こうしてみると、種世界って滅亡していないのが不思議な経緯を辿ってると思いますね…。
〇帝国歴950年2月27日昼
『…3日前に
「…ううむ、銀河共通の危機だの敵だの言いながら…抗えぬ人の性というものであろうか…」
「確かお前さんの実家の旧式兵器解体業で出た系の中古部品、たしかキグ・ヤー系商会やオーブ辺りの企業を介してプラントに何割かが流れているという話だったが…」
「…確かその商売、サブルム圏の商会…それも非サルース教系に属するあそこの企業が加わろうとしてるって話を聞いたことが…」
「その内さー、向こうで組み立ててーそれを発見したってことにしてー“帝国による兵器輸出及びプラント反政府組織との密約の証拠”って報道されるんじゃね?」
「最近、
「よし、休み時間だしもう行こうかー」
「…さー! 今日は鰻掬いに挑戦よー!」
(ドッソイスさんから送られてきた大量の生きた鰻…多すぎたから上手く処分できないかと修技館に持って行ったら…まさかこんな形で授業に使われるとは…まー、味見及び解析してくれる代わりに食べて良いって手紙と、続けて届いてきた大量の鰻入り培養水満タンビニール袋入り段ボールの山を見た時は転びそうになったけど…)
「先生ー、もっとまじめに授業を説明してくださいー」
「あー、そうねー。今回は地上の湖沼地帯へ落ちた場合の野営技術向上の一環で行うわ。まずここにー大量の鰻がいるのは見えるわねー」
そこで一人の女性教官が大きなプールに張られた水の中を泳ぐ、地球時代の大鰻くらいのサイズを誇る鰻の大群がいた。
「ドイサック大鰻だ。焼肉とかにすると美味いんだよなー」
「私はかば焼き派ー」
「あれ、こっちからオーブとかを経由してプラントの方で養殖や栽培漁業で育てられた分だって」
「今回は味見や栄養価解析の評価の依頼も含めて送られてきたみたいねー」
「今度はあれを限られた材料でもどう上手く調理できるかって評価になりそうね…!?」
そうしてドゥリュースに送られてきた分も含めた鰻の大群に生徒達は舌なめずりしたり、これから行われる授業の内容について予想を口にしあったりするが、その彼らの前でプールの水門が全開で開かれる。
すると、腹が減っていたのか鰻達はプールの水門を通って人口湖沼地帯へ続々と流れ込んでいった。
「今回はあんた達がこれまで培ってきた地上野営食糧調達技術及び食糧加工技術を評価するわ。捕獲数だけではなく、捕まえ方や加工なども含まれるわ。他にもー…」
「「「「「………………」」」」」
その様子を指さしながら始まった女性教官の詳しい説明を、生徒達は黙って集中して聞き入っていく。
「…それでは、開始!!」
「「「「「!!!!」」」」」
そして、全ての鰻が人口湖沼地帯へ解き放たれて、女性教官がホイッスルを鳴らした直後、生徒達は各々の得手とする手法で一斉に捕獲へ向かった。
「キャアあああああアアァ!? 鰻が衣服の中に入り込んでくるうううう!?」
「うわー!? プラントからの交換留学生の一人であるルナマリアが大鰻に絡み捕まられたー!」
数分後、湖沼地帯のあちこちでうら若い生徒達の驚愕や悲鳴が巻き起こっていく。
「ホークさん! あんまり動かないで! てい!」
「レイカが大鰻を胴から蹴り飛ばしてルナを解放させたぞー!」
「泉に逃げたところでその周りの水ごと風の魔術で陸に打ち上げさせろ!」
「音を探知して頭を狙い撃つんだ!」
「気絶させれば十分だから人を貫通できるような威力にすんなよ!」
生徒達はこれまで学んできたことを用いたり、創意工夫を重ねながら鰻を何とか捕まえていく。
「いやー! 表面がぬるぬるしてるだけじゃなく腹を捌いで出てきた内臓も触手みたいに蠢いて絡みついてくるー!」
「ブレーメルさん頑張ってー!」
「森育ちのエルフだからって漁業大国でもあるノルドから来たんだから上手く捌かんかーステラ!」
「これが出来んと評価に響くぞ!」
中には生まれ育った環境の違いから本気で泣いたりする者もいたが、周りの耐性のある面子は叱咤激励や支援をして上手く何とか鰻の捕獲や処理を進めていった。
「…あ、ステラー、また一匹捕まえて途中で締めてきたから解体手伝ってー」
「いいわよルナー、そこに置いてー」
十数分が経過する頃には、アホ毛が混じる赤紫色のショートヘアーに近い色の血で頬を染めつつも締めた大鰻を陸に引き上げたり、それの血で薄い金髪を赤く染めつつも慣れた動きで包丁を振るう留学生の姿が見られるようになった。
