○帝国暦952年4月24日夕刻(
「………」
プラントの方でラクスが最高評議会の議論を生放送で見た日の翌日、ドゥリュースは帝通板*1の電脳空間にいた。
その空間内部では、彼はゼミーシュル事件に始まる今現在の大戦、特に帝国では“白双”と呼称されているアークエンジェルについての記事や情報を、民間やそれ以外問わず漁り続けていた。
(…公式に発表されているものでは、この白双についての流布している情報が内外のもの問わず少なすぎる…。ヘリオポリスで
膨大かつ濃密な電子の海を泳ぐようにアバター姿のドゥリュースは調べていくが、その理屈だけではうまく言えない感覚的な引っ掛かりをますます強めていく。
(…リューナクト権限で出せる
その感覚に嫌な感じを覚えつつ、それ以上に生じてくる興味と切迫感に押されるままに泳ぎ続けていくドゥリュースの周囲は急速に書き換えられていく。
《big》「お久しぶり皆ー! ラッフィングマンルーム始まるよー!!」《/big》
数十分後、帝通板の何処かに設けられた一部サークルメンバーだけで行われて、外部からの干渉には制限が加えられている電脳チャットルームがアバター付きで開かれた。
そのルームの中心には円卓が設置されて十数名の討論参加メンバーがそれを囲んでおり、その更に周囲を数百人規模の観客のアバターが外野席に座って取り囲んでいる。
どちらも帝国圏内外どちらのメンバーが混在していることを示す服装をしていた。
「…いやー久しぶりだねー」
「見知ってる顔以外にも新しくもどこかでちょくちょく売れている顔やそうでない無名の顔もいるし…」
「ま、そのほとんどもトークに加わる気も、それを終わった後のリアルに話す
「よしなよ、そう言う言い方はー…ん?」
討論参加メンバーの間で軽い挨拶と軽めの噛み合いが始まろうとしたところで、彼らが座るテーブルが拡張されて新たに椅子が三つ増える。
そして、その席に手を置く形で討論に参加するメンバーが現れていく。
「…ここに、血のバレンタインとヘリオポリス事件を繋ぐ形で“笑い男”に付いて興味深い情報を持つメンバーがいると聞いたのだけど?」
まず現れたその一人目は落ち着いたピンク色のショートヘアーと同色の瞳でクールな美貌を決めつつ、肌の露出度は少ないがそのグラマラスな長躯に張り付く形式の踊り子のような衣装で魅惑的な美女ミラ・キリアンが姿を現した。
「私は初めて見る子ね。初心者の急な参加はここでも創設メンバーの一人じゃなきゃ参加は出来ないはずだけど―――」
「
続けて薄い赤色のオールバックヘアーに見た目は落ち着いた美女だが、声と雰囲気は十代半ばという感じの女性アバターも姿を現した。
「リン☆彡メーじゃないか! 君も久々に参加するのかい!?」
「―――おって他には誰? こんな予定にないメンバーの急な参加を決められるなんて、このチャットルームの創設メンバーの支持が複数ないと無理でしょー…!?」
それに周囲が驚く中、最後の飛び込みメンバーが情報の海から姿を現していく。
「今回の件で真相へ近づくのに向いている人がこの人だったんで僕がリン☆彡メーに持ちかけて了承を得た後に他の創設メンバーの推薦を得ました。この短時間でそれするのはめっちゃ大変でしたけど」
現れたのは緑色基調のサイバーパンク風アーヴ長衣に身を包んだ緑色のエルフの少年であったが、その姿を見ると討論参加メンバーや観客双方の多くが騒めき始める。
「おお! これはまさかのサプライズゲスト! 当チャットルーム創設メンバーの一人“リュッカ”の登場だー!」
「おお!? マジで!?」
「この番号に反応は本物だ!」
「参加は少ないけど毎回とんでもない爆弾情報持ち込むんだよなー!」
その姿に湧き上がる周囲にリュッカは表向き平静であった。
(…うぐ、最初の頃はあのタイラントマザーの弱みを握れるんじゃないかと始めたチャットルームが…まさかここまでなるなんて…アブリアルに生まれなければせいぜい技術チートしかないんで搾取されまくる陰キャにしかならない僕にはこの空気は長時間浴びるときつい…!)
