○
「…ねー、そっちの観測結果はどう―?」
「んー、そうねー…」
ラマウア(マウア)を破廉恥なハプニングが襲う数分前、彼女を含めた4人が向かったルマーヤ迷宮正規ゲートの一つの付近にあるその小島とそこにある古代遺跡を再利用したそのホテルで、大勢の水着美女達が亜熱帯の白い砂浜で何かしらの魔法実験を行っていた。
「セレーナさん、この数値でどうかな?」
「うーん、そうねーあと2.5ピクリン下げてみようかしら」
そうした美女達の集まりの一角に、アークエンジェル所属メンバー達の姿があった。
「…いやー、本当にねーセレーナやリュール君たちが助かっていて本当に良かったわー。この疑似星核粒子の自然改造応用技術の研究は貴方たち、特にリュール君がいないと出来ない部分が多かったしー」
その美女達の中心をしている、金髪碧眼のクールで知的な美貌とモデルのような黒いセクシーな水着が似合うボディをした美女の名はフェリシア・グアム。
国籍や所属勢力を問わず各有力者や企業等の出資で設立された中立学術組織D.S.S.D*1にナチュラル人間女性ながら属している有力研究員の一人で、同組織の“種 (SEED)をより遠くの宇宙に送り出す”という目的に賛同し、自分自身も別銀河系へ行けるようになる船を作り出すことが夢である。
ちなみに、D.S.S.Dはモルゲンレーテとも浅からぬ協力関係にあり、リュール達はヘリポリスのモルゲンレーテ研究所支所時代にフェリシア達と関係を深く築いた仲である。
そのため、ヘリオポリス崩壊に伴ってそこにあった拠点の一つをここパルミュラへ移したフェリシア達は、アークエンジェルの物資補充と宇宙への帰還を協力する代わりに、今回の実験への協力を飲ませたのである。
「…しかしまぁ、試作品段階で且つ戦闘型改造や出力向上が困難なタイプとはいえ…良く帝国から疑似星核粒子路なんて一時とはいえ借り受けられましたね」
「向こうにも他国と関係改善を進めたいって人達は一定数いるのよ。まーそのおかげで色々と狙う面倒な人たちも来てるからー、これを貸してもらってる間と君たちがこの島にいられる時間と重なってたのが助かったわー」
(…いやまあ、これを作った当人が僕だし…)
そのフェリシアを中心として、苦笑しているリュールも参加している今回の実験には、なんと彼がこの世界では初めて発明した、まだ取り戻せていない方の記憶では太陽炉と呼ばれていた疑似星核粒子路が初期型ながら使用されていた。
今回の実験には、疑似星核粒子炉の粒子が周辺環境に与える影響について調べている最中であった。
現在、アークエンジェルのメンバーは、自分達への物資補給と宇宙帰還への協力をフェリシア達にしてもらうのと引き換えに、彼女達の今回の実験へ協力することとなったのだ。
「…けれどまあ、幾ら人体には無害とはわかってて、こっちの身には有害な細菌やウィルスに魔術を遮断する複合結界を掛けられている状態とはいえ、よくこんな大事な実験を水着衣装で行おうだなんて思いましたね…」
その今現在の実験に、紫色を基調とする和風ビキニ水着を着て16歳なのが信じられないスタイルと大人びた美貌をした日光が魔術空間タブレッドを操作しながら呆れ顔になる。
「いや、これはこれで意外と考えてるわよ。まさかこんな若い水着美女グループが大事な実験を行ってるとは思わないわよ。それに外からは魔術式キャンプファイヤーをしているようにしか見えない幻術も欠けてあるし…」
それに対して疑似星核粒子炉を直に操作している、褐色ナイスバディを椰子の葉をイメージしたような黒い水着で固めたセレーナがしたり顔で答える。
「…こうしてみると本当に凄いねこの疑似星核粒子技術…医療や電子魔術でも幅広く応用が出来て…」
「凄いでしょー♪ 尊敬してあげなさい♪ 許す♪」
その茶色の強い亜麻色のロングヘアと紫の大きな瞳が似合うアジア的美貌とそれに見合うナイスバディを青基調の可愛いビキニ水着で固めたキラは感動を覚え、白地にオレンジ色のラインが入ってロングソックス付きブーツとセットのビキニ水着を着ているネーナが誇らしそうな顔になる。
「あ、待って、こっちのアルファ数値に変な反応が…」
「本当ですね。それではオキシオン値の方をー…」
そうした一行の中で、リュールと日光はとりわけこの実験において阿吽の呼吸で機器や魔術を操作して有意義的に進めていた。
「…本当にレースの時から息がぴったりですねあの二人…。魔術も機械の操作も凄く上手く合わせ合って…」
そんな二人に、キラはもやもやとした感情を16歳相応に募らせていっていたが、
「…あーもー、そこはこっちも潜ってきた経験だからわかるけどあまり深刻に受け取ったら色々面倒くさくなるから気軽に考えなさ…!?」
