星界の輪廻   作:oosima

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今回も種世界で重要なイベントがこちらの世界でも起きて、歴史の流れを加速させていきます。


034 連鎖してゆく悪化

 〇帝国歴950年1月18日夕刻 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) スュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル) ウルス大公国 惑星サンヘリオス軌道上 衛星クィコスト スュルグゼーデ修技館(ケンルー)近隣 商業都市ヒェーデル コゼル商店館(イレ―ヴ) 伽藍の堂〇

 

『…それでは次の報道です。3日前にて南星洋合衆国の宇宙貨物船マンデルブロー号船団が許可を取り消しにされたにもかかわらずプラントへ食糧輸送を行おうとしていた問題ですが、プラントの市民代表及び商工会議連盟は抗議の声を…』

 

 アラフォーと幼馴染による襲撃から三日後、ドゥリュースは公務で出向いたサンヘリオスでの新年式を終え、長期休館も終了したので修技館(ケンルー)があるクィコストの自室に戻って電脳空間にて、別の幼馴染が住んでいるそのヘリオポリスに関するニュースを聞き入っていた。

 

「…今朝から何度も取り上げられているよなー」

「ああ、帝国(うち)の商会と共同事業をしている銀連(向こう)の企業に呼ばれてプラントに向かっている叔父さん達も今回の件で大騒ぎしているって話してた」

 

 窓から見える通行人達からも今回の事件についての会話が多く飛び交っており、注目度は他の王国の人々よりも高いようにドゥリュースには見えていた。

 何せ、プラント小銀河における銀河連合による開発事業の多くには、間にあちら側の企業などの仲介を得てではあるがスュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル)に位置する帝国の企業が多く参加していたためだ。

 星界の別時間軸でスュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル)の上と左側を取り囲んでいた人類統合体の上半分の領域を支配するこの世界の大星洋連邦は、政治的には各政権における程度の差はあれど帝国(フリューバル)を敵視していたが、互いの経済規模の大きさから政治的にはともかく経済の方では割と交流が盛んであった。

 その中で、プラント小銀河の開発は中立国を介してはいるが帝国と銀連双方の企業が共同事業を展開できる希少な場となっていた(但し、前回に述べられた通り帝国側からの提供はその技術保護の目的もあって、中立国の企業に雇われての技術者の派遣や中小企業進出という形で規模では小さく、技術提供は向こう側でも再現できそうで且つ扱いやすいものが中心であった)。

 そうしたプラント方面に向かっている帝国の企業や技術者を多く出しているのがスュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル)であり、ドゥリュースの知り合いにもプラント小銀河に向かっているのが何名かいた。

 

「ドゥリュース君、何かプラント小銀河からあなた宛ての荷物が届いてるんだけど…」

「…ん? 何処からだろう…まさか…」

 

 そして、今こうしてそうしたプラントに向かっている知人の一人から荷物が届けられたのがレイカより告げられた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第二惑星クリュセ 食堂ドイサック クリュセ一号店〇

 

「大将ー! 辛肉豆腐丼くれー!」

「こっちは豚丼ー!」

「ドイサック風卵包み餡かけ丼ちょうだいー!」

 

 ドゥリュース達の元に荷物が届いていた頃、時差の都合で夜になっているプラントの開拓地にあるその食堂は多くの客で賑わっていた。

 

「あーもうまだちっこいうちから馬鹿みたいに食いやがって! ほらよ!」

「ウェイターなんざまだいねえからこれ三番テーブルまで持ってけ!」

 

 厨房もまた修羅場同然に熱気と掛け声が飛び交っていたが、その中でジラルハネイ特有の巨体だが全身、特にコマ送りのような超高速且つ精密機械のような正確さで鍋や蒸篭にフライパンを動かす男がいた。

 

「おーい、皆ー若いからって掻っ込むように食べたらお腹壊すよ! もう少し味わうように食べて」

「いや! ドッソイスおっさんが来る前と比べたらマジで短い間に美味さわかるようになったから!」

「ほんと! ドッソイスさんが来るまでこの食堂に必要なのはインド系ハニアスラム街の免疫系遺伝子とアルウィンのイギリス系の舌の遺伝子と麻薬だったし!」

「いや失礼なこと言うのにも無駄に知識が混じってるなここの子達!」

 

 調理中にも客達に軽口をたたかれつつ謝意も示されている男性の名はマルサイ・ボルジュ=ドウネン・ドッソイス。

 親が地上人上がりの帝国士族で本人自身は一世代目の遺伝的アーヴであり、食品栄養学を学んでいたが料理人であった遺伝子提供者(ラルリーヌ)の影響で料理も得意で、今は中立国の友人の誘いでプラントに来ている身の一人だった。

 今では、オテソニン大公国に本社がある食堂ドイサックのプラント小銀河における一号店の責任者をしていた。

 

「…まあ、食材がここで採れるようになったから前よりかは安くなったけど…」

「そうですねー、店長の実家の伝手でー一代限りじゃない固定種の種や苗を安全なルートで流して貰えているし。理事国の目があるからまだ実験農場以上の規模を作れてないけど…今では休耕中の水田を利用しての養殖漁業も軌道に乗ったし…」

