星界の輪廻   作:oosima

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今回の話を書いていて、改めて種世界って二次創作物書きにとっては話の材料が豊富だと思いました(作中の世界の人々にとって良いか悪いかは別として…)。


044 不穏な重大会議の場でも日常はある

 〇帝国歴951年1月31日朝 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) 某宙域 技術特区 地球 コペルニクス区 星界軍附属病院〇

 

『…今回の地球におけるテロ事件を受けまして、大星洋連邦の現政権がテロ事件そのものは決して許されるものではないと公表しつつも、続けて今回の事件の原因は帝国による反オルムス主義が主因であるとの見解を発表しました。一方で同国の野党上院議員のボート・シテナイーゼンは大星洋連邦現大統領の外交能力に疑問をー…』

 

 件のテロ事件より6日後、ドゥリュースは帝国の病院にあるホールにて今回の事件についてのニュースを見ていた。

 表向きにはなってないが今度のテロにて発生した怪物化カナジョーを制圧したのは良かったが、その時にどのような病原菌やウィルスに呪力などの影響を受けているか知れたものではなかったので、他の戦闘参加者や巻き込まれていた者達と共に、治療および精密検査を受けていたのだ。

 幸いにも肉体だけでなく霊魂レベルまで調べられても異常は見当たらず、本日中には退院できる予定であった。

 

「…さーてと、残りまでの時間はどう潰そうかな―――」

「あ、ここにいたのか!」

「―――あ…その声は…」

 

 そうして出来た久方ぶりの自由時間をどう使おうかと考えていたドゥリュースの前に、ここ最近で聞き覚えの出来た声が鼓膜を震わせてきた。

 

「その声とその銀色のおかっぱからして…あの各国有力者子弟懇親会の場で食文化カルチャーショック起因の胃の中身リバースを引き起こした子」

「あぶべ!?」

 

 だが、ドゥリュースがその正体を口にすると、その声の主である少年はズッコケた。

 

「何だその憶え方は!? 俺はイザーク! イザーク・ジュールだ!」

「…? あ、あー…確かプラントの子か。その子がわざわざ直に会っても胃痛の原因にしか大抵ならないこんなアブリアルの子に何の用ですか?」

 

 あまりに微妙な理由で憶えられていたことを知ったその少年イザークは、転倒で痛めた鼻を撫でつつも声を荒げつつも立ち直った。

 

「…う、うわ…イザーク…あのアブリアルの子に…」

「いや、でもーあの男の子…あのお姫様に比べて…なんかイメージと違うよね…」

「あーうん、何か親しみやすいというか…」

「ちょっとイザーク駄目ですよ! お礼を言いに来たのにそんなクラスの同級生みたいな態度で皇族の方に接したら…?」

 

 その様子を病院の廊下の影より、他のプラント組の少年少女たちの多くが心配そうだったり、意外そうな顔を浮かべたりする中、一人の緑色のほんわかとした中性的な少年が止に入ろうとしたその時、彼の鼻先を小さな小鳥のような存在が通り過ぎた。

 

『スゥー』

「あ、お久しぶりー家臣(ゴスク)たちの所が暇になったのかな?」

「…え? あの小鳥型のロボット…アスランの友達の写真に写っていたのと同じ?」

 

 その存在たるスカイが戻って来た姿にドゥリュースが安堵して自身の指に止まらせたその姿に、イザークを注意しようとしていた緑髪の少年ニコル・アマルフィは既視感を覚えた。

 

 

 

 

 

 〇帝国歴951年2月14日正午 銀河連合 プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第二惑星クリュセ 某展望台〇

 

 病院の中でドゥリュースが微妙な出会いをしてから2週間後、世界の流れ目が変わる場は帝国の地球からプラント小銀河のある場所へ変わろうとしていたが、その星の軌道上を浮かぶ多くの船の中でとりわけ目立つ存在があった。

 この銀河系には十万年前まで、現在残るいかなる種族も追い付かない技術レベルを誇りつつも姿を消した謎の多き種族先駆者(フォアランナー)が残した遺物が、各所に残る。

 危険性や宗教的理由などが原因で、この世界の半分を占めていた人間たちによって長らく排斥されて来て表社会からは秘されてきたそれらだが、ある勢力がそれとは違って保護や研究の意向と行動を示し、それを潰そうとする勢力もまた片っ端に征服していくと共に明るみとなり、今では銀河中に認知されていた存在となっている。

 但し、技術的価値が明るみになって諸勢力が求めるようになっても、質量ともにその遺物の所有数やその成果は、保護と研究を露わにしたその勢力が圧倒的アドバンテージを得ていた。

 

「…すごい…あれが、アーヴが持つ…先駆者(フォアランナー)が残した星系間移動可能軌道都市ゼミーシュル…」

 

