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「…はっはっは! 見ろぉ! 昨日だけでこれだけのテロリストを捕縛したぞぉ!!」
ザフトの方で何やら味方の嫌悪や忌避を集める存在が姿を見せ始めて数分後、スエズのサマリア軍所属銀連軍の司令部では、サード・サマリアの閣僚の一人が高笑いを上げていた。
閣僚の男は若い頃からオルムス人の間でも先鋭的な過激派、同民族の中でもとりわけ強い選民主義者としても知られていて、その思想の危険性から軍にも徴兵の時期に精神不適格と判断されて入隊を断られた男だが、その後は極右派の支持を集めて少数与党である同国現政権と連立を組んで内閣に加わった男である。
その男は自国の右派マスコミの前で、この地でテロリストの疑いを掛けられて捕まえられた現地住民、それを支援していたNGOが大勢捕縛されて連行されていく光景を勝ち誇っていた。
それを咎めるものは少なくとも
正義は神に認められた自分達にあるのだ。それを咎めるものは生まれた時より知性を欠いた異端者や異教徒であり、それに同調する方のマスコミがどう騒いだところで、自分達の
古代から次代に応じて程度の差を変えて続く差別と迫害がねじ曲がって現代で反転して生じた優越感が今現在の強い立場を強化して、彼らの先鋭主義的な行動を誰にも
「イ、 イキリール長官! たたた大変です! これをご覧ください!!」
「む? どうしたぁ? NGOを装ったテロリスト支援船がレーダーに映ったかぁ?」
故に、それを打ち壊す報せが来ても詳細を知るまでは動揺を見せることはなかった。
「テロリスト支援船!? この数と反応がそんなものに見えますか!?」
「この反応と規模は明らかに軍事攻勢です!!」
「…え? な、何を言ってるんだ…? 我々…サマリアを…オルムスを攻撃するものが…テロリスト以外で居るわけがー…」
部下が見せつけた画像に映し出される、短期性人工ゲートを通して続々と現れるザフトの大艦隊とMSの大軍の姿を見せられても、それはすぐには受け入れられなかった。
○
「…スエズが!?」
数時間後、ザフトの大規模攻勢がスエズに掛けられたことが発覚してその報せはオーブにも届けられ、亡命してきた一員であるマリューは引きつった顔を浮かべてしまい、連絡を入れたオーブ軍は同情的な顔になる。
「…パナマで…あんなに人が死んだばかりで…」
若い面子の多くを中心に複雑な顔で俯き、ミリアリアがポツンとつぶやいたその言葉が彼らの心中を示していた。
「…数日もてば、今の銀連では良い方か…」
「「「「「………………」」」」」
格納庫のジェフティで自機のメンテナンスをしていたリュールの、その冷淡に見えるが深く澄んだ眼差しを添えたその言葉は、聞いたものには深く圧し掛かる説得力を感じさせた。
○
アークエンジェル含めた銀連軍の亡命艦隊にも報せが届いて数時間後、侵攻を受けたスエズ星系は宇宙だけでなく、銀連側の現地軍司令部もある地表にまで激しい戦火が及んでいた。
自爆作戦のためにわざと戦力が引き抜かれていたパナマと異なり、銀連にとって唯一残された対プラント本国反抗作戦の補給路である同星系には、大量の戦力が回されていたのだ。
「うわぁ!? ザクやバビがここまで!?」
「し、死にたくない! か、母さ…ああアア!?」
だが、銀連軍側が地上のどの方面でも押されつつあった。
その理由は、パナマで多く取り逃したザフトの戦力の大半がこの地へ投じられていたのが大きかった。
また、同地を守る主力軍の一角を占めるサマリア軍だが、彼らは人民主権星系連合体大星域では最強の軍隊と呼ばれつつも、その練度の多くはテロリストやゲリラ部隊に海賊などを相手にしたものが大半で、ザフトのようなMS中心且つ高度な練度を持つ軍との交戦経験が少なかったのも上げられる。
「あーもー、兵力と対空火器は滅茶苦茶多いんだからー…んん?」
だが、攻めを掛けるザフト側はそう言う抵抗の激しさよりも別の理由で釈然としない顔を浮かべるものが多くなっており、地上まで伸びた前線でカラミティガンダムの両肩に背負った二連装ビーム砲シュラークや胸部大口径ビーム砲スキュラを発射して、トーチカから次々と火と煙を吹かせていっていたコモリも、自機が小さく揺れるとその原因を見て“またぁ?”というそのうんざりと言う顔をまた浮かべた。
「聖地から出ていけ!」
「さっさとくたばれ!
