星界の輪廻   作:oosima

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今回、〇い銀の匙と愛された(?)あの農業漫画から、まさかのあの人物が少しですが登場します。


014 邂逅が似た分野だけとは限らない

 〇帝国暦949年6月21日夕刻 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) 某宙域 地球 地中海東海岸島嶼部 星界軍(ラブ―ル)同地駐屯地○

 

「…はー、聞き取り調査が終わったけど疲れたぜー」

「今日は景気よくパーッと外の飲食店で食事していかない?」

「さんせー、観光案内を見てどんなところがあるか見ないか…!?」

 

 ドゥリュースとキラに思わぬ誘いが掛けられてから数時間後、駐屯地の生徒用寮に戻れた生徒達は自由時間をどう潰すかでおしゃべりしていたが、それは彼らの前を横切ったある存在によって止められた。

 

「…………」

 

 無言で彼らの前を、青色を基調とした皇族(ファサンゼール)専用の長衣(ダウシュ)で身を固めたドゥリュースが、砂漠地帯で静かにだが深く吹き込んだ冷風のような雰囲気で現れ、夜の砂漠を照らす満面の星空の輝きのような印象を与えつつも彼らの前を通り過ぎたのだ。

 

「あ、そうか、あの子って皇族(ファサンゼール)だった」

「え…あ、あんな子っていたっけ…!?」

「確か同期に皇族(ファサンゼール)の男子が入ったって聞いたけど…!?」

「…え、絵みたいで綺麗…」

 

 その姿に寮の屋根からコウキが少々目を丸くしていたが、他の女子たちはほうっと息を吐いて頬を朱色に染めた。

 

(…やべえ、この周囲から注がれる視線の雨(プレッシャー)…子供のころから儀式などでしょっちゅうさらされているから内に隠すのは何とかできるようになったけど…さっさと部屋に帰って本でも読みたい…)

 

 そんな周囲からの注目とは裏腹に、能面なままのドゥリュースは内心でうんざりしつつも駐屯地の離着陸場に泊まっていた高速飛行艇に乗り込んだ。

 

「あ! ドゥリュースー! やっと来たんだ!」

 

 そして、その中にあるVIPルームに案内されると、そこにはキラが彼女の故郷での正装である和装に身を包んで待っており、笑顔で駆け寄ってきた。

 

「ああ、キラも参加させられることになったんだね…って似合うねその衣装も本当に」

「…う、うん…お母さんが子供のころに着ていたのを私に合わせて調整してくれたものなんだけど…似合うかな? け、けどー…私…これから行かされる場所とかの礼儀作法とか全然知らないんだけど…?」

「あー大丈夫、いざというときは僕やそこにいる友達もエスコートするからさ」

 

 そのキラの表情には安堵と不安の色が同時に浮かんでおり、ドゥリュースは彼女を宥めつつも同室にて佇んでいるレイカとゼツィーリュに振り向く。

 二人はドゥリュースと違って今回の晩餐会に出席するのは予定で決まっていて、そのことを知らされていた身なので落ち着きもあった。

 

「大丈夫よ、あなたと同じ地上で育った時期のあるドゥリュースが既に身をもって行ってはならない作法を経験済みだから、彼の傍から離れないようにすれば華のような悪目立ちはしないわ」

「そんな厳格な言い方はするなレイカ、地球から俺達の世界に戻ってからドゥリュースはカルザール伯爵に預けられて現場方式でたたき込まれたらしいから大丈夫だよ」

「フォローしてくれてうれしいよゼツィーリュ、というか正直…僕さーオリュキ卿のところで生まれ育ちたかった…」

「あーうん…スュルグゼーデ王のラムキース殿下のところに一月くらい預けられた身として…それはわかるわ…」

 

 その二人と自身の母親に対する微妙な印象で妙な連帯感を見せるドゥリュースに、キラは姿かたちの大幅な違いを超えての親近感を取り戻しつつあった。

 

 

 

 

 

 〇アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) 某宙域 地球 太平洋西岸部 旧弧状列島 河口湖○

 

