○帝国暦948年2月2日昼
「…………」
人類の故郷である地球での失笑ばかりの思い出が目立つ生活より5年後、12歳になったドゥリュースは帝都に戻っていて、その軍事工廠である実験に参加していた。
「…48式機械甲冑機試作機“スローネ”は今現在のところ問題はありません」
「こちら第12秘密軍事工廠管制室、スローネ翔士、そちら側に問題はないか?」
ドゥリュースも混じるその軍事工廠の管制室に集う技術者や軍士たちは、窓の向こうや画面に映し出されているその呼んだ“スローネ”という兵器に意識が向けられていたが、そのスローネの姿はドゥリュースの記憶にある創作物に出てきた同名の人型機動兵器から装備を抜いて白と青みを帯びた黒を基調にした体色の姿をしていて似ており、その背中に見える銀色に輝く無機物製のコーン状の突起物の穴から青色に輝く細やかな粒子を噴出させつつ、超高速且つ自由奔放というべき軌道で宇宙空間を飛び回っていた。
「凄いですね、プラントの方が先に“
「その彼らが導入しているものと比べても、こっちの性能は格段に上です。完成度は高いですからあとはこちらの方で現場の意見に応じて細かい調整や拡張性を付与していくくらいですね…」
帝国である意味初のMSとなっているスローネの動きを管制室の技術者達は概ね喜ばしい様子で見つめており、その中に混じるドゥリュースはここへ自身が予想していたよりも短期間で至れた帝国に生まれたありがたみを実感していた。
(…二つの銀河が融合した…エルフ達が言う“
『緊急警報、緊急警報、第十三管理区域にて爆破が発生してそこから怪獣が一体逃走した模様です。あと48秒後に管制塔方面に侵入する模様です』
「…あ、その理由の一つが来た…」
ドゥリュースがこの世界のアーヴ達が機動戦士的要素を強めるのを早く進められている要因について考えていると、その理由の一つが丁度良く(?)近づいて来ている事に気付いた。
「キシャアアアァアアアアアァ!!」
宇宙空間でも音声が響けばそのような鳴き声で鼓膜を痛めてくるだろうその理由は、大きく口を開かせた蝙蝠の姿をしたこの世界で“怪獣類”と呼ばれる生命隊の一種であった。
この世界には怪獣と呼ばれる様々な生命体の姿をした生物が宇宙空間で生息していて、彼らはどうやらエネルギーが十分なら疑似的に
その一体である蝙蝠型怪獣が大口を開けてドゥリュース達のいる管制所目掛けて近づいてきたのだ。
「うわ、結構な速度で近づいてくるぞ」
「防御砲台を作動させろ」
「そうだな、直ちに作動-…あ、そうだ。これって確かあれの戦闘力もより実戦的な意味で測れる良い機会じゃないか?」
「そうだな、装備品の幾つかも既に完成しているからあの子に使わせてあげよう」
「“人機魔術調律装置”もこれまでの試験と同じように安定しています」
「“家種”及びに機体の半植金属筋肉繊維細胞の同調値も安定しています」
「よし、
『はい、そういう指示を待ってましたー。それでリュース君は?』
星界原作にはない脅威が近づきつつあるその中で、技術者や軍士は冷静な様子でスローネに声を掛けると、そこから管制室内の窓にスローネのコクピットからの映像が繋がれて来て、そこから青黒い流れる長髪と紅玉のように澄んだ赤い輝きを放つ瞳の少女レイカが同じ齢くらいに見えるドゥリュースを昔の呼び名で問うてきた。
「うん、無人の的とかを相手にしてる時みたいにいいよー」
『わかった。じゃあ、行ってくるね』
それにドゥリュースが気楽な調子で答えると、レイカは穏やかな微笑みを最後に映像を切った。
するとスローネは蝙蝠型怪獣に向けて飛んでいき、その背を追うようにして工廠から各種装備が撃ちだされた。
「…よし、それじゃあ対艦可能重斬刀“
それを見たレイカは撃ちだされたその装備(形状はドゥリュースの記憶にあるスローネツヴァイのGNバスタードソードを黒くした感じ)の1つを手に取ると、それで迫りくる蝙蝠の爪の1つをあっさりと叩き切った。
「キシャアアアァアアアァ!?」
「うん、
それを見たレイカは青い粒子に包まれている対艦可能重斬刀を手放すと、今度は腰の両側に盾状の大きなパーツを付けるが、その一瞬後に今度はそこから青い粒子に包まれたクナイ状の小さな兵器が撃ちだされて、それらは超高速で宇宙蝙蝠の翼に大小多くの穴を開けていき、残りの爪も瞬く間にへし折っていった。
「…ギイィシャアアアァアアアアアァ!!!!」
