星界の輪廻   作:oosima

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今回の話も色々と他所の作品のキャラ(の同位体)が登場します。


040 大いなる出会いは突然なもの

 〇帝国歴951年1月25日夜 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) 某宙域 技術特区 地球 コペルニクス区 アーヴ風高級旅館“霞外籠(かげろう)” 水上大広間〇

 

「「………………」」

 

 レイカとジョセフィーヌの間の思念にて波乱と思わしき芽が生じ、バックヤードでラマ―ジュが()()()()()()()()を手にしながら去っていく姿である者達を恐れさせていた頃、各国要人子弟達が集うパーティー会場ではドゥリュースと七草真由美が無言で立ち会っていた。

 

(…この私より2歳しか低くない子が…この銀河の半分を名実ともに統べるあの一族の一人にして…あの“暴魔女”の息子…)

 

 魔道が科学的要素も加えて発展したといっても世界規模が地球規模に留まっていた別の時間軸の同位体と違い、世界の規模が広くなったが故の変化を良からぬ意味で味わわされた真由美は慎重になっていた。

 

「(…やばい、子供の頃から慣れ親しんでる司波さん達と違ってまったくの初対面だから何を話題にすればいいのかわからない…何か、何かー話の話題にできそうなものは…あ、そういえばもうそろそろ…)…ああ、もうそろそろ劇の方の時間に…」

 

 一方、ドゥリュースの方はそれ以上に何を話の切込みにすべきか迷っていたところ、ちょうどもうそろそろ知っている人物が関わるイベントの時間なのを思い出し、そちらへ話を振ることにした。

 

「…あれ? 急に会場が暗く…?」

「あ、あそこの舞台上がスポットライトに照らし出されて…」

「ああ、もうそろそろ劇が始まる時間帯ね」

「確か今回の劇を演じるのはあの“幻影の座”…」

「ああ、たしかあの団員の俳優ほぼ全員がB++ランクの魔術師以上という…」

「今回行われる劇の内容は確か…」

 

 そこでちょうどよくパーティー会場が次のイベントの時間へと入った。

 

「…星々の大海の未来を担われる若きお客様の方々、ごきげんようございます。この度は…」

(…うん、こっちは既に色々な経緯を経て知っている身です。だけど、今回この劇で気になる子はー知り合いのあなた方ではなくてー…あ、アスランが言っていた通りいた)

 

 そして、スポットライトの中心で蜘蛛を思わせる意匠の入った燕尾服とシルクハットで決めている若く見える青年の劇団団長が挨拶を述べる中、ドゥリュースは彼らにも気を向けつつももっと付き合いの長い友人に教えられたある少年の姿を見つけた。

 

「…あ、あのピアノの前に立つ少年…!」

「緑色のふんわりした髪が可愛いー…女の子みたいー」

「あ、あの子がピアノを弾くのかなー?」

「いや、弾くとしても一部だけだろー。あの世界劇団ランキングに載ってから上位五位以内から外れたことのない劇団“幻影の座”だぞ…!?」

 

 だが、世界的に有名な劇団とそれに混じるその少年の姿に子弟達は興味と驚きを強めていくが、それは彼らの中で急に生じてきた冷たく陰鬱として重いオーラによって遮られてしまう。

 

「…へーー、今回の劇の内容は“ロミオ×ジュリエット”なんだー。オーソドックス且つよく知られている内容だけあって劇団員の方々の創意工夫や演技が映えてくるからー…どんな風になるのか楽しみですねー…」

 

 その黒いオーラの源は、何故か乾いた笑みを浮かべつつも瞳は深い闇を宿しているレイカであった。

 

『…え? ウヴォー…何かあの子…尋常じゃない黒いオーラを纏ってない…!?』

『触れるなサラサ…だが、たしかにありゃータダの良い所のお嬢さんが出せるオーラじゃね―――』

『落ち着け皆、あーいうベリーネガティブになっている子も含めたお客さんを劇で笑いや感動でホットに引き上げるのが俺達の仕事だ』

『―――えって…おお! たしかにな!』

 

