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「…どりゃー! ガイア直伝スライディング弾幕ー!!」
アスランに謎(?)のボールが襲い掛かった日の翌日、白い砂浜の一角が爆撃を受けたように砂煙を立ち上げ、砂とそれらに含まれる大小多くの岩石が超高速で撃ちだされる。
「のわ―――!?」
「隙ありぃ!」
「―――あべしぃ!?」
それをリュールはジャンプして回避するが、その頭上に両津は同じくジャンプで回り込み、その手で投げ飛ばしたビーチバレーボールを鼻っ面に叩きつけて白い砂浜でその身をバウンドさせた。
「あー!? 何してるのよリュール君!?」
「イエーイ! やったわよ両さん!」
「おお! これで今晩の海の家の二階の宿泊権は儂らのもんだー!!」
セレーナが悲鳴混じりで非難する中、両津とネーナは勝利を喜んで上げて手をパンと鳴らし合った。
今現在、アークエンジェルはこの地に臨時で建てられた海の家の宿泊の権利を巡り、ビーチバレー大会を開いていたのである。
「…ビーチバレー自体は軍の体力強化訓練の一環で銀連や帝国問わず行われているそうですが…今回の名目もそうですし…」
「…だからってあのオヤジは強すぎるだろ。良くも悪くも…」
「あの両津さんにあそこまで食いつけるリュールも凄いけど…やっぱり両津さんが一番すごい…」
「…人間のナチュラルじゃなくて、ドワーフの人から髭の分も含めた全リソースを身体能力にぶち込んだコーディネイターなんじゃ…」
一方、その様子を日光とカガリに
ちなみにこの海亀はここへ駐留している間に、神楽が食料目当てで捕まえたところを、それは可哀そうだと周囲の女性達が止めたところで今度はその女性達に懐いてきたので、アークエンジェルが出発するまでの間は襲われたりするのを防ぐため、現地調査と言う名目で彼女達が世話をしている状況であった。
「…あ、負けちゃった組の人達で昼飯の準備を始めましたね。リュールには悪いですけど彼は料理も上手いからー…」
「うん日光ー、リュールって子供の頃から料理が上手いからー………それに比べて私って料理の旅にキッチンを酷い目に遭わせてそれでお母さんに何もしないでってしょっちゅう言われてー…遺伝子調整とかの時にどんなミスがあったんだろう??」
「ああ!? またネガティブモードに!」
そこで海の家から美味しそうな匂いが漂ってくるが、それで自身の女子スキルの低さを思い返したキラのうじうじしたオーラが急速に漏れ始めた。
「…あーもーうじうじするな。大丈夫だ」
「…ふえ?」
その傍にいることも忌避したくなるうじうじオーラの中、カガリはどうということないという感じでキラを思いっきりギュッと抱きしめた。
「お前なあ、そんなにうじうじするなら何でコーディネイターなんだよ?」
「え?」
「あ、言い間違えた。コーディネイターのくせして銀連軍にいるのは何故だよ?」
「…あ、変かな…やっぱり…」
「…経済とかBETAとかいろいろあるけど、結局この戦争はナチュラルかコーディネイターかで戦争してるんだぞ。それなのにコーディネイターが銀連軍にいるなんておかしいだろ」
「…そ、それはー…」
「それに比べればお前が料理下手だなんて言うのは普通の人間の得意不得意の問題だろ」
「………」
そうして掛けられるカガリの言葉と彼女の体温は、キラにとって安心できて且つ何故か懐かしさも覚えるものであった。
「…さー出来たよーアークエンジェルシーハウスバーガー」
「うわー! すげーうめー!」
「本当ネ! ハンバーガーに肉だけでなくパイナップルまで加えるなんてけったいな組み合わせと思ったけどいける味ネこれー!」
「…本当に飯まで上手いなんて…何でここまで出来るのよあんた…」
「冷や飯ばっかのドイツ…ウェスタニア人のキルケが言っても説得力ある味だわこれ…」
数分後、リュールが中心になって作られたその昼食は意見こそ様々だが好評を集めていた。
「…美味しいわねリュール君、パルミュラを出た時に色々物資を詰められはしたけどー…果実類はそこまで詰めなかったのに…どうやって?」
