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「一番倉庫のものから早急に入れろ!」
「明後日のに乗り遅れるとアーヴに直接締め上げられるぞぉ!」
海上遺跡再利用ホテル海上コテージへの正吉の水上オートバイ飛び込み急報より数時間後、アークエンジェルとそれが隠れているレジスタンス本拠地にある旧宇宙船ドッグ区域は非常に慌ただしくなっていた。
「…うぅーー、マードックさんあまりにもー展開が早すぎますよー…」
「泣き言を言う暇があったらさっさとデータ入力とOS修正を済ませろ嬢ちゃん! お前さんがこの中で一番早いんだからよぉ!」
その一角でキラは電脳と現実の空中のどちらでも、何枚もの映像を相手に泣き顔ながら超高速でPCを操作していた。
そんな彼女の近く、アークエンジェルの船体が浸かってる水面よりリュールが飛び上がってきた。
「マードックさん、船底の消毒及び清掃は終わりましたー。それとこっちのパルミュラニジイロフジツボは一応食用可能ですけどー…」
「それまで船に積み込まなくていい! メシマズイギリスの末裔アルウィン人かテメーは!?」
「あーじゃー権太さんにでも分けてきますねー…」
小さいコンテナくらいのサイズはある袋をジャリジャリ鳴らしながら歩くリュールは、海上遺跡ホテルの時と同じく青いブーメランパンツ型海パンである。
「…あのーリュール…何でそのー…海の時と同じくその格好ー?」
「…いや、だってー…あそこで着替えた時に水着を見せてもらった時にー…君にピッタリ合うサイズなのはこれだけだから我慢してって押し切られてー…調べたけどここの水は危険無さそうだし、銀連の船外作業スーツが動きづらいからー…もうあちこちから終わってない作業で押されてるしー…あーもうすぐ行くねー…」
「そ、そうなんだー…(…ドゥ…リュースと呼んでて水浴びした時はまだお互い小さかったし…、う…この星に着いたばかりの時…慰めてもらったあの晩ではよく見えなかったけど…海で見た時といい、やっぱりリュールってすごく綺麗で逞しい体をしてるんだなー…う、特にあのモッコ…した部分を見てるとぉな、何かぁお腹の下あたりがぁ熱くぅ…ぅうぅ!? わ、私ぃこんな子だったのかなぁ―――)」
「あーらら、大人しそうな子に見えてどっちも大胆な子ねぇ」
「―――あってのわぁ!?」
キラがそうして他所の作業に向かったリュールの背中に惚けた赤面を向けていたところ、アイシャがその背後に現れて彼女を驚かせた。
「あ、あなたはーーー…ってなんでこんな所にー!?」
「今現在、ザフトとここのレジスタンスの間の休戦協定締結のために行き来しているからよ。それにお礼も言いたかったからね」
「お礼…ですか?」
「ええ、あの巨人騒ぎでこっちも含めて大勢やられちゃってね」
「あー、死傷者が少ないというのはセレウキアの人達の方でー、現場に近かったザフトや帝国の方はー…あ、司令官であるあの人の姿を見れないってことはー…」
「ええ、アンディが特に助かってね。本当にありがとうー…?」
だが、驚きつつも問うキラにアイシャが答えようとしていたところ、キラが操作しているPC画面の一枚が緊急ニュース速報を映しだした。
『緊急速報です! セレウキア中央刑務所で大規模な火災が発生しました! 被害は急速に拡大中でー…』
「「…え?」」
その数時間前まで自分達がいた町の急な惨事の姿に、キラとアイシャは揃って目が丸くなった。
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「…まーたもめそうな材料が大勢出そうなところで慌ててもみ消そうとしてるなー」
「ドゥサーニュにはもっと予定を早めさせるべきだったか…」
「その辺は情報省の畑だろうし現地には“茨姫”含めて多数送り込んだ後だろう。今は近日中に辞める“葬送”の後釜だ」
キラとアイシャに不穏なニュースが入った頃、帝国行政の中心であるそこは現内閣の閣僚達が全員集まっていた。
「…彼女が辞めるのは痛いなぁ…」
「ああ、十三武海の中ではセリカと共に危険視しなくていい数少ない存在であったからなぁ」
「彼女は元から賞金稼ぎ業で生きていた所を十三武海創設時の時に声をかけて就任してもらった口だからなぁ…」
「ほとんどは元から海賊だったりで信を置けない気分屋共ばかりでしたからねぇ…?」
そこで閣僚がパルミュラからのその火災のニュース映像を見ながら話し合っていると、彼らは自分達と異なる誰かの気配に気づく。
「…ホホホ♪ まだお声掛けもしてないのに気づかれるとはさすが…」
閣僚達が視線を向けた会議室の柱の一本より、ひょろっとしているが背が高い警官風の衣装をした優男が出てきた。
「…貴様、ラフィットか…」
「知っているのか?」
「大星洋で名の通った保安官だ」
「度を越した取り締まりでクビにされた後で“白ひげ”の所に潜り込んだと聞いたがー…」
「ここまで騒がれずに来れただけの実力はあるということか…」