だが、平静に見えるリュッカの見た目とは裏腹に、その中身であるドゥリュースは非常に胃が痛そうな表情を浮かべていた。
「…さてと! 今回のトークテーマは現在の銀河中を巻き込んでいる第4次大戦、その始まりとなった血のバレンタインの時にゼミーシュルへ現れた笑い男! そしてその後のヘリオポリス崩壊の数日前に現れた笑い男の謎について追及していくよー!!」
そんなの知らない司会役のリーゼントヘアーの青年だが声は少年のように高い司会役によって、トークは始められる。
「…えーっとその前に笑い男とは何なのかを改めて見直そうねー、始まりは○年前に、当時はまだ銀連の共同管理化であったプラントのムンゾ1にて建てられたナノマシン先端研究所の開設式典でアーネスト瀬良野氏が襲撃及び脅迫を受けた事で脚光を浴びたんだよね」
「うん、その時に現れた笑い男がアーネスト氏に“真実を公表しろ”と迫りながらピストルを突き付けて脅迫したことと、その後に反コーディネイター過激派による襲撃が起きたこと、その現場が生放送されていたというバッドタイミングコンボが炸裂したことで超悪目立ち化、生放送で撮られていた映像が事件の起きた場所や参加していた要人の知名度の高さもあって銀河中に流布し、一躍して各国を問わず有名になったんだよね」
リュッカ(ドゥリュース)は内心では胃が滅茶苦茶痛そうな顔をしつつも、アブリアルとしての生来のものを知的な親戚に大勢が集う儀礼の場で実践形式にて鍛えられたことからくる精神力で、電脳空間上では平静且つ流ちょうなトークで当時の映像も出しながらトークに加わっていく。
「うわ! すげーこんな映像始めてみたけど本物!?」
「建物や人物の内容に画質からして別の人物が別方向より撮ったもので本物みたいだけど…」
「まあ、この場に出席していた知り合いが偶々撮っていたもので処分に困ってたのを譲ってもらったものでしてー…」
「…うーん、ますますクールなトークの材料になりそうだねー」
その中でリュッカ(ドゥリュース)がその本来の出自と権限で得られる情報を(帝国法には触れないギリギリの量や質で)タイミングを選んで小出ししていくことで、周囲の議論を深めさせてより他の見解や情報を引き出していく。
「…やっぱりこうした事実からしてー“笑い男”の正体は腐った世の中に対して我慢できなくなったクールガイがそれをぶっ壊すために動き出した男だと思いまーす♪」
その中で笑い男のコスプレをした青年が軽い調子でややアナーキズム気取りな発言を繰り返す。
「…でー、それで突いて出てきたスキャンダルを覆い隠すためにその大本が模倣犯を装って拡大誇張させていったものが大半の証拠であるとー…」
それにリン☆彡メーが世界各国、特に日本皇国辺りで社会現象となった笑い男ブームに関する映像を、ミステリーサークルやアート、ミュージシャンのコンサートなども交えて茶化すように横槍を入れる。
「おいおい! そんなドリームもないことを入れるんじゃねーよ! 少なくとも最初のナノマシン研究所と今年にヘリオポリス崩壊の数日前に起きたあのモルゲンレーテ施設脅迫事件は同一人物の本物だ!」
笑い男コスプレ青年が反発するように出した映像では、今年の一月にザフトの襲撃で崩壊したヘリオポリスの崩壊数日前の様子を描いたニュース番組だ。
朝の挨拶をするニュースキャスターの背後にあるモルゲンレーテの研究所支所へ通勤途中の研究員や職員の姿が多数見られる。
〈…それでは本日のヘリオポリスの天気についてですがー…〉
〈うわぁ!? な、何だぁ!?〉
〈え!? あれ…本物!?〉
だが、そのニュースキャスターの背後で騒ぎが起き出し、カメラが動くとそこには前回の事件と同じくピストルを構えたあの笑い男と、それに組み敷かれて銃口を突き付けられているアーヴの少年の姿があった。
