星界の輪廻   作:oosima

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今回、この世界ではパナマのジャブローで起きた種ガン屈指の真っ黒イベント直後のその影響を受けた各所の様子が中心になります。


132 広がるに連れて高まる波紋◎

 ○C.E(コズミック・イラ)71年5月8日正午(帝国暦952年5月8日正午) プラント小銀河 アプリリウス市 首都星系アプリリウス・ワン 首基プラント 最高評議会ビル○

 

 銀河連合軍総司令部ジャブローがサイクロプスの暴走で消滅して数時間後、その報せを受けたプラントは騒然となっていた。

 戦争を勝利で終わらせるために味方をも欺いて決行された作戦が、まさか敵の自爆作戦で少なくない数の味方を道連れにされるという結末になれば当然である。

 

「…今現在の生存がわかっている戦力は投入戦力の62パーセントと確認されています!」

「先ほどグラスゴー艦隊の生存を確認したのでまだ増えるかとー…!」

「確認されている熱量とその余波からして相当な規模のサイクロプスが拘束設置されていたようでー…」

「現地で残っている部隊にわかった情報はすぐに送らせ続けろ! それとザビ副(・)議(・)長(・)も直ちにここアプリリウスに呼び戻せ!!」

「アイリーン・カナーバ評議員らが臨時最高評議会の開会を求めていますがー…」

「被害の全容調査を優先中と伝えておけ! それからー…」

 

 特に最高評議会へ登庁中のパトリック・ザラら強硬派の動揺が大きく目立っていた。

 穏健派を欺いて必勝を期して進めて実行した作戦が(銀連にとってほぼ空回りな結果に終わってしまい、そのことはまだ知らないとはいえ)敵の自爆で不発に終わってしまったのだ。

 ザラからすれば後からクライン派がどう抗議しようと、勝利の結果とそれで得た市民の支持を盾に機密のためであると押し切る算段であったのに、被害の状況次第ではその逆の結果になりかねない状況だった。

 

「…あ、あの…ザラ議長…」

「む? 何だね君は?」

 

 故にその事と今後の軍事作戦展開への悪影響について意識と思考を大きく割かれていたパトリック・ザラとその側近達にとって、その目の前に現れた花束を持った小さな子供にまず抱いたのは警戒ではなく困惑であった。

 

「…わ、わたし…お姉ちゃんがここで働いてて…今日…誕生日だから…お花…届けに来たんですけど…」

「ああ、それだったら向こうに受付があるからそこに名前を伝えて要件を言いなさい」

 

 その少女が初めて来た地ゆえの不安からか僅かに震えながらその花束を持って近づいてくると、元は学校教師であったパトリック・ザラは優しく他所へ行かせようとするが、そこで護衛官の一人が鼻をぐずらせると何かに気付いた様子で顔から血の気が急速に退き始める。

 

「ザラ議長すぐにお離れください! その花は爆や…!?」

 

 そう叫びながら護衛官が子供を引き離そうとしたその時、その子供が持つ花から煌めいた閃光が周囲の視界を白く染め上げた。

 

 

 

 

 

 ○大星洋大星域 大星洋連邦右側 首都星系ニューヤーク ???○

 

 人類宇宙における最大国家はアーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ)だが、人類圏国際社会で主導権を今(・)現(・)在(・)握っている大国は自由主義圏の盟主を自他ともに認める大星洋連邦である。

 これは帝国(フリューバル)が多国間関係や国際協調に興味を示さず、自国の経済的権益を犯さない限りは口をあまり挟まないためであるのと、長らく社会主義圏の盟主であった新ソ連が対BETA戦で勢力を大きく減衰させつつあるためである。

 そうした幾つもの要因が重なって人類圏国際社会では主導権を握ってきた同国だが、その内部は民主主義国家だが国富の半分以上を人口の1パーセントにも満たない富裕層が握り、その少数派が大統領選挙などで絶大な影響力を持つ。

 

「…失敗した…じゃと?」

 

 その少数派の中でも特に最上層に位置し、同国建国初期になり上がった先祖から始まって増え続けて受け継いだ莫大な資産とその家名で絶大な影響力を持っていた、人間ではこの時代でも高齢である九十歳過ぎの男ジョン・グリードキンが眉間に皺を寄せていた。

 

〈…はい、戦闘中に現れた謎の2機のMSによってサイクロプスの存在を暴かれ、それを聞いたギレン・ザビの撤退命令を受けて、少なくとも現地ザフト軍の7割近くが生還したとのことでー…〉

