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「…う…ううぅぅ……ね、眠い…もう四日も…」
アークエンジェル含めたジャブロー防衛艦隊所属の元銀連兵達が亡命を受け入れてくれたオーブで新たな道を模索していた頃、次の戦地へ向かうザフトの艦隊に属する一隻の中で、コモリ・ハーコートはその身に纏う赤服の如く目を真っ赤にして寝不足からどす黒い隈を目の下に生じさせていた。
「デスクワークで四日くらい寝てねーくらいでガタガタ言うんじゃねー!」
「こちとらプラント建造の頃は十日も着っぱなしの宇宙服の中で栄養チューブだけ食いながら真空で作業なんてしてたぞ!」
「もう人間じゃありませんよそれー!」
「人間じゃなくてドワーフだボケぇ!!」
だが、程度の差だけで周囲の多くも似たような状況で艦内は各所で慌ただしかった。
「…ん? 何か向こうの格納庫が騒がしいなー…?」
「それが弾薬庫に爆弾しかけようとした馬鹿が出たらしくてー…」
「またか!? 前回のはまだ一昨日のだぞ! しかもこの船だけで!」
「パナマからまだ半月くらいしか経ってないのに…」
「こんな状況とこんなスケジュールで次の戦地へ行けだなんて無茶苦茶ですよこんなのー!!」
だが、今のザフトのこの艦隊の大抵の艦船では似たような状況が多くみられ、あげくに普段と比べて多い破壊工作や妨害に気を配らなくてはいけない状況となっており、コモリの可愛い悲鳴混じりのも含めて不平や怨嗟の声が多く上がっていた。
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「おい、さっさとその資材を運べー!」
「コンクリートは二番ブロックだー」
コモリ達が悲鳴を上げていた日より二日後、エリオハプト領内とされるその領域ではサマリアの旗が翻り、防衛用軍事基地建設とその要員のための居住区域、それらを考慮しても規模が大きくて多い家族のためとされる民間人居住地が広がり、それらの多くは拡張中であった。
スエズは銀河連合所属のエリオハプト王国の領地とされているが、ザフトによるNジャマー散布に伴うエネルギー不足とそれに伴う不況によって、旧政権が不安定化したところで隣国の軍事大国サード・サマリアが地域の平和と安定のためと称して保障占領した状況にあった。
当然、エリオハプト含めたサブルム系諸国は猛烈な非難や経済制裁を起したが、それらは主要国である大星洋連邦やE.Uの体裁だけの非難と裏の緊急支援で
「ちょっと兵隊さん! わざわざレスレクシオンから移ってきたのにうちの屋根は未だにビニール状態なのよ! 少しはこっちに回してよ!」
「仕方ないだろ! 金づ…支援元も昨年よりも更に状況が悪化してるんだから!」
「早く電気通してくれよ! 冷蔵庫が付かないから腐りやすいのに食料品値上がりも続いてるんだぞ!」
だが、それも今や“支援民”と呼ばれるサマリアからの移住者の実生活にまで悪影響が表沙汰になり、自分達を守ってくれるためにここまで来た兵士にまで不満をぶつけるまで状況の悪化は見えていた。
今までは
「…け、オルムスの連中が…勝手な理由で来たくせに好き勝手言いやがって…」
「食い物と支援民の襲撃を心配しないだけまだましだろ…」
その様子を“隔離壁”という銀連軍による基地とゲート防衛戦略のためと称してサマリア軍が建てた、高く長大な壁の向こうへ押しやられた、荒れた家や戦火の後も色濃く残る居住地に住むエリオハプト中心のサブルム人やカナン人難民は冷ややかな様子で盗み見ていた。
サマリアは国際法上不法占領下にあるとされるカナン地域に、自国民や流れて来たオルムス人を軍の民間支援要員という名目で移住させる“入植”と呼ばれる事業を強行し続けていたが、その動きは最近占領したばかりのここスエズでも推し進められつつあった。
「おら! もっと泣き喚けよ
それに対して当然起きる反発は軍事力で抑え込まれており、支援民によるテロ抑止という名目での現地住民に対する嫌がらせ行為は日常茶飯事と化して、今も保護地の外れで支援民の子供達がもっと小さい現地民の子供に暴力を振るっていた、
「…おい、あそこであのガキ共がまたこっちの子供を…」
「と、止めるか?」
「無茶を言うな。止めに入ったらゲリラ扱いされて首に縄をくくらされるぞ…」
「通報したところでこの辺で来るのはどうせサマリア軍だけだ。意味なんかねぇ…」
嘗ては自爆テロを多発させるまでに反発を見せていた現地住民も、国際法や非難を無視して建てられた隔離壁という長城や防空網完備に基づくロケット弾攻撃のほぼ無効化、それを組み合わせた経済封鎖で、現地民の抵抗力と生気は見る見るうちに削られていった。
