〇帝国暦949年6月22日夕刻
「…へー! アスランさん達とも再び会えたんですね!」
「うん、今はー弧状列島の方の国際会議場になってるホテルにいるよ」
偶然の再会から数分後、ドゥリュースとキラはその現場であるカフェの屋上席にて店の味や司波兄妹との会話を楽しんでいた。
「それでどうして二人はこの星へ?」
「はい、久々にあの人が家に戻って来られたんですけど…、すぐにここへ仕事に行かなくてはいけなくなったので、少しでも一緒にいたくてついてきたら…!?」
だが、深雪がこの地球にいる理由を説明しようとしたその時、彼女たちのいるカフェに面している海辺の沖合で大きな水飛沫が上がり、それは何故かこちらに向けて猛烈な勢いで近づきつつあった。
「…え、これって…まさか…!?」
「…残念ながらまさかのようだ…!?」
それにドゥリュースと達也が極めて微妙そうな懐かしさを覚えた直後、その水飛沫はカフェの手前で再び大きな水柱となってそこから何者かが飛び出してきた。
「キャア!?」
「とう!」
深雪がそれに驚いた直後、その何者かが彼女たちの前に何かを担いだ状態でシュタッと着地した。
水飛沫が落ち着くと、そこにいたのは線が太くて中年太りしているが腹筋は綺麗に割れていて健康的な黒光りをした肌色をし、某海賊漫画にでも出てきそうな巨大カジキを背負った海パン姿のおっさんであった。
「お、御父様!?」
「………‥」
((こんな登場しか出来ないのかこの親父…!!))
それに深雪が驚きつつも嬉しそうな声を上げ、キラは言葉を失い、達也とドゥリュースが大きく顔を引きつらせているその男の名は司波龍郎。
この世界でも司波兄妹の親父さんだが魔法科高校原作と違って極めて冒険と大自然を愛する考古学者の親父であり、奥さんにして二人の母である妻や深雪との関係もすこぶる良好な親父である。
但し、そのあまりの愛情表現の熱と奇天烈ぶりゆえに、この世界ではスペックはともかく性格は基本常識人の達也には色々ウザがられている存在でもあった。
「やあ、久しいねぇドゥリュース君にキラちゃん、うちの倅や娘っ子との会話はどうだい? ついでにここで調べていた海底遺跡でエレファントホンマグロカジキを見つけて吊り上げられたから食ってみるかい?」
「は、はい! 喜んで!」
結局のところ、素直に喜ぶ深雪を邪険には出来ないので、そのまま龍郎も交えることになった。
「…いやー、まさかーこの星でエレファントホンマグロカジキを口にできるなんてねー」
「あ、ちょっとそこ焦げすぎてる!」
「何だと!? こいつには醤油に決まってるだろう!」
「ぬかせぇ! これは唐辛子汁こそが至高と決まっておるわ!」
「あーはいはい、ケンカしないでくださいー。本日はあのドイサックでも一日に一匹釣り上がるかどうかというエレファントホンマグロカジキを食べられるまさかの日だよー。今なら一皿2000地球シェエスカールだよー」
十数分後、解体されたエレファントホンマグロカジキを囲んでBBWがお店で開かれていた。
お店の主が龍郎達と旧知の中で、解体は二人係で出来たがドゥリュース達だけでは食いきれなかったので、こうして店の軒先で公開解体ショー及び販売もすることになって人だかりが出来ていた。
「…ほえ~~~…おいしいでふ~~~~…♪」
「深雪、このままだと食いすぎて雪ん子から雪ん子豚になりそうだね」
「…冷凍…」
「つめた!? ちょっと
その中で深雪はカジキステーキを口にしてゆるキャラ擬人化の如き可愛さを見せていたが、ドゥリュースが昔に付けられていたあだ名も絡めてからかうと、能面になってこの世界にもあるCAD(術式補助演算機)越しに銀連圏内では主流の現代魔法で冷気を彼の周囲に生じさせて慌てさせた。
『ちょっと深雪ちゃん、そんな人前で魔法をお仕置きでも使うのはダメよ』
そんな仰け反るドゥリュースの姿を遮るように空間投影式映像が現れ、そこから写し出されてきた妙齢の地上人美女がやんわりとだが注意してきた。
「あ! お母様!」
