今回、ガンダムファンの方なら待ちかねていた(展開)に入ります。
〇帝国暦949年6月22日夜
「…へええ、この子ってその時にもらえた子なんですねぇ」
『スゥー』
夕刻にて良からぬ視線に発見されて数時間後、客足がほとんど帰ったカフェ屋上のBBQ会場にて、深雪はドゥリュースがアスランから貰った空色の小鳥型ロボットのスカイに物珍しそうな顔を向けて指で愛でていた。
「すごいなぁ、プラントだからって13歳の年少にも手に入る部品でよくここまで精巧なのを…」
「だよねえ、この羽の部品なんか一ミリでもずれてればあっという間に墜落するだろうに…」
それに対して技術屋気質が強い達也とドゥリュースはそのスカイの機械としての精密さに感動を覚えていた。
「…おい、見たか…!?」
「ああ! 見たぞ…あの異端者の“司波龍郎”だ…しかも隣にいるあの長い耳をしたアーヴは…」
「まさかこんなところで見つけられるとは…」
「ここまで潜入するのにどれだけ苦労したことか…」
「今度こそ“
「「「「「真の青き正常なる世界のために!!」」」」」
一方、そうして騒ぐ子供たちを別のビルの屋上から少し変わりつつもどこかで聞き覚えのあるフレーズに殺意を込めて唱える者達もいて、その者達は何やらバッグなどから危険物などを取り出し始めた。
「あら、ドゥリュース君、ここにいたんだ」
そんな状態を知ってか知らずか、どういうわけかこの同じ地球上の弧状列島の方の他国系租界とその企業の傘下にあるホテルで饗宴に参加中のはずのレイカが地上人風に変装した状態で現れた。
「…え、レイカ…何でこんなところに…? 饗宴は…?」
「ああ、同じか近い歳の子達の話がどれもこれも似た内容の平穏なものばかりで違いが判らないから、こちらの方が楽しそうだと思って抜けてきたの。あのアスランって子達は今レクシュ教官達が上手く付き添っているわ」
「………………」
そして、その様子を建物の影より軽トラの中から金城タカシが暗く澱んだ眼差しで盗み見ていた。
その両腕は完治こそしていないが、この時代の発達した医療技術で日常生活を送れる程度に治療された状態でハンドルを握っており、ドゥリュースにへし折られた時とは違って他人のそれがこびりついていた。
「…まったく…金城め…今は何処にいるんだ…?」
同じ頃、その金城タカシの姿を探しに、日本皇国租界へ来ている同国少年少女士官学校生徒短期留学生の教官兼引率役の真田晃蔵がドゥリュース達のいる区域が歩き回っていた。
ちなみに、その真田に付き合わされる形で何名かの部下が金城捜索に参加していた。
「真田大尉、やけにあの馬鹿を探しに来ますねぇ。たかが病院から勝手に抜け出したくらいで…」
「馬鹿かお前、あのイカレガキを放っておいたままにしてみろ。既に病院を出た際に職員が使用していた軽トラをドライバーに意識不明になるまで暴行して奪って逃げた疑惑があるんだぞ」
「え、マジっすか…? でもさぁ、腕こそはたってもまだ15歳ですよ?」
「それが甘いっつってんだよ…。あのガキなぁ…表向きは事故で片付けられてるけど…もう人を殺してんだよ」
「え…?」
身内からも嫌われている乱暴者扱いされている金城の捜索に隊員の多くは面倒に感じていたが、どうやら訳知りらしく且つ悪い意味で捜索に注力している隊員の一人が言い放ったその内容に何名かがギョッとした。
「…あいつなぁ、母親が昔は名があったが今では没落している武家の譜代武家の庶子の生まれでなあ、そのおかげか寝た男が多いから誰が父親かもわからない状態で生まれて、そんな母親だから早々に捨てられて親戚を何箇所もたらいまわしにされてたんだよ。それで最後に行きついたのが母親の実家の親戚の一つの武家だったんだが、そこにも追い出そうと修行名目でこっぴどく扱われていたらしい。だけどそれで鍛えられた剣術で訓練中にその親戚の男を木剣で打ち殺したそうだ。まあ、相手も木剣を装備していたしその状況もあり、その時のあいつの年齢もあって事故として片付けられたんだが…。それ以来あのガキは後先考えずに何でも暴力沙汰で解決しようだなんて性格になったんだよ…」
「え…だったら何でそんな危ないガキが何で士官学校に通えてるんですか!? しかもこんな帝国の領域に交換留学生の一人として派遣されるなんて!?」