 その勢力たる帝国(フリューバル)が保持する先駆者(フォアランナー)が残した技術やそこから生み出したそれらの結晶の一つで、傘を折りたたんだような形状に見える巨大コロニーとしての機能を併せ持ったそのゼミ―シュルの軌道上に浮かぶ多くの船の中でも目立つ姿を、ニコル・アマルフィは地上にある展望台の一つから望遠鏡越しに憧憬や感動を宿した瞳で見上げていた。

 

「…うっわー、二週間くらい前まで地球にいたかと思ったら、超高速船で帰ることが出来た挙句にあんなものを見られるなんて…」

「全長は千キロくらいあるって話でしょー」

「今回は平面宇宙で生じた定期的時空粒子嵐による期間限定短期ゲートを利用してここまで早く来れたってな」

「へー、けれどあんだけ大きなものを時空泡分裂せずにここまで持ってこれるなんてー」

「十万年も前のものを調べ上げたり、それから解析したもんであんなどでかいものを作るのも凄いよねー」

「アスカティシア学院の皆に自慢できるねー」

「あの中でガルマのお父さんたちがアーヴの人達に仲介してもらって連合のお偉いさん達と話し合いをするんだよねー」

「最近は急に農場広げてもいいとかって前に出された緩和の影響でずっと学校で寮暮らしになってたもんなー」

 

 ニコルの周囲には彼と同じように、今回のプラント・理事国・帝国三者協議のための会場としてこの星の軌道上へ持ち込まれたゼミーシュルを興奮した様子で見上げている子供達が大勢いた。

 

「レノア先生、大丈夫かなー話し合いの方は…」

「ええ、大丈夫だから安心して畑くん。デギンさんやシーゲルさん達もいるんだから…」

 

 そうして集まってきた子供達の中に、この星の農業学校に通う生徒達を連れて見学に来たレノアの姿もあった。

 だが、子供達を安心させようとしているその言葉遣いとは裏腹に、レノアの表情には拭いきれない不安の色が滲み出ていた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第二惑星クリュセ軌道上 アーヴ帝国所属半宇宙船型機動都市ゼミーシュル〇

 

(…二週間くらい前まで地球の方で表向き懇親会とはいえ公務で地球まで行ったかと思えば、今度はプラントの方へ訪問か…。何で僕はこういうなんか明らかに穏便には終わりそうにない場所にばっか行かされるんだろう…? しかも同時に学生って理由で公務の書類仕事と同時に宿題やら技術系での仕事もやらされてるし…。しかもここユニウス・セブンでやるって…なんかよくわからないけどめっちゃ不吉な予感がするし)

 

 地上からレノア達が見上げているなど露ほども知らず、ドゥリュースはそのゼミーシュルの宇宙空間の展望が可能な公園の一角にある展望台でクリュセを眺めつつ、一段下のフロアで集まる同都市の関係者や国外の要人達の様子を見ていた。

 

「リューにー…ではなくて殿下、あんまりぼーっとし続けてるのは駄目ですよー。ここも含めて帝国情報省の工作員の人達とかが監視や護衛を何重にもかけてるからって…突然半端な腕利きとかに襲われたらどうするおつもりですかー?」

 

 そうして傍から見ると呆けているように見えるドゥリュースに小言を言うのは、家臣(ゴスク)の服に着替えたネーナであった。

 

「…はー、まったくもー左慈ったら心配性なんだからー。こっちはパパやママと一緒に元気で帝国の凄い船を見学させてもらっていますよーっと…」

 

 一方、展望台より下にある公園の下部フロアでは、ここゼミーシュルにプラント側関係者として父母が参加していたので、その伝手で乗り込めて今は一人で都市内を散策しているルイス・ハレヴィの姿があった。

 ルイスはここプラント小銀河で生まれ育った上流階級育ちの三世代目人間コーディネイターで、左慈とは日本皇国出身の人間ナチュラルの少年で、彼女が留学している日本皇国にある学校で出来た男友達の名であった。

 今現在、ルイスはその左慈から送られてきたメールを読んでいる最中であった。

 

「…近頃のそっちはテロがよく起きているという話を多く聞いて心配です…って、まーたこの話ねー。先々週に大星洋連邦が警備でへまをやらかしたけど…それを踏まえてこんだけ艦隊やら軍隊やらが集まってるところでそういうことやろうだなんて馬鹿はいないでしょーに…」

 

 ルイスが船内公園の一つの天窓を見やると、そこには帝国(フリューバル)、銀河連合、プラント三者の宇宙艦隊が何千と集まっており、それは彼女に言葉とは裏腹のまだ大きくがないが拭いきれない一抹の不安を滲ませた表情をしていた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第二惑星クリュセ軌道上 ザフト艦隊旗艦 ナスカ級高速戦闘艦一番艦ナスカ*1

 