(…大戦の悪化に伴ってここへ流れこんできてる難民も増えていってるし、けれどもここの開拓作業は難しいから自然とコーディネイターばかりになるから、必要なのはわかってても独立されたくないって思いが強いから未だに農地開発には大きな制限を掛けられてるし…。ドゥリュースとかにも食味試験名目で送ったこちらで採れたばかりの魚の味を帝国のお偉いさん達が気に入って、こちらへの支援や投資を強めるきっかけにもなればー…まあ、そこまで考えるのはご都合主義すぎるかなー…)

 

 だが、その職場の都合でプラントの裏事情にも深く接している店の事情を知るドッソイスはその事で内心難しい表情を浮かべているが、そこで店内にあるテレビに映し出されているニュースがそれを駄目だしすることになる。

 

『昨日、プラント最高評議会議長デギン・ソド・ザビ氏は昨今の銀河系全体の食糧事情の悪化進行及び、プラントにおける増加人口許容能力向上のため、ユニウス市の各星系における農業分野で土壌改良実験や実験農場拡大を主軸に研究及び投資の拡大を行うと発表しました。これを受けましてプラント理事国では大星洋連邦とEUが協定違反として撤回をせねば実力行使も含めて阻止に動くと勧告を出しましたが、日本皇国含めた他の理事国は交渉主軸の慎重論を唱え、新ソ連を中心とした新社会主義諸国は新植民地主義的な暴挙と批判の声を上げており…』

「…は!?」

「のわー!? 店長が蒸篭を取りこぼしたー!?」

 

 そのニュースの内容のドッソイスはぎこちなくなって思わず手元がずれてしまい、それで生じたミスに他の料理人や客達は信じられないものを目にした声を上げた。

 

 

 

 

 

 〇帝国歴950年2月20日夕刻銀河連合 プラント小銀河 アプリリウス市 アプリリウス・ワン 第10惑星付近 アプリリウス第1ゲート〇

 

 帝国(フリューバル)が帝都ラクファカールに八王国へ繋がる八つの(ソード)を抱えることで帝国の物流と交通の中心になっているように、プラント小銀河ではアプリリウス・ワン星系が複数の門を抱えることで同星系が中心になっていた。

 さすがに、ラクファカールのように八つの(ソード)ほどではないが、アプリリウス・ワンは四つのゲートを抱えてそこから枝分かれしていって他の十三の市にも行ける構造になっていた。

 

「狼狽えるな! ジューゼス隊をディーメル隊と入れ替えて敵に疲労を突かせるなぁ!」

 

 その四つあるゲートの一つで、アプリリウス・ワンのみならずプラント小銀河と天川銀河をつなぐ宇宙回廊に位置する第一ゲート付近にて、ドズル・ザビが気勢を上げていた。

 

「うっシャアア! 巡察艦級をこれで三匹目ゲットォ!」

「右上から突撃艦級の群れが近づいてきているぞ!」

 

 何故なら、つい先ほど数時間前にアプリリウス・ワンでの第1ゲートを通って、一月前にプラントで発表された食糧生産能力強化政策を阻止するために送り込まれてきた大星洋連邦宇宙軍第4艦隊が、直後に続くようにして現れた倍以上の艦隊規模を持つBETA群によって激戦の末にほぼ壊滅させられ、今度は対銀連艦隊用に展開していたプラント側義勇防衛艦隊に襲い掛かってきたためである。

 宇宙地形的な制約もあったとはいえ正規軍で構成されていた銀連側艦隊が散り散りにされたのに対し、プラント側は銀連の半分ほどの数にもかかわらず互角に渡り合って押しとどめているように見えた。

 

「…あれがユニウス・セブンにおける初のBETAのプラント小銀河初侵攻を挫くのにプラントが用いたというMSか…。本部はG元素由来と思われるもう一つの兵器にばかり目が行っているが…あれも無視してはならん…」

 

 ちなみに、その光景を撤退中の第4艦隊の残存艦隊に混じっていたデュエイン・ハルバートン准将はしっかと見ていた。

 

「ヒルマ隊長! 第一防衛ラインと共に第二防衛ラインも作戦通り前線の押し上げに成功しています!」

「…ああ、こちらからもその事は見えている…次に第三防衛ラインの上端に位置するコジマ隊に…」

 

 一方、プラント側が繰り出した防衛艦隊の旗艦の艦橋にて、一人の力士を思わせる重厚な体型と個性的な顔立ちで濃い存在感を放つ男が、周囲から上がる好調な報告を受けて的確な指示を出しつつも、苦渋の表情を強めていっていた。

 結局この数時間後、プラントのMS部隊が防衛線を張って食い止めている間に、例の特殊ミサイルが撃ち込まれてBETAは大半を失って撤退を開始した。

 この数日後、プラントは今回の戦いで勝利したと高らかに宣うと共に、この会戦以前からの理事国のプラント小銀河での防衛政策の不十分さ、二度にわたるBETAの侵攻からプラント小銀河及び住民の防衛のため、プラント市民により秘密裏に結成されていた市民保安組織や義勇兵部隊を公表し、両者の統合化と組織化を宣言した。

 これはその発表と共に表へ出てきたプラント防衛委員会改め国防委員会の委員長パトリック・ザラによって、自由条約黄道同盟(Zodiac Alliance of Freedom Treaty)として再編され、この世界でも“ZAFT(ザフト)”と言う略称で内外から呼ばれることになる。

 当然、この動きは理事国を刺激してプラントとの対立を更に加速化させていった。




一部で順序が入れ替わってはいますが、種世界のイベントがこの世界でも大きく歴史を動かし始めましたね。
次回は、今回の影響を受けての主人公の学校(?)生活での日常パートが中心になります。
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