 それに幻影の座劇団員達は表情でこそ出さないもの内心では念話や電脳通信を介して仲間内に動揺をあらわにするが、団長であるその髪を下ろした実年齢よりも若く見える青年の言葉で本分に引き戻る。

 

「…え、何かあのレイカって子…ものすごく負の思念が混じった魔力というかオーラを出してない…?」

「…あ、あー…僕も話しでしか聞いたことないけど…小さかった頃の演劇での配役で生じたトラウマが蘇ったとか…」

「…え、トラウマって…?」

「あー、たしかー…子供の頃の集団塾で…」

 

 一方、先ほどにてレイカに恐れを抱かせていたジョセフィーヌは今度は逆に彼女に慄きだし、そこでドゥリュースに小声で説明される。

 

「…えーーっと、それではー此度に我がクラスでやる劇“ロミオ×ジュリエット”の配役を決めるとしますがー、皆さんの中でやりたい役はあの子はあの役が良いって感じの意見はありますかー?」

 

 ドゥリュースの説明で取り上げられたその数年前、件の現場は地球時代で言う幼稚園や小学校低学年時代の子供達を対象にしたアーヴの多角的教育塾での一場面で、その中に当時のレイカの姿があった。

 

「あ、じゃ、じゃあ先生…今度は私…赤い風の時だけでいいからジュリエ―――」

「はい! せんせー! それだったらボスの一人で空中浮遊大陸ネオ・ヴェローナを独裁支配する悪役領主モンタギューの役は、レイカちゃんが良いと思いますー!」

「―――え…?」

 

 そこで開かれた子供達による劇の配役を決める時間で、レイカはオズオズとした様子でヒロインの役に名乗り出ようとするも、隣にいた子が悪意のない様子で彼女を別の役に推薦して彼女を戸惑わせてしまう。

 

「あ! そうだねースポール本家ってだけあってレイカちゃんって悪役凄くうまいもん!」

「この前の桃太郎の鬼の頭領の娘さんの役がうまかったしー!」

「レイカさんお願い!」

「え? え? ええーーーー…?」

 

 そして、周囲の子供達から上がる好評な賛同にレイカは押し切られてしまう。

 

「…この愚民共め! 税を納められぬなら一族郎党火あぶりじゃー!」

 

 話し合いの後、劇の練習にて悪役のボスの一人の演者となったレイカはキレッキレにそれを演じていた。

 

「いやー! 死にたくないよー!」

「うわ! 処刑される役になった小さな子が泣いちゃってるよ!」

「レ、レイカさん凄い迫力…」

 

 それに他の子供達は息を飲んでしまっていっている。

 

「独裁者め! この剣で成敗してくれる―――」

「甘いわー!」

「―――うってきゃああ!?」

「今度は赤い風に扮しているジュリエット役のマナちゃんが飛び蹴りで吹っ飛んだー!」

「凄い! サンヘリオス拳法もしっかり演技に組み込んでる!」

「すごいよレイカさん! 本番もこれでよろしくー!」

「え…えええええーーーーー…」

 

 そして、レイカの上手すぎる悪役としての演技に周囲の子達も盛り上がり、レイカは生来の根っこにあるスポールらしくない人の良さからその流れに抗うことは出来なくなっていった。

 

「…なるほどねー、才能があることと内心やりたくないことが周囲の期待で一致するときがあるという具体例ね…」

 

 説明が数十分かけて終わって現在に戻ると、聞かされていたジョセフィーヌはそれに少なからず共感を覚えた様子になっていた。

 

「…でもさー、その話で一番面倒なのがーあのレイカさんのお母さんがそれを聞いて何だかんだでスポールらしくなってるって喜んでいたってことかしらねー…!?」

 

 だが、ジョセフィーヌがその共感を覚えてそのレイカに振り向こうとすると、そこにはさびた鉄のように暗く澱んだ赤い瞳を浮かべた彼女のドアップ顔があった。

 

「お二人ともー、ちょっと今のお話…どれくらい話したのか聞かせてもらってもいいかしら?」

「…あ、あーーーーはい…もちろん…!?」

 

