○
「…ついに休暇と半分それの首都哨戒及び技術試験も終わりましたねー」
アークエンジェル一行が惑星パルミュラから平面宇宙にどうにか戻った頃、ニコル・アマルフィはプラント首都での休暇及び軍務を終えて、前線に戻るべくステーションの廊下を歩いていた。
「ああ、ニコルも来たんだな。メアリももう来ているぞ」
「…あ、本当に来たんですね…」
輸送船への待合場所には同じクルーゼ隊所属のアスランとメアリの姿もあり、三人は合流すると初めは平静な表情で通路を進んで行く。
だが、少ししてメアリは他の二人に何か心配がちな眼差しを向けられるようになる。
「…いつまでそんな目つきをするんだ二人とも? もう
「…いや、そういう話ではー…」
「…本当にあの晩は顔を整形で似せた別人じゃないかってくらいに荒々しくて…人に恥ずかしいことを言わせたのに…今が普段なのに違和感を覚えるな…」
「あ、あれはー…僕が以前にお土産に買った菓子に酒が混じってるのに気づかなくて口にして酔った勢いでー…あわわわわ!?」
そんな眼差しにメアリは怪訝な顔で自身の下腹部を指さし、ニコルはそれで頬に朱色御浮かべて視線をあちこちに彷徨わせるが、今度はメアリの頬に薄朱色が浮かんで羞恥を一粒滲ませたジト目を向けられると、ニコルの方が顔を真っ赤にして視線と手をバタつかせた。
「…なあ、そこまで慌てるなら
「いや…そういうのって普通…女性の口から出るものではないかとー…」
「え? 何だまたその凄く微妙そうというか可哀そうな童を見るような顔はー…?」
それに今度はメアリが心配そうな顔になるが、その顔で放たれた提案の意味をコーディネイターの地頭の良さですぐ理解したニコルとアスランは若干引いた顔になった。
「…でもなあ、実際にまだ早いんじゃないか? そもそもの切っ掛けがお互い…酒の勢いだし…それにー私はまだ17でお前も15…グラディス教官も早いと言っても19だったし―――」
「メアリ、周囲の視線が…」
「―――い…あ…」
それに戸惑いつつもメアリはお互いの年齢や身の上などから現実的な問題に触れるが、周囲の様子に気付くと一旦口籠る。
「…え? あの二人…まさか“授かった”で
「…士官学校でとりわけ真面目だったあの二人がねー…」
「いやー、真面目な人ほどストレスで夜は大胆になるって噂は本当だったんだなー…」
「二人とも、急いで船に乗ろう」
「は、はい!」
「わ、わかった」
周囲からのその好奇の色が強いニヤニヤした視線の雨に、三人は居づらくなって早足でその場を立ち去っていく。
「…あの、メアリ…」
「…っ…な、何だ?」
その中でニコルは顔を赤くしつつも、頬に薄朱色が灯ったままのメアリの手をギュッと強く掴んで静かに問うていく。
「…あなたと僕のー…絆の証がー…
「…っ…嫌…じゃない…」
「じゃ! じゃあ少しくらい予定前倒しでもー…!!」
「………」
仲間内で一番大人しかったはずのニコルの早すぎるその言葉と、クールであったはずのメアリがしどろもどろになって繰り返すその惚気話を、アスランは気恥ずかしさで視線を斜め横にずらしながらも同行するしかなかった。
「…ギレン・ザビ古代文明研究委員長、あちらが例のパルミュラの遺跡で発見及び保護とこちらまでの移送に成功した…
「更にパルミュラでの例のテロで消滅したという形になっている、帝国産のスラスター兼エンジンである
一方、三人が進んでいる廊下とは別区画にある、短期人工ゲートステーションセンターの極秘区画にてギレン達の姿があり、彼らはあるものが運び込まれていく光景に愉悦の笑みを浮かべていた。
「…これで我々が進めている旧時代への“鎮魂歌”と新時代の“創造”は大きく進むでしょうな…」
「………」
その中でギレンと同じくプラント最高評議会議員の一人で、ニコルの父であるユーリ・アマルフィの姿もあったが、彼の表情は科学者として強い関心を抱きつつも為政者として危険物を見る色が複雑に混ざり合っていた。