そこへNジャマー配布によるエネルギー不足や物資不足も加わって表向きは半ば死人同然の状態に多くの人々は見えていた。
それを支援民の多くは安堵と嘲りの念を抱き、着々と自分達の領域を広げていく。
今この状況が嘗て流浪の罪人の民として先祖が同族であるはずの人間の多くから虐げられ、不自由な檻の如き領域に閉ざされたころと酷似していると知りつつも、それを指摘することすらも理不尽な差別や迫害の再来だと反発を示しながら自らの罪悪感から目をそらし、口ではテロ抑止のためと言いつつもその原因である絶望や憎悪を静かに育みながらである。
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「ギャリス艦隊、ハラルド艦隊も配置に着きました」
「ツィーグラルド艦隊もあと5分で出撃します」
そんなスエズの日常と化した酷薄且つ苛烈な占領がされていた一日の翌日の早朝、コモリも今は所属しているザフトの艦隊は規模を増しながら次々と前衛の艦隊からMSを出撃させていった。
「…戦力は確かに十分だが、ジャブローから半月しか経ってないというのに最後の喉元に向けられた刃を潰しに行けなど…本国も
その艦隊の総旗艦であるゴンドワナ級軌道母艦バクト・デギンのCICで、此度の総司令官であるドズル・ザビが艦隊に蔓延する不満をその言葉で表していた。
「…やむを得ません。ジャブローで拳を盛大に空振りした後も往生際が悪い連中のふらついた足元を今のうちにすくわねば…。議長もプラントも見かけほど安全とは言えませんから…」
それに対してクルーゼは本国の事情も絡めて上層部への理解があるような態度を示す。
先のジャブロー崩壊での大多数生還とザラ前議長暗殺事件の犯人グループ取り締まりを持って、プラント市民多数派の大きな支持を受けて議長に就いたギレン・ザビだが、強引な取り締まりに対する反発もクライン派に対する同情的な声と重なって少なくなかったのだ。
そのため、ジャブローの方で大きく空回りして更に自爆作戦の情報漏洩で銀連側が大きく揺らいでいる今このうちに、プラント本国を直接狙えるリーチ基地へ残された最後の補給ルートを狙うのは、軍事的に的確なだけでなくギレン個人の権力を固めるうえで絶好の材料でもあった。
「…それでこっちが押していた“アヘッド”の生産を後回しにしてまで準備した“例の二つ”はどうなんだ?」
「どちらも予定通りですよ“グングニール”と“デストロイ”は」
「目標地点を抑えるのなら、あの
そうした事情は考慮しつつも、猛将という通り名にふさわしいその強面な風貌や巨躯に似合わず良識を持つドズルは忌まわしそうな顔で愚痴る。
「…仕方ありますまい。戦争で若き逸材を早く死なせるよりはこの方がよいというザビ議長の判断です。議長にとっては妻となるはずだった若くして断たれた同志が障害を掛けた技術を無駄にしたくないというのもあるでしょうし…」
「…
「…少なくとも手塩をかけた部下に先へ逝かれたくないという思いは私も同じですよ」
「…………」
普通なら任務と自然な人情のはざまで揺れる苦悩の話に聞こえるが、仮面で表情が見えない状態で言われるとドズルはそれが別の得体のしれない思惑を隠されているような感覚を再び覚えた。
「…パイロット、全員の状態はオールグリーンです」
一方その頃、バクト・デギンの特別な改造で設けられた格納庫には多くの技術者や整備員が作業を続けていた。
その彼らの視線を多く集めているのは、巨大な二本の砲塔を抱えた円盤とそこから鳥足のような下半身を生やしている100メートル以上の高さを持つ、巨大なMAらしき姿が複数あった。
そして、その機体の前を同数の生命維持装置付きのフラスコに似ていて番号を割り振られている大型カプセルがカラカラと車輪を回しながら進んでいた。
「…あ、あのですが主任…本当にいいんでしょうか…? こんなのって…?」
「無駄なことを考えるんじゃない…。それに…この子達も放っておけば死ぬしかなかった状態なのは確かだっただろう…」
そのカプセルを運ぶ人員には若者を中心に苦悩や罪悪感が垣間見えたが、年配の者達はそれを叱ってカプセルをそれぞれ同じ番号の機体の方へ運んでいく。
そうしたカプセルの白く靄が掛かったように見える表面の奥には、肌の半分以上がまるで鈍い銀色の金属と融合したような若者たちが眠っているような様子で垣間見えた。
そして、その見える若者には、尖った耳と一房だけが赤い黒い髪をしたエルフと思われる少女と、金髪のショートヘアーに翡翠色の瞳が朦朧とした状態で垣間見える少女の姿もあった。
果たして、今回の話の最後に出てきたのは、何処ドリオのエルフ化少女と、何ダブで復讐系ヒロインとなった子なのでしょうか(棒)?
次回も色々とまずい描写が多いです。