○
「焼きそば出来たよー」
「あ、こっちのBBQも持って行ってー」
イルヤとテリヤのあまり評判が良くなさそうな兄弟が怪物に襲われて数時間後、その現場のある島の隣にある海上遺跡ホテルの白い砂浜の近くにある古代遺跡再利用大広間では美味しそうな匂いと鉄板が焼かれる音が生じていた。
海上遺跡ホテルではD.S.S.Dとアークエンジェル側が夕方BBQパーティーを開いていたのだ。
「…あーもー皆して馬鹿みたいな勢いで食べていってー。しかもさーまだ街は死者はほとんど出てなかったとはいえあちこち復旧作業中だってのに…」
そんなパーティー会場の鉄板の前にいる料理人の一人に、青いブーメランパンツ式海パンとエプロンだけという姿のリュールもいた。
「…まーこのだだっ広い銀河で自然災害や戦災が起きてない日なんてないんだからそう言ってたらおちおちパーティーなんてやってられないわよ。あの巨人に滅茶苦茶されてた狸さん達なんか土地返還と休戦協定が決まってからもうあちこちの集落を回って絶賛宴会中だし…」
そのリュールが調理している焼きそばを出来た傍から皿に盛り付けて口にしているセレーナが指さした通信映像の先では、地下大防空壕の中で包帯を身に巻いたものも含めて和風テイスト全開などんちゃん騒ぎをしている狸達の大群が映し出されていた。
幹部たちの迅速かつ適切な避難誘導や指示にドクツゲルマニクス時代の屈強な地下大要塞のおかげで、軽傷者こそ出たが死人が出なかったとはいえ、なかなかの図太さにポジティブ精神である。
「あそこじゃモルゲンレーテやD.S.S.Dの一応銀連加盟国系の大手出資者とうちの子達に混じって、この星の女王様も、ザフトの女将校さんも混じってビーチバレーをしているし…」
そこからセレーナがはにかんで視線を変えた先には、この前の巨人討伐のお礼のためにお忍びでここまで来たこの星の女王ゼノビア、セレーナやリュールの友人であるD.S.S.D所属かそのスポンサーの美女達、近日に撤退予定のザフトに属するアイシャがビーチバレーに興じている姿があった。
ちなみに、今回のアークエンジェルの宇宙帰還の目途が立った件については、ゼノビアが今回のお礼の一環で協力してくれたので、お忍びで訪問してきたことに一行は驚いたが断り切れず、今の状況となった。
「数日前まで殺し合いをしてた連中とビーチバレーだなんて…アーヴと慣れ合ってると頭がおかしくなるわけ…?」
「砂漠ばっかの住める土地が少ない星系に何百年も放浪してた連中を大昔の契約を理由に押し込んで現地民や周辺と戦争しまくりを何十年とさせている間に和平しろ二国家共存しろとか言うしかほぼしない無能よりかは行動的且つ平和的でしょ」
「………あんた…!?」
その光景にキュルケ・シュタインホフは如何わしいものを見る顔を向けるが、優雅に夕べの砂浜でリクライニングチェアに座ってサングラスをかけているネーナに辛口で横槍を入れられると、憎々しそうだが言い返しづらい表情になった所で大きな水飛沫が起きた。
「きゃー!? 何よあなた達それー!?」
「おいリュール! この星では外来種のワニを捕まえて来たぞー!」
「こいつもすぐに切りさばいて鉄板BBQにするネー!」
その水飛沫が収まると、複数の足を持つ巨大なガララワニをそれぞれ担いでいる海パン一丁の両津勘吉と、何処かの時間軸では2年後バージョンと呼ぶだろう今の肢体に相応しい赤いビキニ水着を着た神楽が海中から泣いている鰐を担ぎ上げた状態で戻ってきて周囲を驚かせた。
「…全く、初めて会った頃の13歳くらいのアニメだと声優無駄遣いゲロインとか呼ばれるだろう小娘が体ばっか成長させやがってー…」
その様子を見守っている面子には、デカ盛りサイズ宇治金時を頬張りながら双眼鏡越しに神楽の深い胸の谷間中心で、周囲の水着美女達を見まくって鼻の舌を伸ばしまくっている銀時の姿も混じっていた。
「最近は科学技術の進歩が著しいですからねぇ。神楽ちゃんが傘無しでこの南国の晴れの下を泳ぎまくれてるようなくらいですし…」
「だが、それ自体は良いことだっしょ。こうして次世代へのバトンを物理込みで繋げられる美女達が平和な時を過ごせられるようになるのはー…」
ちなみにその銀時の傍らには同じく双眼鏡付きで鼻の下を伸ばしながら鼻血まで噴出している新八とバッチグーの姿もあった。