それを薄い黄緑色の大胆なカッティングをされた大人向けワンピース水着を着ているステラ・ブレーメルが苦笑して注意するが、そこでリュールより嫌な予感を覚えてしまう。
「………」
「…え? 何々リュール君? 末期の寄生獣病患者みたいな目つきになって、え…何をそんな水銀のボールなんか取り出してー…!?」
それに他のメンバーも嫌な意味で慣れた苦笑いを浮かべるが、無表情となったリュールは幾つかの銀色の野球ボールサイズの玉を、豪速且つ大きくカーブを描く変化球で数百メートル離れたルマーヤ迷宮島までぶん投げた。
「のわーーー!?」
その煽りで軌道上にある茂みは触れこそしなかったが台風に当てられたように大きく歪んで中から太い男の声で悲鳴が聞こえ、弾は向こうの島でキランと言う光になった。
「ちょちょっとリュール君!?」
「…何って、隣の島でセクハラ行為を働かれて困ってる女性を見かけたから、それを助けようかなーって―――」
「こらー! リュールどうしてくれんだー!?」
周りは当然戸惑い驚くがそれらは茂みから飛び出てきた両津の怒声で塗りつぶされた。
「―――え!? 両さん何でここに!?」
「見張りの時間を用いてここの茂みに隠れてこの星の競馬の馬券をネットで購入しようとしてたのにお前がさっき投げたボールの煽りで外れ馬券を購入しちまったじゃねーか! どうしてくれんだー!!」
「両津! また見張りの任…じゃなくて仕事をさぼって賭博行為だとぉ!!」
「今度はバジルール少佐ぁ!?」
結局、その場が両津勘吉の逆恨みとそれを発見したナタル・バジルールの怒号で、リュールの不審な行動への追及は有耶無耶となった。
(…今さっきあの島をチラ見した時にスカート捲りならぬマント捲りをされて恥ずかしさの乱れで猛烈なお気負いで高まって生じた魔力の感じからして…あの隣の島にいた金髪のエルフは遠目だけど僕の妹の…あの子ラマウアの変装した姿でほぼ間違いない! それでその近くには同行してるっぽい七草家の真由美さんに司波龍郎さん所の達也と深雪ちゃん!? 何であの4人がこんな所に―――!?)
「ソードリュしょう…ではなくてリュール少年! よそ見をするなぁ!」
「―――いっては、はい! バジルール少…ではなくてバジルールさん!!」
一方で、ナタルによる両津への怒りとしかりの巻き添えを受けつつ、リュールの意識はこの地で思わぬ形で目にしてした妹や旧友に大きく割かれてしまっていた。
○
「…ここがルマーヤ迷宮探査許可付き自然保護区の表層部分か…。日本のとはやはり違うな…」
アークエンジェル一行とD.S.S.Dの面々が実験を行っていた日の翌日、司波達也は彼らが居る島の隣にある迷宮の地上に近いエリアで探索と資源調達を行っていた。
二人がいる区域は、地上部分にある亜熱帯の深い森であった。
「…けれど何と言うかー、思った以上に必要な資源になる生物が襲ってきますから予想よりも早く必要な資材が集まってますねお兄様」
「そうだな、その方がこちらとしても都合が良いが…あ」
「ゴアアアアアアアア!!」
順調そうなようでいて一行は現状に不審を覚えてもいたが、そこで迷宮に住まう危険生物の一体が襲い掛かってきた。
「あ、この星では危険外来種指定のトロルコングね。あなたには用事ないからおねんねしてて」
緑色の体毛に巨大な4本腕の巨躯を持つ肉食中心のゴリラであるトロルコングに、真由美は一秒にも満たない時間で、収束・発散・移動系の現代魔法ドライ・ブリザードで周囲の二酸化炭素から制作したドライ・アイスの巨大氷柱をライフル並みの速度で撃ち込んだ。
「ゴバァ!?」
トロルコングは真正面からそれを叩きつけられて背後の岸壁まで吹き飛んで気絶した。
「…な、何だよ!? あの4人!?」
「滅茶苦茶強ぇじゃねえか!?」
その様子を盗み見る影が幾つかあった。
昨日にマウア(ラマウア)へスカート捲りならぬマント捲りを刊行して、彼女の黒Tバックにしか覆われてない美尻を衆目に晒すが、その現場を偶々見たリュール(正体はラマウアの実兄で表向き死亡とされてるドゥリュース)の怒りのボールを鼻っ面に投げ込まれ、鼻と前歯をへし折られ乍ら海面を水切り石のように吹き飛ばされて別の島に着弾したクソガキ共である。
「イ、イルヤさん…」
「…ち! 何なんだよさっきからあいつらは…まあいい! こいつを使えば…!」
その子供達を取り仕切る、日本あたりなら中高生くらいだろう髪を金髪に染めた酷薄そうな少年が、ラマウア(マウア)達に忌々しさとそれに隠そうとした恐れを滲ませた顔を向けながら携帯電話を操作していた。
「む? ちょっと待て」
「? どうしたんですか達也さん?」