「…うう、二人とも…立派になって…!!」
「殿下よ、なんかオーバーアクションが多いでござるな…」
「それを言うならオーバーリアクションでしょ」
それにドゥリュースが陰ながら感動の涙を流したり、そちらに心配そうな反応を見せる友人の姿も見られたりもした。
「うわぁ!? 何か他のクラスや授業を受けている連中も大勢集まってきた!」
「じゃー、こっちにアンケート用紙があるから一人一枚ずつ取ってねー」
「あー、食味試験も兼ねてるからそれを名目に鰻料理を食おうって他の授業や休み時間中の連中が集まって来たなー」
さらには授業には参加していない面々も教官や訓練生問わず集まりだし、食味試験や栄養評価などは広範囲に進んでいった。
「ドイサック大鰻は大きい分に肉は一般種よりもやや硬いが、味は近いからもう少し薄味にした方が戦場食に向きそうだな」
「ここで研究用に栽培されている胡椒の味が濃いのもありそうだけど…?」
「…地上ではこういうのはたくさん生きてるんだ。凄いなー」
「いやー、これは品種改良されてるおかげもあるからさー。味は個々によって違いもあるからー…?」
その中に混じって調理や食味試験にも加わっているドゥリュースだが、そこで彼はその様子を見ながらもその輪には加わってはいない、帽子を深くかぶって目元を隠している短い金髪をした少年と思わしい客人に気付いた。
「ん? あの子は誰ですか先生?」
「ああ、あの子は造兵科教官達のお客さんみたいだよ。何か中立国のお偉いさんの身内みたい」
「ふーん、なるほどなー(ん? 何かこの場面…アナザーな方の機動戦士で見たことがあるようなー)…!?」
どこかよくない意味での既視感をその客人にドゥリュースが覚えた直後、彼らのいる湖沼の水面の一角が大きく盛り上がった。
「ぬおおお!? 何だこの水面の盛り上がりは!?」
『すみませーん、食味試験などの途中で申し訳ありませんけどこれって昨日の輸送中に紛失したっていう新型高密度粒子砲実験機の部品ではありませんかー?』
人々を騒めかせたその水面の盛り上がりの正体は、
「ぬおおお!? 何か修技館七不思議にあるここ人工湖沼地帯の謎の珍獣かと思ったから心臓が止まりそうだったじゃねぇか!?」
『あ、ごめんなさい。見立てよりも繊細な人が多かったようですね。次からは事前に放送しますねー。じゃあ、これを技術科の先生方にお届けー…っとその前にこれを洗わないと…』
レイカが操るスローネは周囲からの抗議を適当にあしらいつつ、一旦は自分の班の所に戻るとその大きな部品を友人達に洗ってもらう。
「うわ! 泥に混じって結構な数の鰻が出てきたわ!」
『何か中で蠢いてたから多分ッて思ってたけど正解だったねー』
「レイカグッジョブ!」
「へっへー! 今回の野営技能実習試験一位はこっちで貰いだなー!」
「あ! テメーらずりーぞ! そんなのを持ち込むなんて!」
「戦場じゃーそんなこと言ってられんでしょーに!」
さり気なく得点を稼ぐレイカ一行とそれに文句などを言い出す他の班であったが、その様子を先ほどドゥリュースに怪訝と思われていた客人が感嘆と警戒を滲ませた表情を浮かべていた。
(…あれがZAFTで投入されたザクに次ぐ実戦配備MS…この帝国で言う
その客人は地上人だが肌の艶などからしてもドゥリュースとほぼ同じ齢に見えるが、その思考の内容とそれから伺える伝手の広さは只の客人のものではなかった。
『…一週間日前にプラントのアプリリウス・セブン第2惑星クリュセの海水地帯で広範囲に行われた消毒事業ですが、消毒事業の結果として生息していた生物の少なくとも70パーセントが死滅したことがわかりました。他にも問題視されていた寄生虫も従来の消毒加工技術で十分対応可能な種であることも確認されています。どうやら今回の消毒事業を執り行っていた惑星改造系技術者にブルーコスモス過激派メンバーもいたようで、背後には食糧生産能力向上計画を発表したプラント側に反発する各種団体が関わっている可能性がある模様です。漁業試験場及びその周辺の住民達による理事国への抗議が鰻登りで増加を見せ…』
(……こんな情勢でどちらも内輪もめばかり…)
客人はその傍らで起動させている空中に投影された映像を通してみたそのニュースの内容を受け、齢相応の呆れとそれ以上の憂いで暗い表情を垣間見せた。
次回、また年月を大きく飛ばす形で、SEED世界では本編では出ませんでしたが設定で重要な会議に入ります。