そこまで書ききれるかは、皆様の応援にかかっておりますので、時間が出来た時にでもお気に入り登録や感想に評価付与をよろしくお願いします。
〇
これは第二次星間大戦が、ゲルマニクスの首都オーディンにて“地上最後の核”と呼ばれる、地上世界での最後の核攻撃で終わった年を1年目としたものである。
その後、ゲルマニクスを中核とする同盟国を崩壊させた大星洋連邦と新ソ連を中心とする連合国は、新たな大戦の勃発阻止を名目として銀河連合を成立させる。
だが、その銀河連合は二次大戦途中から参戦して決定的な勝因となった
だが、そのおかげでオーブは現在でも二つの大きな戦火に左右されているこの銀河系で中立を維持でき、平和と繁栄を謳歌できていた。
「…………」
その一部であるヘリオポリス内部のあるマンションの入り口から、一人の肌の艶からして十代半ばと思わしいが大人びた美貌を持つ、特徴からして地上人らしいがその次元ではない、大人びた美しさと雰囲気を持つ少女が出てきた。
凛とした紫色の澄んだ瞳で、腰まで達した縮れ毛一本無い黒髪は毛先に近づくにつれて退色して桜色のように見え、少女にして高い背丈は露出の少ない洋服の上からでも理想的な曲線美を感じさせた。
「…ヘリオポリス工業カレッジ第11研究室へ」
そして、コロニーの居住区内を走る無人タクシーを捕まえると、鈴のような声を発して行き先を告げた。
「…お、あの子は…?」
「すごく綺麗な子だなぁ。コーディネイター? アーヴ?」
「いや、
「あー止めておけ、あんな綺麗ななりをしてるけど…あの子は…」
十数分後、工業カレッジにたどり着いた少女はその美貌と雰囲気からおおむね好意的な周囲の目を集め始めるが、それは彼女の名を聞かされると変わり始める。
『認識番号を指紋及び霊波反応より確認しました。当研究所所属職員№234、
「…ええ、間違いありません」
研究所のドアに付けられた個人認識システムの声に、何処か憂いを滲ませた様子で答えたその少女日光に向けられていた人々の意識は、相当な割合で反転し始める。
「…ビサリュシュ…? たしか10年くらい前…孤立状態で開発されて他の星系と交流がなかった状態で、BETAに侵略されたけどその直後にアーヴが侵攻してきてそれを殲滅された後に、今度はアーヴに侵略されて併合されたって…?」
「ああ、たしか…同時期にハイドって別の星系が帝国に孤立していた所を発見されて併合されたけど、その二つともが…」
「たしかー、どっちもお偉いさんが故郷の星を帝国に売って爵位を買ったって話だったよなー。それでどっちも子供がいて…」
「じゃー、あの子がその片方…
その名を聞いた周りの反応や声は美貌に対する好意から、その経歴に対する奇異なものを見る目や蔑みに変わっていくが、少女日光はそれに怒気は生じさせず、諦観が強い表情をしていた。
「あー! 来た来たー! 日光ちゃんこっちこっちー!」
「ちょっとそんな大きな声を上げなくても…」
そんな彼女の名をヘリオポリス工業カレッジで先輩研究員として働くセレーナが遠慮なく闊達且つ明るい声で口にし、呼ばれた日光は少し恥ずかしそうな顔を浮かべつつも陰鬱な気は大幅に薄れた表情で、足を速めて彼女の元に向かった。
日光は、元々は日系移民が暮らしていた孤立的な星系の長の娘として生まれたが、国際情勢変化や紆余曲折を経て
「お久しぶりですが日光さんごめんなさい。昨日さっそく
『さー日光-
「…あ、どうも…毎回収入のいいバイトをご紹介くださりありがとうございます…」
その到着したばかりの日光に、ほぼ同時に到着した王留美が綺麗な銀色の古代鉄板型ハードディスクを満載したコンテナに乗り、上からネーナが動かしているのが機械音声でわかるアストレイでそれごと下ろされて来て仕事を吹っかけてきて、彼女に慣れた感じのする乾いた笑みを浮かべさせた。