 かつて、全銀河規模でほとんどの知性体社会を襲った“大星災”で地球という星の自然環境は一度壊滅暦な被害を受けて旧人類に放棄されて位置情報も長らく不明となっていたが、数百年後に帝国(フリューバル)が再発見してその地政学的及び技術的な重要性から併合すると、壊滅前とは大幅に異なる面はあるが自然環境は大幅な復興を遂げ、今では経済面に技術面や宗教面での理由から帝国各星系から移住してきたアーヴや領民(ソス)が多く暮らすようになっていた。

 その中で、アーヴにとっても遺伝的な先祖が暮らしていた地である旧弧状列島で霊峰と称されてきた地にあるそこは、観光客の姿が多く見られていた。

 

「…アブリアル・ネイ=ドゥアセク・ソドール子爵(ペール・ソドゥリュ)・ドゥリュース殿下御一行もご到着されました」

 

 高速飛行艇に乗り込んで十数分後、地中海東岸部からこの地へ到着したドゥリュース一行は、この地に外交のために来ていた各国の政治家や官僚達も注目していた。

 

「現皇帝(スピュネージュ)の息子であるクリューブ王(ラルス・クリュブ)とそのご子女だけでなく…あの“人型生体作業機械戦災”の息子まで来るとは…」

「正式な交渉だけで帝国(フリューバル)に難民受け入れ及び技術移転の緩和を受け入れさせるのは難しいですからな…」

「此度の晩餐会には我々の政財界の要人子弟も参加出来ます。そこから親睦を深めるという手も…」

「帝国や後背国の我々はともかくBETAに攻め寄せられて滅亡寸前の国々が納得しますかねえ…?」

「忌まわしい化け物が…愚鈍な亜人や異教徒共を大勢怯えさせて従わせてる程度でいい気になりおって…」

 

 その地に集う老舗の高級ホテルの各フロアに集う彼らの視線は、畏怖や好意に憎悪など様々な思いを重ねられており、それを浴びせられていることに身体的スペックから気付いているドゥリュースは物理的面ではなくストレスから不安を覚えていた。

 

(…この空気で覚えるストレスは隠すのに慣れることはあってもそれ自体に慣れられる感じはやっぱしない…まあ、物理面ならあのアーヴ怪獣な母に鍛えられてそこらの特殊部隊くらいじゃ少しきつい運動くらいにしかならなくなったし、これから向かう先にいる()()()もいるから―――)

「お久しぶりですドゥリュース殿下、ラフィール殿下もお待ちしていますよ」

「―――あ、どうもよろしく…ヨル卿」

 

 この場で物理面ではそこまで警戒していなかったドゥリュースの前に、その最大の理由が現れた。

 そのヨルと呼ばれた女性は黒基調の特徴的な意匠をしたドレスに身を包み、肩は女性にしてはがっしりしているが均整の取れた長躯をして、やや緑がかった黒の長髪に赤い瞳をした若い美女で、彼女にドゥリュースは少し不安を覚えつつも概ね安堵の表情を見せていた。

 彼女のフルネームはブライア・ボルジュ=イービァラ・ヨル。

 ドゥリュースが前世に呼んでいた古典“スパイファミリー”に登場するヒロインの同位体らしき女性で、亡くなった母が彼の母ラムキースの旧友だった縁で預けられ、彼の姉代わりに育った身で、帝国内外で色々と恐れられるある省庁の裏方公務員をしつつも表向きはクリューブ王家(ラルティエ・クリュブ)家臣(ゴス)として仕えている身である。

 

「…どうです? 少し外へ一緒に…」

「おお、君の家ではそのような…」

 

 数分後、姉代わりをしていた女性との再会をしたドゥリュースは、ホテルの大広間にて開かれた各国要人の同世代や近しい年齢の親族達が集うパーティー会場にいた。

 

「帝国での儀式の場以外のこのような場でそなたの姿を見ることになるとは思わなかったな」

「僕もまさかこういう陽キャ向けの催しに参加することになるなんて思わなかったよ」

 

 但し、その中でドゥリュースは星界原作において首位を争う重要キャラにしてヒロインである人物と、彼らの多くからは見えづらいベランダの席で対面していた。

 