〈…ちょっと…!? 何するんですかあなたは!?〉
〈…悪いが時間がこれしか許さない! 他の手を選ぶにはあまりにも相手が大きすぎて動きが速すぎる!〉
〈…ちょ!? 何このハック反応!? 人の許可なしに他人個人の電脳へ干渉するのは色々安全性込みで問題が…!?〉
〈おい! その男を捕まえてくれ! そいつ研究所のデータを盗まれ―――〉
〈…本当にすまない…っ!!〉
〈―――えってうわぁ!?〉
〈ゲホゲホ!? な、何だこれ!?〉
そのアーヴの少年が何やら苦しみだしたところで、画像の端から猛烈な勢いで白煙が立ち込めてきて周囲の人々を飲み込んでいって、晴れた後ではそこには苦悶の顔で地に倒れているアーヴの少年の姿しか残されていなかった。
「…今回のこの事件もーこの数日後に起きたヘリオポリス崩壊とかの混乱も手伝って結局は犯人またしても見つからずじまいであるとー…」
「この二件の笑い男の声は同じなんだよ! 僕が見つけたソースによる声紋解析に従えば同一人物である可能性はなんと98パーセント!」
「そんなのこの遺伝子調整に電脳化や義体化が進歩した時代じゃーどうとでも出来るってー…」
笑い男コスプレ男とホスト風青年の間で口論が始まる中、リュッカ(ドゥリュース)は映像に映し出されている、ヘリオポリス笑い男復活事件での被害者であるアーヴの少年に意識が向けられる。
(…何故だろう? 何かこのアーヴの同じ年くらいに見える男の子…何処かで見た気がする…)
「ゼミーシュルの方は後に回してまずはこの二つを中心に少し視点を広げてみましょう。特に笑い男事件に関係する企業や研究グループの動きについて相違点を洗えば、この二人が同一なのか、別人だけど関係のあるなしやその詳細も見えてくると思うのだけどー…」
「お姉さん鋭い!」
そんなリュッカ(ドゥリュース)の不可解な気分に構わず、ミラ・キリアンの提言を受けて司会役のリーゼント青年を中心に映像が再び切り替わる。
「…まずナノマシン研究所の件についてですがー、今回の施設の警備を請け負っていた警備会社が信用を喪失しまして株価が暴落したところで、研究所関連企業と共に株を大星洋連邦の国営企業に買収されたんですよねー」
「そうよねリン☆彡メー、それと今回の件で大星洋の親プラント企業も信用が低下してそこの企業買収が大きく進んで行き、事件自体も会社による酷使に不満を覚えたプラント住民による自作自演という説が濃厚という公式声明を、銀連が強引に出したことでますます憶測や都市伝説が多様化拡大していっちゃったのよ」
「あー、それでナノマシン開発で得たデータや特許の多くも大星洋やE.Uに流れたということでー、その大本の技術提供者である帝国のバラホ電子やノルド・マジェスマジック・テクノロジーと言った非銀連圏企業との間で裁判が多数発生したんだよねー」
「つまりー、見方によっては、笑い男はナノマシン研究所関連の不正を暴こうとした男と言う定説の裏側でー、実際はその糾弾しようとした企業や団体の利益拡大の片棒を担いじゃったとー…」
「おいおい、そんなドリームもクールもないグロテスクな話をするんじゃないよー」
「…で、ヘリオポリス崩壊でその逆が起きたとー…」
リュッカ(ドゥリュース)が話に加わると、映像はプラントのナノマシン研究所からヘリオポリスの方へ切り替わる。
「…今度の事件とその後に起きたヘリオポリス崩壊で流出した情報で、先のナノマシン研究所事件で利益を得ていた企業グループは機密情報流出や資金流用に技術盗用が明らかになって逆に大損や逮捕者大量発生になったってことよねー…」
「あれ? それだとすると笑い男が企業の利益誘導のために生み出された存在とする説に従えば、この二人が同一人物というのはおかしくない?」