カラミティのカメラアイが映し出したその揺れの原因は、見るからにバズーカなどの携帯可能小型火器で、MS相手には非力な砲弾を浴びせてくる人間の姿があった。
銀連の歩兵であったならまだそこまで珍しくはないが、その姿にはサマリアが支援民と呼ぶ民間人の姿も多く混じっていた。
道中での徹夜続きのデスクワークによる寝不足と疲労は高速休眠ポッドで解消されていたが、その時とは違ったコモリのジト目は彼らに注がれていく。
「あーもー、効かないって何度したらわかるのかなー。ほら、しっし!」
「う、うわぁ!?」
「み、民間人に何をぉ!?」
コモリはそれに鬱陶しそうな顔を向けつつも兵士ではないものが多く見られるそこへ重火器を撃ち込もうという気にはならず、カラミティの足でその辺の火を上げている戦闘車両を蹴飛ばすなどして視界から追い出していく。
非難の声を上げている者はいるが、如何せん先ほどまで軽火器とは言え武装して襲い掛かって来ていたことと、そもそも銀連中枢に抑圧されていたプラントの出身者は、その銀連の富裕層に多くが在籍しているサマリア人には反発していて、更にここスエズのようにろくな武装を持てなくて彼らに抑圧されている現地民に対して被害者仲間という意識を持つものが多かったため、白々しいという思いの方が強かった。
〈ハーコート隊長、M13地点まで制圧が完了しました。M15地点への進出許可を求めます〉
「あーうんレイ君、地上にも続々と揚陸艦が降りてきてこっちにも補給用で来てくれているからいいよー」
但し、今は鬱陶しいという表情を浮かべる程度のことでしかなかったので、自分から見ても若い金髪の15歳ほどの少年の後輩でもある部下の進言に軽いノリで許可を出す余裕がコモリには
「第二防衛ラインの損耗率が87パーセントまで上昇! 既にセカンド・ゴモラ地点付近で最終防衛ラインにおいても交戦が始まっています!」
一方、銀連軍側は戦局が自分達にとって劣勢へ傾きつつあることは司令部にも次々と届けられて行っており、苛立ちと恐れの色が強まっていく。
「ええい! これだけザフトのアーヴ擬き共が近づいていることを何故マサダの連中は報せなかったのだぁ!?」
「察知は出来ていたようですが超長距離同時通信装置自体がまだ数が少ないので、使用許可を許されているものも少ないのも原因かとー…」
「言い訳はもういい! 例のMS軍団…いや!
