○帝国暦943年2月2日朝
「さーさー、ドイサック産赤味噌使用の昔ながらの“ラーメン”も美味しいですよー」
「こっちはレトパーニュ産黒豚使用の古式揚げ餃子も上がりますよー」
「うー! 本当に美味しー!!」
(…よし、何とか上手く抜けられた…。帰ったらバレて
母親に大きく邪魔をされていた日の翌日、ドゥリュースはそこから逃げるように帝都のある貴族の城館に来ていた。
ちなみにその城館は彼の記憶にあるSFアニメ作品“宇宙をかける少女”に出てくるシリンダー型コロニーに酷似しており、中での居住区域には何かの催し物をしているらしく多くの露店が軒を連ねており、アーヴを始めとして多くの知性種族が舌鼓を打っていた。
「…おおドゥリュース、その小さな身に似合わない“研究中毒”はあそこから抜け出しただけでは収まりそうになかったが…私達の味がその癒しとなっているようで嬉しいよ」
その舌つづみを打っている人々に混じって適当なベンチに座っているドゥリュースの横に、キャップ付きの帽子をかぶって探偵風な格好をした大型ゴリラの擬人化を思わせる大柄な男性がドサッと座り込んできた。
「ごめんなさい、母が持ち帰る異星土産の謎食品で舌は度々麻痺気味なのでここで癒していかないと本当に味覚が無くなりそうな気がしますから…」
「そうかなぁ、彼女が発見する動植物は珍妙なのが多いが珍味なのも多いんだけど…」
「そう言えるのはジラルハネイの中で食道楽トップなあなたたちワリアル一族の食品加工技術あってこそのものですよー…タルタイ卿…」
ドゥリュースが今は近くにいない身内に対してウンザリとした表情を見せつつも、それも含めて砕けた様子を見せているその大柄な男性の名はワリアル・アロン=アトゥリオクシュ・オテソニン
ドゥリュースの記憶にあるHALOに登場していた異星人種族同盟“コヴナント”を構成していた非人類種族の一つ“ジラルハネイ族”のこの銀河でのそれに属しているが、帝国創建時に大公爵の位を得ていて地元のオテソニン星系を
(…そもそもこちらの世界のコヴナントは、この世界ではアーヴの遺伝的先祖でもあるっぽいフォアランナーを半分神様な文明教師と崇める天の川銀河由来異星人種族で…、人類の多くは帝国以外の人類列強による帝国主義時代の類いを除けばそこまで敵視していないっぽい、何というか接触初期の頃はアーヴを“勇猛且つ理性的な異端”みたいな扱いをしていたらしいな。まー…比較的穏便というだけで初期の頃はコヴナントへの加盟を強引に迫ったり、それが原因で帝国創建時期に初の戦争となって大規模化した果てに…、疲弊した事で落ち付いた両者はお互いに無い点を相手のそれで補うという形で表向き併合という形で、官僚制や原作にはない議会などの要素も含めて今の帝国の基礎は形作られたというのがロビタや集団教室から習った歴史だよね…。その中でこの世界のジラルハネイは…前々世で見た実写SFドラマ“猿の軍団”のゴリラ派みたいな感じの人が多いし…。まあ…食道楽気質が強すぎて、HALO設定の方であったステーキのソースの量が減らされた件でコックをボコるなんてことはしなかったけど、仲間内で食堂をその本来の姿の巨体で占拠してストライキを起こすなんて珍事を起こすという伝説を建てたりしたらしいけど…!?)
そうした点を思い浮かべながら食事を取りつつ、視界上に映し出された各種画面を操作して前世技術の研究を進めていたドゥリュースだが、それを不躾と言わんばかりの彼の頭が大きな手で髪越しにクシャクシャと握られて制止を掛けられた。
「おいおい、食事を美味しいと評してくれるのは嬉しいがそんな仕事の片手間みたいにされていると地味に響くぞ。体の大きさと心のそれは必ず比例するわけではないのだから」
「…すみません。昔から好きな事には何時も時間をかけたい性分で…(うお…こっちのジラルハネイは猿の惑星ジェネシスのゴリラをイケメン(?)にした感じだけど…この“仮人化”の時は頼れる兄貴風という感じ…)」
その手の正体はモミアゲが長くなって頭髪が翡翠色を帯びた金色になったタルタイであったが、その姿はジラルハネイ型アーヴから人間型アーヴのそれに変貌していた。
この世界のコヴナント系種族出身アーヴは、元々の種族の姿をアーヴ化したものの他にも“仮人化”という人類型アーヴに近いもう一の姿があった。
これには、人類型アーヴがこの世界の帝国で最大宗教となっているある宗教で、神の一種されるフォアランナーに姿で最も近いとされていることから来る宗教的理由や、魔術という技術体系や実生活などで人型の姿も持たせた方が便利だという事情などもあって色々あるらしい。
「あ、タルタイ卿…衣服がぶかぶかになってます…」
その実証の一つとして、今ドゥリュースが指摘したとおりにコヴナントなど亜人型の姿と人型の姿では体格や体型に差が出てしまうので、衣服など日常生活で気苦労が多くなりやすいのである。
ナノテク素材や形状複数記憶素材などを使用した衣服なら亜人型と人型どちらの体系にも会わせて直ぐに変化できるが、通常の衣服と比べて割高な場合も多いのと、亜人種が増えたといっても地球起源人類とそれを先祖にしたアーヴの方が多いので人型衣服のままでいた方が経済的という理由があった。
「ああ、すまない…子供の頃から着なれているドイサック木綿製農作業服のままだったからなぁ…。さっき土から掘り出したばかりの状態が一番うまいコルト甘藷の芋ほり体験会の説明をしてたし…」
「本当に食べ物以外にはお金をかけたがらないですよねジラルハネイって…」
それを指摘されてタルタイは苦笑するが、なごんだ空気を見てかドゥリュースは自身が操作していた画面の何枚かをタルタイの視界に入るようにした。
「…それを言うならまだ他人の名義や仮名で他の友人達との共同研究やその産物になっているけど、君の考えで生まれた道具や技術はこっちの料理にも助かってるよ」
「そうですね、前線で守ってくれてる人たちを胃から癒すのに貢献できているなら光栄です…それでー、
「…………アブリアルだけど、君の齢でそれにかかわるのはまだ早くはないかな?」
画面上には始めドゥリュースの前世由来技術を用いた最新式調理用機械などが映し出されていて、それにタルタイは和やかな様子のままだったが、続けてドゥリュースが見せた戦場らしい道具類とそれに付属する言葉を受け、タルタイは声こそ静かなままだが先ほどと違って重く伸し掛かってくるような問いを放った。
「…大人になってから動いてもう手遅れだと後悔したり、よくしてくれた人の体が入ってない棺を囲む葬式へ静かに出るだけなのは…きついんです…」
「……………」
それにドゥリュースは子供らしくない重い表情と声音でそう答え、タルタイはそれに対してしばし答える事が出来なかった。
次回から、発表当時からのあまりに長い時間経過から無かったことにされた感じから、話題になっているマジもんの映画化で有名なあの作品のあのキャラたちが(改変込み)で登場してきます。