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「…はー、先々週に何か銀連とザフトに怪獣が戦闘したって聞いた時は驚いたけどー…」
「まーヘリオポリスみたいなことはそうそう起きはしないでしょー。うちは中立だしー…」
銀河中が第四次大戦やBETA大戦で出血中の中、そのどちらの前線からも離れているオーブは今日も平和な繁栄を享受していた。
「…何やってるんだここの連中は…?」
その平和を享受している大勢の通行人の中に、モルゲンレーテの作業員の格好をしていたイザークの姿があった。
今現在、彼らはオーブの公式発表では怪獣騒ぎの日に同国国防軍に拿捕された後で速やかに国外へ追放されたというアークエンジェルを捜索するため、民間人に変装してオーブへ潜入してきたのである。
「まあ、いいじゃないですかイザーク。平和なところがあることは」
その場には同じくニコルの姿もあった。
「…ヘリオポリスの時のようにコソコソとろくでもないことを影でされてる状態でか?」
「でもさあ、それを言うなら同じく影の方で帝国とかそれに近い国との商売で戦争を続けるための資金を回してる僕らの国もー…!?」
ニコルとイザークが口論し始めようとしたその時、彼らの近くにある浜辺から砲弾が着弾したような轟音と揺れが生じてきた。
「っ!? な、何だ!? テロか!?」
「あー、違うよ兄ちゃん。これはモルゲンレーテに最近入った連中があっちの砂浜で遊んでいる時の音と揺れだ」
(((((っ!? モルゲンレーテ!?)))))
それで驚き警戒するイザークに近場のジェラート屋の店長のおじさんが近くの砂浜の方を指さすが、それに混じるその単語に潜入グループの面々は反応した。
彼らが捜しているアークエンジェルとその所属MSはモルゲンレーテのヘリオポリス支社で開発されたのだから当然のことであり、彼らの足はすぐに店長が指さした方向へ向かった。
「…どうありゃー! 浅草ギャラクシーシュートォ!!」
「ごふぅ!?」
「うわぁ!? 両さん凄い!!」
数分後、モルゲンレーテの隠し通路の出入り口に近いその白き砂浜の一角で、すさまじいボールの応酬が繰り広げられており、その中で両津が放った砲弾の如き威力のボールがリュールに顔からぶち当たってその身を砂浜で何度もバウンドさせた。
((…何をしてるんだぁあいつは!?))
この球技を装った死闘(?)の轟音と揺れを砂浜に近い町の通りで聞きつけてその場に駆けつけたアスランとメアリは、砂浜で死にかけた虫のようにピクピクとしている幼馴染の姿に、戦場で殺し合いをしていたことも忘れて必死に冷静さを保った顔で茂みの隙間と透明の軍用科学魔術複合障壁越しに向けて内心では動揺していた。
今現在、アークエンジェルの面々はドッジボール要素付き(など割とバーリトゥード形式な)ビーチバレーを、久々の休日を利用して楽しんでいたのである。
「…だ、だがまぁ…これは朗報だ。あの二人がいるということは…」
「ああ、そうだなメアリ…足付きもここに匿われていると見て間違いな―――!?」
『スゥーカイ』
『トリィ』
そんな事情など知らないがアスランは軍人として有力な情報を得たことに気付くが、そこで自分達の頭上を自らが二人の友に送った鳥型のペットロボットが通り過ぎた。
「あーもーどっちも何処へ行ってたのー…!?」
「―――あ…」
そこでそのトリィとスカイを追ってきたのかキラが茂みの中に現れたが、そこで止まっていたアスランと互いの姿を見やってすぐお互いの正体に気付く。
「……あ、こ、この子達は昔、子供だった頃に友達からもらったもので―――」
「ほわちゃー! 神楽ちゃん剛掌球ゥーーーー!!」
「―――えぐうううぅ!?」
「どるべぇ!?」
数秒の沈黙と悲しさを経てキラはこの場を穏便にやり過ごすための嘘を口にするが、その途中で今現在の戦友が放ったボールとその巻き添えでかともに飛んできたリュールの頭が後頭部にぶち当たってぶっ倒れてしまう。
「キ!? キラァもぐ!?」
「デカい声を出すな! 怪しまれるぞ!」
それに思わずアスランは悲鳴に近い絶叫を上げて駆け寄ろうとするが、メアリがとっさの判断で彼の口と身を抑えて直ぐ正気に戻って冷静になろうと努める。
「…神楽ちゃんあなたは怪力過ぎるんだからもう少し加減して! あー大丈夫リュール君にキラちゃん…ん? あなた達はー?」
「あ、私達はここからやけに大きな音や歓声が聞こえてきたから気になって来てみたら、目の前でこの子が後頭部にボールを投げつけられて気絶しちゃってー…助けようとしたんだけど何か見えない壁みたいなのに邪魔されてー…」
「あーここには軍が掛けた障壁があるからごめんねー…」
そこでセレーナがすぐに駆け付けるとメアリが当たり障りのない感じに済ませようとする。
「おい、二人ともよー何をそんな急に茂みへー…ってお!? これはまたレベルが高いお姉さ…!?」
続けてディアッカが怪訝な様子で加わってきてセレーナに始め軟派な感じの視線を向けるが、その顔を見るやすぐギョッと引きつった顔になった。
「…ん? 君さー何かどっかで見たような顔してるけどー…何だか母さんが離婚した時に中二病親父の方に引き取られたあの口ばっか達者なあの子に似てるようなー…?」
(…え?)