「おほほ♪ そこまでお知りしてもらえていたとは光栄です。此度は、私共からそちらへ提案がありまして…ある男を“葬送”殿の後任に推薦しようかとー…」
「「「「「……………」」」」」
当然、その警戒と威圧感を隠さない視線の雨の中で、謎の男ラフィットは物おじせずある男を紹介し始める。
○
「…と、これが今のこの船が残されたほぼ唯一の、この星を脱出して宇宙に戻ってジャブローまでの道に入る道です…」
帝国の中枢に怪しい影が接触してから二日後、ある海を進むアークエンジェルの艦橋で、レジスタンス妖怪狸から一時的に同艦へ案内役として移籍した玉三郎が改めてパルミュラから平面宇宙へ戻るための作戦を説明していた。
「…司令! 艦長! やはりこのような作戦は無謀です!!」
「だったらどうする? 帝国のあの姫様の親爺さんがここまで来るのをじっくり待つか? 向こうからしたら俺たちをとっ捕まえられる理由は腐るほどあるぜ?」
「…それは…ですが…」
ナタルやキュルケは反発を示すが、ムウにその懸念を持ち上げられると口籠る。
この惑星に帝国の皇太子に率いられた艦隊が近づいてきているが、先の巨人事件による駐留部隊の甚大な被害や、その後の闇市場大発覚スキャンダルによる大量の逮捕者発生を受けて、そのパルミュラ訪問が大幅に早まったのだ。
これまでは現地の帝国の駐留軍が一時的且つ(向こうでは比較的)小規模なものであったこと、非好意的とはいえ銀連と帝国は中立関係であったことで、アークエンジェルに帝国軍が接触することは無かった。
だが、間接や直接の違いがあるとはいえ、銀連と繋がりのあるテロ組織でここパルミュラにて帝国含めて大きな被害が出たことと、帝国の大艦隊が近づきつつあるこの状況では絶対ではなくなってくる。
むしろ、自分達の行為を考えれば絶対に抑えに来ると考える方が自然だろう。
「技術者たちの見解はどうなの!? 方法としては唯一であっても技術的に可能かどうかは別でしょ…キャアアァ!?」
そこでキュルケが別方面から反対意見を述べると、艦橋のドアが開いてそこから何本もの頭がない黒い大蛇のような触手が床を這うように侵入してきた。
「な、なにこれ!?」
「…あ、ああ、これは
それに驚く周囲にスメラギが説明しつつもどこか躊躇いがちになっていると、艦内にある別室から通信映像が入ってきた。
『ノリエガ司令にラミアス艦長、艦全体へ強化魔術を掛けるために必要なパイプを張り巡らせる作業が終わりまし…』
「ご苦労、そのまま予定通り続けて」
その通信映像にはMS格納庫の中心に大きく描かれて発光している魔術式の中心で座禅のようなポーズを組み、艦橋にも伸びてきた黒い触手を自分の鼻の穴から何本も伸ばしてもぞもぞと動かしているボーボボの姿があったが、無表情になったスメラギ・李・ノリエガは軽く労うと画面を消した。
「…こ、これってもしかしてー…あ、あの男の鼻―――」
「それでは“
「―――げ…ひ…ぃぃ…」
それであることに気付いたキュルケがある単語を口に仕掛けるも、スメラギの感情がないドアップ顔で視界を埋め尽くされると、その引きつった声で口籠った。
「…ゼハハハ、あれが例の銀連軍の新型艦かぁ?」
一方、そのアークエンジェルを海上から巨大な丸太を複数束ねたような独特の形状の宇宙船より、獰猛な笑みで見ている男がいた。
以前にリュールと街中でチェリーパイ絡みで意気投合した樽のような体型の大男である。
「ウィ~ハッハッハ! 前の船を
一方、その樽のような大男ティーチの傍で、目元をマスクで隠していて上半身が異常に逞しいが下半身は比較的普通という非常にアンバランスな巨漢が気勢を上げた。
「落ち着けバージェス、それとティーチ船長、ラフィットとは確かセレウキアの方で今週中に落ちあう予定なのに離れてもよろしいので?」
「ゼハハハ、それもまた巡り合わせ次第ってのが運命って奴だろうオーガー…ん!?」
その筋肉質な巨漢バージェスを、片目スコープに見た感じは古風的な魔法銃を携えた片目スコープの青年オーガーが窘めるが、ティーチは意にも介さない反応を見せたところで空に異変が生じる。
「…ぅ…おおおお…あ、あれはぁ…!?」
同じく舟に乗る死神のような黒い衣装でT字型大鎌を持つ病弱そうな大男が空を見上げると、空に白い気流が寄り集まるように生じていき、それが徐々に強まっていくと空に暗雲が生じて広がり、海面も荒れて海底に何やら赤い斑点のようなものがアメーバ状に広がり、湯気のような煙が幾つも生じていく。
「…ティーチ船長! あれはぁ…!?」
「…ああドクQ! …季節性ゲートとそれに引き寄せられたぁ…
「…さあ、今日の運命は誰をどのように選ぶか…まだ多くは知られざるだが大きな曲がり角である」
そうして荒れだしていく天と海原、その間を進んで行くアークエンジェルに男達は獰猛な笑みを強めていく。
((…な、何でこんなことに…!!??))
その様子を船内の片隅の影で、ギャグ漫画のようにフルボッコにされた後で雑そうな手当てをされた様子でガタガタ震える、イルヤとテリヤの小さな姿があった。
次回、あの人たちを少しながら登場させつつ、やっと主人公一行が次の舞台への出入り口を進む予定です。