〇帝国歴951年1月25日夕刻
ドゥリュース達が色々な意味で鰻登りに触れてからおおよそ1年後、帝国の領域に属しているそこは同国以外の宇宙船がその姿を多く見せ、そこからさまざまな人員が出入りして高い緊張状態にあった。
『…先月より理事国による治安維持活動の不十分さ及びそれを原因とするプラントからの物資輸出削減で、悪化を辿る理事国の物資状況及び双方の対立緩和のために会議が開かれることとなったここ地球ですが、
その理由を地球の一角にある星界軍の警備が付いた軍施設の一室で、公務中のドゥリュースは報道番組を介して聞いて重い表情を浮かべていた。
「…何というか、ここ1年の間で情勢は悪くなっている気がする…」
「いや、悪くなっている気がするのではなく、実際に悪くなっていっているんだ…」
近年の情勢悪化の理由の一つを再認識しているドゥリュースの隣では、彼と同じアブリアルの耳をして青黒い長髪をしてアメジストを思わせる紫色の瞳によって、同じアーヴの中から見ても彫像が命を持ったかのような美貌をした少女がいた。
「ラムレルーシュの口からそれを聞くと現実味がさらに強くなるからはっきり言ってもらうのは勘弁してほしいけど…」
ドゥリュースが暗くひきつった笑みを向けているその少女の名は、アブリアル・ネイ=ラムサール・
今現在の
体力はアブリアルの中では平均的だが学問は非常に強く、特に水系魔術中心の魔道学と政治学や経済学に軍略では陰ながら現役の提督達や並の学者顔負けの見識を身に付けていて、今も成長中の身である。
「…それでさ、
「私に聞かれてもそんなのわかるわけないだ…とは言いたいけど、今のところは
そのラムレルーシュの見識からしても今の銀河の国際情勢は非常に危うく見えているらしい。
(…中華連邦やEUにブリタニアが地球を三分している時代でゼロなる怪人テロリストをやる羽目になって…、その間にナナリーまで一人にしていた間に怪物みたいなナイトメアに乗って暴れるようになって…その後に世界を二分する大戦の果てに父や母をどうにか倒してその妄執から解放して日本的に言えば成仏させ、どうにかユフィとナナリーを代表とする合衆国ブリタニアを中心として超合集体結成後まで見届けた後に、何とか人しれない秘境で人生を終えたと思ったら…今度は銀河規模に問題も死亡フラグもスケールアップした状態で転生とは…私、記憶に残ってないもっと前の人生とかでなにをやってたんだろう…?)
ドゥリュースに色々説明している間、ラムレルーシュは自身の身に起きているその輪廻転生を思わせる不可思議な現象でも色々憂鬱さを深めていたが、まだ彼女は知らないがドゥリュースもある意味でその同類なのでそれが不思議な親近感からくる今の友人関係に役立っていることに、彼と同様にまだ気づけてはいなかった。
「二人とも、準備は出来ましたかー ?」
「服装のチェックに入りますのでそろそろ御出になられてもよろしいですか?」
そんな二人に部屋の外から両王家に仕える
「あ、トルパさん、もう着替えもこっちで終わっていますよ…ぬおお!?」
ドゥリュースが部屋のドアを開けると、そこからエルフなのか整った面貌の地上人種族で厳しめな表情をした人物を筆頭に、似たような表情をした
「あーもー姫様! また料理をしてる時に出る焦げが衣服についてます! またこっそりしてましたね!」
「ドゥリュース様なんか近くで見ればあちこちに適当な感じが丸見えです! どうしてもって言うからお一人でお着替えを任せたのが間違いでした!」
「国内外要人の子弟の方々も来られるのですからそのままで出ると向こうに失礼掛けて他の
「ご、ごめん! 色々考え事をしてて…あー!?」
「い、言うとおりにするから自分でもう一度させて…ら、らめー!?」
そのまま二人は雪崩れ込んできた
〇
そこは地球時代の和風な意匠を強く残す高楼が無数に連なって巨城のごとくなっており、内部は水路も張り巡らされていて畏怖すら覚えさせる幻想的な光景を成している建造物であった。
「…EU友好青年団ご到着されましたー。続きましては大星洋連邦青少年親愛会の方々ー、他には日本皇国青蕾会もー…」
その建物に各国からの要人子弟が各々の国による護衛や引率と共に帝国側からの案内に導かれて集ってきており、その中で最も注目を集めている一団がいた。
「…おい、見ろよ…アーヴもだ…」
「しかも、今回のは今の帝国の皇太子の娘に…あの“暴魔女”の息子だと…」
此度、この旅館にて各国要人の子弟の交流に基づく懇親会という名目で開かれるパーティーに参加する若人の中に混じる、ドゥリュースとラムレルーシュの若い
銀河に広がる諸人類社会の要人子弟は程度の差はあっても概ね大半が人を見る目は同年代一般家庭の児童より冴えてはいるが、それ故に彼らの目から見てもアーヴ達の存在感、特に先頭を任されている
必要以上の華美さはないが質の低さは全く感じさせないつなぎと長衣は人工宝石の幾つかで彩られているが、それらが着用者を華々しくさせているというよりかは、主が生来身に宿している静寂としていて濃密な威風にあやかってその一部になろうとしている様にすら見受けられる。
「…う、うわぁ…“ゲットー”に収容されている
「間近で見ると全然違う」
「ふん、どうせ遺伝子を弄りまくるなんてズルしまくってのもんだろ」
「し、そういうことは…今は言っちゃ駄目よハワード…」
その姿を見て他国からは感動や嫌悪など様々な感情が向かれるが、それに混じる大星洋連邦のコロニー事業で大手であるハワード財閥の息子は、何処かの時間軸における某惑星で遭難してしまった同位体のようなトラブルメーカー気質をこの世界でも持っていそうであった。
「…………」
一方、その金髪の少年と同じ国籍に属しつつも要人子弟枠ではなく、優秀な学生の代表という形で此度のパーティーに参加させられていた一人である、オレンジ色のショートヘアーが特徴的なその少女は、偏見に由来するものではなく心配げな表情を浮かべていた。
「ん? どうしたんねんルナ? そな顔をしてー?」
「…いや、あの…アーヴの王子って子…何か、見た感じは…凛として綺麗に振舞ってるけど…何か、目が何処か大事なのが埋まってなくて…寂しい感じに見えたような…チャコ…」
「…そんな今は初めて見る他所の王子様よりもーダチとの約束の場所に行くでー。レイラもこんなこういう場は得意じゃあらへんからなー」
「あ、そうだねー」
その少女はしばらくそのアーヴ達を見入りそうになったが、自身の手に抱えるピンク色のペットロボットに注意されると友人との用事を思い出し、その場を離れた。
(…あー、今週はウルスで開かれる帝国青少年発明品展覧会に友達と一緒に参加するはずだったのに…、一番地球と地上に慣れているからって理由でこんな陽キャイベントに参加させられるなんて…、たとえ星界軍施設に帰っても…修技館での宿題や粒子炉系技術研究の仕事が待っているし…。何か二人くらい普通じゃない感じですごく見てくる子がいたし…何か嫌な予感がしてくる…)
一方、そのオレンジ色ショートヘアーの少女に心配混じりで注目されていたアーヴであるドゥリュースは、少女の心配とは裏腹に今この場とは全く違うことで暗い気分になっていた。
最後に出ていた子たち、果たしてどこの無人惑星の子供達(の同位体)なのでしょうか…?(棒)
次回も、作者の好きな作品から新キャラ(のこの世界での同位体)が登場する予定です。