ちなみに、それを起したこの世界でのサイクロプスの元ネタは、PS2の怪作代表であるあのDODで登場していた同名の兵器です。
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キラが惑星ジャブローの地下深くに隠された自爆用生物兵器“サイクロプス”の存在を暴露し、リュールがその証拠を広範囲に拡散させ始めた頃、その片方にスラスターを全力で吹かせて接近しているザフトMSの姿があった。
「嘘ばかり器用に言いやがってー! もうその手に乗らされるかー!」
「…あー、やっぱりそう来るかー。まー…ゼミーシュルやヘリオポリスからすれば当然だけど…っ!?」
中でイザークが不審丸出しの叫びを放ちながらデュエルが迫りくる姿に、青いガンダムの中でリュールは少し面倒くさそうな声音だが少し鋭くなった顔を向けた。
すると、乗る機体の右手に装着されたカタール状の白き兵装が長く二つに避け、その中心から水色の極大の光の粒子が巨大な戦槍の如く突き出され、それは超高速で伸ばされた。
「何ぃ!?」
その時分にはまだ距離が十分には縮まってないにもかかわらず高速で迫りくる光の巨大な凶刃に、イザークは驚きつつもデュエルの盾を構えてその穂先を受け止めて逸らそうとするが、逸らしきる前に青い光が焼き切って画面を強く埋め始めるのを目の当たりにする。
「もう止めて! 死にたいの!?」
「!?」
光が死の色を帯びてイザークの視界を埋め尽くそうとしたその時、キラが駆る機体より射出された兵装より発せられたオレンジ色のビームがデュエルの両足を撃ち抜き、その爆風でデュエルは吹き飛ぶが、代わりにその直後で盾を穿ち抜いた青い光はデュエルのV字型アンテナを消し飛ばすに留まった。
「…のわぁアア!?」
〈おいおい、まーた派手に機体をお釈迦にしやがって…ワークローダー競技の
そうして吹き飛んでいくデュエルだが、それは前線で派手に暴れ回ってエネルギーが大幅に減っていたので補給に戻っていた途中のレイダーガンダムによってキャッチされ、それを駆るパトリック・コーラサワーが軽口を通信で叩く。
〈一旦は帰ろうぜ。そいつの足だって飾りじゃないんだし、俺らが一時抜けてもこの戦争は俺たちの勝ちだー…?〉
だが、パトリックからの通信に割り込む形でザフト全軍に発せられたその命令信号をその軽口を奪うことになる。
「…はぁ!? 全軍撤退!?」
その発せられた命令にカラミティガンダムの中でコモリ・ハーコートは狼狽するが、その反応は彼女だけでなくザフトほぼ全軍に波及していく。
「…さ、さっきの通信は本物だったのか!?」
「だ、だが、しかしー…味方を捨て駒にする作戦など…幾ら銀連でもー…」
「いや! エンデュミオンの前例がある!」
「退避! 退避ー!」
「捕虜はどうしますか!?」
「放っておけー!」
「急げー! 人員を優先して揚陸艦に乗せろー!」
「載せきれんMSは放棄・自爆させて構わん!」
「あんな口車に乗せられてどうする! もう我が艦隊の戦力でも十分だ!」
「本部地下要塞を制圧して化けの皮を剥いでやれー!」
多くの部隊が撤退命令に従って慌ただしく撤退していくが、無視して侵攻を続ける部隊も出始める。
「…お、おい! ザフトの多くが撤退していくぞ!」
「ま、まさかさっきのサイクロプスの放送…本物だってのか!?」
「い、今のうちに逃げるぞ! 司令本部ももうもぬけの殻だ!」
「ま、待てー! 敵前逃亡は重罪だぞー!」
「うるせー!!」
それを見た銀連軍部隊も多くがそれで信憑性を覚えて生じた脱出口を通じて、まだ残されていた宇宙船などを通じて一部の制止を振り切ってジャブローからの脱出を始めていった。
○大星洋大星域 大星洋連邦左下端部 銀河中心領域付近 パナマ星系付近平面宇宙 銀河連合軍艦隊○
「…
パナマでザフトと銀連軍双方が別の慌ただしさと恐れに支配され始めてから数十分後、そこを離れた一隻の一室でバスク・オムら脱出組の将校らは机上に置かれたアタッシュケースを前に優雅にお茶を楽しんでいたが、そこでサザーランドが苦虫を噛んだ表情で入室してきた。
「どうしたサザーランド大佐?」
「バスク・オム中将、想定外の事態が起きました。こちらの通信内容をどうぞ」
それに訝しんだ一同の前で、数十分前にキラが放った通信とリュールが暴露した資料がこの場でも明るみにされ、バスク・オムら一同の余裕は瞬く間に吹き飛ぶ。
「…何だこのふざけた内容はぁ!?」
「何処のどいつだ!?」