この3人は美女達の周囲に不審者がいないかの監視役を任されていたのだ。
「おおー、あのお姫様にクレオパトラ風なお姉さん本当に素晴らしい尻をしてますなー…!?」
だが、銀時がビーチバレー組の美貌やスタイルを盗み見ようとしていた時、海面に先ほど以上の派手な水飛沫が生じた。
「…え? 何だろうあれー…?」
「たたたた助けてくれええええ!?」
「ピぎぃええええええええええぇ!!」
BBQを調理中のリュールが見やると、その水飛沫から泣き叫びながら逃げているテリヤと、それを追う巨大な3つ目と何本もの手足を生やした巨大な大蛇の姿があった。
「…デデデデビル
「あの金髪の不良どこかで見たようなーー…ってこっちに逃げて来てるぅ!?」
「マジでぇ!?」
「ちょっとぉ!? それを追う形でぇあのデビル
その大蛇の正体に一行は気づいて驚くが、それが自分達に近づいてきてることに気付くと血相を変えた。
「!? ギャオオオオオオオ!?」
「ああ!? 私の鰐肉ステーキの材料ガアアアァア!?」
「うわー! 儂の超高級鰐皮があああああああ!?」
そうして生まれた動揺による僅かな隙を突いて、捕まっていた鰐は身を大きくひねって二人の手から海中に逃げ出し、脱出されてしまった神楽と両津は悲鳴を上げてしまう。
「そんなことをしてる場合か神楽に両津! あのMSサイズはある化け物がこちらに向かってきて―――!?」
「こんクソガキに馬鹿蛇がーーー! 儂が失った超高値販売可能高級鰐皮財布をお前らの身で払えーー!!」
「―――えってぇええーーーーーーーー!!」
それにナタルの叱責が飛んできたその直後、両津は怒りで顔を真っ赤にして海面を猛烈な勢いで駆け出して彼女を驚かせた。
「だ、誰だぁ!? 誰でもいいから俺を助け―――!」
「邪魔だクソガキィ!! お前みたいな校内犯罪の恨みで地獄少女してるあい辺りに地獄へ流されそうなクソガキなんぞ知らんわぁ!!」
「―――ぇぶべーーーーーーーーー!!??」
テリヤはそれに希望を見出した顔で泣き付こうとしたが、金銭絡みでは無類の強さと執念を発揮する両津には小石同然に鼻から蹴り飛ばされて宙を舞った。
「お前もさっさとくたばって儂の金になれくそ蛇ーーーーーー!!」
「ピぎイイやああああああああああああああ!!??」
そんな両津の怒りパワーを乗せた拳は、デビル
「うわぁぁ!?」
「こっちまで飛んできたぁ!?」
そして、宙を舞ったテリヤとデビル
「…あ、アへへ…」
「ピ、ピぎイイイイ…」
「…ぁ…アアアアぁぁぁ…」
生きてはいるがデビル
「…あ、こいつらは確かこの星の難民キャンプで半グレ組織の元締めをしてたイルヤとその弟のテリヤだ」
「え? マジなのゼノビア?」
「ねーちょっと皆ー」
「何ーリュール君?」
「何か他に危険な猛獣が近くにいないかと水銀をあちこち伸ばして調べてみたらーなんか今日に沈んだばかりっぽい飛行カーが見つかったんだけどー…中からこのご時世に怪しさ満点の紙の書類がたくさん出てきてー…」
「とりあえず車の方は調べながらこの二人は病院に送って治療させよう」
「両さん、デビル
とりあえずデビル
翌日、テリヤが入手元不明な違法の携帯電話型危険猛獣操作魔術礼装を所持してそれを用いて多数の人間を襲撃していたこと、その兄イルヤが海の藻屑になっていた彼の車から発見された各種資料で人身売買や誘拐に麻薬取引など多数の重犯罪を多数働いていたことが発覚し、速やかにニュースや情報サイトの一面を飾った。
○
『…昨晩に猛獣デビル
『付属団体からの関連施設からは大量の違法臓器及び麻薬が発見されており、また行方不明者も多数発見されていて…』
『パルミュラ政府はコルシカ条約に基づいてサード・サマリア大使館の外交官特権の停止を宣言し、関連施設の立ち入り調査を…』
『今回の動きに対し銀河連合人権委員会は現地機関の独断と暴走であると表明しており…』
『銀河連合国際刑事機構は共同調査のための調整をパルミュラ政府に求めー…』
リュール達の所でデビル
(……不覚! せっかく先輩と偽装とはいえ夫婦になれたのに…あの他所の三流情報機関やそれに買われるようなカスな現地組織が目覚めさせたあのデカブツのせいで重傷を負って…こんな病院に缶詰めさせられるなんて…!)