「………ジョン、近日にシ(・)ャ(・)ン(・)グ(・)リ(・)ラ(・)の方で一族の方々や他のロ(・)ゴ(・)ス(・)参加者の方々との会合が開かれます。そこで今後の対応を決められるのがよろしいかとー…」

 

 その様子に通信を掛けている銀連軍士官と、傍に控えている側近も恐る恐る接するしかなかった。

 

 

 

 

 

 ○C.E(コズミック・イラ)71年5月8日夕刻(帝国暦952年5月8日夕刻) プラント小銀河 アプリリウス市 首都星系アプリリウス・ワン 首基プラント 最高評議会ビル○

 

「…な、何だ? このざわめきは…?」

「空中にもやけにニュース画面が増えているがー…」

 

 アスラン・ザラとガルマ・ザビがプラントに到着した頃には、既にアプリリウス中へスピットブレイクの結果の概要が知れ渡ってのざわめきが港にも見えたが、官庁街への道中を急いでいた二人はまだその詳細を掴めていなかった。

 

「全滅しただと!? そんな馬鹿な!?」

「「!!??」」

 

 国防委員会本部のロビーもいつもに比べて確実に人や動揺が増えており、そこで突然鼓膜を震わせてきたその立ち話の内容に二人はギョッとした。

 

「ユ、ユウキ隊長!」

「な、何ですかこの騒ぎは?」

「アスランにガルマ、二人してどうしてこんなところに…?」

「い、いいえ…我々は新型機体拝領のため呼び戻されたところでー…」

「それよりもこの騒ぎは何ですか?」

 

 そこでアカデミー時代の恩師の存在に気づいて二人は問うが、恩師ユウキは重い表情を浮かべる。

 

「…スピットブレイクが失敗したようだ…」

「「!!??」」

「上層部は密かに前々から進めていたようだが、決行当時に攻撃目標をスエズから変えられたジャブローには銀連がサイクロプスを仕込んでいたようだ…」

「…パナマ…ですか!?」

「…当時の現地にいたザビ国防委員長の判断で撤退命令が下されて、今現在わかっているだけでも7割の艦隊や部隊が生還したらしいが、全滅した隊が幾つか出たらしい…」

 

 そのユウキらも直前まで知らなかっただろう作戦内容に、二人は釈然としない驚きを浮かべ、先に別れたイザーク達の姿を思い浮かべて悪寒を覚える。

 

「それとアスラン、君にとって悪い知らせが二つ…」

「…え?」

「…今日の正午に最高評議会議場の前で自爆テロが起きて、それで出た犠牲者にザラ議長も…」

「…!? 父が!?」

「…更にスピットブレイク開始時点に極秘開発された機体の一機が盗まれたのだが、その犯人を手引きしたのが、君の婚約者…ラクス・クラインということで…この二つの事件でプラント中が大混乱なんだよ」

「!? ラクス…が!?」

 

 そんな状態で掛けられた二つの追い打ちに、アスランは顔をこわばらせてバッグを床に落とした。

 

 

 

 

 

 ○数時間前 C.E(コズミック・イラ)71年5月8日正午前(帝国暦952年5月8日正午前)大星洋大星域 大星洋連邦左下端部 銀河中心領域付近 パナマ星系 ハニア大星域方面ゲート前惑星○

 

「…た、助かったんだよな…俺たち…?」

 

 アスラン達が帰国直後に衝撃を受ける数時間前、ジャブローから命からがら脱出できた一行に混じるトノムラが、その銀連軍側が一時停船している惑星の地表でへたり込んでいた。

 周囲にはアークエンジェル所属や他の艦問わず大勢が脱力した状態で降りている。

 

「「…………」」

 

【挿絵表示】

 

 その外れ辺りに停船したアークエンジェルの傍に、ザフトの赤服のパイロットスーツを着たキラ・ヤマトと、帝国軍(ルエ・ビース)の機械甲冑機翔士(ソウォーヴィ・ロダイル)の衣装をしたリュール・ソードリュの姿がいた。

 

「あ、あのMSは何だ…どっちも…?」

 

【挿絵表示】

 

 二人の背後には、それぞれが乗っていたGフレーム使用機と酷似した頭部をしたMSが降り立っていて、周囲の眼差しと注意を集めていた。

 

「「「「「………………」」」」」

 

