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ティーチなる男とその一味が不審な動きを見せる少し前、アークエンジェルが向かっているその海域をある大型探査船が進んでいた。
「中川さんありがとうございます。今この時期にこちら所有の船で動くと色々文屋系の皆さんが余計なことをしますから…」
「いいや、正直この辺りの調査はこちらも早く進める必要があったけど、今この時期だとこちらだけでは難しかったから君たちの協力を得られてこちらが大きく助かったよ」
その甲板で帝国式の大気圏内作業服に身を包んでいるレイカが礼を言っているのは、日本皇国に拠点を置く大財閥中川家当主の息子にして、今現在はアークエンジェルにいる両津勘吉と同じ派出所に勤務している彼の後輩である中川圭一である。
見た感じは赤みが強い茶髪が似合う好青年で性格も良いのだが、副業が禁止されている日本皇国警察官で、実家の都合が関わる大事業に携わっているなど、両津とは別な意味で不良警官であった。
「…あれ? 何か反論を言いたいけど法的に反論しづらいナレーションを挟まれたような―――?」
「中川君! あそこ辺りから彼女のお兄さんと君の先輩の反応を強く感知したぞ!」
「―――あ…え!? 本当ですか龍郎さん!」
ちなみに今回の中川はこの星での中川グループ主導での学術調査兼資源探査に取り組んでいたが、その案内は司波達也の父にしてこの世界では子供達と妻から(長男からは若干(?)ウザがられているが)愛される考古学者兼冒険家の司波達郎に任せつつ、両津勘吉の捜索も行っていたのだ。
「いやー、アルバイト名義とはいえこんな綺麗な海に乗り出せるなんてー、やっぱり権力者とお金持ちの子とは友達になるに限るわねー」
「会長が言われてもあまり説得力が無いですよー」
ちなみに、同じ船に七草真由美と司波深雪の姿があった。
「…地磁気にも異常が…この反応はー…」
「ああ、想定よりも季節性ゲートが早く形成され始めているなー…」
近くでは司波達也と正体を露にしたラマウアの姿もあり、二人は周囲の環境を調査していた。
「…ぅうぅ、あの二人…幼馴染ってだけでも私は凄く不利なのにー…あの子はしかも超凄い所のお姫さまだなんてー…何かこの星での調査の共同作業から仲が深くなっていってる感じがー…!?」
ちなみにその二人に、影から光井ほのかという深雪と同年齢且つバストサイズでは上の美少女が羨望と嫉妬で複雑な半泣き顔を向けていたが、そこで周囲が急に暗くなっていく。
「お兄様! ラマウア…この急に生じた雷雲は…!」
「ああ、近づいてきているな…
それに司波兄妹が目ざとく反応したその時、二人の間を誰かが勢いよく飛びぬけた。
「…あの一番大きな渦の傍から…兄様の感じが…!」
「「「「「ちょっとぉあなたアーヴのお姫様でしょおお!!!??」」」」」
そう言い残してラマウアが司波兄妹の間を通り抜け、海上へ飛び出て荒海をまるでアメンボのように且つ超高速で進んで行き、周囲を驚愕させて青ざめさせた。
「…ん? 何だか別にまだ青いが中々素質はでけえ覇気がまたあの船に向かってる感じがぁ…?」
「おい! 船長! 目当ての足付きが一番デケエ渦に向かってるぜぇ!!」
一方その頃、ティーチたちはラマウアに先行する形でその荒れだしている海上へ向かっていた。
「…季節性ゲートが放つ磁気の影響でこの辺りの火山活動も活発化し、その熱で海水も熱く猛り、それがさらに水と風に力を与え…
「オオオオオオーーガーー様ああああ!! そんなしたり顔で言われてる場合じゃないでしょおおぉ!!(さっさとこんなくそ海域を離れろよこの超暴力糞共がぁアアアァア!! 全員がテメエらやガキの頃に出くわしたあのアーヴのガキみたいに化け物じゃねえんだよおおおおお!!)」
その中でイルヤは内心で罵詈雑言を浴びせながらも、顔は情けなさ全開の泣き顔で彼らに縋ってこの場からの離脱を体格差から小人にしか言えない様子で懇願していた。
イルヤとテリヤは瀕死状態でリュール達の元に漂着して病院に送られた際に犯罪行為がばれて同業者たちと共に警察病院に収監された後、これ以上まずい情報が明るみになるのを恐れたこの星に隠れ潜む各地諜報機関や犯罪組織に火災に見せられて他の収監者もろとも焼き殺されかけたところ、ティーチに救われるがその情報に目を付けられて、アークエンジェルまでの案内役をさせられていた身であったのだ。