「あ、パイナップルみたいな果実はそこに生えてるアダンみたいな樹に生えてたのを調べたら、味や栄養素に果肉がほぼパイナップルだったので、毒や麻薬のような成分が無いのを調べたうえで利用しましたラミアス艦長」
「へー、意外な発見ー…あ、この陸地の果実を利用したアイスクリームうめーじゃん。でもよーこのアイスさー何か牛乳でも変わってそうだなー…」
「それに肉の方も艦に積んだものとは違うようなー…?」
「ああ、銀さんに両さん、それならこの現地で牛に似た生物を発見したので、調べた上でその肉や乳を使用しましたけどー…」
「へー? どんな感じリュール君?」
だが、その疑問が混じりつつも高まっていく好評の群れは、セレーナが何となく放ったその質問を契機として一気に進む道を変えることになる。
「こっちのサイズはあって足がたくさんある牛みたいな生き物です」
「「「「「ブーーーーーーーーーーー!!??」」」」」
リュールが海の家の倉庫のドアを開くと、そこには前足が八本で後ろ足が八本で計16本の足を持つという異形の姿を持った牛の姿があり、それを目にしたアークエンジェルメンバーの多くは驚いて盛大に噴出した。
「うわ!? 汚いからこっちに向けてはかないでよ!!」
「ネ、ネーナそんな問題じゃないでしょうが!?」
「つーかどうしてそんな平然と食べ続けられるわけあんた達!?」
「新八と言い肝っ玉の小さい連中だナー、こんなの足が増えているくらいでただの牛さんネ。パンデモニウムの姿揚げと大して変わんないネ」
「いやね神楽ちゃんこれパンデモニウムさんと同じくベルセルク星系にでも出てきそうなレベルだよ!!」
少数の帝国系の人物はそれの方に驚いて怪訝な反応を示す。
「…ゲホゲホ! 皆おおぉ落ち着け! こいつらの世界や文化じゃむしろこういうのは自然だ!!」
その両者の間に吐きながらも立って仲介に立ったのは意外にも両津だった。
「りょ、両津中尉? どういう事!?」
「ラミアス艦長も帝国を扱った番組で何度か見たでしょう! 帝国とか人間以外の種族が多い国でこっちから見たらイケメンと見た目もうエイリアンな連中が普通に同じテーブルを囲んでそんでこっちから見ても美味しそうな御馳走とゲテモノ料理が混じる飯を普通に洗練されたマナーで口にするシーンを!!」
「そ、そうだけどーそれがどうしー…?」
「こういう食材は帝国とかそういう所ではさして珍しくないんですよ! ほら! 今そこで食事を続けているあの子がそうですよ!?」
「え? 私?」
急に自分へ話を振られて戸惑うステラ。
ちなみに今の彼女はフライドポテトを食しているように見える。
「あー旨いなーこのフライドポテトー」
「いやこれ、私がここにいる間に森で見つけたハチの巣から取ってきたハチノコ」
「ぶふーーー!?」
首領パッチもそれを上手そうに食っていたが、ステラの彫像のような顔でさらりと出されたその答えで、盛大に噴出して彼女の顔を大きく汚した。
「…あー、懐かしいわねー。子供の頃にサンヘリオスへ留学させられた時にエルフの人の学舎の家にホームステイしててそこの人たちは凄い人格者だったんだけどー、唯一とても怒られたのがそこでの歓迎会に出された初めての料理でー、タガメみたいな虫のアルミホイル包みチーズ焼きがあってそれを残した時だった…」
「…ギャアァアアぁ…」
その光景に日光が過去を思い出した乾いた笑みを浮かべるが、彼女の背後の物陰には無表情で光が無い瞳を浮かべたステラがやけに手を慌ただしく動かしており、何故か首領パッチの悲鳴と共にオレンジ色の悲鳴が勢いよく噴き出てステラの顔を汚していった。
「…難しいな。食文化による違いは軋轢に繋がりやすい。下手をすればこの
過酷な戦場暮らしで且つ多様な帝国人系傭兵や民間軍事会社とも付き合いがあるボルボが、超多脚牛の牛肉使用ハンバーガーやフライドハチノコを普通に食べながら懸念を口にすると、まさにその軋轢が形になった。
「ここは銀連の船よ! ドクツの頃から頭が進んでない連中の寄食に付き合ってられないわ!!」
キルケがもう死んでいるように見える多脚の牛を処分しようとしてか、この場ではBBQ添加用ガスバーナーとして持ち込まれていた軍用火炎放射器を手に取った。
「あ! 待ってキルケ! バーガーの肉にした方とは違ってそれはまだ捕まえて眠らせただけ! それに微量だけど神性持ちだからまだ君の手には負えな―――!?」