 二人の前にはアークエンジェルから降り立ったクルーの姿があり、我が目を疑っている表情なのが見て取れた。

 その手には少ないが微量の土が付いていることからして、先ほど救助したザフトのザクのパイロットはもう間に合わず、おそらく埋葬したのだろう。

 

「…スメラギさんにマリューさんお久しぶりです。間に合って良かったです…」

「…いやー、こちらもあの時はさすがに死ぬかと思いました…が、運があって良かったです」

 

 その沈黙に居心地の悪さを覚えたのかキラとリュールから苦笑気味で、けれども落ち着いた大人びた感じも加えて口が開かれた。

 

「…本当に…キラさんにリュール…君なの?」

「「はい」」

 

 二人の再びの言葉と、それを聞いた周りの表情を見合って、自分達が見ているのは幻ではなく現実だと認識し合うと、それまで抑えられていた感情と動きが一斉に湧き出てきた。

 

「キラぁぁ!」

「うわぁ! 危ないよミリぃ…」

「ぬおおおおお! リュールはん生きてたんやなぁアアア!」

「何で関西弁なのボーボボさん?」

「さすがはリュールゥゥゥゥ! ゴキブリ顔負けの生命力っしょおおおお!!」

「何か微妙にディスってるような内容も混じってるけどー…まー、お互い概ね好意的って感じなのは掴みが良い証としてー、お互い色々と聞かなくちゃいけない話をしないとー…」

 

 そうして周りにもみくちゃにされながら二人はしなければいけない話に切り込む。

 お互いこれまでに何が起きたか、どうやって生き延びたのか、ここまで来るのに乗っていたMSは何なのかと知りたいことは山積みであった。

 

「…ザフトに…帝国に…いたのか?」

 

 ムウの躊躇いがちの呟くような問いに二人は落ち着いた態度で返す。

 

「…そこの人達に救われました。ですが…」

「…帝国でもザフトでもないです…」

 

 もしも敵対するザフトや中立とはいってもいつ銀連と一触即発しても可笑しくない帝国に居るのなら、助けに来るのが不自然だから当然の答えではあった。

 

「…そして、銀連軍でももうないです」

「「………ァ…」」

 

 そこで役職名ではなく、名前で呼ばれていたことにスメラギとマリューはハッとし、二人が両軍に対して呼びかけられた理由に気付ける。

 

「…わかったわ。落ち着いて話をできる場を設けましょう。もう…私達だけで済ませられる話ではないでしょうし…」

「それであちらの機体はどうすれば…?」

 

 だが、問いが二人の搭乗機に移ると周囲は唖然とすることになる。

 

「…整備や補給については当分必要ないです。あちらにはNジャマーキャンセラーとG元素式疑似星核粒子を積んでいますから…」

「青いあの子は当分どころか、二連結型半永久式疑似星核粒子炉を積んだ上でG細胞融合型の疑似細胞型生命式金属(オリハルコン)で大半が作られていますから、炉が稼働している限りは壊れても適当な無生物が周囲にあれば吸収して再生できます…」

「ぶーーーーーーーーーーーー!!?? ええええぬううゅげええっほほほほほほ!? NジャマーキャンセラーにぃG元素式疑似星核粒子や半永久式疑似星核粒子炉と他のものと混ぜこまれた疑似細胞型生命式金属(オリハルコン)だとぉお!?」

 

 皆が愕然とさせられたその答えに両津は派手に噴出し、激しくせき込みつつもそれが収まるといち早く驚愕を載せて再び問う。

 

「…じゃ、じゃあ…白い方は核とG元素で動いてるってことかぁ!?」

「水色の方でももう次元が違うんじゃねってレベルなのに…白い方でも十分にオーバーテクノロジーすぎだろ…」

 

 アークエンジェルの電子戦・火器管制担当ダリダ・ローラハ・チャンドラII世と、整備班担当のコジロー・マードックは恐れつつも驚きと興味の色を強く同時に浮かべる。

 G元素は核が普通に使えていた時代から不安定だが時空間にまで異常を起すその高エネルギー生成能力から、BETA大戦でその存在が発覚した時から各国は躍起にその利用法の実用化に取り組んでおり、まだ不安定な状態でしか扱えないのを逆手にとって造り出されたのが五次元効果爆弾こと“G弾”である。

 今でこそその稼働や制御に必要な、それ自体が多くのエネルギーを生み出す核が大幅に制限されている状況なので日陰に追いやられているが、その原因となったNジャマーのキャンセラー装置と共に銀連圏は開発しようと必死である。

