一方で、次の舞台へ移行するのを後押しする各勢力の動きの描写も少しあります。
○
「…う…く…ここは…?」
国際スピードリングレース開催中で突如出現した謎の巨人との戦いに巻き込まれてそこで意識を失った後、リュッカ改めてリュールが目を覚ましたのは、窓辺から密林高山地帯が見える清潔な病室の病床であった。
「…あ、良かった…やっと目が覚めたのねリュール君…三日間もずっと寝てたのよ…」
「あ、セレーナ…そっちも無事だったんだ」
その窓辺にはセレーナが座っていて彼女はリュールに安堵した表情を浮かべていた。
「…三日も寝てたのか…あ! そう言えば他の皆はどうなったの!? それとレースやあの怪物はどうなったんだ!?」
「あーもー元から超頑丈体力化け物だからって病み上がりなんだからそんな急に動いて慌てないの。本当にこの三日は色々あったんだからー…まずはこれを見て」
そこで病室の窓の一角にニュース画面が映し出された。
『…あちらが三日前にてパルミュラ治安部隊とアーヴ帝国軍に救出されました、現地人類種の妖怪狸族の有力者の隠神刑部氏です。今回の古代兵器暴走事件には親銀連派のテログループが関与していると見られており、隠神刑部氏はその参考人と見られており…』
そこには三日前の戦闘でリュールと日光が巨人より救出した老人の姿があった。
「…えーーっと、とりあえず今はどういう状況でー…?」
「あー、どれもこれも濃くて長いから…大事なところをかいつまんで話すとねー…」
そこからセレーナとリュールはお互い本当に厄介そうな顔で現状を確認しあい始めた。
まずはスピードリングの大会だが、先の謎の巨人の起こした被害が大きすぎて中止になり、今現在はどの勢力もその復旧作業が主となった。
そして、例の巨人の正体だがどうやらこの星にある
「…で、あの巨人にこの前にて助けたお爺ちゃんを怪しげな改造や術で埋め込んで操作装置代わりに埋め込んで、暴走させちまったと…」
「…そうねー、どうやら近い内に来る帝国軍の艦隊にぶつけるつもりだったらしいけどー、その前にここの警察や帝国の部隊にばれちゃって取り締まりを受けてー、鎮圧されそうになったけど少しでも道連れにしてやるって感じでー、改造がまだ十分に済んでいない状態で起動させたけどみごとに半暴走を起したようでー…」
今回の事件を裏で解決したリュール達が属するアークエンジェルは、その手柄があったこととリュール達がこの星の女王ゼノビアと友人関係にあったおかげで、数日中にこっそりこの星から脱出できることに決まったようである。
ちなみに、その費用は帝国側企業が出したレース大会の懸賞金で此度の復旧資金に使われた分のあまりから出ることに決まった。
他にもザフトは今回の戦いで出た被害が大きすぎたこともあってか、前々から決まっていたが不安視されていた期日通りにこの星からの撤退を決めたようである。
また、親銀連派や親帝国派の少なくない現地高級官僚の親族が今回の事件を起こした反政府勢力やそのバックである他国諜報機関と汚職関係にあったことが発覚し、その煽りでザフトや彼らにわたっていた土地や権利も妖怪狸たちへ返還されることがほぼ決まりそうらしい。
「…うーん、どっちかっていうと…今回の貸しがあるから潰せないけど、今回のやらかした連中の身内に長居されると、被害を受けた他所のお隣さんにあれこれめんどい事をされるから、そうされる前にさっさと追い出そうって感じ?」
「あーもーそんなことを言わないの。勝手に乗り込んできた身で色々しちゃったのはこっちなんだからー。船の修理と物資の補充を今回のあまりでしてもらえるんだからー。今は君の身の上から君が目覚めるまではー交代制で私達が傍にいるんだから」
当世の元々のスペックの高さと素のビビリ気質から色々学んできたリュールは頭ではすぐ理解しつつも少し不貞腐れた感じになった。
「…まあ、それはこっちも仕方ないとわかるとして…セレーナ…その格好は何…?」
だが、その不貞腐れた顔はすぐに隠せない情欲の朱色に染まってセレーナから背けつつも視線をチラチラと送り始めた。
「あー? これは君が寝ている間にー私みたいに無事だった面子で買い出しとか物資の補給とかをしてたんだけどー、ゼノビアが手を回して紹介してくれたこの病院はー、この辺りの海底や密林の古代遺跡系迷宮の財宝や希少生物を目当てに集まる冒険者たちを客とした街の中にあるの。その中で怪しまれないための変装ってわけ❤️」
その視線を向けられている窓辺に腰かけたセレーナは、銀色の肩当と装甲ブラでその褐色の豊かな胸の谷間が丸見えで、下はガーターベルト付きの青紫色を帯びたロングソックスで足の付け根は同色のビキニショーツで、腰には茶色い鞘の長剣が帯びられているという、俗に言うビキニアーマー状態であった。
「…そ、そうっすか…け、けれどー…自分で言うのもあれだけどー…セレーナがその格好で病人の男の前にいるのはー…色々と体に毒というかー…!?」
それを
「…あら~❓ 今の私の格好の何処が~今の君の体にどう毒っていうのかしら~❓ ちょーっとよくわかんないから教えてくれない~❓」
