○帝国暦952年4月20日正午(
「…な、なるほどなぁ…あのユニウス・セブンで乗ってたゼミーシュルでとんでもない爆発に出くわしたと思ったら…あんなことになってたなんて…しかもそれを契機にこんな色々とんでもない事態のカーニバル行進…」
(…話し合いの場で自作自演が濃厚な爆破を口実に軍事攻撃仕掛けたら実質植民地のコロニー群にMSなんて人型汎用兵器で猛反撃され、それを潰そうとして放ったG弾なる新型兵器の軌道がずれて、話し合いの仲介してた
その中でもっとも比重を多く占めているのは自分も巻き込まれた事件で起きた第4次大戦関連である。
〈…今回の事件で独立宣言を出したプラント及び、今回の事態を受けまして銀連側に対して防衛権行使として政府が発表しましたザルカバス宣言について有識者の見解をー…〉
帝国にいるので、当然そこの報道番組や記事が多めになってくる。
〈…遺族の多くはそっとしておいてほしいというのが大半だというのに…現与党の政盟会政権が取った手は最悪ですよ!〉
〈…そもそも総人口が百億にも満たないプラントが国力で遥かに勝る銀連に勝てるわけがー…〉
〈…帝国がすべきなのはこれ以上犠牲が増える前に休戦させて講和の仲介をすべきなのにー…〉
〈…我々としては、今回の戦争は現与党の極右派が銀連圏の内部分裂を促進するために策動したのではとー…〉
(…何か最初の生を過ごしたあの列島の自称進歩派みたいな意見が多いなぁ。まあ…大手メディアは何処の国も大抵こんなのはこの時代も一緒だけどー…いや、あっちの地球のどの国も似たようなもんか…)
色々な意味での既視感を覚えつつもドゥリュースは、血のバレンタインから今に至るまでの情勢の変化についての情報を吸い続けていた。
〈…先月にザフトが自衛権行使の名目で銀連圏の交戦各国に散布したNジャマーによる経済混乱ですが、未だに収束する気配がー…〉
〈…パリで食糧配給制限撤廃を求めて起きたデモですが拡大は続いて一部が暴徒化ー…〉
〈…ねー魔理沙、今回のNジャマー騒ぎで銀連の左右両派及び両方と繋がってた|帝国〈こっち〉の自称リベラル連中のスキャンダルが次々と明るみになってて、立憲連合党界隈はダンマリか阿鼻叫喚になってからー…〉
〈…あー人権とか地上基地犯罪にはデモしまくってるわりには“業火の極光”の時にはこの半年はほとんどダンマリ決め込んでたくせに、ぶちぎれた遺族がプラントに移民してそんでザフトに志願したのには悲劇の政治利用とか二枚舌全開なのは相変わらずなー…〉
〈それでこのきめぇ丸の調査では、ザフト移籍ではなく帝国籍のまま人道支援の医療支援に向かってた女性医師ニザル氏が暴行惨殺されたあげくに、犯人グループの多くが未成年なので保護観察処分になったのを受けまして、E.U本国領内難民の大統領ご令嬢所属NGO管轄下難民というのもあり、宰相閣下は会見の場で痛烈な皮肉を浴びせつつも、先週にはE.Uへの人道支援限定名目での緊急食糧支援法案は通過させる見込みでー…〉
(…そんで大手メディアの多くが左に行っちまうのに反比例して、規制が緩い電脳の方では言えない本音が右中心に寄ってくのも同じかぁ…。それで左右も自分達視点で目立たないだろうと判断した領域でこっそり進めようとしてるつもりですぐばれてすぐバッシングされるのは同じとー…)
情報を入手しつつもそれを扱う人々の二極化に対して感じる危うさへの既視感もドゥリュースは覚えつつあった。
(…それでゼミーシュルの件を受けて、国内の方で現与党が選挙で大勝…めっちゃ大掃除をしたらどんだけ剝いても尽きる気配のない玉葱の如く、左派中心で落選や逮捕が大量発生…一度目の生の時のあの島国と違ってビシッと締め直されてるのは良かったけど…上下どっちも過半数与党になったから、ますます外…特に銀連に対しては刺々しい政策が連射されまくって緊張悪化は加速かー…。まー…個人的には一番気になるのはー…)
色々な意味で危うい既視感を覚える記事やそれらに対する反応の数々に、リュールはジト目を浮かべ続けるが、その中に混じる自分自身の記事に何度も目が行っていた。
