星界の輪廻   作:oosima

21 / 97
今回、あの二作目がアニメになったあのダークファンタジー作品系の災厄が中心になります。


021 病と陰謀論は表裏一体

 〇帝国暦949年6月28日朝 銀河連合 プラント小銀河 テキサイス星系 対帝国新ゲート○

 

 この世界でも起きたファースト・コーディネイター*1のジョージ・グレン暗殺から二日後、その混乱は見えつつもプラント在住調査隊やジャンク屋、銀河連合軍プラント方面艦隊から一時停戦して選出された共同調査隊はその新たに出現したゲート*2の調査を続けていた。

 

「…ふうう、やっと今度の回収も終わったぜ…」

「しかしよお、コーディネイターだけでも気色悪いってのに…その大本であるアーヴとも近づいちまうとはついてないぜったく…?」

 

 その中で相手に嫌悪感や敵意を隠さない銀河連合側から異変は起きた。

 

「ん? お前…なんか目が赤くなってきていないか?」

「? 何を言ってるんだ…あ? あ…れ…? 何か…体も熱くなってきて…あ…」

 

 船外作業から戻ってきた銀河連合側作業員の一人が宇宙服を脱いでその面貌を露わにしたところで、その異変は少しずつ姿を見せ始めた。

 これが後に、この世界で銀河連合側でも“S2インフルエンザ”、帝国側では“赤眼病”、双方の世界で多くの人々から“赤目の病”と畏れられる銀河史史上最大最悪と恐れられるパンデミックの始まりである。

 

 

 

 

 

 〇帝国暦949年7月15日昼 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) スュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル) ウルス大公国 惑星サンヘリオス軌道上 衛星クィコスト スュルグゼーデ修技館(ケンルー)

 

『…先月末にプラント小銀河のプラント門の同宙域側で発生した新型伝染病“赤眼病”ですが、銀河連合側では各当局の素早い対応にかかわらず感染拡大の動きに歯止めはかかっておらず…』

 

 大パンデミックの最初の患者発生から二週間以上の後、それも含めた猛烈な情勢変化もあってドゥリュース達は地球での訓練期間を切り詰められてスュルグゼーデ修技館(ケンルー)に戻っていたが、未だに感染スピードが遅くなる気配のないその病についての報道番組を見ていた。

 

「おい、銀河連合(向こう)側はもう三十を超す星系まで感染域が広がって、感染者は五百万人にまで達しているらしいぞ。そのうち、死者は今の時点で八十万人、例の()()()()()も一万人を超しちまったらしい」

「この病は感染の媒体が悪性の魔素らしいから、歴史柄から魔術が盛んで抵抗力が高い種族が多いこっちは、()()を除けばまだ被害は軽微で済んでいるらしいけど…」

「…向こうはその魔術そのものを否定するところも多いって話だからなぁ。抵抗値もそれ相応に弱いって話だから…」

「でもさあ、何でそこまで魔術を忌避するのって話だよねえ?」

「そりゃあ宗教とかじゃない? ほら、自分らの神様だけが唯一絶対だーって…」

「レヒリオン教にサルース教やその元になったオルムス教とか」

「でもさー、彼らが用いる聖典ってのと、彼らが祖先としている地球時代の三大唯一神教の各教典って矛盾も甚だしいって話でしょ?」

「向こう曰く帝国などで現存しているその時代の聖典はこっちが自分たちの教義を歪めるために歪曲したりした偽書って話さ」

「何か都合が悪くなるたびにいつもこっちのせいにしてない?」

「それで悪の帝国とか呼ばわりしてるくせにさー、難民問題とかなると人道的観点からしてもっと受け入れろって話すしー、それで受けれたら扱いが非人道的だと言い出すしー、人道や人権重んじる先進国自称するならその対極に位置するこっちに押し付けようなんて恥ずかしくないのかねー…」

 

 彼と同じく教室で休憩時間を過ごす生徒達の多くは頭環(アルファ)端末腕環(クリューノ)を用いて、視界内や空中などに投影された映像資料を見ているが、彼らの会話の多くは赤眼病と関連しつつも他国との関係性についても触れられていた。

 

「…あ、何か新しい記事が出てきた。えーーーっと…“S2インフルエンザはその前に起きたファースト・コーディネイターのジョージ・グレン暗殺事件に対する報復か!?”ってさー」

「こっちの方では“赤眼病は帝国による自然人類絶滅計画の発動!?”って記事が大仰に取り上げられてるなー。そんでーこっちでも向こうほどじゃないにせよ地上世界中心に感染者が出ているのは帝国に反抗的なそれらに対する弾圧の現れ…か」