深雪が明るい喜びを向けたその美女の名は
この世界でも司波兄妹の母親で類まれな現代魔法師の一人である美女だが、それ以外はドゥリュースのあの身内にかかわる経歴のためか色々変わっている存在である。
『ドゥリュース君もお久しぶり、
「そりゃもう比較すれば(こっちの)深夜さんが病弱に思えるレベルで無駄に元気すぎますよ」
ドゥリュースにとって非常に残念且つ微妙なことに、こちらの深夜も彼の母であるラムキースの教え子であった。
そのためか、深夜は魔法科高校原作時間軸の方では現代魔法の過度な使用で病気がちになって早世したが、こちらの深夜はそれ以上の激務に駆られていただろうに定期的に病院に通ってはいるが大事には至っていないままの状態であった。
『失礼しちゃうわね、私はまだ現役バリバリよ。まー当分は龍郎さんのおかげで病院に行く感覚は短くなりそうだけど…』
「まー、(原作開始する数年前に死んだほうのと比べれば元気すぎるなほんま…)見りゃわかりますがー…ん? 龍郎さんのおかげ…?」
そういった意味では人間(?)星間嵐のような母には珍しく感謝の気分を抱くドゥリュースだが、その波及で今この場で魔法科原作にはなかったイベントの気配を感じとってしまう。
「…え、御父様…お母様が病院に多くいかなくてはいけないって…何かお病気が…!?」
「違うよー、新しい家族が増えるって意味だよー。ハッハッハ」
「…え?」
それに深雪は初め不安を覚えるが、龍郎はにこやかにそれを否定して今度は達也が表情を引きつらせる。
「…お、御父様…お母様…それって…まさか…!?」
「そう! お前さんも来年からはお姉さんだ!」
「!?」
(やっぱり原作と色々違うのは達也も同じだなぁ…)
深雪はある答えに行きついて震え始めるが、龍郎がそれを肯定すると今度は達也がガンっと机上に顔からぶっ倒れ、ドゥリュースは生暖かい眼差しを向けた。
「ほ、本当ですか!? それで生まれるのはどちらですか!?」
『うふふ、それがー…貴方は達也と同じ妹持ちだけじゃなくって弟持ちにもなるのよ♪』
「ほ、本当に!?」
「…ふわァ…す、すごい話になってきたねぇ…」
驚きが落ち着きつつも喜びは高まったままの深雪は喜色全開に龍郎と画面越しの深夜に詰め寄り、キラは呆けた表情を浮かべていた。
「…母さん、親父…ちょっと…話が…!?」
そこで机上に突っ伏していた達也がどうにか再起動を起こしてぎこちないながら口を開くが、その最中に彼の目は少年らしからぬ見開きをして深雪の前に躍り出た。
「!?」
同時に龍郎も目を細めてまだ切り裁かれている最中のカジキの下半分を勢いよく掴み上げ、それを盾の様にかざすとポンっと鈍く小さくも何か穴が開けられたような音が響いた。
(!? 今のはこの世界における新ソ連正式採用ハミルカル23式ライフルのサイレンサー現代魔法使用状態のもの…!?)
遅れてドゥリュースがその音の正体に気付くも、その頃には龍郎が弾丸の飛んできた方向を鋭く見据えたままカジキにめり込んだ小さな弾丸を指でつまみ取り、それをポケットに入れて汚れた着弾点部分の肉をそぎ落として周囲の大半には隠したままにした。
(!? そんな…この私が…!?)
それを数千メートル先の緑地公園の中より、先ほどの弾丸を撃ち放ったその謎の美女は驚愕を隠せない表情を浮かべてしまっていた。
「……あ、あいつは…!!」
ちなみに同じころ、近くにある日本皇国側租界の病院より腕と顔に重傷を負って入院中の金城タカシが、カフェの屋上にいるドゥリュース達の姿を見て憎悪と自覚はないがそれに負けず劣らずの恐怖を混ぜ合わせてゆがめた表情を浮かべていたが、彼らには自分たちを狙ってきただろうスナイパーに比べれば色々な意味で取るに足らない存在なので気付かれはしても全く注意はされなかった。
本人の自己評価と他人からの評価は一致するとは限りませんよね。
次回、今回の最後の所で再登場したあれの今回におけるオチと、国際政治系での急展開に入る予定です。