星界の輪廻   作:oosima

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今回は、あの種ガンダムの方で第惨事の代名詞になっているあの事件の、この世界における場面の一部が出てきます。



050 良きものとは限らぬ再会

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月25日朝(帝国暦952年1月25日朝) 銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 軌道都市(コロニー)ヘリオポリス ヘリオポリス工業カレッジ 一般公開禁止区域某通路○

 

(…今さっき壁を破壊して通り過ぎた広い道にいたアーヴ…、一瞬だけ見たけど彼に似ていた…)

 

 リュールがキラと接触して、間違った名を呼ばれつつも何故かそれに深い懐かしさを覚えていたその時、その原因を作った研究所内壁破壊をしたザフトの潜入工作員で研究所職員を装っていたそのアーヴの少女は今も走り続けていた。

 コーディネイターの中でも上澄みとされるアーヴの空間認識能力と跳躍力を生かして、様々な瓦礫や段差が存在する各廊下を脱兎の如き勢いで駆け抜けていき、時折邪魔な障害はCADを操作して魔術や現代魔法問わず駆使して破壊しながら進み続け、時折接触した銀連兵は空識覚(フロクラジュ)もあってほとんど見向きもせずに屠っていく。

 だが、その右目がアーヴでは珍しい地上人的な黒の髪で隠れた凛々しい面貌は、不安と疑念が滲み出ていた。

 

(…いや、彼が生きているはずがない…。もう…彼はあの時…あそこで…目の前で…)

 

 進み続けるアーヴの少女の脳裏に、昨年に自身もその場にいた惨劇の光景が嫌にも甦る。

 

『第13区画まで崩壊しました! 皆さんは第32通路を通って第17区画へ避難してください!』

『だ、駄目だぁ! 割れた天窓から吸い込まれ…!?』

『くそがぁ! 人をこんなところまで呼んでおいて巻き添えかよ!』

『うわぁぁ! ミサイルがこんな所にまで…!?』

 

 次々と真空に投げ出されていく同胞(カルサール)、その状況を作ってもなお交戦を続ける今のこの身の敵とした者達の流れ弾に焼かれた肌の痛みが今も明確に思い返させる。

 

『諦めないで! 三番動力炉の外壁を錬金術が得意な子が伸ばせば機密壁は逃げ切れるまでは守れる! 僕らが水銀の手で支えている間にー…!?』

 

 あの時の死の流れに抗おうとする者達の中で、この身と共に同じ場所で育ち、本来なら今の我が身を盾にしてでも守り恩を返さないといけないその少年も、自分も含めた多くの命を救ったがその果てに業火の中へ飲み込まれた。

 

「死ねぇ! コーディネイター!」

「!?」

 

 その回想に意識の多くが無意識のうちに回され、少女の視界にこちらへ銃口を向ける銀連兵の姿が映るも対処が僅かだが遅れる。

 

「危ない!」

「ギャ!?」

 

 だが、その銃口が火を噴く前に別方向からの同年代の少年の声を添えた弾丸が、その銀連兵を撃ちぬいたことで少女の身は無事となった。

 

「ありがとう、助かった」

 

 その銃弾を撃ち放った、ザフトでも優秀な兵士に送られる赤服のパワードスーツ一体型特殊兵装パイロットスーツを着こなした紺色の髪と緑の瞳の少年に礼を口にした。

 

「今は礼などいい。それよりも奥の秘密ブロックに残りの四機がある。そのうちの一機は現時点では君かガルマにしか扱えないのがわかっているから急ごうメアリ。ラスティにルイスは先に向かっている」

「ああ」

 

 今はもはや会えなくなった嘗ての祖国の親友が、人類始まりの星へ留学していた時期に縁を結んだ存在であるその少年と共に、嘗てサンドリオ・ボルジュ=バイルカニュ・メアリと呼ばれたメアリ・サンディは再び走り出した。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 軌道都市(コロニー)ヘリオポリス ヘリオポリス工業カレッジ 一般公開禁止区域某大型格納庫○

 

「…あ…ぐ…」

「リュース! 何が起きたか知らないけどしっかりして! 病院に連れて行くから!」

 

 アスランとメアリが合流した頃、リュールは何故かキラに初めて聞くはずのその名で痛みと懐かしさに苛まれつつも、彼女に肩を支えられながら廊下を進んでいっていたが、そこで二人は大きな部屋に行きついた。

 だが、その大きな部屋はまだ銀連兵とザフト兵の双方がまだ交戦中で、何よりも四機の20メートル前後のサイズをした人型の機械の姿があり、それらには形状などの細かい違いはあったが額にV字型の角のようなアンテナが付いていた。

 

「…!? これって…MS(モビルスーツ)!?」

「…あー、やられた…」

「…え!? この声って…!?」

 

 キラがその光景に戸惑いを覚えた直後、上から最近聞いた声が降り注いできた。

 

「お嬢様! 今はそんなうなだれかかってる場合ではありません!」

 