固まるディアッカにセレーナは目が回っているままのキラとリュールを抱き上げながら怪訝そうな顔を向けるが、その彼女の言葉にアスランは良からぬ既視感を覚える。
(…確かタッド・エルスマン議員はディアッカがまだ幼い内に、ナチュラルとも付き合いがあった妻と離婚した時、その姉が妻に引き取られたと言うが…この二人は顔が非常に似て…名前は確かー…セ…セレ…?)
「いやいや、そんな珍しくない顔だから見覚えのあるだけじゃね?」
アスランが良くない気配を覚えても思考を止められずになっていると、ディアッカは普段に比べて何だかぎこちない様子でセレーナの疑問を否定する。
「…そうねー、子供の頃から屁理屈ばっか達者になってその都度に関節技決めたらピーピー泣いてた
「
「―――い…わかったわよネーナちゃん、あ、あなた達も休憩中だろうけど遅刻はしないようにしてねー」
セレーナも少し考えた風な顔をするがやがて他人だという結論を下すと、後ろから名を呼ばれたのでキラを抱えて砂浜へ戻っていった。
「…お、おい、二人とも…もう向こうも戻って行ったから俺たちも戻ろうぜ…」
「「………」」
明らかに普段と比べて居心地が悪そうなディアッカの言葉に、アスランとメアリはその場では消せないこわばりを宿した表情のままで仲間たちの元で帰っていった。
○
「…いやー、まさかあなたがここに移籍したなんてー…」
「セレーナちゃんも見た感じは相変わらずな感じね♪ まー君たち、特にあの子は死ぬ場面なんて想像出来ないけど♪」
アスラン一行が良くない顔色を浮かべ合ってから数時間後、その彼らの捜索対象であるアークエンジェルに所属するセレーナ・フレイズは、今はモルゲンレーテ所属の医療魔術系スタッフとして働いている蒼崎橙子と会っていた。
「…あのー、それでー
「あー、それなんだけどきちんと聞いてねー…」
そこでセレーナは見た感じは少しぎこちない、けれども瞳の方では浅からぬ悩みを抱えている表情でそう問うが、橙子は変わらない軽い調子を作り続けている感じで彼女の問いに答えていく。
「…あっちゃーーーー、あの島にいた間はー…おなかの方に少しきつめだけど接着剤で固めた帯みたいな感覚がー、何度かいつものと比べて途切れたりするのが長かったり、多めだったりしたけどー…」
数分後、声音こそ少し困ったという感じだがセレーナはいつもと比べて結構深刻そうな感じで、顔を両手で覆ってジミーっとしたオーラを放っていた。
「…で? どうするー? 彼には言っとく?」
「…いいえ、あの子にはまだー…ただー、
「あら? お母さん達の方には言わないわけ?」
「…私の方はともかく
「…あー、まーそれは確かにねー…」
その普段と異なって非常にネガティブとなっているセレーナの様子に、橙子は眼鏡を掛けている間は苦笑しつつも同情的な感じであった。
「…だが、お前のその頼みは医者としてだけでなく、
「…ええ、わかっています…」
だが、眼鏡を外すと橙子は嬢が無いわけではないがそれ以上に怜悧な計算と興味の色に染まった瞳を向け、それを受けたセレーナは覚悟を決めた女の顔で頭を上げた。
「…私の体が
「…ええ、まーその機能含めて証明されてる場面はもう見てますんでー…」
「ああ、だが、以前にお前にも見せた
「え? でも表世間ではリュール君と一緒に
「あいつのあれは基盤こそは私の技術だが、もうあいつ流にあれこれ付け加えられてほとんど別物だ。あれを今のままで他人に使うのはー…」
やがてセレーナと橙子の表情は科学者や技術者、魔術師など知的探求者のそれとなってどんどん話を深めていく。
「…ん? 何か男としては凄く助かるけどそれ以上に情けない形でフォローされた時の感覚がー…?」
「何それ?」
同じ頃、地下研究所の別の区画でMSの技術検証を行っていたリュールは妙な寒気を感じて怪訝な顔を浮かべ、キラに奇妙がられた。
今回、久々に登場した蒼崎橙子さんはこの後の展開に地味ですが裏で非常に深くかかわってくる予定です。