「…なぁギレン、クラインの慎重すぎる意見もだが…炉の方はともかく…これはあまりにも早くはないか?」
「…アマルフィ議員、例え道程が自分好みであろうとも…
「…………」
だが、その身で実感させられてきた抑圧と差別の記憶を、最近にてわかった
○
「…またプラントからカーペンタリア方面に大規模な移動が…」
「くそ! 連中め…こちらに制宙権が無いと思って…!」
ニコルとメアリの間で色々と早そうな惚気話がなされて翌日、銀連軍側はザフトの動きに対し歯噛みしていた。
「…どうやらザフトが近い内に大規模攻勢を掛ける準備を進めているというのは噂だけではないようですね…」
「ああ、とうとうビクトリアも落とされた…」
「連中め、自分達の喉元に近いゲートは全て落とさねば気が済まんらしい…」
「…だとすると、やはり最後はスエズですか…」
歯噛みと悩みが深める顔を浮かべ合う前線の将校たちの間に ある艦の動きが話題に出る。
「…それで例の
「昨日に漂着していた現地惑星を脱出し、平面宇宙に戻れたようですがぁ…」
「どうやら未だに友軍を付けてもらえず、単独でパナマに向かわされていると…」
「ジャブローのモグラ連中め…この期に及んでまだ…」
だが、その話でも上層部への不満と憤りが露になっていた。
○
「…うわー! すごく綺麗ー!」
「パルミュラも綺麗だったけどー、ここは別ベクトルで凄いですねー」
一方その別の前線で取り上げられたその大天使、アークエンジェルはパルミュラに発生した季節性短期間ゲートを通過することに成功し、平面宇宙を無事に通過して通常宇宙に出るとある星系に出ていた。
彼らが出た星系は一つの大型の恒星を中心として複数の惑星がその周囲を展開しつつ、何と巨大な水流が星系内を何本も行き来しているというシュリーヴィジャヤ星系である。
「…うわー、見てキラ! 白くて可愛いけどすごく大きい鯨がー…」
「う、うわー…こんな怪獣もいるんだー…フレイー…」
「す、すげー…宇宙から見ても惑星の海のほとんどを綺麗なコバルトブルーの海が占めてー…」
その宇宙でもほのかに青く明るいという空と、その中を何本も大河の如くうねる水流にそこへ散りばめられた巨大な宝石を思わせる青き海の星々、それらの間を行きかう怪獣の姿に若い面々は驚き、感動を顔に浮かべていた。
「ほら! リュールも見てよ―――」
「あー…うん…綺麗だねーー……」
「―――お…あ…」
感動している面々に混じるキラは幼馴染に振り向くが、そこで点滴を打ちながらそれを引きずっている状態で顔を青くしているリュールはか弱い声で相槌を打った。
現在、リュール達は先にいた惑星パルミュラを
「…リュ、リュールー…だ、大丈夫ー…?」
「…大丈夫じゃないっすよ…自分…虫けらっすから…」
「ボ、ボーボボさんそこまでーー…って実際に首から下が人間サイズ芋虫になってるー!?」
「キラ、落ち着きなさい。首領パッチさんなんかもうカビが生えて萎びれた柿みたいになって、天の助さんは乾ききったスポンジのようになってカピカピの穴だらけになってるわ…」
「どうなってんのよ体の構造!? どういう種族!?」
「落ち着けキュルケ」
但し、リュールはまだマシな方の部類なのは一同の様子からして一目瞭然であった。
『こちら司令のノリエガです。本艦は○○分後にシュリーヴィジャヤ星系第3惑星に大気圏突入します。次の季節性短期ゲートは予定地の大気圏内で生じるので、そこへ行くのは事前に説明したとおりに○○時間後となっています、そのため本艦はその予定地で駐留する予定です』
「……む?」
だが、この中で一番酷そうだったボーボボの顔は少し変わり始める。
『…現地環境の状況次第にもよりますが、次のゲートを通過するまでは交代制で地上での休暇も許す予定で…』
「行くーーーーー!!!!」
「ぐはぁ!?」
