星界の輪廻   作:oosima

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今回、あの原作では顔芸盟主という愛称を付けられていた(?)あの人の、原作とは違う場面と反対の原作らしさ感じさせる場面が中心になります。


004 貢献と疑惑は時として連鎖し合う

 ○帝国暦943年1月2日昼 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) 某宙域 技術特区 地球 コペルニクス区 コペルニクス工科大学 某研究室○

 

「…よーし、それではこの“地殻エネルギー電力変換魔術複合機”の数値も良さそうだな…」

「そうですねー、発電効率も前回の40パーセントから60パーセントまで上がっていて且つ、魔術師による使用魔力量の必要量も15パーセント減らせていますから」

 

 ヤマト宅での混沌としたやり取りから数時間後、その地にある大学のごく限られた人員しか入れないその一室で、リュース(ドゥリュース)達は頭にヘッドギアのような装置を付けた状態で各々の座椅子型調整機に座っていた。

 

「あーそれと複合機の状態のチェックもだけど各々の脳波との相性の計測も欠かさないように子供達、大人の方は私とムウを含めて十名くらいの人体実験で受けて観察したらまだ問題はなかったが子供の方はまだ不明瞭な部分も多いからね」

「先生、その言い方は色々と問題が多いです…」

 

 それを見守っている学者達の中心にいるジブリ―ルの馬鹿正直な注意に、同じく実験に被験者として参加しているアスランがジト目になる。

 

「あ、ちょっと君の所の断層部分でのエネルギー変換効率術式に2.7パーセントずれが…」

「…え? あ! 本当だ…うぅ…」

 

 その隣で同じく作業中であるジョセフィーヌに作業中のミスを指摘されてアスランはやや悔しそうな表情を浮かべた。

 今現在、この場に被験者も兼ねて参加している子供4名は、各々の眼前に映し出されたキーボード型空中映像を通して各々のプログラミング調整作業をしていた。

 彼らの作業スピードはまだ10にもならない子供でありながらその分野における大人たちのプロフェッショナルに迫るスピードを見せていたが、その中で抜きんでている速さと精密さを見せているものが二名いた。

 

「お、おい見ろよ…あの二人…」

「すげえな…あの子達だけでここの調整対象の四割は終わってるぜ…」

「片方はアーヴなのを考えても早いが…」

「それとほぼ同じ速さと正確さでもう一人のが…」

 

 それに驚嘆している周囲の視線を集めているのが、目前に数値や文字の他にも形や模型図をした空中映像を実際に所持させてそれらを高速に組み替えていっているリュース(ドゥリュース)と、キーボード型ホログラムでそれらにほぼ比肩する作業を高速で進めていっているキラだった。

 

「…凄いわねぇあの二人、プログラミングやハッキングならもうどこぞの企業が引き抜きに来そうな腕前じゃない…」

「いや、それを目で追えてるジョセフィーヌも凄いけ…あ、もうこんな時間…」

「む、そうだな…先生―」

「そうだなー、皆ー作業は一旦止めて昼食にしよう」

 

 周囲は二人の作業に息を飲んでいたが、それに加わりつつも現実に戻ったジブリ―ルの号令で一先ず作業は停止となった。

 

「…いやー、カリダさんが調理してくれるレノア産キャベツ使用のロールキャベツ美味しー。あの母の工房で取れたあの憎たらしくもキレの聞いた胡椒も上手く組み込んでるし…」

「相変わらず母親に対して凄い言い方だね君…」

 

 数分後、大学の庭にある展望台にてリュース(ドゥリュース)達は昼飯を取っていた。

 

「…何というか、こうしてみると-…何度も思ったけど…人類の進化図を見ている気分…」

 

 その中に混じるキラは自分と周囲の友達を見て少し奇妙そうな顔を浮かべた。

 時計回りにナチュラルだが既に各分野でそこらの上位コーディネイターも話にならんスペックを芽吹かせているジョセフィーヌ、ナチュラルの両親から生まれた一世代目コーディネイターであるキラ、二世代目であるアスラン、最後に通常の人間ではありえない分野にまで遺伝子調整したアーヴであるリュース(ドゥリュース)と、ある意味で人類進化の系譜の縮図と言えなくもなかった。

 

「おいキラ、その誤解はいい加減治せ。僕たちは進化してるんじゃなくて環境へ適応しただけだ」

「いや、こっちからすれば実験中のプログラミング作業でも大きく役立ってるその“空識覚器官(フローシュ)”なんて脳味噌に新たな領域を作るなんて真似は普通に環境適応なんてレベルじゃないから」

 

 それをリュース(ドゥリュース)は星界原作で出たような感じに否定するが、ジョセフィーヌが非常に微妙そうな笑みで彼の額に浮かんでいる小さな白い宝石に見える、アーヴ特有の感覚である空識覚器官(フローシュ)を指さした。

 星界原作でもアーヴはこの器官とそれに被せる頭環(アルファ)によって周囲360度を刺客にも頼らずに把握できる。

 そして、この世界のアーヴは魔術師的要素も持ち合わせているのでこの空識覚器官(フローシュ)さえあれば周囲の状況を体調など込みで正確に把握及び感知でき、そして頭環(アルファ)を付ければ更にその能力は強化されるのだ。

 更に、昼間にリュース(ドゥリュース)が見せたようにアーヴはこの空識覚器官(フローシュ)を用いて前世記憶にある攻殻機動隊的な電脳空間に素の状態で入り、他の人類や種族には出来ない超高度なプログラミングやハッキング技術を発揮出来た。

