○
「ぬおおおおお! もう要塞も星もくれてやるんだから見逃してもいいだろうがー!」
銀連軍の味方無断囮作戦が露見して十数後、防衛艦隊旗艦にそのことを伝えて説得に成功した両津勘吉はアークエンジェルに戻り、自分のウィンダムに乗ってザフトの包囲網を突破しようとしていた。
「リューリクやロロと共に3時方法35度の綻びより敵正面の突破を試みる! ローエングリンで廃棄された衛星を破壊してその瓦礫で後方の敵の追撃を阻害する!」
「ゴッドフリート10時25分74度方向に撃てー!」
アークエンジェル隊の司令スメラギと艦長マリューも少しでも多く味方を連れてパナマから脱出すべく必死な指揮を執り続けていた。
「防衛艦隊旗艦ゲシル・ボグドより通信! 惑星コルサッカ方面ルートより突破を試みる! 我が艦も含めて全艦に我へ続けと!!」
「了解! 我が艦は防衛艦隊先陣左翼につくと返信!」
「ああー! ついに地上本部のメインゲートまで突破された模様です!!」
艦隊の左側に群がるザフトの艦船やMSを打ち落としつつ、少しでも多くの味方と共に脱出を図るアークエンジェル。
「今度こそ逃がすかぁ! 足付きーーー!!」
「5時方向マイナス35度方向よりデュエル! 速度はエールに匹敵しますが装備は違っていてアグニを縮小したものと思わしいものが…ああ! アグニに匹敵する高熱源反応と照射反応を確認!!」
「回避ー!!」
当然、ザフトがそれを見逃そうとするわけがなく、追撃部隊も回されてくる。
「ああ! 先ほど回避した砲撃でロロが撃沈!」
「脱出艇があった場合はすぐに受け入れて―――!」
〈うぎゃああーー!?〉
「と、ところ天の助少尉のウィンダムが撃墜されましたー!」
「―――え…うぅ!!」
とうとう自分達にとって親しい、それも巻き込んでしまった若者にまた犠牲が出たことにマリューは歯噛みする。
「エールにアグニを改良小型化して乗せやがったのか! うおお! よくも天の助を! 許さんぞデュエルーーー!!」
「ええい! また前の妙なアンテナの! しつこい!!」
ウィンダムの一機を駆るボーボボは同機の魔術能力反映兵装をいかしてそのV字型アンテナを伸ばして変形させ、それでビームサーベルを複数本操ってデュエルガンダムを足止めする。
「くそ! また妙な魔術を使うあの機体にー!」
「やむを得ん! 足付きはニコルとコモリに任せるぞ! 艦隊旗艦の方はエグザベが向かっている!!」
それにイザークが歯噛みした直後、真下を青と赤二色の極大なビームと緑色の二本の長距離ビーム砲が通り過ぎ、アークエンジェルをその下から狙う。
「うわぁ!? カラミティのスキュラとシュラークが我が艦の下部に命中! 艦の推力71パーセントまで低下ー!!」
「フォビドゥンが旗艦ゲシル・ボグドに向かってるとのことー!!」
〈何だとー! くそ! やらせるかー…ってのわーー!?〉
ここ最近で最も関係が深まった戦友と昔の恩師のピンチに、両津は歯噛みしつつ旗艦への救援に向かうが、その途中でビグ・ザムの大型ビーム砲の攻撃を受けて機体が右腕を失ってしまう。
「両さ―――!?」
「トロトロと邪魔くさいんだよ!」
「―――あぁ!? くそぉぉこのヤリチャラ男ボイスがああ!?」
それに近場で戦っていた神楽も動揺していた隙に、パトリックが駆るレイダーが破砕球ミョルニルを射出して彼女が駆るウィンダムの両足を粉砕してしまう。
「あぁ!? 両津中尉所属のアークエンジェルの速度が落ちていきますー!」
「くそぉ! 艦左舷ミサイルポッドより援護!」
「我が艦の12時マイナス75度方向よりフォビドゥン接近! 我が艦隊の迎撃ビームを歪曲回避しながら接近中ですー!」
もはや破滅で崩れ始めた音が自分達の足元に達した感覚に、艦隊のほとんどが多くを覚えていく。
「ああ! ついにゲシル・ボグド正面にフォビドゥンが接近しつつあります!」
「艦隊の旗艦まで―――!?」
それにアークエンジェルの艦橋も顔を強く青ざめさせた頃、それが自分達の間近まで接近していたことを、自分達の眼前に宇宙から幻のようにスッと現れたイージスによって氷の刃を喉元につきつけられたような感覚で否応なしにつきつけられる。
艦橋の空気が凍り付き、ミリアリアが恐怖のあまり身が委縮して目を閉じ、カズイは間に合わないだろうに席から逃げ出し、スメラギやマリューら大人たちは彼らを巻き込んだことに対する後悔に苛まれる。
「これで終わりだ―――!?」
だが、レイダーを駆るニコルがその有線式アンカーのグレイプニールをアークエンジェルの艦橋目掛けて射出したその時、画面の上から緋色が強いオレンジ色の光が強まる。