「よ、よろしいのですかイキリール長官!? あれは大星洋連邦との共同管轄で…」
「何のためにあの不動産屋の中間選挙にあれだけ支援をしたと思ってるんだ!? 今こそ使うべき時だろう!!」
それにまだ苛立ちだけしか抱いていない者達の傲慢さが現れた命令で、その自信の源がようやく姿を表そうとしていた。
「…あーもー、数ばっかり揃えてもよー。さっさと逃げるか降伏かしろよー。こんな一方的なのは趣味じゃないんだよな~」
数分後、軌道上の宇宙での戦線を受け持っていたパトリックもうんざりした顔を浮かべつつも、母艦であるソドンで弾薬やエネルギーの補給を終えてまた出撃したばかりの状態であった。
「…ふん、張り合いの無い…」
「よし、さっさと行くぞ次にー…!?」
だが、半ば消火作業的な感じがザフトのMS部隊に蔓延し始めたまさにその時、地上で作戦中にあったザクの一機の頭をビームが打ち抜いて爆散させた。
「!? な、何だぁ!?」
それに驚くザフトのMSパイロットたちが見やった先には、森や山陰に隠れてはいるが、自分達が乗るものとは異なる機械仕掛けの巨人の大軍がビームライフルを構えている姿があった。
「ヘ! 調子に乗るなよアーヴ擬きのコーディネイターが!」
「これ以上は好き勝手させないぜ!」
その一目でMSとわかるが、ザフトのそれに比べると腹部が細くて代わりに肩部は跳躍ユニットを内蔵しているためか大きくなり、地球時代の戦闘機の主翼やエンジンをそのまま付けたかのような腰部の両側の大きな跳躍ユニットを生やした姿は、量産きながら機動力を重視しているような構造を感じさせる。
それらこそが、イキリールが戦術機と通称した、銀河連合軍による初の本格的な正式量産機MSである
「…む、あの機体は…!?」
「足付きにもあったという例の銀連軍の正式量産機のウィンダムか!?」
「いや! あれとは明らかに違うぞ! のわぁ!?」
そのイーグルは浅緑色の巨躯をそれには似合わぬ高い機動力で飛ばしてビームライフルを発射して無数の光線を雨のように浴びせ、ビームサーベルを何本もザクに突き刺して撃ち落としていく。
まだMSの動きになれてはいない感じが多々見られるが、その量産機とは思えない機動力と、何より銀連軍最大の武器である物量を生かしたような大軍で、宇宙と地上問わずに姿を見せたところから徐々に数で押し包むような戦いで戦線を上げ戻していった。
「…地上のA1からA12地点で戦線が後退させられています!」
「ああ! ガザード隊の防衛用ゲルズゲーが複数に包囲されて撃墜されました!」
「連合軍も中々粘りますな」
「…まあ、質に大差が無くなれば戦いは数よ」
その動きは現地ザフト軍の中枢であるCICまで届けられており、先ほどと打って変わって慌ただしさが増していくで、無表情のクルーゼに対しドズルは苦虫を噛んだ表情を強める。
「…“グングニール”はともかく、今回、こちらに5機は持ち込まれたあれらは
「どうあがいても数では銀連には勝てない以上、我らは強みを生かすしかありますまい。それに見合うだけのものは私も確認しました」
「…ぬぅ…………“デストロイ”を出撃させろ! 大至急だ!」
クルーゼの静かな催促に、ドズルは苦悩を強めた表情を浮かべつつも今回持ち込まれた切り札の一つが表に出る許可を出した。
「…全機システムオールグリーン、パイロットも全員良好」
数十秒後、すでに準備を終えていていつ出撃準備が下されるか待っていただけらしい、バクト・デギンの特設格納庫でその巨大な円盤を頭に被せて鳥のような両脚を生やした巨大MAらしき機体から次々とケーブルやアームが外されていく。
「「「「「………………」」」」」
それはMAの中へ搭乗を終えているパイロットたちにも見えていた。
〈…天幕装甲開放、各機は順次出撃してください〉
そして、巨大な二連装砲を二機構えた円盤の如き上部パーツの前面のバイザー部分に巨大な一つ目が赤く光り、円盤と脚部に取り付けられたスラスターから緋色を帯びたオレンジ色の粒子が噴出されると、その巨体と重量を感じさせない動きで上に見えた宇宙空間へ出ていく。
「…ルイス・ハレヴィ…“デストロイ”出ます」
その中で出た最初の一機に搭乗するパイロットのヘルメットのバイザーより、大きく美しい緑色だが虚ろな色とその奥底に蠢く憎悪が見える少女の瞳が見えたその直後、彼女を載せるその機体は宇宙での高機動戦闘に向いたブレイズウィザードを装備したザクに匹敵する速度で艦から飛び立った。
今回、登場したガンダブ女子の尊厳破壊シーンが出ましたけど、ダブルオーの二期からしてこういう巨大機動兵器に縁が深い感じがしたので、登場となりました。
次回、鬱シーンがますます強まっていく予定です。