「ああ、もしも大星洋・E.U側企業側のスパイが笑い男とすれば、その不利益になるヘリオポリス事件を起こしたのはおかしくないかな?」
「…んー? ところでさっきから何か言いたそうな顔だけどーずっとダンマリなあなたはー?」
そこで笑い男複数説に及びそうになったところで、リン☆彡メーは討論参加メンバーで見た目はキグ・ヤー風の胃が痛そうな顔をした男に話を振る。
「…じ、実はー…今回取り上げた二つの事件ですがー…どちらの事件でも利益を得た企業を発見しましてー…更にー、彼らが電脳上で用いていたと思わしい秘密通信の波長とー、それぞれの事件の笑い男が用いていたものと思わしい秘密通信の波長の痕跡にー…共通点が見つかったのです…」
「え!?」
「マジー!?」
「「…………」」
やがてその男のどもっている感じが時々する言葉に周囲の多くは驚いて反応を示し、ミラ・キリアンとリュッカ(ドゥリュース)は静かな注目の眼差しを向ける。
「…そ、それでー…その二つの波長がよく飛び交うサーバーの集積領域や交差点を見つけたのですがー…」
「…む、これはー…?」
「…フィフス・エルサレム系列辺りのものと思わしいサーバーが多いけどー…?」
「僕もここまではたどり着けたのですけど、まだ中の方は見ることは出来て無いです。ですが、ここの皆さんの協力を得られれば―――!?」
だが、そこで話を持ち込んだキグ・ヤー男性の周囲の映像がまるでノイズやバグがかかったように不穏となり、やがて彼だけを残して周囲の景色は真っ白となる。
「―――あ…え!? こ、ここは…!?」
「フリーの身でここまで行くのは凄いと思うけど、だけどここまでの代物を下準備無しに他も更に巻き込んでばらそうなんて真似はお勧め出来ませんなー」
「…な!? あ、あなたは…そ、その髪の色…!?」
戸惑うキグ・ヤー男性の前にリュッカ(ドゥリュース)が現れるが、その髪の色は青くなっていた。
そして、リュッカ(ドゥリュース)の手にはつい先ほどまで男性がチャットルームで公開していた怪しげな電脳内領域への電脳空間内データキーが摘ままれていた。
「そう言うのはしっかりした足場や後ろ盾がいない状態で始めると現実の自分だけの問題には終わらないと思うよ―――」
「君もね」
「―――おって…やっぱ他にも来たか…」
キグ・ヤー男性に注意しながらデータキーを手で遊ぶリュッカ(ドゥリュース)だが、そのデータキーはミラ・キリアンにも摘ままれていた。
「その齢でここまで来るのは褒めてあげるけど、必要以上の背伸びをすると背が伸びる前に断たれるわよ」
「…僕もこういうのはちゃんとしたお上さんにお任せしたいようになる程度には色々経験しているつもりだけどさー。如何せん、この場を盗み見ている方はもっと引きずり込もうという感じみたいでー…!?」
可愛いものを見つつも危うげな若者に対する憂いの眼差しも含めたその表情に、リュッカ(ドゥリュース)も警戒と感心が混じるジト目を向けたその直後、二人の周囲は真っ暗となってその身は下の闇へ飲み込まれるような浮遊感に包まれた。
「…え!? こ、ここは…!?」
一方、キグ・ヤー男性がその次に目にしたのは、二人の姿を欠いているのを除けばいつものチャットルームであった。
「…おい! 何だよ急にさっきの映像を切ってー? 早くこの中へ侵入して真相を暴こうぜー!?」
「…あ、い、いいえ…す、すみません。僕はもうこの辺りで出ます。先のデータ集積点への干渉もやはり無しにー…」
「はぁ!? 何だよ急にー…!?」
先ほどのやり取りに肌寒いものを覚えたキグ・ヤー男性は慌ててログアウトに取り掛かった。
「(あの二人の姿も急に消えたし…今さっきリュッカさんがもし何かあって僕が姿を消したらこの反応を辿って探してほしいって手短に言われたけどー…まさかそこまでの話じゃー…!?)あ、あのー私もー…」