「何だか衣服の下あたりに妙な反応を放つ異物が見えるぞ」
「あ、そうですね。目に“
だが、悪ガキ達にイルヤと呼ばれる少年が携帯電話を操作していると、彼らに気付いていない一行はマウア(ラマウア)の身に不審を覚える。
「…あ、言われて見れば…時々反応はするが強くは無かったのでさして気に掛けなかったが…捨てるか…」
「あーもー、周囲に脅威レベル込みで盗み見てくる気配やカメラとかの感じはないからって、こんな他の冒険者の皆さんもいつ来ても普通な場面でそれを脱ぐなんて女の子がしたら駄目よー。それと男の子はこっち見ないで見張り役をしてねー」
周囲の指摘で気づいたマウア(ラマウア)はその反応が感じられる鎖帷子スカートの下にある黒のTバックショーツを脱ぎ下ろそうとするが、真由美に引き留められて迷宮の物陰に引っ込まれた。
「…ん、この辺りは砂の成分で良いものが多いから衣服も良いのがすぐに作れるな」
十数秒後、マウア(ラマウア)は今現在の自分が着ているものと寸分たがわない黒のショーツを作り上げた。
「…こっちで言う古式魔法、帝国含めたそっちで言う魔術は凄いわねぇ。こういう土くれから一時的じゃなくて普通のものと持つ時間のものと含めて同程度のものを作り出せるもの…」
「その分、そちらで言う
「いやねぇ、そっちが扱える魔力量とそれへの心身の耐久性を考えれば普通に僅かな誤差くらいなものでしょー…あ」
だが、マウア(ラマウア)がその新しいショーツを着るべく、発信機と思わしいものが付けられた古いショーツを脱ぐと、急の突風でそれは彼女の手から離れてしまう。
「…よし、こいつならあの4人が強くてもすぐにやれるだろ…?」
そして、離れていったショーツが行き着いた先は、携帯電話を操作して歪んだほくそ笑みをしているイルヤの後頭部であった。
「…え? な、何だこれは…!?」
「ピぎイイいいイイいいいい!!」
イルヤが自分の頭にかかったそれに怪訝な顔を向けたその時、彼の頭上に蛇を思わせるが丸太の如く太く長い胴体と何本もの足、三つの血走った巨大な目を浮かべた猛獣が彼の頭上に現れた。
「…ふう、イルヤ…どんな男になってるかな…」
数十秒後、司波達也たちがイルヤ達に盗み見られていた場所に近いあるマングローブの中に、一人の整ったアジア系面貌だが一般人の中では冷酷の気が強い男が、飛行車から降りてきた。
「ピぎぃええええええええええ!!」
「ギャアアアアアぁ!? ああ兄貴いいいいいいぃ助けてぇぇええええええええええ!!」
その時、その場に三つ目の巨大な大蛇が何本もある手足の一本に掴まれて泣き叫んでいるイルヤを引きずっている状態で、砂塵や倒木を巻き起こしながらその場に現れた。
「…え!?」
それに男が気付いた時には、大蛇の巨大な口が彼の戸惑い呆けた顔を飲み込んだ時のことで、次の瞬間には彼の姿は消えて大蛇が海に飛び込んで巨大な水飛沫が生じ、それは収まるとひっくり返されてゆっくり沈んでいく飛行車だけが残り、それも沈むと後には倒木と蛇がのたうち回った後だけが残された。
「…ん? 何だあの水飛沫は?」
ちなみにその時にて生じた水飛沫は、マングローブで遮られた隣の古代遺跡再利用ホテルにクルーザーで密かに到着したゼノビアからも見えた。
「姫さ…失礼、女王陛下、帝国軍の皇太子艦隊表敬訪問の早まりを受けてまた動きがー…」
「その言い方、また反帝国派か?」
「…ええ、先の巨人テロによる取り締まりで多くが取り締まられた親銀連派や銀連系の工作員の生き残りが、難民を巻き込んでバタバタ急ぎだしたようでー、自国難民すらも巻き込んで色々動き出したようでー…」
「私がいるこの島にも関係しているか? 今現在、あの巨人に暴れられた後の復旧の混乱に乗じて人身売買目的の誘拐や迷宮資源の密輸取引、それに紛れた工作活動も増えてるが…」
「ええ、お忍びでこちらの市井を訪問中のラマウア殿下を狙ってか、このルマーヤ群島付近にも出ているらしくて、その中には日系難民代表のイルヤ氏も関わっている可能性が濃厚でー…」
「あの男が? 前々から嫌な感じがしていて色々とブラックに近いグレーなことをしてるのがわかっていたが―――」
「…ギャアァアアぁ…」
「―――あ…え?」
途中で部下からの報告を受けてゼノビアは怪訝な顔になるが、その名前を上げられた問題人物の一人の初めて聞く情けない声を海面から微かに聞いた気がした。
次回、一応はほのぼのパートが多めですが、次の災難に繋がりそうなフラグも立ち始めます。
ちなみに、今回新たに登場した名前二つは“アスラの沙汰”のあの二人です。能力とかはアスラの沙汰原作基準です(つまり、スペック化け物ぞろいの本作では順位は…)。