「間違ってもその仕事帰りの国民の男みたいな疲れた表情は見せるなよ。そなたは色々風変りではあるがアーヴで皇族(ファサンゼール)、しかも裏ではもう各所に少なくない影響を与える勲功持ちなのだからな」

 

 少し疲れた表情を見せるそのドゥリュースに厳しい言葉を浴びせているのは、彼に比べるとやや短いが耳が横へ尖るように伸びていて、若々しい凛々しさと威厳の芽すらも普段の彼と違って感じさせる少女。

 彼女の名はアブリアル・ネイ=ドゥブレスク・パリューニュ子爵(ペール・パリュン)・ラフィール。

 この世界で大きな要素を及ぼしている“星界の紋章”シリーズのヒロインで、ドゥリュースとは同じ齢で同世代のアブリアルにして、彼の幼年期からの友人の一人である。

 

「…で、あそこにいる御父上でここへ留学した経験もあるクリューヴ王(ラルス・クリュブ)のドゥビュース殿下は、僕と違ってその経験を存分にうまく生かしているようだね…」

「お婆様が…息子としては不出来だが親やああいう人付き合いは妙な才能があると認めている方だからな…」

 

 そして、そのラフィールが少し胡散臭そうな顔を向けている先にいるのは、彼女の父にして現クリューヴ王(ラルス・クリュブ)のドゥリュースで、彼も交えた帝国及び各国政財界の要人達が私的な会話をしつつも腹の探り合いをしていた。

 

星界軍(ラブ―ル)からはアブリアルらしくないと言われても、外務省からは色々と助かる人ではあるのは事実だよ。ああいう人がもう少しいてくれれば僕みたいなのには助かるんだけど…」

「そなたも本当にアブリアルらしくないな。何というか…別の器にあったものを他のに無理やり移したような感じだ」

「(…え、えーーっとこの子どうしてこういうのには鋭いのかなー直感とか…)考えすぎだよ、とりあえず…地球のここが今回の饗宴の会場だから()()に来られないか心配だったけど…(というか…多分一番最初の故郷であるここに悪い意味で関係のあるあの化け物問題教師に来られるのが一番困る…」

「? アレとはなんだ?」

「いや、そういうのは聞かないでくれると嬉しい。あんま話をされると実際に来そうだから…!?」

 

 そのラフィールの鋭さに対する誤魔化しもあるがドゥリュースはここ地球時代でのトラウマの一つを思い出そうとしたその時、それに来られた時の悪寒を感じてしまう。

 

「…? 何だこの感覚は…!?」

 

 ラフィールも初めての感覚ながらそれを感じて少し険しい顔を浮かべたが、そこで会場内の一角が魔術効果もあって暗くなり、続けてその一角が上からのスポットライトで照らされてある一人の人物が姿を現した。

 

「銀河各国政財界の皆様ー♪ 会いたかったミョーン♪」

「!!??」

 

 その姿を現した人物に、ドゥリュースの表情は大きくひきつって背筋が凍り付いた。

 彼にとってその人物は、彼やその友人たちにとって地球時代の恩師の一人であるが、ドゥリュースにとってはその元ネタもといその原型や、それを限りなく最悪な感じで銀河レベルまで悪化させた存在であるためだ。

 

「…ベ、ベッキー先生!?」

 

 その人物の登場に、ドゥリュースと同じくパーティー会場が苦手で片隅で隠れていたキラがその通称で呼ばれる、現れたその人物に戦慄を露わにする。

 かつて、ここ地球の遠い昔における弧状列島におけるあるアニメ試写会で、それを主催した地方自治体を青ざめさせたアラフォーの怪物が、こちらではまだ三十路半ばだが銀河規模にまで悪化(パワーアップ)した状態で獲物(つがい)を今度こそ仕留めるべく、見えない導火線が無数に張り巡らされているこの場へ記憶のものとさして変わってないノリで現れたからだ。




自分でもこの人選はやっちまったって思っていますし…、これからもしょっちゅうひいたりすると思いますので…、優しく見守ってくださるとありがたいです…。
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