〇帝国暦949年6月21日夕刻
「銀河各国政財界の皆様ー♪ 会いたかったミョーン♪」
作品やら時代を超えて、農業高校系ラノベ系世界からこの一応SFファンタジー基本な戦記系世界に存在の位置が変わっても、良い意味ではあまり変わってなさそうな様子である
「…お、おい…まさか…この流れ…一番目だけでも十分にやばいあの歌を歌うつもりじゃないのか…!?」
「ドゥ、ドゥリュース…? そなた…顔色がひどいぞ…何がどうして…!?」
それに過去最大級で嫌な予感を覚えさせられていたドゥリュースは顔を大きくひきつらせていき、ラフィールはそれを心配するが、そこで彼女にとってこの世界でも苦手なあの人物が動く。
「それではさっそく歌に入りましょう! ソング名は…ポニーテールの四じゅ…!?」
ベッキーが(厚化粧やアニメフィルター系の未知の力もあって)若々しい様子で曲名を大きく口にしようとしたその途中、会場全体を極寒の凍土の上を吹きすさぶ吹雪のような威圧感が満たしてきた。
「「「「「!!!!!????」」」」」
「ぐべぇ!?」
「「さっさっさ」」
それを会場にいたほぼ全員が氷の刃で首を打ち落とされたような恐怖を覚えて強張って止まり、同じような状態になったベッキーはそのはずみで壇上から転げ落ちて地味に危ない角度で首から落ち、そうして意識を失った彼女を黒子衣装のホテルスタッフが欠かさずにバックヤードへ運んで行った。
「…な…何々何!? 今さっきのすごく誰かが怒ってる寸前の時みたいな怖い感じ―――!?」
「驚かせてすまないな。いろいろと書き手に危うい抗議の声が寄せられて好みの作品の連載が止まりそうな危うい感じがしたのでな。その根源になりそうなあの女人にはしばし落ち着いてもらうことにした」
「―――いってキャア!?」
数秒の沈黙ののち、キラが今にも失禁しそうな泣き顔で声を取り戻すが、その彼女の背後へいつの間にか普段通りの様子のドゥビュースが現れて彼女を驚かせた。
(…さっきの絶対零度のような覇王色…十中八九この人だよなぁ…。普段温厚でも根はアブリアルであの神々も逆鱗を避けるだろう今の陛下の息子なだけはある…)
「見直したような表情で私を見上げるとは随分と大きくなったなラムキースの息子殿」
「…あ、いえ…そんな不敬なことはしておりません…それと先ほどのは色々と導火線に放火魔が近づいてきそうなのを阻止して下さってありがとうございました」
そのドゥビュースは同族などではなく年の離れた友人を見るようなまなざしをドゥリュースに向けながらも、彼らが座る机へ同じように座った。
「それとわが娘よ、そなたもつい先ほどまでは他国から来た友人の子らと上手く友誼な話を出来たようで嬉しいよ」
「あの者達の短いのか長いのか不明瞭な自慢話などあなたが引き合わせてきた饗宴でのご老人方の話に比べれば大したことはありません父上」
「そうであろうな、今現在のそなたの興味や嗜好は彼の心血が多く注がれたかの“鎧”に向けられているからな」
「…うぐ…ち、父上…」
そのドゥビュースに対しラフィールは少し苦そうな表情を浮かべるが、それは父である彼の楽しみを更に刺激してしまったようだ。
「こっちはまだ後背地なので報告に時間が少しかかりますけどね、聞いている限りはあの鎧の評価は上々ですけどあの宙域の王位をやらせてもらっているあなたからしてどうですか?」
「ああ、あの鎧は一度乗らせてもらったが…黎明期に小型戦闘機に乗って自由に宇宙を回っていた先祖の頃に戻れたような感じだよ」
「アーブですけどクリューブ王殿下は見た目以上に若々しいですね」
「ああ、その辺りはこの子にも受け継がれているようだね。クリューヴ
「…ぐ…父上…そ、それは…今後の
ドゥビュースが始めたその会話は、名称こそ伏せられているがドゥビュースが主要開発スタッフの一人をしている
「まあ、ウルス大公国とか工学技術が進んでる星系を多く抱えるうちの王国の
「な!? ずるいぞ!! 私たちの所にも一機くらいはー…あ…」
その中でドゥリュースが口にした小さな自慢にラフィールが食いつくが、その様子を真横からにやにやと見ていたドゥビュースの視線に気付いて、頬を更に赤くして押し黙ってしまう。