〈…ゼミーシュル号事件において、帝国青年団代表として乗船なされていた
その記事は言い方や内容の詳細などで異なるが、アブリアル・ネイ=ドゥアセク・
(…ラマウアから聞いた限りじゃー、あのゼミーシュルの件で露になったスキャンダルで反逆罪や外患罪も過去十位以内に入るレベルでしょっ引きが発生したけど、その煽りのせいで疑似星核粒子技術開発者の情報も幾つか出たらしいから、この世界での本当の開発者である僕の安全上の理由で、一旦は死んだってことにしたらしいけどー。まー、実際にあの事故でもう遺伝子や霊子を調べないとわからんレベルの重傷を業火の極光で負ってたから、その治療のために一年以上も再生医療を受けさせられまくったなんて死んだも同然だけどー…)
表世間では死んだことにされている自分の鏡に映し出されている姿と、自分の死亡記事を見比べるドゥリュース。
ちなみに、あの血のバレンタインの時に死にそうになったドゥリュースだが、彼自身も何度か会ったことのある白銀のツインテールをして見た目は小柄な美少女に見えるエルフで、帝国に取っても大事な客人の一人である魔術師に救われたらしい。
(…脳含めた一部以外はほとんどとっ変えたようなもんだから体が新品みたいに傷やその痕が一つもないのは当然…のはずなのに何故か気になる―――)
「あ、兄様また追加の課題と研究資料の報告書です」
「―――うって…見た目は無事そうに見えて僕はまだ療養中なんですが…」
状況を考えれば自然なのだが、それにかえって違和感、特に我が身へそれを強く抱いているリュールだが、その彼にラマウアは次々と
「…これでも療養の身の治療を優先して削ってもらえた方です。それからあなたの再生治療中に協力してくださった日光卿にも感謝の手紙を書かないとー…」
「…あ、う、うん…あの子ね…朦朧とした感じでしか覚えてないけどー…」
ちなみに、本来ならもっと治療に時間がかかるらしいドゥリュースがこんな目覚めた初日から学業や仕事の話を遠慮なく吹っ掛けられるまで回復が進んだのは、日光のおかげであるらしい。
彼女はその併合もとい征服の特殊な経緯で一時期少し有名になっていた
だが、その医療魔術の技量と適正から
意識不明中のドゥリュースの治療にも駆り出されており、何度か意識が朦朧としながらも半覚醒した時間に彼女が担当であったことが何度かあったので、見覚えがあるのはそのためのようであった。
「…そう言えばーネーナ聞きたいんだけど、メアリは? 彼女には知らせてもらえてもう連絡の一つも来そうなものだけどー…?」
「ああ、あの子なら昨年のゼミーシュルを受けて色々と頭を冷やして考えたいって言って、
「…あー、マリルさんが亡くなったのならー…けれどー…、それくらいのことがあったらあの涼しい顔できっちりやり反す性格だからー、流行りの中立国移民経由プラント移住ザフト入隊なんてトリプルコンボかとー…」
「…いやー、まさかー…あ、私もう時間だから今日はもうこの辺でねー…。課題の方から優先して良いってー…ほんじゃー」
今日に目覚めたばかりだが、状況からして自然な説明や情報に、ドゥリュースが却って
「…ねえ、いいの本当に…? 情報省が機密保持を理由に記憶はこの一年ずっと寝ていたことに上書きしたけど…」
「…………」
数分後、
「…知らなければよかったと思えるものはこの世界にはいくらでもあります…」
「…そ、そう…」
そう言う日光は明らかに彼女自身に似た経験が悪い意味で、それも只ならぬ重さで出ていることをその目元の翳で察したネーナはまだ深い追及は出来ずにいた。
(…だけど、私達がどれだけ…彼に今の平穏を生きてほしいと願っていても…彼自身がもしも気付いてしまったら…私はどうすればいいの? 私は…あの子達の時のような…
そして、そのネーナにそれ以上の言葉を止めさせるまで、日光はその黒く艶のある長髪で隠した傷跡とそれが呼び起こす、
次回、主人公以外にも新たな生存者としてあの人が再登場します。