〇帝国暦949年11月21日夜
「…いやー、面白かったねー」
「そうねー、巨大な水の球体が宙に浮かんだところでジェットスキーのショーや、海底の軟質サンゴを用いてのアートショーとか見どころがたくさんだったわねー」
ナヴ―ヴィルの公演を見ながらも、ドゥリュースとレイカはその講演会場がある水上ショッピングモールでの買い物もまた楽しんでいた。
「…ううーん、イース産薔薇の高級香水に…ドイサック産バナナ使用美容クリーム…これだけ買うなんてさー、別にほぼスッピンで紙の表紙まで何度もタッグやチームながら既に飾れている君には必要ないでしょこんなのー…」
「地上出身の出来た友達から割高になっても良いから買って来てって言われたのよ。電脳店舗だけじゃあ買えなくて現地までいかないといけないものもあるんだから」
「それって転売じゃね?」
「あら、私と君のそれぞれのお母様も若い頃は軍艦で借りたスペースに買い込んだ品を貯めて途中で寄港した先の必要とした人々に商売の実習の相手をしてもらったらしいじゃない。君の生まれからしてこうした商売の知恵はキチンと肌で感じた方がいいと思うけど。それに問屋さんで急なキャンセルで買い手がつかなくなったのを宣伝を条件に購入したから大丈夫よ」
但し、買い込んでいる品の大半はレイカのものでドゥリュースはその大量の荷物持ちを疲れた表情でさせられていた。
「そりゃそうだけどさー、まさかこんな観光地でまでする羽目になるなんて思ってもいなかったし―――」
「あら、ドゥ…ではなくてリュースさん、こんなところで再び出会えるなんて幸運ですわねぇ」
口では勝てないと知りつつも愚痴を封じることが出来ないドゥリュースであったが、その彼の鼓膜を地球時代よりかは大人びているなどの変化はあるが聞き覚えのある声が振るわせてきた。
「―――ぃ? この声は…あ!
ドゥリュースがその声に反応して顔を上げると、彼の地球時代に通っていたスクールの上級生の一人で、ピンク色の長髪と瞳でのほほんとした美貌を持つ
ちなみに、某学園系ゲーム作品の同じ名前の同位体のように、名字で呼ぶと怒るのでドゥリュースを始めとして知人からは名前で呼ばれている。
そして、三人は講演会場の付近にある水上カフェで食事を楽しむことにした。
「…あらまあ、宿泊先のバイトと観光産業回復の助力…をついでとして観光のために来たと」
「いやねえ、本来なら宣伝の手伝いを名目としてほぼ観光を楽しむためだったのです。トレジャーハンター的イベントの名目で働いたりもしましたが…」
「ですが初日のうちに成功できたおかげでもう残りはほぼ観光を楽しませてもらうことができます。おかげで観光系サイトに皆様があまり見たがらない注意喚起系の書き込みをしなくて良さそうです」
「レイ…シモヒラ(ぺネージュがレイカの名前を付けるときに拝借した亡き友人から、レイカ本人が拝借した偽名)さんがそういうの書いたらさぞお店もお客さんも無視も下手な反論も出来ないコメントが流れるのが見えてくるねぇ…」
「けれど、スポールの皆さんのご意見は耳痛いですけどためになるのが多いのも事実ですからリュースさんのご実家が何だかんだ頼りになさってるのもわかるというものですわねぇ」
「…ははは…」
但し、食事はともかく会話の方を楽しんでいるのはシモヒラ(レイカ)と祈中心で、リュース(ドゥリュース)は苦笑を浮かべ続けるほかなかった。
「…はー、色々楽しかったわねー」