彼女にとって不幸中の幸いは、父が周りに邪魔されずに娘の成長を直に確認しつつもいじれるように、周りからの意識があまり向かないような類の結界を張っていることであった。
「…おお、貴女があのスポール宗家令嬢の…」
「貴族と言ってもそれになってまだ十世紀にも達していない家にそのようにしていると、隣にいる彼のような考古学も必要な歴史を誇る家の方々に…」
「いやいや、その前のあなたの国が生まれる前は副王の地位にいたことも考えれば…」
「どうかラクファカールや故郷であるウルスのことをお話ししていただけません?」
「どうでしょうか? この星が氷河期だった頃から宇宙船を飛ばしながらそれと素手や手製の武器で張り合おうとするような武術が人気を博するような野暮な星の生まれ育ちの者の話など退屈するだけでは?」
「そんなことはありませんわ。むしろスリリングでエキサイティングですわ」
それと、ドゥビュース達のるベランダより少し離れたところで、帝国名門貴族の出自ということでレイカとゼツィーリュが他国から来た同年代や近しい年代の子女と集まって会話をしていたことで、意識の大半がそこに向けられていたのもあった。
「…これはこれはクリューブ王殿下、いつの間にかこのようなところへ…ささ、次の料理も届いたようなので…こちらをお口にした後はもう再びあそこへお話でおどうですか?」
その状態でも少数の鋭い帝国内外の要人達にドゥビュース達は発見されるに至り、それに合わせるようにしてこのホテルの正規スタッフの手で人一人は入れそうな大きな皿が蓋を被せられた状態で運ばれてきた。
「ほう、
「ええ、これは遠き祖先を同じくする貴国と我が国の伝統料理でして、それをつなぐ船風の飾りを用いた
その大きな料理に興味を惹かれたドゥビュース達だが、それは蓋を開けられた次の瞬間に再びあの嫌な驚愕で塗り替えられてしまう。
「いやーん♪ さっきは情けないところを見せちゃってごめんなさーい♪ お詫びにこのベッキー特性の“ベッキー盛り”をむさぼってー♬」
先ほど会場内から引きずり出された
「「「「「!!!!!????」」」」」
「…う…ぷ…お…おおおおおお!?」
「…………」
それでベランダにいる者達の大半が無言の驚愕で凍り付き、ドゥリュースは吐き気を催して胸を押さえながら椅子から崩れ落ちて片膝をつき、ただ一人だけドゥビュースは普段の真顔(ただし瞳から光は失われつつあった)を浮かべていた。
「「「…何やってんだあんたはあああああアアアァアアアアァ!!!???」」」
数秒の絶望的な沈黙の後、吐き気からどうにか立ち直ったドゥビュースと会場内の別の離れで他の子弟とおしゃべりをしていたジョセフィーヌ、その付き添いという形と偽名にて参加していたアスランが嫌な意味で慣れているその危機感で引き起こされたシンクロによってベランダに集い、同時に怒りを隠さない様子で机の上に乗り込んだ。
「何を大半が結界系魔術で気付かれないからってこんなあちこちからお偉いさんが集まっている饗宴の場でそんな賞味期限切れの肉体を晒してんだあんたは!?」
「同じ女性として恥ずかしいを通り越してもう死にたくなる光景よ!! ていうかよくこんな狂気やらかしまくってて教職続けられてるわね!? どうやってここでこんなの出来るのよ!?」
「ベッキー先生あなたこのような真似をすると普通はもう二度と陽の光が当たるところは歩けませんよ!! そもそもなんで未だに学校で働けて続けてられるんですかあなたは!?」
嘗ての教え子三人が怒りや哀願など様々な感情が複雑に混じる顔で詰め寄るが、当のベッキーは少し困った程度の顔を添えてこう言い返す。
「あー、それは先生のお兄さんがここのホテルの会社の大株主だから~他はスタッフの皆さんを恫喝…じゃなくてお願いしてここまで運んできてもらって~、他にも叔父様が日本皇国の警察庁長官で~、その奥さんのお父さんがここ地球の日本皇国租界の租界警察本部長で~、何よりお父さんの方のお祖母ちゃんがジョセさんもいる
(そこまで元ネタに合わせるような悪化修正をしなくていいだろ!!)