何故か日光は、生まれも育ちも地上人なのに本来ならアーヴ、中にはその中でもごく一部にしか扱えないものも含めた技術を生まれつき扱えるという特性があった。
そのため、日光はナチュラルの人間女性に似つかわしくない魔術も含めた高い素養も相まって、帝国に貴族として認められてからそう時が経たない内に研究機関へ預かりの身となってそこで体質を調べられながら学術を学んでいき、今はここヘリオポリスで帝国とオーブ共同での
「まーさー、他にも僕も
「まーねー、今現在ここでオーブと帝国で共同研究している、
「そうねぇ、10万年前の地層から掘り出されたものだから考古学的価値以外に何があるのって思ったけど、見てみたらすごいものだったわね…あの“Gフレーム”って…」
『スゥー』
その日光も加わっている、この研究所で進められている大きな極秘研究に付いてリュール一行は地味に盛り上がりそうになるが、そこでリュールの肩からスーが羽を羽搏かせて何処かへ飛んで行った。
「あ、スーちゃんが…」
「大丈夫、暇つぶしが終わったらまた戻ってくるよ。遅くなったら僕が連れ戻すから」
それを日光は名残惜しそうな反応を見せるが、リュールは大丈夫だと彼女を安心させた。
「…………」
同じ頃、ヘリオポリス工業カレッジの別の中庭にて、一人の少女がノートパソコン型端末に自らの電脳を繋げて、仮想空間領域で並のアーヴ顔負けの速度と正確さでプログラミング作業をしていた。
「おーキラ、ここにいたのかー。カトー教授が探していたぜー。見つけたら研究室へ引っ張ってこいってさ」
その少女、キラ・ヤマトを同じカレッジの学生である少年トール・ケーニヒが呼びかけてきた。
「また~!? 昨日のだってまだ終わってないよ~!」
「仕方ないじゃん。当カレッジ同学年主席の優秀生徒なんだからさ…」
『トリィ』
『スゥー』
キラが嫌そうな顔を上げたその直後、その理由を伝えに来たトールの真横を取り越して、彼女の小鳥型ペットロボットであるトリィが何処からかスーを引き連れて戻ってきた。
「あ、キラのトリィが戻ってきた…え? 何か…もう一羽いる?」
「…え、これって…」
その光景にトールと共に来たそのガールフレンドであるミリアリア・ハウが少し驚いた顔を浮かべるが、キラは自身の指先に止まったトリィが連れてきたそのスーの姿に目を見開かせ、その脳裏に過去の一部が浮かび上がる。
『…その、父が心配し過ぎてるんだ。BETAなんてのがいる状況で…コーディネイターかナチュラルかで戦争なんて…』
それは、地球のコペルニクスにおける幼年学校の時の終わりごろにて、そこで出会った男友達二名と別れる時の場面で、トリィとそれの兄弟機を、今は亡きアーヴの友達と共に貰った時の光景。
『…うん、それにさ…アスラン達がプラントの方を僕らでも来られるようにして見せるんでしょ』
『そうだね、少し待っててね。ドゥリュー…いや、リュース』
『……ッ…アスラ―――』
「キラ?」
その時、自分の隣にトリィを青くした同型機スカイを指で可愛がりつつ、もう会えなくなったそのアーヴの友である少年の問いに、送ってくれた友が答えて当時の自分がその名を口にしようとしたところで、現実の友に過去から今へ引き戻された。
「―――ンッてうわぁ!?」
トールのドアップ顔で驚きながら現実に引き戻されたキラの指先から、スーはささっと別の場所を目指して飛び立っていく。
「よく似た子ねぇ」
(…あ、うん…確かに似ていたけど…声がちょっと重くなっていて…羽根のパーツも幾つか違ってた…、同じ気がしたけど…そんなわけがないよね。だって、もう…)
ミリアリアと共に見送ったその小さな後姿に、キラは昨年に起きたあの悲劇でもう再会出来なくなったもう一人の青い髪を生やした友達、本来なら自分程度が出会えようがないその男の子を思い浮かべた。