「…しかし、いくら理事国の目が前線に向けられる割合が年々上昇していっているとはいえ、特に金にはうるさい大星洋連邦の目を誤魔化してコツコツここまでの艦隊をこしらえられたものだ…」

 

 ルイスが不安をぬぐいきれない表情で見上げていた頃、その光景に混じる艦船の一隻の艦橋にて、この世界における現プラント最高評議会議長デギン・ソド・ザビは感心と呆れが混じりあった表情を浮かべていた。

 

「仕方ありません。ここプラントに建設された施設の警備や保全まで制限と監視付きながら指示されていた以上はそのための戦力を揃えるのは避けられません。ですが、連中もその事を介入するための口実になるのを待っていたのが本音でしょうが…」

「そういうことは言わなくていい。先々週の会談、我々は船がまたテロで損傷したために出遅れた時は唇をかんだが、不幸中の幸いというかそれで理事国筆頭の大星洋連邦がこれ以上醜態はさらせんとして他の国からの軌道修正要請を受け入れたからな。今はかの国の大統領が就任したばかり且つ過去の経歴のおかげで国内からの反発も強いというのもあるが…」

 

 そのデギンの両隣をプラント側の防衛委員長であるパトリック・ザラと今現在は副議長をしているシーゲル・クラインが固めているが、前者が相手方に対する警戒を浮かべているのに対して後者はそれを窘めようとしていた。

 

「まーそういうきな臭い話は一旦そこまでにしてー、パトリックさんはせっかく奥さんの職場の近くまで来ているのだから久々に顔を見せて上げたらどうじゃい? それとマリルも護衛官は一旦休んで帝国の方の船に乗り込んできてるっていう妹さんと会話でもどうじゃ?」

「議長! もう少し真面目にしていただきたい!」

「防衛委員長、今からそんなに気を張ってばかりではいくらなんでも身が持ちませんよ。議長のこの素も今は場の和み以上に弛緩となりますけど」

 

 そんな周囲の堅い空気を気遣ってか、デギンは何処かの下町風コロニー人情的な時系列での同位体のようなのほほんとした親父に戻り、ザラに怒られるが、もう一人の小言を述べた方の護衛官のアーヴ女性マリルは眉を少し八の字にしつつもこわばりが和らいで懐からアクセサリーを取り出した。

 

(メアリは他の子達と共に変わりはないかな…? 時代は大きく変わりつつあるけど…)

 

 プラント小銀河開発のために求められて帝国から移住し、アスカティシアで教職を取っていた身から今では国際情勢激動を直視する場に立たされていることの不安に立ち向かう冷静さを、サンドリオ・ボルジュ=バイルカニュ・マリルは、ペンダントにはめ込まれているその今の自分をより若くした容姿をしている実妹メアリの写真を見て得ようとしていた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第二惑星クリュセ軌道上 アーヴ帝国所属移動可能機動都市ゼミーシュル 某船室〇

 

「いだだだだだだ! 蟻の膂力で関節技はストオオオオオオオオオオオップ!!」

「駄目だ、無断外出して周りに心配させた分はこの肉体的諫言は受けてもらうぞー。100、101ー…」

「…やっぱ無断で出てたんだ…ていうか水銀になって出れないの?」

「魔術干渉力はあっちが上だから逃げられないのぉおおおおおお!!」

 

 一方、今回も双方から仲介の要請を受けて出張ってきている帝国(フリューバル)のゼミーシュルの一室で、真顔のメアリにコブラツイストを掛けられてアブリアルでありながらドゥリュースが涙を流して苦悶を訴え、ネーナがジト目を浮かべていた。

 

「…まーた姿を消してたよ。嫌いだとか言ってて喧嘩を何度もしてもやっぱ母親の血だなあれはー…」

「いいじゃないですか。戦場と違って血を見ずにすむのはいいことでしょう。何度か将来に不安を覚える場面を見たりはしますけど…」

「おい、そういうのろけ話は後にして今は脱出用小型艇やカプセルの位置情報の再確認をしておけ」

 

 その様子を周囲の帝国側護衛官達の多くは生暖かい表情で見守っていたが、何名かは警戒心が緩められない表情をしていた。

 

「? どうしたんです?」

「…いや、何かー…あの通り過ぎている銀連側の船の何隻かから…昔…異夷(ゼビーシュ)の惑星本巣の奥まで来た時に感じたような気を…悪い意味で感じたような…」

「??」

 

 それは最前線の激戦を生き抜いてきた者達が持てる感覚的なものを起因とするものであったが、これから起きる惨劇を予想できたものはほとんどいなかった。

*1
ガンダムSEED世界における同名艦のこの世界における同位体。但し星界が基本の世界なのでこちらの全長は千メートル近くまでなっていて性能も相応に上がっている




今回は、これまで出てきたキャラ達の今の状況などが中心でしたが、次回より悪い意味でSEED時間軸では知らない方が超少ないあのイベントが本格的に進む予定です。
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