフトの新兵器かぁ!?」

「いいえ! そうではなさそうです! どうやら向こうも攻撃を…いや! 被害ではもっと大きそうです!!」

 

 避難民たちが目指している、旧ドクツ・ゲルマニクス軍が残した大地下要塞で最も強固な区画にある、旧弾薬庫を再利用した指令室で狸達が映像越しに見たザフトの基地はもっと苛烈な状況にあった。

 

「うわぁ! 来るなぁ!」

「おい! 別惑星に待機している艦隊からの支援軌道爆撃はまだかぁ!?」

 

 ザフトの地上軍は最もその巨人に近いが故に、巨人の腕を振るうだけで生じさせるその巨大な衝撃波の被害を最も浴びせられていた。

 

「ダコスタ! ザカーリュ! 今すぐ動ける機体はどれだけある!?」

 

 そんな中、バクゥの発展型で高出力ビーム兵器と魔術機械複合礼装兵器を載せて性能全てが上がった、オレンジ色の機械仕掛けの猛狼と言うべきラゴゥに乗り込んで応戦しつつ、バルトフェルドは周囲の指揮を執っていた。

 

「は、はい! 被害状況はーー…口で言う暇もないんで直接そっちにデータ画像で送ります!」

「…相変わらずだなぁ…だが! こういう時のお前さんのデータは要領がわかりやすくて見やすい!」

「それでもこの状況は良くなりそうにないわねぇ。砲撃は関節部も含めて駄目。さっき隙を突いてビームサーベルで切りつけた時も浅くしか付けられてないし…!?」

 

 だが、そのラゴゥへ共に同席しているアイシャが汗を垂らしている苦笑いを浮かべている通り、バルトフェルド含めてザフト側に余裕が見えないのがわかるその状況で、別方向からの実体弾やビーム攻撃に魔術問わない大規模な遠距離攻撃が巨人を包み込んだ。

 

「しゃああ! あんだけあたりゃあぁ少なくとも装甲はいくらか削れているだろ!!」

「気を抜くなぁ! まだ反応はあるんだから撃ち続けろぉ!」

 

 密林高山地帯の隣に広がる砂漠地帯で訓練をしていたが、巨人の衝撃波攻撃もザフトほどでは無いが受けた帝国星界軍(ルエ・ラブール)空挺科(ワーキア)の大部隊が怒り心頭と言う様子で巨人に攻撃を掛けてきたのだ。

 

「…!? あれはたしか帝国の地上向け新型と言う…!?」

「おいおい、何だよあれぇ…こっちがこの星に持ち込んでるバクゥの倍以上はあるんじゃねえか…?」

 

 その様子は近くのレースエリアよりレースどころではなくなって多くが逃げていっているレース選手達に混じる、イザークとディアッカも見えており、その砲撃を続けながら巨人との距離を詰めていっている帝国軍(ルエ・ビース)の地上部隊の主力を成すその新機体は、大軍を成す鋼鉄のゴリラに二人は見えた。

 

「…アイアンコング…あれ? 僕は何を言ってー…それどころじゃなくて!? 星界軍(ルエ・ラブール)の51式地上戦用機械甲冑機…鋼猿(ザガーリュムル)*1…こんな他所の星まであれだけ回せるレベルで量産化が進んでいたのか…」

 

 その鋼鉄のゴリラの大軍と言うべき機械甲冑機(ソウォーヴィ)鋼猿(ザガーリュムル)の姿は、細かい違いはあれども同じく目にしたリュッカ(リュール)のまだ取り戻せていない記憶の部分にある、機械生命体ゾイドによる架空戦記系プラモで現場の兵士に人気が高いという設定であった、ツインアイになっているなどアイアンコングと細かい幾つかの違いはあれどもほぼ同じであった。

 この世界の鋼猿(ザガーリュムル)は、まだリュッカ(リュール)が帝国で皇族(ドゥリュース)として生きていた頃、前々世の記憶として残っていた架空の金属生命体兵器ゾイドの一種、アイアンコングを元にして当時の彼が設計したものであったためだ。

 

「…おいおい、傍から見ればすごく押しているように見えるなぁ。さすがにワークローダー時代からその競技でも先達をしてきたあけはあるねぇ」

『まるで人間の頭脳を持って兵士としての訓練受けて武装した猿の群れみたいです』

 

 そして、その性能はより近くから見ているバルトフェルド、その彼と通信越しに指揮所から見ているダコスタがより正確に見ていた。

 

「のわぁ! また衝撃波が来たぞぉ!」

「うっひょお! あぶねぇ!