 

「…疑似星核粒子炉って…電力供給式の量産型の方ですらいまだ実用化に至れてないってのに…半永久式の方だなんて…」

「こっちのナノマシン技術じゃあ、外装のひび割れの簡単な修理がまだ限界だってのに…」

「アーヴやノルドみたいな魔道技術大国でも、掘り出された疑似細胞型生命式金属(オリハルコン)は形だけならともかく、性質には掘り出されたもののままでしか扱えなかったはずなのに…いつのまに…!?」

 

 ある意味でそれ以上の注目を集めるのがリュールの乗っていた方の機体である。

 帝国が疑似星核粒子技術を開発して公表してからすでに数年が経過し、同国では兵器以外の動力炉の他にも、医療など他の分野にも幅広い応用や進歩が注目されていたが、当時は旧来の技術の利権などの都合で他国圏ではあまり着目されることはないか、もしくはそうされていた。

 だが、Nジャマーによる核動力機関のほぼ壊滅化でその状況は一変し、今現在はあの手この手でその入手や実用化に各国は必死である。

 けれども疑似星核粒子炉はその秘匿にも極めて高度な技術が用いられており、戦場で破損して直せなくなったら急速な劣化を起こすことが確認されており、経済報復もあって未だに満足な進歩は見られない状況にあった。

 疑似細胞型生命式金属(オリハルコン)の方は先駆者(フォアランナー)時代由来の出土品に混じる特殊な合金で、その魔術的波長を変えることで硬度や柔軟性を大きく変えられ、一度固められた場合の超硬度と魔術礼装の素材としての最適さから古くから文明圏を問わず利用されてきたが、その希少さ故に多くの勢力で争いの種となってきた。

 また、同金属自体が極めて排他的な性質を持つことで、何百年も一部の封印指定級魔術師を除けば、合金化もままならない状況が続いていた。

 それが実質無限増殖可能な“G細胞”と融合したとなれば、それはもう素材分野において革命的な存在だと言える。

 いずれの観点からして、この二機を構成する技術はもはや人々に期待と恐怖、拒絶と渇望そのどちらも引き立てるものばかりであることを感じさせ、人々はその両機の姿を見上げる。

 

「…データを欲されるのなら私達はここを離れます…」

「奪おうというのなら僕もこ(・)の(・)子(・)達(・)を力で守ります」

「「「「「……………」」」」」

 

 それを察したのか、キラとリュールは周囲の欲望を刺すような底冷えをさせる光を穏やかな目より見せる。

 

「…それがあ(・)の(・)子(・)達(・)を託された私達の責任です…」

「…わかりました…」

「皆、機体には一切触れないよう…触れさせないように…良いわね」

 

 二人のその覚悟に、もはや役職や階級の違いなど無くなったと改めて悟ったアークエンジェルは二人の望みを受け入れる。

 

「…そこまで腹くくっているのに何で俺たちを助けた?」

 

 対等になったと悟った上で、銀時はふと思い立ったものであり、道が分かたれた時の懸念でもあるその問いを、いつもの軽い口調だが強い眼差しと共に投げかける。

 

「…そうしたかったから…それじゃだめですか?」

「人が人を救うのに…理由は無くてもいいのが普通なはずです」

「…ま、こんな世の中でもそれが普通であってほしいよな普通はなー…」

 

 キラの春の澄んだ湖面のような眼差しと、リュールの雪解け水が春の日差しで温められた清流のような声音を添えたその答えに、銀時はシリアスな時の人情味と強い意志を感じさせる眼差しも含めて答えた。

 その時の銀時の右手の人差し指が人目もはばからず鼻をほじくって少数だがそれに気づいた他の艦の銀連兵にしかめっ面を向けられ、丁度よくリュールの腹の音がグギュルルルと盛大に鳴って周囲を苦笑で脱力させて、それでこれまでの経緯の確認も含めた話を食堂ですることになったが、それはそれである。




次回、回想シーンに入る予定です。
ちなみに、今回のお話で久々に登場した本作主人公が着ていた衣装の元ネタは、短編アニメだけどそれだけなのがマジでもったいない名作“果ての一閃”のパイロットスーツです。
それでキラさんが乗る方の本作フリーダムですが、この世界での技術レベルから見た目はもうストライクフリーダムで、性能はそれよりもずっと上です。
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