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「…のわー!? 何だーあの化け物はー!?」
「うわー! あの腕を振るうたびに発せられる衝撃波でここまですごく揺れたぞー!」
「ど、どうにか防御結界で防がれているけど…一撃で何層かまで破られたぞ!!」
先駆者の遺跡から目覚めたと思わしき巨人にはレース会場の観客やスタッフを驚愕させて、混乱と恐怖の渦に叩き込んでいた。
「に、逃げろー!」
「ちょ!? 退いてよー!」
「く、苦しぃ…つ、潰れ…」
当然、そうなればほとんどは巨人から逃げようとするわけだが、そうなれば怪我人などが各所で出る事態になる。
「皆さん落ち着いてください! 結界は三割まで破壊されましたがもぅ自動修復装置も発動しています!」
「現在、政府軍が星界軍と協力してあの魔獣を鎮圧すべく応戦しています!」
「落ち着いて避難をー!」
当然、それを鎮めるべく警備員含めた大会スタッフや警察、軍などは対処するがパニックに陥った群衆を落ち着かせるのは容易ではなかった。
「ふぇええ~~ん! ふふふ副会長に風紀委員長~! たたた大変ですよこれ~~~!」
そんな中、貴賓席エリアである展望フロアで泣き顔を隠せない一人の少女がいた。
泣き顔で動揺している顔とは裏腹に、日本皇国の関東魔法科高校で生徒会の書記を務めるほどの逸材である。
「落ち着きなさい中条あずさ生徒会書記! こんな時にこそ役立つのがあなたの
「ふえ!?」
そのあずさをビクッとさせつつも叱咤して落ち着かせたのは、翡翠色の大きな瞳と黒いツインテールで東洋系主体だが西洋の血筋も感じさせる知的な美貌をした少女。
名を
関東魔法科高校で風紀委員長を務める身で、日本皇国で現代魔法が盛んになる前から同国における西洋系魔術の名門として知られる遠坂家の現当主である。
「ええ、そうね。幸いにも向こうの人にもこっちがこの状況に向いていることを知っている人がいらっしゃったみたいだし」
「ふ、副会長!? そ、それにその方はー…!?」
そこで関東魔法科高校の副会長になった
「…お初にお目にかかります中条さん、罵倒の技を美術にすることばかりにかまけた家の娘でも、こういう状況を後で余裕をもって皮肉れる出来る程度にする技はお持ちですよ」
「スススススススポール宗家ご令嬢ううううぅ!!??」
この星へ訪れている帝国要人子弟の一人であるレイカの連れて来られた姿に、あずさは心臓が止まりそうな心地となった。
「あなたの梓弓でここの人々を落ち着かせるには、この子の力でより広く及ばせるのが一番でしょう」
「…! そ、それはそうですが…人の情動や思考に干渉する魔法や魔術は…各国で使用に制限が大きく掛けられていて―――!」
「大丈夫」
「―――え…?」
そのビッグすぎる人物との体面と自分に求められているこの場での役割の大きさであずさはますます泣きわめきそうになるが、真由美の優しい言葉と共に抱きしめられて落ち着きを取り戻す。
「七草の名は伊達じゃないのよ♪ それに、ここで皆を助けたのなら文句言う人に逆に正論の集中砲火を浴びせられるようにも出来るわ!」
「…あ、はい! ありがとうございま―――!」
「ぎゃーーーー!?」
「ひいいいいィ! こっちに来たぁァアアぁ!」
「も、もう他の虫けらの避難なんぞ知るかぁ! 儂だけでも逃がせぇぇ!」
だが、その取り戻した落ち着きであずさが目に光を取り戻した時、天井の向こうから小さくない衝撃と悲鳴が降り注いできた。
「―――あ…あのー…う、上から聞こえてくるこれはー…?」
「…えーーっと、あの巨人を見て“聞いてた話と違う”とか“こっちはまだ避難してないのに”みたいなことを口走った何か国かの大使や要人が、私の母達を責めもせず身内も見捨てて一目散に逃げようとしていた所をパパラッチ辺りに写メとられそうになったから、母がとっ捕まえて人々の避難誘導を手伝わせて雄姿にしてあげているものの副産物ー…」
「…え、ええーー…」
それの理由をレイカに聞かせられてあずさは別の意味で不安な顔になった。
「よし、じゃー時間も押しているしもうそろそろ慌ただしい皆さんに冷水を浴びせて落ち着かせに行きましょうか」
「…え!? その格好のままで行くんですかぁ!?」
それに構わずスタスタと外に向けて歩き出したレイカにあずさは再び慌てだした。
そう、レイカの今の格好は妖艶な艶と気品の両方を併せ持つレースクイーン衣装のままだったからである。