セレーナは大きく開いて向けた足の付け根をくねくねと動かして小悪魔的な微笑みで問うて少し下の後、シュっとその窓辺から姿を消した。
「…ちょ!? 今こっちはあんま素早い動きが出来ないから瞬動を使うなんて卑怯だ…のわぁ!?」
それにリュールが少しまずったと顔を浮かべると、彼の身に勢いよく誰かがダイブしてきた。
「…あー♪ たしかに君のこっちでーなんか妙な腫物が出来始めてるわねー♪ 数値の上ではもう健康体だけどーまだ言葉や機械では表せないものがある世の中だしー…
その誰かとは当然セレーナで、彼女は病床のリュールの腰の上に跨ると、ビキニアーマーのショーツのクロッチに包まれた己が足の付け根を彼のそれへすりすりと擦り付け始めた。
「…………」
いつの間にか病衣のズボンを下ろされてその下の青いブーメラン型パンツを曝け出されてしまっているリュールに、もはやセレーナへ抵抗や抗弁を示す力も意志も残されていないことは、その顔が情欲の朱色に染まって無言の視線を彼女へ向けていることからでも明らかであった。
その後、色々な意味で愛は言葉以外でも確かめ合いたい、やりたい盛り十代である二人がどうしたか言うまでもない。
『…此度のテロ事件へのマサダ機関の関与も濃厚とされていますが、サード・サマリアのイキリヤフ議長は現地部隊の命令違反の独断行動であるとの声名を発表しており、此度の悲劇を悪用した帝国のサマリア人迫害には断固とした報復を取るとも発表しており…』
無論、窓に映されたままのニュースの内容が二人の耳にほとんど入らなかったのは言うまでもない。
○銀河連合 旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 首都セレウキア 密林海岸遺跡区域○
「…ふう、三日前は色々起きたもののこちらには取り締まりは来ていませんが…やはり居心地は悪くなってますね会長…」
「そうねー、おかげで今はこっちも変装しないと外には出れそうにないし…」
リュールとセレーナが言葉や機械以外での診察を行おうとしていた頃、その病院も属しているパルミュラの未調査区域ありの遺跡に寄生するように生まれたこの区域にあるホテルの一室で、司波深雪と七草真由美は着替えを進めていた。
二人は日本皇国からこの星との友好親善会に
「ごめん、お待たせ達也君」
「大丈夫です会長。こちらも着替えを終えたばかりなのでー…残りはラマウア殿下…失礼、ラマウアー…マウアだけですがー…」
その後、着替え終えた二人は廊下で待っていた司波達也と合流し、別の部屋へ向かった。
「マウア、準備は出来ているか?」
「達也…さん、こっちももう少しで終わるから入っていいですよ。少し新しい部分の調整に時間はかかりましたがー…」
「珍しいわね、あなたが一番遅れるなんてー…!?」
物珍しそうな顔でその部屋のドアを開ける深雪だが、残りの人物の姿を見るや顔が固まった。
「? どうした深雪? そんなジラルハネイが小空気銃を額に当てられたような顔をして?」
部屋の中にいる最後のその人物は、アブリアル・ネイ=ドゥアセク・
但し、その格好は15歳というのが普通なら信じられない深い胸の谷間が見えている黒基調で金線の魔術式が仕込まれたレオタードアーマーを身に付けて、赤基調と金線で構成された肩当てを付けて赤いマントが付き、スカートが深いスリットの入った薄い鎖帷子なのでレオタードアーマーの黒いクロッチ部分が丸見えで、腰かけているベッドについ先ほどまで着ていただろうスポーツウェアが野放しという状態であった。
「…凄いなラマウア…じゃなくてマウア、君自身もだが…その鎧…また色々と新たな機能が上達してるのが―――」
「はーい、男の子はまだ入っちゃ駄目よーこのパートはー」
「マウアもですけどお兄様は割と一般常識で地味ながら無視できない少なくない欠陥があります」
「―――あがぁ…」
達也はそんな状況でずれた感想を口にするが、その辺は素早く空気を読んだ真由美に目を塞がれて部屋の開かれた出入り口の前から退場させられた。
「ちょっと、あなたの今の姿は言うべきことがあるわよ」
「? それはどういう意味でー…あ」
続けて深雪が少しムスッとした赤面で注意するとラマウアは初め首をかしげたが、何かに気付いた表情になる。
(…ほ、良かった…まだお兄さん程じゃないけど…こちらの常識を身に付けてくれたみた――――)
「脱いだ下着を片付けていなかった。それとアーヴの特徴を消しておかないと」
「―――あずこぉ!?」
始め安堵する深雪だが、龍を模った
「…そ、それは違いま…あ、あいやぁぁ…そ、そっちもありますけどぉぉぉもっとぉぉぉ…あぁぁぁぁ!?」
それにカタカタ震える手を伸ばす深雪だが、ドア枠に与えられた痛みは地味だが割と深刻だったらしく、涙目で頭を抱えるばかりでその場ではそれ以上は言えなかった。
『臨時ニュースです。今回の事件を受けましてドゥサーニュ・アブリアル殿下率いる帝国軍艦隊の来訪が予定よりも早まる模様でー…』
故に、今この場で深雪にそのニュースへ反応できる余裕などなかった。
次回も、主人公達や他のメンバーたちの息抜きの様子と、次の舞台へ移行するための準備が中心になります。