「まあ、戦闘系を中心に成績は優秀だからな。昨今の戦況悪化による人手不足がそこまで深刻になってんだよ…。まあ、他の目的を抱えた連中による横やりも関わっているって噂もあるが…。
金城捜索班に不穏な空気が漂い始めた頃、同じ区域内に存在するあるカフェの屋上スペースでドゥリュースはある身内と嬉しくない再会を果たしていた。
「おやまあ、ヘタレの陰キャそうに見えてこんな可愛い子を何名も連れてくるなんて…なんだかんだであの人の血も継いでるのねぇ」
他の客の姿が少なくなったカフェの屋上スペースに、こっそりここ地球へやってきていた母のラムキースがドゥリュース達の集まりに横入りしていた。
「いやいや、ラムキー…じゃなくてキースさん、そんな誤解を招くようなことは言われないでください」
「深雪、そういう言い方はかえって誤解を招きやすいから止めろ」
そこで談笑していた一行だが、そこで囲むテーブルの上にラムキースがドンっと大きな肉料理を置いてきた。
「おい、母さんよこの星の中東辺りで見かけそうな肉の塊は何だ?」
「ああ、これはドネルケバブって言って地球発祥料理の一つで、以前にサルース教系諸国を訪問した際にお忍びで出た先で、コーヒー好きの青年に出会ってすすめられたもので…!?」
それにドゥリュースがギョッとした顔を浮かべると、ラムキースは鼻の高そうな顔で説明するがその最中で目を細めると、そのドネルケバブをバットのように振りかぶって背後めがけて振りぬいた。
「ッ!?」
その次に達也が目にしたのはカフェを見下ろす高層ビルの屋上から姿を現した男が、バズーカ砲を構えてこちら目がけて砲弾を発射するも、それはカフェの屋上で着弾する直前にラムキースが思いっきり振りぬいた魔術強化ドネルケバブで打ち返されてしまうという、別時間軸の彼と違って顎があんぐりとするまでの驚愕に襲われる光景だった。
「ぎゃああ!?」
結果、バズーカ砲を構えていた男はラムキースにドネルケバブで弾を打ち返されて自分の至近で爆発するという、漫画でも出てこなさそうなオチで戦線離脱となってしまう。
「なッ!? ば、馬鹿な!」
「ひ、ひるむな! 打って出ろぉ!」
「死ねえ! コーディネイターの元凶アーヴ!!」
「真の青き清浄なる世界のためにぃ!!」
それには仰天しつつも他の男たちが狂信的な言葉と共に弾丸などを乱射しながら乱入してきた。
「ブルーコスモス!? 他所の租界が近いからって駐屯地の近くでこんな―――!?」
「土下座しとけ」
「―――あ…」
「「「「「!!!!!?????」」」」」
周囲の環境からしてありえない状況にドゥリュースは驚くが、その直後に能面となったラムキースがその目の前から一瞬で姿を消して、続けざまに乱入してきたテロリストたちの背後に分身でもしたかのようなスピードで現れると、その足で彼らを後頭部から踏みつけて顔から石畳の地面にめり込んで意識を失うレベルで土下座させた。
「…え、な、何が…起きて…!?」
そのあまりの速度に軽トラに乗って近づいていた金城は何が起きたかわからず戸惑い、それゆえにテロリストたちの手からピンが抜けた手榴弾が車の下へ転がってきたことに、その爆発を真面に受けても気づくことはなかった。
「…えーっと、そういうわけでー証言は以上でよろしいですね」
数十分後、駆けつけてきた
地球はその特殊な位置から帝国は自国臣民には
「…検問を突破できるような器用さやコネを持っている連中には見えないし、やっぱり内外のそういうのを持った一部の
その現場の片隅で証言を終えつつも安全上の理由から警察の護衛付きの元でドゥリュース達も留まっており、声音から緊張はまだ抜け切れていなかった。
そんな中、調べられているテロの現場となったカフェ屋上席で放置されて画面が映しっぱなしになっているテレビからある特報が流れてきた。
『緊急速報です。二か月前に条約規定違反の軍備を備えていたことが発覚するも、
「…え!? この流れでそう来るの!?」
そして、その特報の内容にドゥリュースは悪い意味でのご都合主義的な気配を感じ取り、自身の裏での役職や働きもあって無関係ではいられなさそうな予感も覚えて久方ぶりに胃の辺りが猛烈に痛み出した。
次回、種ガンファンの方ならよく知っている例の大事件(の同位体?)が起きる予定です。