「―――あ…れ…うわーーーー!?」
その光は一条のビームとなってグレイプニールを真上から撃ち抜いて爆散させ、それに戸惑うニコルはブリッツの攻盾複合兵装システムの盾であるトリケロスを同様の色の斬撃で斬り飛ばされた爆発の衝撃で機体ごと吹き飛んでしまう。
「…え? ニコ…おわーーーーー!?」
それにゲシル・ボグドの艦橋にフォビドゥンの重刎首鎌ニーズヘグを振り下ろそうとしたエグザベは戸惑ったその時、彼の機体はニーズヘグを両腕ごと斬り飛ばされてその身を勢いよく蹴りとbされた。
「…え!?」
「何だ…あれは!?」
救われた両方の艦橋はそれぞれの目前に現れたその二機に戸惑い、惚けの色すら見せる。
「……天…使?」
マリューが目にしたものは、輝く白い四肢をもってグレイと青のツートンを中心とするボディで頭部はガンダムと酷似しながら、フレームには共通点が見受けられず、背中には緋色が強いオレンジ色の光の粒子を多く放つ巨大な八枚の翼を広げている、まさしく彼女が口にした存在を思わせる謎のMSが艦の上に守るように降り立った姿であった。
「な、何じゃーありゃー!?」
一方、ゲシル・ボグド艦橋も同じ驚愕に襲われていて、その近くのウィンダムにいた両津勘吉の叫びがそれを代弁していた。
両津のウィンダムの前に立つMSは落ち着いた深みのある青色を基調として金色や黒のカラーも混じっていて頭部はガンダムのもので、左右の両手は右手には白き巨大なカタールのような兵装で左手には黒と青と金の三食の小さなそれのような兵装が付けられており、背部のコクピットブロックと思わしい兵装から生えている翼状のパーツは小さいが、それを中心に青い水色の済んだ光の粒子が大きな翼のように広がっていたのだ。
それはまるで機械の体に宿った星界の精霊を思わせる光景であった。
〈…こちら、キラ・ヤマト! キラ・ヤマトです!!〉
〈リュール・ソードリュです。戻りました〉
「「「「「!!!????」」」」」
そして、その両機からそれぞれ深く親しんだ、だがもはや二度と会えないはずの二人の名を当人たちの声で聴かされると、親しんだ者達から不審と驚愕にそれ以上の喜びの色が浮かぶ。
「…キラさんに…リュール…君!?」
「二人だよ!」
「生きてたんだ!」
その間もザフトのMSはアークエンジェルに向かってくるが、キラが搭乗する八枚羽根のMSはその羽から合計八つもの飛翔体が期待と同じく緋色が強いオレンジ色の粒子を噴出しながら射出される。
それらはキラが搭乗するMSの両手に構えられたライフル、腰の両側に設置されたレールガン、腹部に設置された大口径砲と共に計十三条の光のラインを発射し、ザフトのMSや艦船から次々と多くは
「…っ!!」
一方、リュールが駆る水色のMSはその背の小さな翼から放出されている水色の光の粒子の量は増し、それは澄んだ水色の光の粒子で形作られた無数の剣のような結晶となり、超高速で射出されていく。
「のわぁ!?」
「い、いったいなんだぁぁ!?」
それらの水色の結晶は高速で前方のザフト艦の幾つかの兵装やエンジンやその動力部を、ビームを射出するかもしくは自らが衝突するなどして貫通していき、幾つもの艦船がコントロールを失って進路を大きく歪めていく。
「うわぁ!? 艦のコントロールが効きません!」
「か、回避しろー!?」
「ま、巻き込まれるぞー! 離れろー!!」
撃ち抜かれた艦の方は無傷では済まないので当然に死者や負傷者は
だが、それらの艦のほとんどは放射状に流れていき、まだ傷つけていない艦やMSはそれを避けるようにして動いていく。
その結果、
「ウランフ中将! ザフト包囲網に小さくない綻びが開きました!」
「っ! 何処の機体か知らんが助かった! 全艦全機に通信! あの穴から戦場を突破して本星系を脱出する!!」
当然、その光景はアークエンジェルにも見えてゲシル・ボグドからの通信も届けられる。
「私達もすぐにあの穴へ向かうわ!」
〈スメラギさんにマリューさん! 今のアークエンジェルだとゲートまで持つかわかりません! 急いで脱出艇に乗り移って続いてください!!〉
「…キラさん…無理よ! この艦を降りるのはまだ…!」
〈…え!?〉
キラも安全策を考えてそれに続こうとするが、まだ感情の整理がついていない声でマリューが拒絶する。
〈あ、あの星の地下にサイクロプスが隠されてんだよ~! それも起動したらあの星を全部消し飛ばしちまうくらいのサイズのもんが~! そんなのに爆発されたら俺でも蒸発し尽くされて完全にお陀仏なのに他の皆じゃやられちまうよ~!!〉