 

 鋼猿(ザガーリュムル)は原型とされたアイアンコングと同様にゴリラ型の頑健且つ器用な四肢を備えており、巨人が衝撃波を放ってもその探知機で察すると四肢を生生かして高くジャンプして回避し、高山地帯故の不規則な山肌を器用な四肢で安定的に掴んで、疑似星核粒子による耐久強化も生かした四肢で枝から枝へ飛びまわる猿のように山肌から山肌へ跳躍を繰り返していた。

 

「のわぁ! あの背中の兵装を器用に動かしてまたゴン太のビーム攻撃を!?」

「…はー、やっぱ金も人も余っていてその良い使い方を忘れないんだからー…やっぱ帝国(あっち)に留まっとけば良かったかなー…」

 

 その上で鋼猿(ザガーリュムル)は生産性や整備性を高める工夫として、背中や腕部にはスローディスと共通するコネクトがあって、その装備をそのままくっつけて使用することが可能であり、今もその一環で超長距離重砲撃粒子砲“雑賀”を載せた複数のそれが同時にその砲口から火を吹かせ、それをダコスタの傍から見たザカーリュは愚痴っていた。

 

「…やったかぁ…のわぁ!?」

 

 それで爆炎に包まれた巨人より、今度は細やかだが多めの衝撃波の群れが発せられても、地上を張っている鋼猿(ザガーリュムル)はその四肢に青い粒子を纏わせてホバー走行状に地面を走り回って回避していく。

 

「…凄いですね。あれで量産型ですか…」

「まあ、BETAとかもっとやばいのを相手にし続けてる状態だから開発に必要な実戦データには困ってないだろうから…それにしてもーあの巨人…」

「ええ、あの感じ…誰かが乗って動かしているのでしょうが…無理やり乗り手は操られているような感じが…特にあの頭の赤い目のような部分から…」

「そのズレのせいでー…あの巨人自体もー長らく寝ていた影響で寝ぼけのような鈍さが濃いけどー…徐々にだけどその状態に体が慣れて変わってきているようなー…!?」

 

 その様子を見ながらも離れようとしているレーサー達の中に、ミッカ(日光)と覚えあった違和感を口にしながらもよく見ているリュッカ(リュール)の姿もあったが、その最中に彼は巨人から感じる気配に寒気を強く覚えさせる変化を急に感じ取った。

 

「…×××××!!」

 

 そして数秒後、巨人はこの時代にはない言語で咆哮しながらその身を超高速で振動させ、それはまるで津波のように周囲へより激しく且つ速く周囲へ広がり、周囲の敵機を回避すら許さずほとんど弾き飛ばした。

 

「うわぁアアアア!?」

「ぐうぅ!?」

「ああ!?」

 

 その攻撃の前にはバクゥと鋼猿(ザガーリュムル)も多くが大きく吹き飛ばされ、その内に混じるラゴゥに乗るバルトフェルドとアイシャも苦悶の声を上げながら、その機体は同じく衝撃波で姿勢を取るのが精一杯になったリュール達が乗るマシンとかすれる形で不時着した。

 

「キャアアァ!?」

「危ない!」

 

 巻き込まれた影響でマシンの姿勢は大きく揺れてしまい、リュッカ(リュール)は乗り続けた方が危険と気付くとミッカ(日光)の身を抱き上げて脱出した。

 

「…あいたたた、だ、大丈夫~ミッカ(日光)?」

「ど、どうにか…ですがーマシンがあんな当たり方をして…これは動かせられるかし―――!?」

 

 そして地面に投げ出された二人の前で、遅れて吹き飛ばされてきた鋼猿(ザガーリュムル)の一機が落っこちてバチバチと火花を上げていたマシンはグシャッと潰されてしまった。

 

「―――いって…もう、無理っぽいですね…マシンは…後は自分達の足で安全圏まで走り抜けるしかー…え? リュー…ッカ(リュール)? そんな他所の機体に何をよじ登ってー…??」

「んー、やっぱり基礎設計から優秀で頑丈だなぁ…。これならマシンと合わせて即興のこの場での修理で一戦くらいは出来そう」

「うぐ…うぅぅ…!?」

「気絶してるところごめんなさい。ちょっとあれ放っておくと色々大変そうなのでこれをお借りします」

「…え!? リュ、リュッカ(リュール)!? そんな向こうのパイロットらしい人を気絶させて外に出して何をー…!? ちょ!? 何でそこで水銀の触手をそんなー…!?」

 

 それで苦しい表情を強めたミッカ(日光)に前で、リュッカ(リュール)は何かを始めてその場は稲妻混じりの白い閃光に包まれた。

*1
ジラルハネイ系由来のアーヴ語でジラルハネイ族の母星ドイサックに住む猿の一種




次回、巨大兵器との戦いに主人公も本格的に参戦する予定です。
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