 その為、この世界でアーヴはこちらの魔術も上手く組み合わせて攻殻機動隊的な電脳空間を誕生させており、その分野での技術では他国の追随を許さないレベルを誇り、電脳関連産業では全銀河シェアの七割以上の規模を占めていた。

 

「…解せん。今どきは後天的に身をサイボーグ化したり…コーディネイトで髪や瞳で自然にはあり得ない色を具現化させるなんてザラだというのに―――」

『いや、そういうのが普通じゃない人も大勢いるのが世情と言うものだよ』

「―――いってぬおおお!?」

 

 そうして周囲の知人から浴びせられる久々に彼らが奇異なものを見る眼差しに、リュース(ドゥリュース)は理不尽な思いを募らせるが、それを後押しするように彼の電脳空間内での私室にジブリ―ルが姿を現した。

 

「え? あれアスラン? 何かリュース(ドゥリュース)が他所の方向を見て仰け反ったけど?」

「多分、先生が電脳空間の方で話しかけて来たんだろう。あまり邪魔しないでおこう」

 

 それに周囲は奇妙がるか納得を見せる中、リュース(ドゥリュース)は自身の電脳空間内でジブリ―ルとの密談を始めた。

 

『どうしたんです先生? 先ほどの調整実験で何か不備でも見つけたのですか?』

『いや、問題にまですべき不備など無いよ。特に君が担当していた分野はね…』

『それは良かったですね』

『ここまで行くとむしろ何処か別の場所で完成されていて、それをこちらに移しただけのようにも思えるな…』

『………』

 

 電脳空間内の私室で二人はのめり込んでいくが、ジブリ―ルの言葉遣いにリュース(ドゥリュース)はその表情から子供らしい色が薄れていき、重く冷たい色が徐々にだが強まり始める。

 

『…考えすぎじゃないですか? 僕は他所で言うなら小学校にまだ通ってる児童ですよー?』

『まーメンタル的な年齢は肉体にいくらか引っ張られてる感は否めんが、それでも全てが見た目通りというには思えないがね。まー、君から最も恩恵を受けているこの身ではあまり偉そうなことは言えんが…』

『そりゃーまーブルーコスモスみたいなのが出ている以上はそれを抑えられそうな人に協力を求めるのは自然でしょ』

『私も生まれの都合から一応ブルーコスモスなんだがね?』

『人間、本音と建て前は別でしょ』

『まあ、外から抑えるだけでなく内から変えるというのもありだと私は思うからね。本当に君のアイディアは素晴らしいものがある。魔術複合式機械による地殻エネルギーや太陽エネルギーの魔力への変換装置、魔術による気候制御や土壌改良に生態系保全…BETAによって徐々にだが滅びの道を加速させている今の銀河の生命にとっては福音というべきものだ』

『いや~それほどでも~♪』

『その発想力と技術力を防衛装備分野にも投じれば、君の同胞も含めたどれだけの命が助かるかな?』

 

 その密談ではリュース(ドゥリュース)は齢相応に調子づいた子供らしい反応を見せたりして誤魔化そうとするが、ジブリ―ルが普段の落ち着きのない態度など一切見せない怜悧な表情で問い詰め続けるとそれは薄らいでいく。

 

『…教師として正直に言ってもらえませんか? 僕に何を求めてですか?』

『…君が兵器系の技術開発を遅らせてまで…今の時で犠牲になっている人々よりも…私にこの先で何を望むのかね?』

『…………』

 

 ジブリ―ルのその問いを添えた凪に満ちた湖面の奥底まで見通せる怜悧な瞳に、リュース(ドゥリュース)は今の身の齢による引っ張りもあって黙って見返すほかなかった。

 

『…まあ、子供一人の頭から出てくるアイディアで救われるような銀河に果たして救うべき価値があるかといえばどうかという問題もあるがね。私も残っている業務とかがあるから今日はこの辺にするよ…』

 

 だが、その緊張はジブリ―ルの達観と諦観が混ざったその言葉で一方的に切られ、彼の身はリュース(ドゥリュース)の電脳内空間から静かに消えた。

 

『…悪い意味で原作と同じじゃなかったと知った時は安心したけど、それ以上に…あのベガパンクみたいな科学の才能と、時折見せる隠しごとがめっちゃ出来なさそうな瞳には馴れられそうにないなー…。味方じゃなくなったら原作のよりもある意味でめっちゃ大変かも…』

 

 一人で電脳空間内の自室に残されたリュース(ドゥリュース)は子供らしくない険しい表情を見せた。

 

「…フグぐぐぐぐぐ! 本日も強く噛み応えのあるなこの試験用の遺伝子組み換え大豆主原料のステーキは! 実家のは柔らかすぎて且つ他の味が少なさすぎるせいでまるで形をした肉汁を飲んでるような感じがして食べ応えが無い!!」

(…うーん、良い所の生まれ育ち故のマジボケだな…)

 

 一方、リュース(ドゥリュース)の視界から消えたジブリ―ルは、現実空間における大学の大広間にて開かれている食味試験にて昨今の情勢で増えている大豆使用人造肉のそれに参加していたが、好敵手に出会えた笑みで固すぎるステーキ肉を食いちぎろうと悪戦苦闘しており、周囲にその様子を苦笑で秘かに見守られていた。




書き進めて思ったのですけど、ジブリ―ル氏は(一応)黒幕キャラ以外にもネタ要素でも意外と便利なキャラだと気付きました。
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