一方、騒ぐ周囲と比べて事前に説明を受けていたリン☆彡メーはそれに只ならぬものを覚え、彼女もすぐさまログアウトしてこの場を去った。
「…ここは!?」
「古い図書館みたいね…」
一方その頃、リュッカ(ドゥリュース)とミラ・キリアンの二人は古い紙の書物が無数に保管されている広大かつ複雑な迷路を思わせる部屋に迷い込んでいた。
「ちょっと!? 貴方どういうつもりですか!? 良い所なのに…あ、あああ…こちら側の体が消えて…おのれ! 良い所だというのに…!?」
「「…!?」」
そこで積み重ねられた本の山の向こうで、チャットルームで甲高い少年の声をしていたリーゼントの青年の姿をしていた司会役が酷薄そうな声音に変わっていっており、その身は無数の文字や記号に変わっていって消えていっている。
「…何とか、ここで会えましたね…」
「…誰…って…え…その格好!?」
「あなたは…!?」
そして、司会役の姿が情報の海へ消えさると、そこへ代りに現れたのは二人が今回参加したトークの議題の中心の一つであったあの男であったが、その姿を見た瞬間に二人の視界はヒカリに包まれ、続けざまに膨大な量の情報が二人の意識内に流れ込んでくる。
「…っ!? これは…!?」
「あ…あ…あああアアァアアアアァアアアァアアアアアァ!!??」
その膨大な情報に二人は猛烈な頭痛に似た感覚に襲われ、特にリュッカ(ドゥリュース)は少年の見た目には似つかわしくない常軌を逸した苦悶を宿した悲鳴を上げた。
○帝国暦952年5月5日未明(
「…うぅ…あ…あ、こ、ここは……!?」
膨大な情報の海が脳髄へ流れ込んでくるような苦痛が過ぎた後、リュッカがドゥリュースとして目覚めた場所は、自分がゼミーシュル事件での昏睡状態から目覚めた場所である病室だが、部屋の外から伝わる人は慌ただしくなっており、只ならぬ出来事が起きているのが気付いた。
まだ零時を過ぎて日付が変わったばかりなのは窓から見える夜景や目にした時計からでわかるが、それ故にこそ夜間に相応しくない動揺やそれで生じる騒めきが生じているのが今の彼には重く気にかかったのだ。
「…い…
「え!? で、殿下!? 先生ー! 先月の24日に電脳通信中に人為性情報過剰脳髄流入症で意識不明になっていた
「殿下お部屋に戻ってください! 貴方は再生治療の途中で脳が焼け切れる寸前まで行ってた重態だったのですよ!!」
今日の日が何なのか、良からぬ意味で思い出した、
「…ま、待って! ひ、一つだけ教えて! 今日が本当に5月5日なのか教えて―――!?」
「はぁ!? 情報省や軍情報局は何をしていたんだ!?」
「―――!?」
ドゥリュースはまだゼミーシュル以前の記憶にある我が身の動きが出来ないのがわかる身を看護士たちに掴まれて部屋へ戻されながら、縋るような声音で問おうとするも、廊下を慌ただしく少なくない数で行きかう武官達や文官達の荒くなって声量を抑えられない声のその会話を耳にする。
「…攻撃目標が変えられたのはついさっきなんだから仕方ないだろ! 向こうのほとんどにも情報が隠されているんだから!」
「攻撃変更の指示は紙で送られていたるらしい…」
「じゃあ、ザフトの大攻勢が掛けられるのがスエズじゃないなら何処なの!?」
「…だから声が大きい!」
(…ま、待って…それって…)
「な、なにこれ…!? 急に力が強く…!?」
その声音と内容にドゥリュースは強迫観念に近い感覚で身の力が急に戻って周囲を戸惑わせながら踏み止まり、渡り廊下の下に見える庭を慌ただしく歩く者達のその会話へ背筋が凍てついていくような恐れを抱きつつも意識が集中させられていく。
「…パナマのジャブローだよ! 銀連の軍総本部!!」
「!!!???」
そして、
次回、今回の謎の男(棒)との接触で記憶がようやく戻った本作主人公が、久々に主人公らしい姿を見せます。