 黒いオーラとそのプレッシャーを増したレイカの言葉にドゥリュースが抗えなくなったところ、二人の合間を青い薔薇の花弁が舞いながら迷い込んできた。

 

「…え? 何だこれ…? 誰から…!?」

 

 それが気にかかったドゥリュース達が花弁の降ってきた方角を見やると、パーティー会場と繋がる上階の展望席の方から青い薔薇の花束を手に持ち、それを舞台上へ投げ込む何者かの姿があった。

 

「…え、あ…!?」

 

 花束は劇の第一幕を終えて拝礼をした後に小休止へ入ろうとした幻影の座の団員たちに向けて放たれ、それはドゥリュース達が目を付けていた緑色の髪の少年の手に抱き留められた。

 

「…(誰なんだ…あの人は…)っ!」

「…え!? ちょっと!?」

 

 その行為に周囲が騒めく中、ドゥリュースは花束をこの場へ投じてきたその人物に強く妙味を惹かれ、周囲の制止が形となる前にその場を飛び蹴りたって魔術で浮いて進みながらその人物を追った。

 

「…確かさっきの気配は…何か追い付けそうになるたびに霞のように消えて探知可能な範囲のぎりぎりでまた現れるから…!?」

 

 数分後、その人の影を追ってドゥリュースは霞外籠の広大なベランダの一つに躍り出るが、そこで彼の頭上を鋭くも痛みを感じさせない優美な光が照らしてきた。

 

「…あれは…大気圏離着陸可能の宇宙船…!?」

 

 その光源の正体は鏡のように滑らかに輝く銀色に包まれた流線形の宇宙船が周囲の景色の光を反射したもので、ドゥリュースがそれに気を取られていると誰かの静かとして余裕を感じさせる足音が近づいてきた。

 

(っ!? この気配は…!?)

 

 ドゥリュースがそれに惹かれて背後に振り返ると、そこには一人の貴人が歩いてくる姿があった。

 漆黒のスーツとマントに長いシルクハットに包まれた状態で僅かに見える身は、人型の種族であることをわからせるが青みを帯びた肌が地球起源人間族ではないことを悟らせてくる。

 

「……………」

 

 そして、ドゥリュースと通りがかったその瞬間に、顔を上げたその人物はアブリアルとは異なる尖り方をした耳、右が赤くて左が緑という色違いの瞳で幻想さを感じさせながら、地球時代近代期の地球最大大陸西部の貴族を思わせる意匠と調和した壮年の男性だった。

 

「…!?」

 

 その男性に最接近で通りかかられて静かに微笑まれた瞬間、ドゥリュースは嗜好を刺激する異性との遭遇に近くも深層では異なる何かを覚え、通り過ぎられた後も思わず振り返ってしまう。

 

「…あ、ドゥリュースが…! 久しぶりだけど…あの人はいったい…」

「あー、あの人は伯爵だわ…」

「え、知っているの?」

「ああ、さっきあの幻影の座の臨時ピアニストに選ばれたニコル・アマルフィ少年に青い薔薇を贈ったあの人はモンテ・クリスト伯。今は中立諸国を中心に社交界の噂ではやり始めている人よ。何でも中立宙域の未確認領域で一山当てた成金とか、“新世界”ギリギリ寸前の銀河の辺境で悪魔的存在と契約した怪人とか…」

「…へー、良く知っているわねー…え、何かジョセ…目つきが…」

 

 ちなみに、そのモンテ・クリスト伯爵とドゥリュースの初の邂逅の場を、秘かに尾行してきたジョセフィーヌたちは盗み見ていたが、他の者達はその中心である彼女の眼差しがいつもと違う怜悧すぎる色を帯びているのに気づき、それが伯爵の未知なる存在感と共に気に掛かった。




今回、登場したあの伯爵は、Fateスマホゲームではなくて2004年度アニメ版(が基調の同位体)です。
果たして、この世界での彼の目的とは…!?
そこまで明かされるかどうかは連載が続くかどうかにかかっていますので、時間が出来た時でいいので感想やお気に入り登録に評価付与の方もよろしくお願いします。
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