「まーた向こうから調査団派遣を受け入れろって声明が出るかなー」

「だったらいい加減に大星洋連邦とかはオルムス擁護とかで自国内や対異夷(ゼビーシュ)戦で回すべき分を食いつぶすしてるのをいい加減調べろって話だよな。向こう側の諜報機関界隈では最強って話のマサダ機関のやらかしとかを調べろっつの」

「まあ、こっちが向こうに合わせたら向こうで文句言って飯を食ってけてる人たちが困るから今のままでいいんじゃない?」

(…こっちの世界でも流れてるなあの病気絡みの陰謀論…症状や規模とかも向こうよりも銀河規模で酷くなっているし…なんか、この病気の症状って…あのゲームの設定にあった“赤目の病”に似ているというか…)

 

 周囲の級友達から上がる文句や露悪的な物言いを聞きつつ、ドゥリュースは秘かに自分だけで視聴できる映像を通してこの世界での赤眼病に嫌な既視感を覚えていた。

 

 

 

 

 

 〇帝国暦949年7月25日朝 銀河連合 サード・サマリア共和国 ニュー・サマリア星系 首都星モーシェ○

 

 そこは、元々は地球時代にて唯一なる神の教えを奉じながらも、教えを曲げて伝えてしまった別れし同胞に一時の権力を握られた中で、その中で生きて真理を世に残すために偽って暮らすという苦渋の決断をしたというオルムスの民が仮の故郷として定めた星であった。

 嘗て暮らしており、今ではほぼ歴史上の存在となった“偽典の民”に混じって暮らし、絶え間ない迫害の歴史の中にあって、その中で生きるために広く大きい異教徒の世界の中にて学問を身に付けて高め、異教徒も含めた商売によって生きてきた縁で長らく銀河系の科学分野と金融業で絶大な影響力を保ってきていた。

 だが、アーヴの勢力拡大で銀河系市場の半分からは軍事面だけでなく技術面や経済面でも実質排され、さらに残りの分野でも遺伝子調整という宗教的に自分達に向けて用いるのは極めて困難な手法でコーディネイターがそこでの各分野の上層部を次々と奪い始めて行く。

 挙句の果てに一部宗教論者では、堕落した人類への神の鉄槌や試練とまで呼ばれる外部銀河系異星起源種BETAによって、次々と自分達が幅を利かせられてきた銀河連合圏内の領域が星ごと更地にされていくという終末じみた戦いに十数年も費やされることとなった。

 そこへ、新たに発生したそのS2インフルエンザが、彼らが神の言葉と崇める聖典に記された古代の神話の時を思わせる生き地獄まで現出させて急速に広めつつあった。

 それは、オルムス人達の国の一角にあるその病院でも同様であった。

 

「先生! 17号室患者の容体が瞳孔の赤化進行に伴って急速に悪化しています!」

「またか! 警備員を呼んで隔離室に移せ!」

 

 今も病院の中でありながら武装した兵士が待ち構えるその隔離室へ、その地獄の一翼を担う存在となりつつある患者が運び込まれようとしていた。

 

「…患者さん! 聞こえますか声が…あ、ああ…ゆ、指先からまた“白塩”に…」

 

 そして、その隔離室へ運び込まれたS2インフルエンザ患者が、その患者の多数派が辿る最後の姿として、担架の上で全身の細胞が急速に白い塩と化していってしまう。

 

「くそ! まただ…」

「これじゃあ、まるで創世記に載っているロトの妻の末路みたいだ―――」

「キイシャアアアアアアアァアア!!」

 

 それに医師や看護士達が背へ無力感と悲しみにのしかかられようとしていたその時、患者の少数派の末路の証である金切り声の如き喚声が割り込んできた。

 

「―――あってうわあああ!? 隣の隔離室の患者が“黒紋獣化”したぞぉおお!!」

 

 医師や看護士にまだ意識を保てている患者達が目にした、その隣の隔離室へ収容後に少数派になってしまった感染者の末路の姿は、まるで黒き文様が蠢いて人型を成して健常者を襲う姿から黒紋獣と呼ばれていた。

 

「くそぉ! 何でこんなことにぃ!?」

「決まってんだろうが! プラントやアーヴみたいなコーディネイター共のせいだろぉぉ!!」

 

 そうして、人を治癒して人命を救うための場である病院内で、救われるべき患者だった怪物の凶行で齎される恐怖と苦痛を目の当たりにして、人々は急速に広まっているその噂に縋って更に広めていくのであった。

*1
アーヴはその出生以前から存在していたが、この世界におけるコーディネイターで主流タイプにて最初のは彼なのもあって便宜上そう呼ばれている

*2
帝国で言う(ソード)をこの世界の他国はそう呼ぶ




ゲーム中だけではわからないものも多いですけど、設定だけでも本当にすごいのが多いですよねニーアシリーズって…(重いのも含めて…)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。