星界の輪廻   作:oosima

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今回、SEED系戦闘シーンに本作世界の要素を足した戦争の場面が中心になります。


122 戦に荒ぶらされる水面◎

 ○C.E(コズミック・イラ)71年4月15日正午(帝国暦952年4月15日正午) ハニア大星域 銀河中心領域付近 オーブ連合首長国近隣某星系○

 

 帝国星界軍(ルエ・ラブール)の艦隊がアークエンジェルやザフト艦隊の姿を確認してから数十分後、そのアークエンジェルとザフト艦隊は絶賛交戦中であった。

 

「我が艦の7時の方角よりミサイル多数!」

「揚げ舵マイナス40度で右20度! 小型弾道弾に対してイーゲルシュテルンで迎撃! 大型弾道弾にはアージェイト!!」

「両津中尉とフラガ中佐を艦の後方へ回してザクを迎撃させて!!」

 

 当然、艦は一隻であるアークエンジェル側が戦力的には不利な状況で、その戦力差は艦長マリュー・ラミアス中佐と司令であるスメラギ・李・ノリエガ大佐の指示でどうにか埋めていたが、いつミス一つで一気に押し切られてもおかしくない状況にあった。

 

「ああ!? 艦が右側の“水球衛星”の重力圏に引き寄せられて艦が傾き始めます!」

「艦の姿勢角度を二十度回復させて! それと重力制御機関も平時の70パーセントを維持!」

「く…この前のシューヴィジャヤの時は逃げ切るのに都合が良かったけど…怪獣が居なくなるとここまで不利になるのね…!」

 

 細やかな作戦指揮で戦力差が不利な状況でもどうにか艦を保たせているスメラギが目にする艦の周囲には、透明度が様々な青い液体で構成された衛星や小惑星が周囲を行き来している“水質衛星”や、更にそれらの周囲や間を激しく蛇行して行き来しているように見える巨大な水流の如き“激水環”である。

 オーブやその周辺の星系には、各星系の構成物質の内容や比率と重力によって、水のように見える液体で構成されて位置と形状が不安定な衛星や、惑星の周囲に水のように見える液体が不安定な環となっている“激水環”が存在していた。

 ザフトのモラシム艦隊はこの星系のこれらの環境も計算に入れて攻撃してきていたのである。

 

「ああ! 艦の真下に接近してきた激水環よりアッシュ10機が出現してミサイル攻撃を!?」

 

 故に、モラシム艦隊は本来なら地上世界の海戦において性能を最大限に発揮できる水中用MSであるアッシュをこの戦場に投入し、アークエンジェルを苦しめていたのである。

 そうしてアークエンジェルの注意が下に向いたところで、エールストライク装備のデュエルが襲い掛かってきた。

 

「うおおお! 今度こそ終わりだな足付き―――!!」

「やらせない!」

 

 イザークはデュエルにビームサービルを振るわせてアークエンジェルの艦橋を窓から切り裂こうとしたが、同じ装備のストライクが真横から突っ込んで邪魔をしてきた。

 

「―――いってぇくそぉ! しつこい奴だ…!?」

 

 それに舌打ちするイザークの鼓膜を味方からの警報が震わせてきた。

 

「イザーク! 退いて! メアリから足付きへの大砲撃がまた来る!!」

「ルイス!? ええい!!」

 

 ルイス・ハレヴィが駆るシールダーからの注意を受けてデュエルたちが足付きからいったん離れると、周囲の液体を通してかヒュルヒュルとした音が響いてきて、それはやがてアークエンジェル側には大きくなってくる。

 

「!? 今度は我が艦の五時方向から複数の危険質量反応!!」

「っ! すぐに優先回避ー!!」

 

 その動きを見たアークエンジェルがその巨躯を大きく傾けさせると、つい先ほどまで主翼パーツが浸かっていた水面に、艦を飲み込まんばかりの巨大な水柱が生じた。

 

「あああ!?」

「んん!?」

「ぬおお!? スメラギ司令にラミアス艦長の震度計にも異常がぁ!?」

 