それに宇宙蝙蝠は焦燥と苛立ちを強めたような咆哮を上げ、その大きく開いた口を中心に空間が歪みだした。
「あ、これはーー-…これ!! 超長距離重砲撃粒子砲“
レイカは再び装備を切り離して今度は肩甲骨辺りの接続部にそのロングライフル状装備(ドゥリュースの記憶にあるスローネアインのGNランチャーのほぼまんま)を接続して伸ばし、その砲口から遠慮なく濃い青で太く強烈な閃光を放つ巨大ビームを撃ち出した。
「シャアアアアァアアアアアァアアアアアァ…!!??」
それが直撃した宇宙蝙蝠は強烈な爆炎と閃光に包まれ、それが収まると全身が火傷だらけになって目を回している状態になった。
「おお、従来の突撃艦一隻分に匹敵する戦闘力を持つ宇宙蝙蝠を単騎でここまでとは…これなら対通常兵器用としても十分ですな」
「レイカー、もう十分だ。その宇宙蝙蝠も連れて帰還してくれ」
『はい、わかりましたー』
管制室の技術者や軍士達はそれに満足そうな様子でそう命じ、レイカはスローネの腰部からコネクトの付いたワイヤー(ドゥリュースの記憶にあるスラッシュハーケンが元ネタ)を宇宙蝙蝠に撃ち込んで繋げると、出撃時よりかは遅い速度でその巨体を引きずりつつも管制所へ戻っていった。
「…いや、しかし今回のも見ましたけど…今回ので効果が確認された“粒子炉”は凄いですね。今は機械甲冑機だけですけど…将来は各艦船含めて各機械への応用も効きそうですよ」
「本音で言えば家種能力も期待に反映できる人機魔術調律装置も確かめたかったが…」
「まあまあ、今回のは星界軍だけじゃなく各方面へ広く影響を与えるものですから早いのに越した事はないですけど、急ぎ過ぎて失敗しては元も子もないですよ」
「そうですね、クリューヴ方面など現場の意見とも調整しないと…」
「…しかし、ここまでのものを発案するなんて…彼の頭の中はどうしてるんだか…?」
「ところで彼はー?」
「ああ、もう彼女を迎えるべく港に向かっている頃だろうね」
今回のハプニングへの対処込みで得られたデータに概ね嬉しそうな反応を見せる技術者や軍士達だが、その中に彼らが大きく気を向けているその研究者の姿は既になかった。
「…どう? 乗り心地はどうだった?」
「私個人の意見だけど…これで高評価以外の評価を出す人がいたら感性が老成し過ぎてもう現場で船に乗るよりも管制所にいた方が良い人ね♪」
「…うん、さすがはスポール宗家令嬢。その品の無さは見当たらない罵倒の技術はさすが」
管制室から姿を消して数分後、その研究者であるドゥリュースは管制所の下にある港へ既に到着して、帰還してきたスローネから降り立ったその少女レイカを出迎えて苦笑を浮かべた。
「あまり言わないで、私も母様のことは苦手なんだから。というかのあの家自体が苦手だもの…」
ドゥリュースに実家を触れられて苦笑いを浮かべた少女レイカのフルネームは、スポール・アロン=セクパト・
母親は帝国貴族で首位を争う名門貴族スポール家の宗主であるスポール・アロン=セクパト・
ちなみに、レイカという名は母であるぺネージュがこの銀河系で、アーヴと同じく地球時代弧状列島に起源をもつも“皇国”と名乗って自らこそ弧状列島の正当な後継者と称するある国から来た少女時代の友人の名で、レイカはその誕生日がその古い友人の命日と重なったので拝借した名らしい。
(…何かGANTZのヒロインの一人をスポール化したような美少女で性格も似た感じだけど、さり気なく毒を吐きつつも相手には言い返しづらい言い方をする…根っ子は何だかんだでスポールだな…。歳が近くて話しやすそうで且つ人が乗って操縦するタイプの人型機械…この国では昔から怪獣対策などで発達していた機械甲冑機の操縦に才能がある人を求めたら、スポール宗家の子が来るとは思わなかった…)
「言いたそうな顔だけど言うべきことなら何か言ってくれない?」
「いや、何でもないです」
「だったら最低でも能面を保てるようにした方が良いよリュース君。公の場でなまじ表情が豊かだと色々と不幸な誤解を他の人にさせがちなのがアブリアルだから」
(やはり根っ子はスポールですな…)
レイカは他の家族も含めた他のスポールよりかは話しやすくて優しいが、根底の幾つかはやはりスポールだとドゥリュースに感じさせた。
そのレイカは、ドゥリュースには今では微妙な思い出だが、同族で初めて出来た異性の友人であった。
果たして、今回出てきたレイカという子は某黒い玉の部屋に呼ばれた某グラドルとどのような関係なのでしょうか(某)?