「驚いている暇はありません! 既に○○分前にパナマ星系の安全圏内に残っていた偵察部隊が見た時にはもうザフトの多くが撤退を始めていたとのこと!」
「っ! 急いでケースを開け!!」
直ちに机上へ置かれていた二つのアタッシュケースが開かれ、その中にあるそれぞれの鍵穴にバスク・オムとウィリアム・サザーランドはそれぞれ鍵を刺し込む。
「…このふざけた戦争を終わらせるための犠牲を汚す真似をしおって…必ず見つけ出して贖わせてくれる…!!」
「…どうかこの犠牲が“真の青き清浄なる世界”に繋がらんことを…3…2…!!」
言葉だけ美しく塗布しようとしても隠しきれない憎悪と嫌悪に苛立ちを滲ませた表情で告げられた秒読みに、周囲の者達は今更だが戸惑いを覚えたものもいるがそれを行動に移そうとはしない。
「「…1!!」」
そして、二つの鍵が同時に回されたその時、彼らが居る戦艦からパナマ星系のジャブローに向けて一つの信号が短くも確かに届けられた。
○大星洋大星域 大星洋連邦左下端部 銀河中心領域付近 パナマ星系 惑星ジャブロー 大地下要塞最深部○
平面宇宙から送られてきた信号は小さめだが確かにジャブローに届けられ、地下要塞の地下奥深くでは次々と爆音とそれによって科学式拘束具や封印魔術装置が破壊されていく男が木霊していった。
「…ッ…ウゥウウゥゥゥゥ…!!」
すると、その爆音の音源となった爆炎の中より、バスク・オムらが脱出前に見下ろしていた白き単眼の巨人は一つしかない瞼をゆっくりと開きながら地響きを立てて起き上がるとともに、その身は歪な膨張を見せて地下空間を狭めて天井にあたる岩盤に触れてヒビを押し広げていく。
「…む? な、何だ…この揺れは…!?」
数十秒後、その巨人が震源の揺れをザフトで最初に気付いたのは、ギレン・ザビが発した全軍撤退命令を無視して侵攻を続けて、ジャブローの巨大な地下居住区画に到達した部隊に属するバクゥだが、その揺れに気付いた直後にその巨躯はひび割れたコンクリートの床ごと大きく持ち上げられた。
「こ、こいつは何だぁアア!?」
巨大地下居住区画はバビや大気圏飛行用装備を装着したザクの姿もあったが、彼らも巨人の急速膨張し続ける歪な白い皮膚に押し込まれ、天井の岩盤と挟まれて押し潰れるが、天井の岩盤も瞬く間に圧されてひび割れて崩壊していく。
「…ジャブロー本部要塞に急速拡大し続ける生体反応及び熱反応を確認…こ、これは…!?」
「ひ、一つ目の…巨人…!?」
そして、地表すらも薄皮のように突き破って露になった巨人の姿は、地表で交戦か撤退を続けていた両軍の兵士にも見えるようになった。
だが、巨人の歪な膨張は続いていって、それはやがて雲を突き破って大気圏外からでも、特にその醜悪な筋が無数に浮かんだ腹部は特に宇宙空間からでも見えるようになっていく。
「ほ、本部地下要塞地点で巨大生物反応を確認! 更に熱エネルギー反応はそれ以上の規模で増加中です!」
「もう臨界状態に入ったんだわ!」
「いつ爆発してもおかしくないわ! 機関全速! 退避ー!!」
その姿はジャブローから距離を取っていた艦船の後続に位置するアークエンジェル含めた各艦にも見えたが、過去の事例と今現在の見えているサイズからまだ距離が足りないと見た者達は更に急かすが、もはや皆があの巨人が本能からして近くにいるのも生命に危うい存在と感じて、死に物狂いで動く。
「…オオオオオオオオオオオオオオ…!!!!」
そして、単眼の巨人の腹部がまるで惑星を養分に生えている巨大な菌糸類のようなサイズまで膨張したその時、それは弾けて、代わりに生じた強烈な閃光を放つ巨大な白き光球が今度は急速な膨張を見せて近い順に地表やMS、宇宙艦船を飲み込んでいく。
「う、うわぁアアア! 体が砂にいいいいぃ!?」
「あ、熱いよおおおおおお!!」
「マ、ママぁぁアアアアぁ!!」
宇宙空間や地上問わず戦っていたかもしくは退避が遅れたもの、何も知らされずに民間人居住区に残っていた老若男女問わない一般人らが、地上と宇宙問わずその惑星そのものを飲み込むまでに大きくなり続けるだろう光球に近づくだけでその身は風船のように弾けて血潮と骨肉を撒き、それらも光に飲み込まれて分子レベルで分解されていく。
更に直に光球へ触れなくても、それが放つ強力な電磁パルスなどの影響で機関や電子機器に異常をきたして動けなくなったMSや艦船も次々と飲み込まれていった。
「…の、のわーーーーー!?」