「!?」
続けてリュールの鼓膜を先ほど搭乗していたウィンダムごと爆散したはずの天の助が通信越しに震わせてきた。
「な、何かところ少尉があのリュールが乗ってるMSにへばりついてますよアメーバみたいに!」
〈あったりまえよ! サイコロステーキ風に切り刻まれても死なねえ天の助が爆発くらいで死ぬかよ!!〉
「首領パッチ君!?」
死んだと思っていたはずの味方の生存の報を聞いてもマリューの動揺は収まり切れないが、それでも彼女はキラに伝える。
「…天の助君の言う通りよ! 私達も…ついさっき…フラガ中佐と両津中尉が伝えるまで…知らなかったの!!」
「…要するにここで死ぬことを前提に置き去りにされた囮ってわけ。私達には知らさないままにね…!!」
一方、動揺は見た目こそ収まったがスメラギは逆に怒りをなるべく抑えようとはしているが隠しきれていないのが見えた。
〈…そうですか、だったら…!!〉
キラは少し考えこみながら登場するMSをザフト艦隊に向けて飛ばし、ビームを射出する砲塔やMSを撃墜し、ミサイルを打ち落としながら全周波通信でその言葉を継げる。
〈ザフトと銀連軍双方に告げます! 直ちに現星系を脱出してください!!〉
「!?」
「どういうつもりだ!? あのMS!?」
〈惑星ジャブローは間もなく“サイクロプス”を解放して消滅します!!〉
「「「「「!!!???」」」」」
その機密など構わないという通信に周囲は所属問わず戸惑うが、発せられていく内容はその戸惑いを深めて驚愕に変えていく。
「…な、何だとぉ!?」
「馬鹿もん! あんな苦し紛れの嘘に乗せられてどうする!」
「さっさとあの敵機を撃ち落とせぇ!」
だが、ほとんどはその警告を無視して攻撃を続け、その内の幾つかはキラを狙う。
「…当然だろうな。両さん、何かさっきの話で証拠みたいなものはありますか?」
〈…!? あ、ああ…今日の内に誰もいなくなった要塞から盗んで吸い上げたデータを詰め込んだハードディスクの一つがこっちにあるぞ!〉
「繋げるのは僕がしますからデータを電脳で寄こしてください!」
〈わかった!〉
それを察したリュールはこの残酷な策を最初に知った一人である両津に掛け合い、彼がウィンダムを通して送信してきたそのデータを広げることにする。
リュールが乗る機体の小さな翼からの青い粒子が量を増し、それらは先程と同じ澄んだ透明上の青い剣の群れとなって周囲へ行為範囲に散らばっていく。
だが、それらの剣は所属問わず軍艦や機体には触れず、代わりに波紋のような粒子を周囲に伝え、それに乗せられて両津が入手した極秘データが各機各艦に伝えられていく。
「…こ、これは!?」
「サ、サイクロプスの映像です!」
「ほ、本物か!?」
「じゃ、じゃあ…俺ら…見捨てられちまったってのかよ!?」
それらはNジャマー影響下でも、少々のノイズはあるが概ねその内容を勢力問わず伝えていき、その詳細な内容もあって地上や宇宙を問わずに聞いた者達の中での信憑性を高めていく。
「…ほ、報告! 先のデータ通信で少なからぬ隊に動揺が広まっている模様でー…!!」
その電波は当然、今回のザフトのパナマ攻略艦隊総旗艦デグラーダに座しているギレン・ザビにも届いていた。
「…ナチュラルも必死ということですかな。虚言にここまで費やすとは…む?」
前線各所で個人的な思惑での偵察を秘した戦闘行為を終えて戻ってきたクルーゼもその場にいたが、彼は表向き自分がその側近となっている男の苦虫を噛んだ表情に気づく。
(…何者だあの青いGフレーム使用機体だろうMSは!? マリルが…エルザが関わっていたものに似ているが…いや! 今はそんなことどうでもいい! 銀連の愚物共が味方を餌にここに罠を仕掛けていたのは知っていたが…ほぼそれを知ったものが乗っているのは間違いない! これを逆に利用して
銀河全体に暮らすコーディネイターの中でも、圧倒的に上から数えた方が早い知力を持ち、特に政略と軍略及び情報収集とその分析力においてはプラントでは自他共に認める怪物であるギレンは思考を走らせながら自身の眼前の空中投影PCパネルと電脳を通して全艦隊への緊急通信を繋ぎだしていた。
「…!? ザビ国防委員長閣下! それは…!?」
クルーゼを含めた周囲の幕僚達はその行動に驚くが、それが制止の形を取る前にギレンからパナマに侵攻するザフト全軍にその命令は発せられた。
次回、種ガン原作の方で有数のグロい描写があることで有名なあのパートがこの世界の要素込みで中心になる予定です。