「ああ、あんまりここへ長居すると少しまずいなこりゃあ…」
「そそそそうでしょ! だから早く―――!!」
「さっさと目当ての足付きを抑えてここから退くぞ!!」
「―――う…あ…」
「…………」
故に、ティーチに一瞬希望を見せられた後でそれをすぐ刈り取られると、イルヤは白目を向いてパタリと倒れ、テリヤは茫然と見るしかできなかった。
「…うおおおおおお!? 人口重力制御下だってのにここまで揺れるたあああ!?」
同じ頃のアークエンジェルはより嵐の中にいるため揺れが大きくなっており、マードックを始め人員のほとんどが声を荒げつつも必死に船体の維持に取り組んでいた。
「ぬおおおおおおおおおお! 鼻毛真拳三大極意! 熱炎漢浪漫!!!!」
特にその中心で、自身の魔術式を鼻の穴から艦内中に張り巡らせて艦全体の強度を底上げしているボーボボが気勢を上げていた。
「ぬおおおお! まだ海流に乗り切れてないってのにぃぃぃぃ!!」
「今の内からもううぅすげえ魔力が吸われてくうぅ!!」
「皆ぁ! 凄い威力で吸われてるのはわかるけど今の内から吸われ過ぎないようにしてぇ!」
「まだぁ海流に乗ってないんだぁ!!」
そのボーボボの周囲には、天の助、首領パッチ、リュール、玉三郎などと言ったここアークエンジェルで魔術技能を持つ面々が揃い、ボーボボへ魔力を注ぎ込んでおり、その魔力の管理をキラがPCで制御しており、フレイは治癒魔術で彼らを支援していた。
「何とか予定位置の海流に乗れそうです!」
「ノイマン少尉! 操舵は全てあなたに任せるわ…!?」
こうして船を維持している間に艦橋の面々は苦しい顔を見せつつも予定通りに船を進めていたが、そこでレーダーに大きな反応が出た。
「三時方向より本艦の34パーセント程度質量の大型物質が急接近中!!」
「! 回避ーーーー!!」
「ブオオオオオオオオオ!!??」
だが、その途中で艦に大きな影が迫ってきて、アークエンジェルの操舵手アーノルド・ノイマン少尉がこの世界でも超操舵手ぶりを発揮してギリギリで回避したが、間近で着水したことによる衝撃とその何かによる悲鳴じみた咆哮が艦を揺らしてきた。
「オオオオオオ!!??」
「な、巨大な海亀―――!?」
『ゼハハハ!! おーい!! 聞こえるかー足付きーーー!!』
「―――え…!?」
艦のカメラ画像を大きく占めるその巨大亀の顔にスメラギは驚くが、そこで艦の通信に割り込んできた。
「!? オープン回線で何処からぁ…!?」
マリューがその回線に不審を覚えた直後、ティーチのドアップ顔がアークエンジェル艦橋に映し出された。
『テメエらの船には
『ブオオオオオオオ!?』
『ギャオァアアアアアァ!?』
そのティーチが乗るのはアークエンジェルには遠く及ばない丸太のような鉄パイプを何本も束ねたような粗雑な宇宙船だが、彼の頭上には何故か黒い煙のようなもので出来た鎖で拘束された、アークエンジェルと同程度の大きさはある巨大生物の姿があった。
「…っ!? あの男は何者…!?」
スメラギはその気配に只ならぬ気配を覚えるが、宇宙空間でまだ姿を見せてないが反応を微かに示す敵艦が真下から近づき始めているのに近い、危険を覚える。
「…あれ? 何だか海面が静かに…?」
「静かになったんじゃない! 奥底に潜んで溜まり始めただけ! ノイマン! すぐにAK58ポイントに向かって修正!!」
「っ!? は、はい!?」
アークエンジェルが大きく海面上で進路を変えたその時、その辺りの海面がまばらにだが広範囲にわたって赤く光り出し、湯気が何本も立ち始めた。
「…あ、こいつは…まさか―――!?」
ティーチもそれに気づいて海面を見やったその時、海面が赤く大きく光って船の真下からすさまじい衝撃波が襲い掛かってきた。
「―――あってギャアァアアアアぁアアアァアアアアアァ!!??」
当然、丸太船のような粗雑そうな宇宙船が耐えきれるはずがなく、船体は粉々に吹き飛ばされてティーチ達は悲鳴を上げながら宙を舞った。
「…あ、あれが…