 それで生じた揺れはアークエンジェルも大きく振るわせて艦を軋ませるほどで、艦橋に電子管制要員の一人として入っていたバッチグーは艦の危機を覚えつつも、それで大いに揺れる二つある大肉双丘に鼻の下を伸ばした。

 

「…この超長距離の複数大質量弾攻撃の反応は…まだ砲撃の元は算出できないの!?」

「先ほどからずっと感知しようとしているのですが…」

「この反応の乏しさは…恐らくブリッツとルーラーもその近くにいるわねー」

「…今現在、何とかセレーナ少尉とソードリュ少尉、ボルボ・西郷少尉が探していますがー…!!」

 

 そんなセクハラ行為をとがめる余裕がないまでにアークエンジェル艦橋の焦燥と疲労は強まっていっていた。

 

「…どうだ? 足付きの様子は?」

 

 一方そのアークエンジェルを重力で捉えている水質衛星の裏側で、メアリ・サンディが駆るベヒモスは存在していた。

 そのベヒモスが足を付いている地面は水質惑星が内包している嘗て小衛星だった巨大金属質の表面で、ベヒモスに両手を当てられていたその周囲ではその巨躯を優に超える無数の砲塔が並んで、その内部から次弾を装填している事がわかる音を響かせて火花を迸らせながら、ゴゴゴと砲身の向きや角度を変更していっていた。

 今現在、アークエンジェルを断続的に襲っている大規模砲撃は、ベヒモスが持つ重力操作兵装と搭乗者の魔術能力の増幅装置、同機を駆るメアリが周囲の金属と周囲の液体から得られる大量の水素と酸素、周囲のザフト艦からのエネルギー供給を用いてその場で砲弾を大量製造して斉射してのものであった。

 

「タイムラグが生じるのでどうしても遅れまして…あ、味方からの映像で足付きに何か所かの小さくない損傷が付いているのは見えますが…」

「味方にも事前の着弾情報は届けているから巻き添えは今現在だが心配はない」

 

 そして、その周囲には身動きが普段と比べてしにくくなったベヒモスを護るべく随伴のMS部隊がいたが、その中にはアークエンジェルのレーダーなどを乱して発見されないようにするため、ミラージュコロイドで姿を視覚的にも電子的にも消してそれを周囲に波及させられるブリッツガンダムと、周囲の電子機器やその電波を攪乱して操作できるルーラーガンダムの姿があった。

 

「…ああ! またアークエンジェル方面に大規模砲撃が…」

「どうするリュール! このままだと俺たちの帰る先が無くなるぞぉ!」

 

 一方、そのベヒモスから別方向の水質衛星でザフトMSと戦闘しながら探索中のリュール達だが、一向に割り出せない砲撃の大本に焦燥を募らせていた。

 

「…やっぱり、距離が遠くなるにつれて通信とレーダー反応が遅れてくるなぁ…。これなのにどうやってザフトはあれだけ大きな砲撃をあそこまで正確にー…!?」

 

 その不利なままの戦況にリュールは必死に思考を重ねていくが、そこである考えに近づく。

 

「…ねーボルボさん…」

「何だ!?」

「僕たち…思い込みで無駄働きをザフトにさせられてるんじゃー…」

「…!?」

 

 その考えでアークエンジェル側はようやくこの状況を切り抜けられる糸口に近づくことになる。

 

「ああ! また例の大規模攻撃がー!」

「っ! アージェイトの後方にぃ!!」

 

 数分後、アークエンジェルの方に視点が戻ると、マリューは自らに情けなさを覚えつつも今この場で最も防御能力を持つ存在を頼る。

 

「み、皆さん! また私の結界の後ろ側にぃ!!」

 

【挿絵表示】

 

 日光が駆るアージェイトがその元から載せられている超高度超範囲防御装備で、薄い桜色の防御バリアを複数展開させており、アークエンジェルに向けられる攻撃で特に破壊力が高いものの多くを防ぎ続けていたのである。

 さらに、アージェイトの翼状のパーツは複数に分離してそれぞれが大型化して四方八方を浮遊展開し、アークエンジェルに向けられている攻撃で特に驚異的な砲弾を無力化していっていた。