「「…謎は全て解けた!!」」
ベッキーの口から出たあまりに大きすぎる後ろ盾にドゥリュースは天を呪詛で罵りたい気分で仰ぎ、ジョセフィーヌとアスランは絶望感を共にしてしまう。
「そういうわけでクリューブ王殿下~♪ この独身肉料理を遠慮なく召し上がって下さ~い♪ それでそちらのお姫様は明日からお母様ってお呼びしてもいいんですよ~♪」
「っひ!? い、い…!」
その三人に構わずにベッキーは仰向けのまま這いずって、いまだに沈黙を保っているドゥビュースにズリズリと近寄り、その傍にいるラフィールに今まで感じたことのない恐怖を覚えさせた。
そして、三十路半ばの怪物の指先がドゥビュースに触れようとした次の瞬間、その指先は別の誰かの蹴りで跳ね除けられた。
「っ!? あ、あなたはー…!?」
「「レクシュ先生!!」」
今回は護衛武官という形でドゥビュース達と共に饗宴へ参加していたレクシュ・ウェフ=ローベル・プラキアが、静かだが確かな憤りを添えた蹴りでその三十路野獣の魔の手から
「私のかわいい殿下」
「ああ、プラキア卿、合わせてくれ」
そして、その急登場したレクシュに合わせてドゥビュースは机の上に飛び乗り、彼女と共に料理を隠していた大きな蓋を持つとガンっと勢いよく皿へ被せてベッキーを再び隠した。
「…ってゴラぁ!? この皇国上級国民出身の独身女教師がこの体で接待に来てやったんだぞ!? どうせ皇族なんだから金と権力に言わせてあちこちで女を作って食い漁ってんだろうが! 開けろぉ! それで早く貪れや…あ、あれ…!? なんか急に寒く…い、いやああ! なんか急速に凍り付いて行っちゃって…え…ぇぇーーーー……」
閉じ込められたベッキーは外交的に問題ありすぎな叫びをあげつつ外に出ようとガンガンと暴れ出すが、ドゥビュースの手から生じ出した冷気が蓋と大皿を包み込んでいき、十数秒後にはカチンと凍り付いて罵声や咆哮は止んだ。
「…あ、あの…クリューブ王殿下、こ、これは…」
「いやー、さすがはバラエティ大国と名高い貴国ですな。自分も画面に映される番組の世界へ迷い込んだような心地でした。女性の身でここまで我が身を張った芸をなさってくださるとは…」
「っ! おほめにあずかり光栄です! ささ、こちらの大皿は取り下げて次をお持ちいたしますので!!」
それから、ようやく意識が現実に戻った、アーヴと遺伝的な親戚にあたる銀河連合所属の有力国の一つ“皇国”の外交官が青ざめた表情で口を開くが、ドゥビュースがいつもの笑みで合わせると、安堵の表情を浮かべつつも部下に凍り付いたベッキー盛りを取り下げさせた。
(…さすがは今の陛下の息子さん…、腹芸と相手に配慮する技はさすが…そこにいる娘さんとは全然違う…)
「おい、その目、私を何か侮っていないか?」
その速やかに外交問題を芽のうちに摘んでなかったことにするドゥビュースの手腕に、ドゥリュースは感嘆しつつも直情的なラフィールと重ね合わせて彼女にジト目を向けられたりした。
今回、書いていてラフィールのお父さんって本当は頼りになる人だなぁって思いました…。