○帝国暦949年4月11日朝
(…やっぱり授業はアーヴ自体の素地の高さを考慮してもー、元々居ただろう地球時代の同じ年代の学校のそれよりも遥かに高いな内容も教え方もー。まー、こっちはこっちで前世に染みついた性分で研究の類いが好きで、他にもそれぞれの科目ごとに必要な単位を取れば後は好きな授業を選んでいいというのが基本だから性分に合っているけど…)
プラント小銀河について某所できな臭い話が進められた日から一週間後、ドゥリュースはアーヴの性質から軍事色は強いながらも授業内容が良い意味で豊富でレベルの高い
「…ううむ、だからこそレイカ殿はあの清純な優しさとそれに裏打ちされた辛口とそれに似合う美貌を維持できるのでござるな…」
「いやー、今日の番組でもレイカちゃんってきつくも可愛らしい言い方だったねー」
「それがまさかこの
「うぅぅぅぅ! 俺の右手が今宵も唸るぜ…!」
「…うわぁ、今日もしてるよキモ男子ズ…」
同じクラスでは自分の同居人となっているその
「…でもさあ…あの見事なバディはマジで直に触りたいって思うにゃあああ…ハアハア…!」
「う…ソキア…」
「あんたねえ…」
(…まあ、同性同士でも子供を人工子宮で作れるのも普通になっているのがアーヴだからねぇ。クローンを跡継ぎにする人もいたり、そもそも制度として結婚や夫婦が無いのも合わさって獣以下だとか罵る他国もあるけど…)
そして、同居人を対象とした猥談に時々ある復讐系親子喧嘩漫画のスピンオフ作品で見たことがあるような少女が時々加わっているのも含めて、ドゥリュースは慣れるようになっていた。
『あ、リュース君おはよう』
そんな見慣れた日常の一幕にて、レイカが電脳を介して
『? どうしたの?』
『来週、私とあなたを含めて幾つかのクラスで初の星系間航行実習に出る予定なのは知っているわよね』
『まーうん、そうだけど、それがどうかしたの?』
『…それがー、何か気になる話を聞いたんだけどー…』
『気になる話?』
それはドゥリュースにとって懐かしい地への再訪と、古い友人との再会や新しいそれらとの出会いが、色々と予想の斜め上をいく形で行われることになる事からの始まりだった。
○帝国暦949年4月21日朝
「…まさか初の星系間航行及び外部星系への実習が…この星とは…」
『私語をしている暇があるなら早く艦内外作業を済ませなさい』
今現在、ドゥリュースは(多分最初の人生での故郷である)地球へ星系間航行及び地上訓練の実習のために着ていた。
『あ! 銀連のアガメムノン級
『すげー! 写メに撮っておこう!』
『そこのあなた達、この艦外作業が終わったら作業追加です。班員全員です』
『うげ!? マジかよー!?』
(クラスメートの巻き添えによるペナルティがきつく思えるなんて…まだ平和だなここは…)
士官学校の訓練とは言え同僚達が他所からの軍艦の来訪に興奮したり、それを教官達が叱ったり、その巻き添えにされる光景にまだドゥリュースは平穏を感じられていた。
「…ジブリ―ル科学技術産業委員会委員長、地球に到着しました」
「ああ、見えている」
一方、ドゥリュースと同じ班のメンバー達が注目した銀河連合軍のその艦には、彼の恩師が憂鬱を帯びた表情で乗っていた。
「…おお、これが我々人類の故郷…」
「写真で見たが何と美しい…」
「く…だが、今はあの悍ましいアーヴの手に…」
ジブリ―ルのいる部屋には他にも高官などの姿もあったが、彼らは地球に対する感動の声を上げる一方で、その周囲に浮かぶ
「ジブリール委員長、此度の交渉で我々の地球帰還及び土地の取得権については…?」
「その“我々”という言い方はあまりお勧めできませんね。貴方達みたいに実際に生まれ育った星ではなく他所の星に望郷の念を抱けるほど皆が想像力豊かというわけではないのだから。口の悪い人によっては“妄想力”と呼ぶ方もいますが…」
「…ぐ、し、失礼しました…」