 

「ええい! 何だぁあのキケロガモドキ擬きはよ…おお!?」

 

 それに自分がアークエンジェルに向けた長距離攻撃も度々無力化されているディアッカも苦虫を噛んだ顔になるが、そこで彼が乗るバスターを複数方向からのビーム攻撃が襲い掛かる。

 

「オーオー! あんな女の子ばっかり寄ってたかってー! まーあんだけ派手だと自然と目が行くものだけどさー!」

 

 そのビーム攻撃の元は、メビウス・ゼロのビームバレルシステムを元にそれをバックパック化してウィンダムに載せた有線式多方面ビーム攻撃によるもので、それを駆るのは当然ムウであった。

 

「くっそぉ! 今は数でもこちらが上だってのにぃ!!」

「落ち着け! あの桜色のG フレーム使用機は性能でこそ原型に近いだろうが一機であれだけ防御フィールドを掛けているとなればMSもパイロットも負担は凄まじい!!」

「…っ!!」

 

 だが、アスランがレイダーガンダムを駆るパトリック・コーラサワーに掛けた注意の通り、アージェイトの内部にいる日光の負担は常人ならもう意識が失われてもおかしくないものであった。

 

「葉月少尉ですが今の状態があと十分続くともうシールド展開が不可能になります!!」

「っ! まだセレーナさん達は大規模砲撃の大本を見つけて来れないの―――!?」

『すみません! 遅れました!』

 

 アークエンジェル艦橋の各MSパイロットの身体状況を示す画面で日光のそれが赤色に近づいてる中でマリューが焦燥を募らせていた頃、彼女の眼前にリュールの顔画面がドアップで映し出された。

 

「―――おってえぇ!? リュール君そんな何を急に!? 」

『時間が無かったので直通で掛けました! 敵の最大攻撃の大本が当初の想定とは違う場所にあったらしくてそれで発見が遅れてー…』

 

 マリューはそれに驚くが続けてリュールが送ってきたデータにスメラギがそれ以上に驚く。

 

「…何ですって!? それじゃこの攻撃で一番破壊力のある砲弾攻撃の雨は…この艦を重力で捕まえてるこの水質衛星の裏側からしてるの!?」

『はい! この宙域にこっちが不慣れなのとこちらのレーダーはこの星系の構成物質に乱反射を起しやすくてあちこちに似た反応が出ていたので解析と発見に時間がかかってー…ですが! 戻る途中でボルボさんが何か使えそうなものを見つけてくださりました!!』

「……………これは!」

 

 だが、スメラギの驚愕した顔はリュール達が送ってきたデータを高速で読み進めていくにつれて笑みへと変わっていく。

 

「…リュール! 日光! 激しい連戦の所で悪いけど…一つ大博打に付き合ってくれる!?」

『もうこの状況じゃ司令の脳髄しか頼れるものがなさそうなのでー…もう僕らには反論する余裕もないのでー…』

『…え!? ちょ…私の意見はー…!?』

 

 それに日光は不吉な予感を覚えて通信に割り込んでくるが、彼女が乗るアージェイトをリュールが駆るバルバトスがとっ捕まえてアークエンジェルに背を向けた。

 

「アージェイトのシールドが無い状態だと回避と防御の限度が大幅に低まるから早くして!!」

『わかりましたー!!』

『…はあ、拒否権はもうなしか…』

 

 そのままリュールの応答と日光の弱い声音を残して小さくなっていくバルバトスとアージェイトに、スメラギはスーパーコンピューター顔負けの速度で機器を操作して、彼らの性能でなければ成り立たない作戦をその場の思考での修正を重ねながら伝えていく。

 

「艦長! ストライクからエネルギーが限界に近いので外で交換するのでソード装備の射出をお願いすると!」

「直ぐにやって!」

 

 ついでにミリアリアから発せられたその報告とそれへの対処も、スメラギが今この場で立てた作戦へ大きく関わることになる。




次回、SEEDでもとりわけ鬱が強いあのパートに、本作時間軸要素強めで関わることになります。
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