退避を選んだ部隊の中で、他の若い兵士を先に退避させることを優先して遅れていたデニムが乗るザクもその白く光る巨大な死神の手である、電磁パルスやマイクロ波なども帯びた波動でバーニアを破壊されて速度が大幅に落ち始めてしまう。
「掴まって!!」
そこでキラが駆る機体がデニムのザクと片手を掴んで引き上げて加速した。
「!? メインエンジンに異常発生! 推力が45パーセントまで低下していきます!!」
「!? そんな…!?」
一方のアークエンジェルにもエンジンに異常が発生して艦橋に絶望の色が生じるが、そこで艦尾より何者かが張り付いた反応がレーダーに生じる。
〈…壊す目的が第一でとんでもない額と資材をつぎ込んで生まれたんだから…偶の人助けぐらい必死に成功させろ!!〉
「っ!? この声は…!?」
艦橋にも響くその声音の少年が乗っている機体がアークエンジェルの艦尾を掴み、その背の羽から生じている水色の粒子をまるで巨大な蝶の羽のように広げ、その大きさはアークエンジェルの半分にまで拡大する。
〈…曲がりなりにもガンダムって…この世界でも大層な名を付けられているんだろー!!〉
そして、その機体を駆るリュールのその叫びが艦橋の者達の鼓膜を震わせた時、アークエンジェルはその水色の蝶の羽に押し出されるように、機関が落ちる前以上の速度で光球より離れさせられていった。
「…こ、こんな…」
「ば、馬鹿な…」
一方、ザフト艦隊の先に退避を始めてジャブローの衛星軌道上よりもさらに外のサイクロプス爆発の影響圏外まで退避していた艦船に混じる、総旗艦デグラーダのCICで艦隊の幕僚達はその惑星とそこに残っていた味方を飲み込んだ攻勢を思わせる巨大な白き光球に只々愕然とさせられていた。
「……………」
「…あと一歩、遅ければまんまとしてやられるところでしたな。ナチュラル共に…」
少ない冷静を保っているように見える面子に混じるギレンも無言で苦虫を大きく噛んだ眼差しと爪を噛む様子を隠せない中、その斜め後ろに控えていたクルーゼは痛ましそうな声でつぶやく。
(…やれやれ、扉が見えてもそれを開くのは容易ではないということか…
但し、その声音や言葉とは裏腹にその仮面の下に受かんだ歪んだ笑みと安堵の色の矛盾、内心の自嘲と苦笑に気づけるものは誰もいなかった。
○
ジャブローが捕らわれていた
パナマを襲撃したザフト艦隊はその大半が自分達で開けた遠距離間短時間ゲートを通して脱出したのを確認したことも考慮しての判断であった。
惑星は構成する物質の都合でMSでも大気圏内外との行き来も容易で重力も低く、それで人類が生身で活動できる大気圏の状態を保たれていたので、多くの将兵が外に出て地に足を付いている。
「「「「「……………………」」」」」
だが、その多くは気力を失った状態で地に尻を突き、絶望や落胆で生気を失った顔をしていた。
「…ぅ…う…ぐ…」
デニムが意識を取り戻したのはその一角の影であった。
「しっかりしてください! 大丈夫ですか!?」
その彼が目を覚まして最初に見たのは、自軍のエースの一種の証である赤服のパイロットスーツに身を包んだ少女だった。
顔こそ初めて見るものだがその声音には覚えがあった。
「…その声…確か、足付きの…ストライクのパイロットか…」
「…はい、そうです…」
何度も敵として対峙し、刃を交えたこともある相手であることを見抜いたその問いに、その少女であるキラは隠しごとを出来ないと、それをするのは不実だと感じて認める。
一方のデニムは、アスランの報告で聞いたその名の少女の話、それらから多くの答えを知りたい問いが幾つも出るが、もはや電磁パルス等で命を削り取られて残された時が短くないのも悟って、故に最も知りたい問いを口にする。
「…何故…敵なのに助けた…?」
そのごく自然な問いに、キラはその齢には似つかわしくない深い悲しみと憂いを覚えた瞳で再度口を開く。
「…助けたい…それだけじゃだめですか…?」
キラのごく当たり前の答えとその表情に、デニムは世界をこのような姿へ加速させたあの事件で、当世でもう会えなくなった肉親を、彼女を通して思い浮かべた。
「…そう…だな…娘にも…クリュセで…そう…教えていたのに…」
そう言い終えた後、デニムはその人の血で既に汚れた身なのを自覚しながらも、業火の
「………」
キラが生を無くしたデニムの手を温かい自身の手で包んでいたその時、リュールが達観と諦観、憂慮と未練が混じった表情でヘルメットを脱ぎ捨てて岩肌の地面へ打ち捨てるように下ろした音が静かにその鼓膜を震わせた。
次回、此度の大惨劇を受けて大きく揺れ出す各方面の様子が中心になる予定です。