気づいたリュールが止めようとするも少し遅かった。
「!? ブモオオオオオオオオオオ!!」
我が身に迫る危険に気づいたのか牛はクワっと目を見開かせ、角を振ってキルケが向けてきた火炎放射器の噴射口をはじき返すと、彼女の手に嚙みついた。
「いだぁ!? 何をすんの…!?」
それにしかめっ面となったキルケを次に襲ったのは、我が身を包み込む浮遊感と視界を埋め尽くす青空であった。
「―――あ…」
こうして止めようとしたリュールら他の面子の前で、キルケ・シュタインホフは牛の超怪力で開いていた窓から外へ勢いよくぶん投げられてお星さまになった。
「「「「「キルケが星になったー!?」」」」」
「…あーもー仕方ないなー、カモーンバルバトスー」
それで周囲が驚愕する中で、一人だけ疲れたけど仕方ないという顔でリュールが電脳画面で映し出したタッチパネルを操作した。
すると環境試験や検証のために野営地がある浜辺の一角にテントで隠されつつも出されていたバルバトスが、テントを払いのけてリュールの元に飛んできた。
「MSが搭乗員なしに動いてきたー!?」
「戦闘が無い間に調べたり回収していた間にMSの無人操縦や遠隔操作の実験もしてたでしょ。その成果だよ。これに乗ってあの子を助けてくる」
それに驚くキラの前でリュールは軽くジャンプしてバルバトスに搭乗して、そのままキルケがお星さまになった方角へ飛んで行った。
「ちょっとリュール! 勝手にMSを操作して単独行動するのは―――!?」
「おあじゃアアぁアアアァアアアアアァ!?」
「ブモオオオオオオオオオオ!?」
「おいイイ! お前さんを捕まえたりその身内をハンバーガーにしたのは今さっきに飛んでいった奴だぞーー!!」
アークエンジェル司令官ノリエガは当然それを止めようとするが、軌道を変えられた火炎放射器の炎に自身のアフロへ火を付けられてあたふたするボーボボ、意識を取り戻した神性持ちの多脚牛に邪念を嗅ぎつけられたのかそれに追い回される両津の姿に邪魔される。
「―――あ…と、とりあえずー…リュールへ同伴機を送りつつ、こっちも被害が今以上にならないようにしましょうか…」
「…あ、はい…」
その光景でスメラギたちは緊張を一気に抜き取られつつも動き出した。
「…この辺りがこの前に妙なボールらしきものと衝突した場所だがー…」
数十秒後、アークエンジェルが止まって隠れている海岸より離れているその海上で、アスランはイージスガンダムに乗ってその辺りを捜索していた。
「……いいやああああああああああああああああ!!??」
そこへ超高速で投げ飛ばされて泣き喚いている状態のキルケが飛んできた。
「…え? 何だこの声は―――!?」
『あべぇ!?』
「―――あってうわああ!?」
その悲鳴を機体越しに聞いたアスランは初め奇妙がるが、キルケがそのイージスガンダムのツインアイカメラぶち当たり、コクピットの画面を自らの身で埋め尽くすと驚いた。
「…あ…あーーーーーー…」
どうにか習いたての魔術で身を強化していたことで目に見える負傷は鼻血程度で済んでいたキルケだが、あまりの衝撃とダメージで気絶してズルズルとイージスの画像に鼻血の跡を残しながらツインアイより剥がれ落ち、重力に従って海へ向かって真っ逆さまに落ちていった。
「危ない!!」
だが、海面に叩きつけられて完全にグシャっとなる前に、バルバトスの手はキルケの身をキャッチした。
「…はーー、何だかこの辺りは地磁気や周囲の鉱物層の影響か取り分けレーダーが効きづらいけど、どうにか間に合ってよかったー…………え?」
どうにか救助が間に合ったことに安堵したリュールはバルバトスの中でホッと息を吐くが、そこで回復したレーダーを見ると目が丸くなった。
「………え? な、何でリュース…じゃなくてリュールがここにー…?」
バルバトスの急な登場にポカンとさせられたアスランが乗るイージスガンダムを含め、ザフトのMSの群れが画面とレーダーに映し出されたためだ。
次回、やっと皆さんがお待ちしていた(?)SEED醍醐味の戦闘シーンです。
ちなみに、今回のお話の元ネタにはゴブリンスレイヤーのエルフのそれも混じっています。