『緊急速報です。3日前にてザフト軍がハニア連邦所属の対プラントゲートの一つ“天柱”が存在するカオシュン星系に侵攻した模様です。詳しいことは現地のマカセさんが撮影なされた映像で確認していこうと思います。それではー…』
『こちらは現場のマカセです。今現在、戦火はまだ郊外住宅地ですが私達のいる市街地まで…ああ!? ザフトのザクがこちらか目視できる距離まで…!』
だが、そのキラの哀愁を邪魔するかのように電脳上に緊急ニュースが飛び込んできた。
「ん…どうしたんだキラ?」
「あ、トール、ニュースだよ。プラントに繋がるゲートの一つがあるカオシュンにザフトが攻撃をかけてきて…すでに地上まで戦争は広がってるって…」
「…うっわ、3日前でこれなら今頃カオシュン落ちてんじゃないのぉ?」
キラはその電脳越しに届いてきたニュースをノーパソ型端末の空中投影映像に映し出し、それを見た友人達は不安を露わにする。
「…カオシュンって…オーブ…本国に随分近いんじゃない?」
「…大丈夫だよ。近いといっても中立であるうちの国オーブが戦場になるなんて…」
「…でも、たしかカオシュンの位置って、オーブがあるアルコントに近いし、それに…帝国のバルグゼーデにも近いし…、ユニウス・セブンの時みたいに流れ弾で誤爆が起きでもしたら…」
「…し、心配し過ぎだって、昨年に大星洋連邦やEUが噂のBETA由来の新兵器でやらかした時も経済制裁で止まったし…、あれでもうち含めてあの時は滅茶苦茶大変になったけど…、銀連所属といっても制裁緩和対象の防衛軍条約未批准国にうちも含まれてるし…。それにBETAってのもあるし…。これ以上酷くなるなんて…」
「…そうだといいけど…」
少年たちは口ぶりから不安を振り切ろうとするも、その表情から暗い色は消えそうにはなかった。
「すみません。ちょっと道の邪魔ですので…」
「あ、こちらこそどうも…どうぞ」
そこで聞きなれない声が掛けられてきて、キラ達は自分達の今いる場所が他の通行人の邪魔になる位置に気付いて道を譲った。
(…本当に平和、私と同じくらいの子が今も…私も、あんなことが起きなかったら…)
そうして開けられた道を、ショートボブに切りそろえられた金髪と青く大きな瞳で整った顔立ちだが、心身深く付けられた傷痕に苛まれた翳を表情に宿した、先ほどの声をかけた主であるカレッジ勤め研究員の一人と思わしき白衣の少女は静かに通り越した。
「やあ、ごきげんよう。今日もいい天気ですね」
「…あ、こちらこそごきげんよう」
その少女に通りかかったランニング中の男性が挨拶を掛けてきた。
「…本当に良い天気ですので、今日は
「…そうですか、それではご案内は後ほどこちらで…」
男性が掛けてきたその何か特徴的な単語が混じる話しぶりに、少女が表情に浮かぶ翳に冷たい刃のような鋭さが混じった。
「…………」
一方、その様子を工業カレッジの上層階に位置するカフェのベランダ席より、別の金髪を生やした少女が神妙な面持ちで見つめていた。
「…ユラお嬢様、お待たせしました」
「ご苦労
その少女ユラに同年代と思われる栗色の髪と同じ色の瞳をした可愛らしい少女が封筒を手渡してくるが、ユラはその中身を見て表情を曇らせた。
「…帝国との共同研究、あれを無許可で横流ししたのはやはり…サハクか?」
「確証はありませんが、ロンド兄妹様方の近年の動きからして恐らく…お父君へのご報告は?」
「…直接に見てから決めたい。今回の行動はまだ父には報せてはいないからな…まず案内は出来るか?」
ユラは霞に渡されたその封筒の中にあったこの時代では珍しい写真に映し出された、二本のV字状の角を生やした機械仕掛けの大きな巨人と思わしき物体を見ると、表情の翳りを強めて立ち上がった。
今回はコロニー内部の話に関わる各面子の様子が中心になりました。
次回は、コロニーに外から向かって来ている面子の視点が映しだされる予定です。