彼らの何名かはジブリ―ルに期待半分という感じであったが、彼に軽く睨まれると唇を少し噛みつつも黙りこくった。
(…全く、上手く
その彼らにジブリールは詰まらなさそうな顔を浮かべつつも、内心では彼らの企み事への考察と対応でも頭を動かしていた。
○帝国暦949年4月21日夕刻
帝国の標準時間は地球時代の文化面や遺伝子面での根源とする弧状列島のものを基準としており、帝国標準時と同じく地球と宇宙を繋ぐそこの地上側は弧状列島と同じ時間帯なので空が夕日で赤く染まっていた。
「…うへー-、やっと終わったぜー」
「おおー、
「いや、まーこっちが元祖なんだろうけど…」
その軌道エレベーター地上施設にドゥリュースを含めた
「重力は…っとっと…重く感じるな…」
「近場には温泉や海水浴場もあるみたいよ」
「えー、マジで!?」
「温泉はわかるけど海水浴場って?」
「今この目の目に広がる“海”って言う塩分を含んだ水域の水辺とかに設けられた遊泳を主目的にした遊技場らしいよ」
「
「でも水遊びじゃ濡れちゃうでしょ?」
「あー、そういう時はこの“水着”ってのを着て遊ぶみたいよ」
「へー…どんなのーー-…ってこれってほとんど下着じゃない!?」
「こういうの着て遊ぶのが地上では普通みたいよ」
「えー? 何でそもそもこんな破廉恥な服が流行る地上世界にまで降りなくちゃー?」
「地上に不時着した場合を仮定しての野営訓練も予定にあるからねぇ」
「まー、あんたの場合はその背の小さいお子様体型じゃ似合わないしねぇ」
「もー! 皆があっちにいるレイカみたいに体が曲線美に恵まれすぎているわけじゃないでしょー!」
「…おい、あそこの女子たちの会話…」
「ううむ、という事はレイカ殿のあの妖艶な格好の姿も見られる可能性は…零ではないということか―――」
【離せ! 離せよこの化物の奴隷亜人共!】
【ここは私達の故郷なのよ!】
【だったら戸籍証明書で証明するかちゃんと移民もしくは難民認定してもらって正規手続きを通ってから移住しろ。不法滞在者】
「―――あ…ん?」
地上世界に降りるものが大半を占める生徒達は地上の景色や感触に好奇や不安などを見せている中、聞き慣れない言葉で叫んで抵抗しながらも軌道エレベーターの中へ引きずられている一団が近くを通りかかった。
「何だあの人達は?」
「…あ、
その一団に生徒達は奇妙がるが、ここ地球で何年か暮らしていた時期のあるドゥリュースが嫌な懐かしさを宿したその言葉を漏らして表情を歪めた。
「
「それが何で地上世界とは言え帝国領であるここにいるので御座るか?」
「
「多分、あの人たちはここで許可なしに集まって秘かに集落を築いて生活していた所を取り締まられた人たちね。工作員の拠点にされる場合もあるって言うから地上世界の治安機関や
「へー、そうなんだ…」
「…え、でも大丈夫…? だって…もしかしたら他にもあんな人たちがいるってことじゃ…!?」
うっかり口に漏らしたドゥリュースを含めた訳知り顔達の説明に、他の生徒達が興味や不安を強めたりした。
「いやまあ、軍の施設及びその敷地内がこっちでの訓練期間の中心滞在地になるから…そこやその近くには無いだろうけど…。それに…他国からは非人道的すぎるって言われる(且つ他国の難民で苦労してる人達やそれに支持されてる団体からは羨ましがられてるのも…多分最初の祖国であるこの星のあの弧状列島の国と同じ)レベルで帝国はそうした人達は取り締まってるし…(いかん、ブルーコスモスとか悪い意味での他作品系要素も多い世界だから…確率論的には凄く低いってわかってても…今までの経験からまた悪いフラグになりそう…先生も秘かに来てるって情報もあるし…)」
そうした空気のきっかけを作ってしまった気まずさでドゥリュースは自虐混じりながらも周囲の不安を弱めようとするが、生まれと経歴からくる嫌な予感を禁じる事は出来なかった。
現実でも、何処とかは言いませんけど不法入国者や不法入植地とか、問題がある人の出入りや移住が問題になっていますよね…。