「ありがとうございますシモヒラ(レイカ)さん、あなたのおかげで私だけでは普段お口にできない高級菓子を多くお口にすることが出来ましたわ」
数十分後、イベントも終わったリュース(ドゥリュース)一行はカフィーリュに向けて戻る水上バスに乗っていた。
「……………」
ちなみに、その水上バスには臨時スタッフの一人として、この世界では戦災難民ハニア系の血が強く出ている大星洋連邦出身で今はまだ16歳のレヴィが乗り込んでいたが、その彼女は作業をしつつリュース(ドゥリュース)一行をジーっと盗み見ていた。
「ちょっとレヴィ、そんなジーっとお客さんを見ていると失礼だよ」
「うっせーんだよロック、あの観光客のガキども…近頃どっかで見た気が…それでよーなんか野郎の方は大分昔にめっさ死にそうになった…つーかなんで生きてんだって今でも思うあの時に出くわしたあのアーヴハリケーンに似てるようなー…」
「あ、レイ…じゃなくてシモヒラ(レイカ)さーん、撮影の準備が出来たんでお願いしますねー」
「あ、はーい、今すぐ行きますー」
そのレヴィ達が注視しているその時、シモヒラ(レイカ)はこの惑星に来た一応は本来の理由の一つでお呼びがかかった。
「…ん…こうですか?」
「…あー、レイカさんもう少し右腕の三度くらい上に…よし! 良いねー!」
数分後、レイカは偽名を一時取り下げて身体的特徴なども元に戻した状態で、他の乗船客の視界には入らず、そもそも認識もされない結界が張られた甲板の一角にて写真撮影のモデルをしていた。
写真を撮っているのはこの惑星の観光協会の宣伝部のスタッフで、スポール家令嬢及びその伝手を借りた観光パンフレット用の写真集を作るためだ。
「…何で僕が魔術系撮影スタッフの一人に混じってるんだろう?」
「あら、銀河中にご迷惑をかけてる一族よりも今のこき使われている姿のあなたの方が平和的に見えますわ」
ちなみに、リュース(ドゥリュース)は正体を明かさないまま魔術を用いて撮影をよくするための技術スタッフの一人として加わっており、微妙そうな苦笑いを浮かべている彼をどういうわけか見物している祈が励ましていた。
「…うーん、ぺネージュさんやっぱ口は悪いけどフォローはしっかりしてて手厚いねー」
「レイカさんアーヴにしてもものっすごい綺麗だしー、遺伝子調整だけじゃなくって天とかもっとすごい存在の加護を感じさせるねー」
「あー、もうそろそろホテルの方が見えてきたよ」
「じゃー、こっちの撮影は早めに仕上げて次はあそこで撮影しないとなー…」
その後、レイカの撮影はホテルの姿が近づいてきても続けられる。
(…はああ、早く終わってくれないかなぁ…見る分には男として嬉しい限りだけ…ど!?)
その時でもリュース(ドゥリュース)は半ば惰性で魔術支援映像スタッフを続けるが、時折にレイカが水着の下を隠すパレオをずらしたり、流し目を添えて美麗な脇やうなじなどを見せたりすると何故か思わずドキッとしたりしてしまう。
「(…あかん、出発前にイェランさんがありえんことを言ったおかげで誘われているように見える…。どうせスポール特有のアブリアル弄り中毒症状なのに…)はぁ…」
だが、自分が創作物のような存在なのにそんなラブコメみたいな現象は現実にはそうそうないと判断したドゥリュースはすぐに視線を逸らした。
(…え? 何あの露骨な溜息…? 私にはその体にも興味がないってこと…? は!? もしかして館内で聞いたあの噂は本当だったんじゃ…!?)