「ボーボボさんが蝶になってそれで生じた羽ばたいた羽でキュルケが吹っ飛ばされたー!!」
そして、自分よりも酷い状況から一変して元気溌溂となったボーボボにリュールはテンションが高い突っ込みを上げた。
「何か突っ込んでるリュールの方に繋がれている方の点滴の中がすごい勢いで減って当人の数値も健康状態へ一気に戻ったんだけどー!?」
「将来有望なボイン赤毛ちゃんともあろうものがいちいち狼狽えるな嬢ちゃん。野郎たるもの水辺でボンキュッボンな水着美女を目に出来るチャンスがまた来たとあればテンションで回復なんてこういうパロディギャグクロスオーバーSSっぽい世界では珍しくねえことだ」
「何か銀時さんも漫画ならコマを埋め尽くしそうな長い台詞を言いながら復活したんだけど!?」
こうしてギャグ漫画的なご都合主義と生命力で、ボーボボ達は続々と復活していった。
○ハニア大星域 銀河中心領域付近 マラッカ星域 シュリーヴィジャヤ星系 某宙域○
『…そういうわけで足付きは油断ならない相手であり、こちらからも増援を送りますゆえに…』
そのアークエンジェルが一時期駐留することになった星系のどこかで、ザフトのある艦隊の元へクルーゼからのビデオメッセージが届けられていた。
「…ふん! クルーゼめ…いちいちこのようなものを送ること自体が安い挑発だ…」
それを送られた先の艦隊の提督である、欧州系の髭面の男マルコ・モラシムが鼻息を荒くする。
「例の足付きの動きは?」
「は、パルミュラから送られてきたデータからして、もう既にこの星系に侵入してきた模様です。短期間季節系ゲートの消滅後残存粒子からして位置の特定はあとー…」
「…足付きめ、ここマラッカで漁礁兼餌にしてやる…! クルーゼ隊の連中にはおこぼれをくれてやるさ…」
ビデオメッセージが切れると、モラシムは部下と共に獰猛な笑みを浮かべ合った。
○
「うわー! パルミュラも綺麗だったけどー!」
「すげえ! デカいクラゲみたいな生き物がぁ空と海面を行ったり来たりしてるぅ!」
ザフト側で不穏なやり取りがなされた日の翌日、アークエンジェルクルーは次の星系に進むゲートが出てくるだろう予定地に上陸していた。
「ノリエガ司令にラミアス艦長ー、地上組の野営地の設置終わりましたー」
「ああ、ご苦労様リュールく…ってなんかテントの中に割と立派な海の家が紛れてるんだけど!?」
そこの一角にテント主体の野営地が築かれていたが、そこには一階が飲食店をしていて二階に居住区画があるという、この場では割と立派な海の家が出来ており、アークエンジェルの艦橋メンバー組を大いに驚かせた。
「おい! こんな建物があるなんて聞いてないぞ! 何が起きてるんだ!?」
「だ、大丈夫ですよバジルール艦長!
「そんなの信用できるわけー…は? 整地作業…??」
「ぅ…ぅうぅ…リュールゥ…もう…げ、限界…」
「…あ、あんたこれ…教育虐待に…労働基準条約無視…ガク」
「何か建物の影から大工道具を手にげっそり痩せたキラとキュルケが出て来たんだけど!?」
色々と不審な点が多すぎるその海の家に正規クルー達は驚き警戒する。
「あれ? そう言えばリュール君も大工道具を持っているけど―――」
「リュール、こっちの岩場の岩から錬金術で鉄材を作りましたけどどちらで使いますかー?」
「―――お…え? 日光さん…何その大きな鉄骨…?」
「あ、いいや、もう海の家は出来たから作らなくていいのよ」
「え、そうだったのですかステラ?」
「勿体ないからそれを儂に寄こせ。他の作ったが余った資材と共にBBQ用の道具にでも変える」
「わかりました両津さん」
(((((自分達で建てたのか!!??)))))
そして、リュール一行の言葉のやり取りからその建物の不審点の正体に気付いたアークエンジェル艦橋メンバー達は驚愕した。
次回、南国の島での平和日常(?)回をしつつも、SEED(?)あるあるな展開もあります。