「…あ、たしかにこんな状況でこの格好のままじゃあ、あんまりしまらないわね。えい」
そこでようやく気付いたレイカの身が黄金色の炎に包まれて形を変えていく。
「…よし、これならさっきの艶のある衣装も覆い隠せるわ」
数秒後、黄金色の炎が落ち着くとそれが形を成したような黄金色の巨大な烏にレイカの姿は変わり、血のように赤くも温かみもある瞳を向けてあずさへ背に乗るように促した。
「…こ、これが…アーヴの皆さんが持つ“家種”能力でも、とりわけ希少と言われるスポールさん達の“
その今やめったに姿を見せなくなった幻獣を目の当たりにして、あずさは感動と畏敬を覚えた。
この世界のアーヴ達は正史と呼ばれる時間軸の同種族と同じ特徴を持つほか、幾つかそちら側にはない特徴があり、その内の一つが家種である。
家種とはスポールやアブリアルと言った氏族ごとに決まるもので、その内容はリュールがまだ記憶を失う前の姿であるドゥリュースとしての記憶の言葉を借りるとこうなる。
『ONEPIECEの
そのような感じに加えて、スポール一族を加えたアーヴの根源氏族の家種は“幻獣”と呼ばれる、通常は霊的な存在が暮らす“零質界”を主な居住としながらも特殊な条件が重なるとリュール達が暮らす現実の“物質界”に干渉できる高位の存在であった。
理由は大昔の“
当時の地球は人口爆発を起こした時間軸で、そのまま地球に留まれば星ごと自らの未来すらも食いつぶしてしまう状況にあったために、地球連邦として表向きは統一されつつも、それを構成する旧各国勢力は自分達は優先して助かろうと次の移住先を探すのに必死であった。
それが母都市で唯一可能だったのが、遺跡より発掘された
故に宇宙船を発見した母都市は、そこに残されていた
その時の
「…それじゃあ、落ちないようにしっかり支えるから。あ、それとあなたは火傷しないようにしているから大丈夫」
「は、はい…あ、本当だ。熱くないけどあったかい…きゃあああああああ!?」
そんな歴史的経緯に基づくレイカの今の姿にあずさは目を輝かせつつおずおずと触れようとしたが、それがじれったく思ったレイカが黄金色の炎で出来た羽毛で彼女を手首から掴み上げて背に載せると、バッと空高く舞った。
「…う…うわぁ! 機械とかに頼らずに空を飛ぶってこんな感じなのですね~~~~!」
「この状況でも感動できるってあなたにとってのそれは下でドミノ倒しになっちゃっている人々と甲乙つけがたいものなのね」
「すすすみません! こほん…えーーーーっと…梓弓!!」
空を飛べてその風を地肌で浴びれている感覚にあずさは感動するが、彼女を乗せているレイカの皮肉交じりの注意で現実に帰ると、その手に現代魔法で弓の形に魔力を固めた。
「…それじゃー私も上乗せさせてもらうわ…
その梓弓から矢が放たれてそれが細やかに四散して周囲に巻かれると、レイカの今の体より金色の火の粉が大量に生じてそれと混ざり合い、それらはレース会場全体を覆う蔓のように降り注いでいく。
「…え? あ、あれ? わ、私は何をー…?」
「あ! す、すまない! 大丈夫か!?」
そうしてパニックを起こしていた群衆は急速に落ち着きを取り戻し、押し競饅頭やドミノ倒しで生じていた怪我人を介抱し始める。
「あ、あれ? たしかさっき倒れた時に足がすごく腫れていたのに…?」
「この額の血…たしかさっきはもっとあったと思うけどー…?」
だが、その怪我人の多くは傷が治癒しているかもしくは急速な回復を見せつつあった。
『観客の皆さん! 落ち着いて避難を続けてください!』
『すでに緊急避難のために具現化系魔術で会場外から安全な場所まで避難できる仮設ルートを設けてあります!』
「…あ! あっちに半透明のガラスみたいな大きな橋が何本も…」
「あ、あっちに行くぞ!」
それらが疑問となる前に大会側からの放送に観客は落ち着いて従い、目前にいつの間にか生じた魔術による仮設橋をぞろぞろと進んで行く。
そんな中、癒えつつある怪我を撫でながら観客の一人が、あずさが乗る黄金の巨大烏となっているレイカを見上げていた。
(…あれが、我々の先祖が“
その人物は自分達の怪我を癒したのが、レイカの身から広がって降り注いだ金色の火花の蔓のような雨であることを見抜き、隠そうとしても隠しきれない憎悪と渇望を宿した眼光で彼女達を見上げた。
次回、話は主人公達と巨人達が直にぶつかり合っている場面に戻る予定です。