先の巨人事件のせいでスピードリング参加中に重傷を負って入院中のウェスタニア工作員フィオナ・フロスト、コードネーム“
『…まだどこの誰があのデカブツを破壊してくれたのかわからんが、とりあえず止められて良かったな。あれに今のわかってる被害以上に暴れられたら我々WISEも相当巻き添えを受けた』
そのフィオナに話しかけている眼鏡が似合う知的な面貌をした看護婦の仲間が表向き使う名の一つはシルヴィア・シャーウッド。
フィオナと今回は彼女と共にスピードリング国際大会に出たロイド・フォージャーのWISEにおける上司で、シルヴィアの時はウェスタニアのラクファカール大使館の書記官をしている。
今現在、フィオナとシャーウッドは表向き患者と看護婦の何でもない会話をしつつ、実際は唇の動きを通して情報を交換し合っていた。
『…とりあえずお前の傷が治り次第我々はこの星を引き上げる。それと今回の主目的であるD.S.S.Dに流れてきている疑似星核粒子炉の確保任務はこの星では見送る』
『書記官! 足は万全でなくとも私には情報魔法が…うご!? そ、そこは骨折箇所…!』
『馬鹿を言うな、あの能無し屑ガキとその甘やかしくそ兄貴の下衆兄弟の間抜けのせいで他所が一気にあちこち芋づる式で引っ張り上げられてるんだ。こっちは今は大人しくしてるから
『…で、ですが…』
『“黄昏”の足を引っ張りたくは無いだろう(個人的には子供ばっか食いつぶした今回の連中の巻き添えは食いたくないし…)』
『…わかりました…!?』
『!?』
だが、その途中で二人は静か且つうまく隠されているが、己の感覚では確かに感じ取れる強大な気配を2つ院内の近くより感じ取る。
「…ここがラマウ…間違った、マウア達の友人たちが入院中という病院か…マウアと深雪に頼まれていた病院見舞いの品を持ってきたけがー…」
二人がその気配に釣られて病室の窓から下をのぞき込むと、病院正門前の駐車場をセリカがその赤い髪を風に靡かせながら
((…何で十三武海の一人であるあの“戦女神”が来てんだよ!? もうこの星には“巌窟王”もいんだろ!!??))
その姿を病室の窓より確認したフィオナとシルヴィアはポーカーフェイスも忘れて無言だがギョッとした顔で、その銀髪のエルフを見下ろしながら内心で悲鳴のような叫びを上げた。
「…ゼハハハ、あいつが自分の女を殺してその荒田を奪ったっていう“神殺し”か…確かに感じ取れる分だけでもすげえ“覇気”だ…」
一方、病院の屋上の一角より、以前リュールとチェリーパイ絡みで意気投合した樽のような巨躯の男がセリカを盗み見ていた。
「ティーチ船長、踏み越えたくなるお気持ちはわかりますし可能ではあるでしょうが…」
「わかっているさ、今はコツコツだがしっかりと売り込んでいくさ…ゼハハハ…」
樽体形の大男は部下らしき姿と相槌すると、まるで黒い煙のようになってその場から姿を消した。
彼らがどのような目的でこの星へ来たのか、そしてリュール達とどのようにかかわり合っていくのか、この時点でそれを
とりあえず、テリヤとイルヤの兄弟は豚箱(刑務所)行きとなって助かりました(今の所は)。
え、全然助かってないって?
いや、まあ、地獄に送られちゃうよりかはマシかと…。