それはゲートが発する磁気の影響で活発化した海底火山による噴火を乗せ、その溶岩と水蒸気爆発で膨張した蒸気、それらも含めて周囲の海流も引き寄せるゲートまで繋がる巨大竜巻のよう見えたが、それをMS格納庫のテレビで見て驚愕したキュルケも含めて、重力制御装置でも消しきれない凄まじい揺れが襲い掛かる。
「もう駄目だぁああああああああああああああああ!!」
「いくらこの星の重力の関係でええこの船でもぉ宇宙に戻れるルートがぁ協定を結んでない軍艦じゃ通れない協定があるからってぇこんな方法ううぅ!!」
「大人しく帝国軍にでも投降してぇアーヴの美人看守さんがいる収容所に入れば良かったぁぁあぁアアアァアしょオオオオオオオ!!」
当然、カズイ、新八、バッチグーと言った普段はそこまで気が強くない面々は泣き叫んで狼狽える。
「皆ぁ狼狽えないでぇ!! この船よりも脆くて小さい
「何か凄いメタっぽい発言が出た気がする!!!!」
そんな中でリュールはまだ取り戻せてない分の記憶に押されてか自分でもよくわからない言葉で周りを落ち着かせようとし、隣でボーボボへ共に魔力を滅茶苦茶吸われている最中であった銀時の突っ込みを浴びてしまう。
「…よし! 上手く海流に乗れたわ! このまま一気にゲートへ…!?」
一方、艦橋の方では順調そうに見えかけたところで、ゲート付近から艦の半分くらいのサイズはありそうな巨大溶岩が降りかかってきた。
「…まずい! こいつは避けきれな…!?」
艦の操舵手であるノイマンのその言葉に皆が絶望しかかったその時、その巨大溶岩は真横から突然飛んできた巨大な金属の巨人のそれを思わせる手で大きく弾き飛ばされた。
「…よし! 上手くいったか…!!(あの船から何故か…兄様の気配がしたけど…)」
アークエンジェルは気づかなかったが、その巨大な手は下の海面上に浮遊していたラマウアが海底の岩石を操作し変化させて撃ちだしたもので、彼女の背からはその身から直に生じて伸びているような金属質の鈍い光を放つ触手状の何本もの手が伸びて魔力を生じさせていた。
「(まだ不安だからもう少し近づいて確認を…う…私ではまだここまでか…)あ…」
だが、その先の干渉の疲労が極度に酷かったためかラマウアは瞼が酷く重くなって身から力が抜け、海面を歩けないまでになってその身は沈み、そこへ砕かれた溶岩の破片の一つが落ちようとした。
「…全く、毎日あれだけ働いている後でも急に体を勘や本能で動かされるのは兄と同じか…」
その溶岩を、遅れて駆けつけた達也はピストル型CADで移動魔法を繰り出して他所に飛ばした後、沈んで意識を失っていたラマウアの身を海面から抱き上げた。
「…おやおや、まさかあの方法で本当に
それらの光景を、近くの海上コテージ風の別荘より顔に包帯を巻いているアンドリュー・バルトフェルドは静かな期待をにじませた顔で見上げていた。
彼は先の巨人テロで重傷を負って今はここで療養中の身であった。
「…嬉しそうねアンディ、あなた…あの子達…特にあの子とはこれ以上やり合わなくて済んでホッとしてるでしょ」
「先の長い若者が道半ばでついえる場面を見て喜ぶほどまだ冷たくはないつもりだよ」
その傍にはアイシャの姿もあり、二人の表情と言葉に偽りは無かった。
「…ゼハハハ! 逃げられちまったなぁ! あいつらもまた運が良いなぁ!!」
一方、まだ荒れている海上を漂う鉄パイプの一本に、ティーチは笑いながら乗っかっていた。
「笑ってる場合じゃねえだろ船長! さっさと次の船を調達して追おうぜ!!」
「無理を言うでない。あのゲートは季節性のものだからもう持たぬ」
「けどよー…」
「ゼハハハ、まーそうカリカリすんなバージェス! このありえない事なんざねえのがこのだだっ広い銀河! 向こうも運が良いんだからいずれ会えるさ!!」
傍目で見れば荒海で遭難中だという状況なのに、全く意に介さないという様子でティーチは哄笑していた。
ちなみにイルヤとテリヤの兄弟は嵐の影響で半死半生でアイシャ達が泊まるコテージ近くの海岸に漂着し、そこで口封じを狙った亡国の工作員に殺されそうになったところで彼女に助けられ、呼ばれた警察によって工作員もろとも警察病院に送り帰されたらしい。
やっとアークエンジェル一行をパルミュラから脱出させることに成功しました。
次回は、ここ最近は出番がなかった面子を絡めて国際情勢に触れるパートも出てくる予定です。