 その声に釣られてキラが視線を上げると、研究室で課題やバイトをこなしていた頃にその部屋へ姿を現した短い金髪の齢が近そうな人物がいて、そのうなだれそうになっている背を栗色の髪をした少女が強引に引っ張って何処かへ連れて行っている姿があった。

 

「え…あの子達は…何でこんな所に―――!?」

「ちょっと! そこの民間人の子供二人! 直ちにこの部屋から離れなさい!」

「―――ぃ…!? うわ!?」

 

 キラがその姿に違和感を覚えた直後、この部屋まで後退に追い込まれていたマリューが叱咤するような声を掛けた。

 

「は、離れなさいって言われてももう来た道も瓦礫で塞がってて―――」

「ッ…! 危ない!」

「―――え? ああぁ!?」

 

 それにしり込みして戸惑ったキラであったが、肩を支えられて朦朧と意識喪失の間を彷徨っていたリュールが意識をわずかな間ながら取り戻して彼女を掴んで飛び退くと、その前に二人がいた部屋の出入り口が大きく崩落して埋まってしまう。

 

「…あ、ありがとう…リュ―――」

「ああ!?」

「…ッ! また…だけどもっとやばいのが…!?」

「―――う…え?」

 

 キラはそれに安堵の息を吐きかけるが、そこでマリューが腕より鮮血を迸らせて悲鳴を上げる姿を目にし、更にリュールが見上げた方向で四機ある人型の一機が重厚な音を鳴らしながらパイプや機材を引きちぎりつつ立ち上がる姿があった。

 

「!? “シールダー”まで!」

「ルイスも上手く銀連の新型の一機を起動させた! ラスティ! アスラン! ()()()も急いで残りを運べ!」

「…え!? アス…ラン!?」

「…!?」

 

 それにマリューが悲痛な叫びを上げるのに対しザフト側は勢いづき、その内の他とは違って白衣を着たあの少女が高く飛び立ったその時、キラは向こうが口にした名に懐かしさを覚え、リュールは頭痛の強まりを覚えつつもそれで朦朧としていた意識がややはっきりとして懐かしさだけでなく危険も感じとった。

 

「危ない!」

「うわぁ!?」

 

 リュールの身は半ば無意識にだが鋭敏且つ強靭に動いてキラの身を大きく突き飛ばし、空中で足を大きく振りかぶったメアリを見やると自身の利き手を勢いよく払い、そこから巨大な水銀状の刃を高速で撃ち出した。

 

「!? 水…銀…!?」

 

 それにメアリが懐かしさを覚えつつも我が目を疑う表情になりつつも、彼女が続けて放った蹴りによる斬撃を帯びた見えない風の魔術の衝撃波と、リュースの手から放たれた水銀の刃は宙で真正面から衝突し、周囲に轟音と衝撃波に無数の水銀の雫を撒き散らした。

 

「「「「「な!?」」」」」

 

 その光景に周囲は驚くが、それに混じるアスランは別のことに対してもっと驚いていた。

 

「今の銀色の魔法…君は…やっぱリュース…!?」

 

 同じように驚くキラは自身をかばったそのアーヴの少年に対しある確信を強めるが、そこでザフトの赤服を着た兵士の一人が武器を十分に構えていない様子で降り立ち、その近い距離から顔を見たキラは我が目を疑った。

 

「…アスラン?」

「…キラ…ドゥリュース…?」

「…ヅ!? ぁ…アア…ァ!」

 

 それは、戦場という最悪な状況下で発生した再会であり、二人のその声を聞いたリュールは一瞬の稲妻に走られたような痛みを頭に生じられ、されども膨大な量の今の自分にはないはずの過去の情報に意識を駆け巡られた後、糸が切れた人形のように倒れた。

 

「…うわぁ!?」

「ラ、ラスティー!?」

 

 だが、その直後に炎が回り始めた格納庫全体の天井の多くが崩れ出し、それで陣営問わず何名かが瓦礫を受けていく。

 

「ッ! アスラン!」

「あ、ああ!」

 

 一方の瓦礫を避ける者達に混じって、メアリとスランは残りの三機の内それぞれ予定で目標としていた二機のMSにすかさず乗り込んでハッキングして動かし始めた。

 

「せ、せめてこれだけでも! あなたも乗って!」

「ッ!? ま、待って! リュースが…あぁ!?」

 

 それを見たマリューは歯噛みしつつもキラを引きずって残された最後の一機のコクピットに向かい、キラは再び倒れて意識を失う形となったリュールに手を伸ばそうとするも、マリューの勢いに抗えずコクピットへ引きずり込まれてしまった。




今回はいつもに比べても短めですが、区切りの良さを優先して今回はここまでにします。
次回は、アナザーガンダムで最も名を馳せただろうあの主人公(の同位体の少女)のこちらでも変わらない出鱈目ぶりと、久々に本作の(一応)主役であるあの子の久々の活躍が中心となる予定です。
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