「ん? レイカ…何か少し表情が硬くなったような―――?」
「あれぇ? 何か霧みたいなのが出てきたぞぉ?」
「―――あ…?」
レイカがそれを見て表情こそ撮影の都合もあって難く引き締めつつも内心である噂に起因する不安に掻き立てられ、カメラマンがそのごくわずかな表情の変化に気付いた直後、下側の甲板の見えない死角から何やらそれは生じてきた。」
「…え? 何だこの霧みたいなの…?」
「霧が出るなんてこの辺りのお天気報道では載ってなかった…ぞ…?」
それに水上バスにいた人々は奇妙がっていくが、霧が深まるにつれて急な眠気に襲われていく。
(…この臭いは…確か…それで…あの二人は―――)
「…ぁ…う…」
「…ぐぅ…むにゃ…」
(―――あ…て、まあ…子供だからもっと面倒見てあげた方がよさそうね…)
撮影スタッフの一人に扮してもぐりこんでいたイェランがそれに双眸を細くして周りを伺うが、自分が今回保護者と言うポジションで
〇帝国暦949年11月21日深夜
ターフィチの公式地図には無人とされている無人島の一角に、数十分前までドゥリュース一行も乗っていた水上バスが海に繋がる深い洞窟の奥で鎖につながれた状態であった。
その水上バスの洞窟の一角には人工的に整備された施設が存在し、そこから数百メートル掛けた廊下の先には巨大で薄暗い部屋があり、そこには水上バスにいたが急に現れた霧の中で睡魔に落ちてしまっていた人々の大半が集められていて、彼らは目を覚ましたらもう突然迷い込んでしまっていたこの謎の空間に困惑や驚きに恐れを生じさせていた。
「…なあ、レヴィ…俺達…あの魔術サーカス団のバイトスタッフと言う形で…上手く目的地まで忍び込めたんだよな…?」
そうして恐れを露わにしている面子の中に、嘗ては
彼はこの銀河規模となった人類社会でも日本皇国出身で、同国のある大企業本社所属となっていたが、あるデータをある他国に運ぶという仕事を任されていたところ、今現在所属している半分宇宙海賊な運輸会社に捕まり、紆余曲折を経て母国の大企業に切り捨てられて今はアウトロー見習いをしている身である。
「…忘れてねーよボケ、まさか
そのロックの隣でレヴィが小豆色の髪を不愉快さ全開に揺らしていた。
『やあ、お初の所お目にかかる参加者の諸君』
そこで、大部屋の空中に巨大映像が映し出され、そこに目元を仮面で隠して上品なスーツを着こなしている人間と思わしき初老男性が姿を見せる。
「だ、誰だあんた!?」
「私達をどうしてこんな所に!?」
「ここは何処だよ!?」
「私たちはドイサックから観光に来てたんだよ!」
「俺達をどうするつもりなんだ!?」
当然、いきなり拉致されてきた人々は犯罪の臭いを感じて大半は声を荒げ始めるが、映像の男性はそれを嘲るような笑みを浮かべて言葉をつづけた。
『そんな声を荒げないでくれ。今回、我々はむしろ君達を人生が変わるチャンスに導いただけだ。諸君らの中心に足で踏むタイプの大きなスイッチがあるだろう』
初老男性の言葉通り、動揺する人々の中心には床から大きく突き出たスイッチがあった。
『今回は君たちの詰まらない人生に花が生える手伝いをしに来ただけだ。無論、最後まで
「えい」
人々がそのスイッチに注視しだしたところで映像の初老男性は説明を始めるが、それが終わり切らない内に一人の少年がそのスイッチを踏んだ。
『―――お…?』
「…とりあえずー、これでいいんですか…!?」
それに映像の初老男性が拍子抜けした表情を浮かべた直後、少年は彼に振り向いて確認を求めるが、その直後に天上の一角から巨大な石柱が落下して少年の身を押しつぶした。
「「「「「…わアアアアアアアアァアア!!??」」」」」
明らかにそれは少年の生存を絶望的だと周囲に知覚させるには十分で、近くで見た人々はそれで恐慌状態に陥った。
「ッ!」
『…おおっとおお! これはまた幸先のいいスタートだぁ! そのスイッチを押せば次のステージへの扉が開くのだが上から音速で天井の一角が振り下ろされるから注意しようと思ったのにねぇ! まさか戦場から無縁のこの国の内側に住む少年にこのような勇敢な子がいたとはねぇ―――』
「おいぃぃ! いきなり何すんだよ!? 怪我しそうになったじゃないかぁ!」
『―――ぇ…!?』
「…は?」
それにロックが驚きと怒りを滲ませた表情を浮かべ、映像の初老男性は愉快そうな声で遅まきの説明を交えて人々の恐怖を煽ろうとしたところで、その石柱の根元から先ほどの少年のものと思わしい怒声が響いてきたが、それに二人が呆けた反応を示して見やった次の瞬間に石柱は内側から切り裂かれたように無数に飛び散った。
「…確かに観光第一で来たけどさあ…こういうデスゲームっぽいイベントは聞いてないんですけどぉ!?」
そう声を荒げながら石柱だった破片を蹴り飛ばしつつ姿を現した少年は、魔術撮影スタッフに扮した格好のままのリュース(ドゥリュース)であった。
今回の話の最後に出てきたデスゲーム最初の仕掛けは、リアル鬼ごっこ一作目漫画版と同じ作者さんが描かれたデスゲーム系漫画に出てきたものが元ネタです。