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「もうだめだぁ! 早く出ろ!」
「イージスとオリジナルのGフレーム搭載型まで奪われちまったぁ!」
「さっさとこいつらを持ち帰るぞ!」
「………………」
火の手が広がり続けて瓦礫が続々と地に落ちていって各々が外に脱出していく中で、取り残される形となったリュールは倒れて身動きが出来ないように見えていた。
だが、その朦朧としていた瞳に隠された意識の内側では無数の光景、多くの言葉、それらに形を変えた数多の感情と思惑が、まるでひび割れた大地が砕け散り空気に溶けていってその奥底が露わになるような感覚で生じていっていた。
『…まさか、あそこまでするとはな…こちらにとっては二重の意味で身内だが…』
『まー今回のあれであんたも
『この子の未来のためにも、君のように死人と当面はした方が良いのう…』
『心身に付いた傷を癒すための時が必要だな。』
『まあ、別の名を使ってもらう間も最低でも給料十倍以上分には働いてもらうけど』
『おい、母親』
『そういうわけで、当分よろしくお願い、リュール・ソードリュ。そして、しばらくさようなら、アブ…』
「…!!」
そして、その脳内を駆け巡る光景の果てに今の自分の名、そして今とは異なるその名が語られようとしたその最中、業火に包まれた巨大な瓦礫が降り注ぎ、それが触れようとした瞬間にリュールの双眸はカッと開き、他に人がいなくなった格納庫内部を稲妻に近い光が走り回った。
「よし!
一方その頃、研究所の屋外では今もザフトのザク達が暴れまわり、加えて昆虫のような形をしたゲルズゲーが身にいくつかついたモノアイと複数あるマニピュレーターを器用に同時で動かして、銀連側の機密情報が詰まった機材を回収していく。
この世界の
その中でこの場で用いられているMAのゲルズゲーは、別時間軸にあるMS部品を流用した昆虫風ケンタウロス型の同名MAと違い、より昆虫を思わせる形状をして防御だけでなく破壊された味方のMSの回収や敵備品の捕獲に向いた形状や性能をしており、今も銀連側がここヘリオポリスに持ち込んでいた機密資料や機材を次々と運び込んで持ち去っていっていた。
研究所屋外の趨勢がほぼ決まろうとして何機かのザクとゲルズゲーが飛び立っていった後、研究所の秘密格納庫に当たる箇所が内部から盛大に爆発し、その爆炎から機のMSが飛び出してきた。
「お、ルイスに続けてアスラン達も上手くやったようだな」
「あれが、“イージス”とさっき飛んで行った“シールダー”、それらを含めた今回の
それに感心するザフト兵達が乗るザクの中に降り立ったのは、今回彼らの手で奪われた銀連向け新型MSに含まれる二機だ。
その内、イージスと呼ばれるトサカのような大きなアンテナが付いたイージスはアスランが奪って乗り込んでいる。
そして、もう一機のメアリが乗り込んで奪ったのは他のGナンバーと呼ばれる銀連極秘開発の新型MSの大元となった機体だが、見た目と雰囲気からして派生機に比べて異様だった。
「…で、デケェ、他のよりも5メートル以上…25メートルくらいはないか!?」
「黒鉄色の装甲の隙間に見える下の関節…まるで生きているようだ…」
「腰の裏からは蠍の尾と巨大な機械が合わさったような長いマニピュレーターが…」、
「…あれが
それに周囲のザフト兵が映像と機器越しながらもただならぬ気配を感じた直後、その2機が飛び出した箇所からまた新たな機体が飛び出てきた。
「お、ラスティが最後のようだな」
「“ストライク”のようだな」
「え? 待て、たしかラスティはさっき負傷したからアムダのゲルズゲーが収容したって」
「皆! あれに乗っているのは銀連軍の士官だ!」
「何!? 本当かアスラン…!?」
周囲のザフトがまず安堵から不審、そして緊張へ素早く変わるがそれに次は困惑が混じった。
敵として現れたその今回において最後に姿を現したGであるストライクは、ヨタヨタとした動きでザク達の中に進んできたのだ。
「ちょ!? 何かザフトの中に入っちゃってますよ!?」
「し、仕方ないでしょ! 私は装甲担当技術士官で更にこの機体もOSがまだ未調整で…!」
ちなみに、そのストライクの中は慣れない動作で操縦しているマリューと、彼女に連れられてそのシートの後ろにいるキラの姿があったが、二人のそんな事情など知らないザフト側は困惑と警戒からすぐには攻撃を仕掛けなかった。
「…何を企んでるか知らないが、生意気なんだよ! ナチュラルがMSなんてなぁ!」
「あ! 下手に動くなジーン!」
だが、その内のザク一機が周囲の制止も聞かずに動き出すと、ストライク側にも変化が起きた。
「うわぁ! 来たぁ!」
「ッ!」
それにキラが驚くとマリューは険しい顔でコクピットにあるスイッチの一つを押すが、するとそれまで鉛色だったストライクの表面は震えるような音を添えて白と青を基調とした色合いに変化した。
そして、ザクのビームトマホークがストライクの我が身を守るように構えられた腕に当たった瞬間、火花とビーム粒子は撒き散らされたが装甲にはわずかな傷がつけられるに留まった。
「んな!?」
「馬鹿者! そいつらには
それに驚くジーンに対してこの場のザフトMS部隊を指揮するデニムの叱責が飛ぶが、その光景にそれぞれ奪った新型MSのGからアスランとメアリは混乱と恐れが浮かぶ。
「(あ、あの二人が…あそこにいるわけが…だ、だがあの姿は)隊長! あのMSには―――」
「アスラン! メアリ! 何をしている! お前たちはその新型をもって母艦に戻れ! ゲルズゲー班も残りの資料と機材も連れて同行! ミゲル達はその護衛だ! 残りの私達はあの残りの新型を捕獲する!」
「―――あ!? し、しかし…!?」
「命令だ…行こう」
「…ッ…わかった」
アスランは最悪の想像に動かされてデニムに進言しようとするが、その彼から遮るようにその命令を出されて、同じように苦渋の表情を浮かべつつも任務を優先するメアリに促されて、彼女達と共に飛び立ってその場を後にする。
「各機! ビームトマホークを集中運用してあの機体の四肢を潰して胴体を回収するぞ! ビーム系にも高い防御力があるといっても近接用で集中攻撃すれば遠からず限界へ追い詰められる!」
「「「「「了解!!」」」」」
それを見たデニムが乗るザク上位種ザクファントムの得物が長柄のビームアックスに切り替わると、他の残ったザク達も柄が短いビームトマホークに切り替えてストライクに集団で襲い掛かった。
「ああもう! こんなによってたかって!」
「うわぁ!? 何か動きが鈍いし拙い…ってやっぱり! ちょっとこんなOSであれだけの攻撃を避けるなんて無茶ですよ!」
マリューはストライクを必死に動かしてどうにかその攻勢から逃れようとしているが、機体の跳躍力頼みで動きは非常に雑なためコクピットは激しく揺れ、キラはその理由が未熟且つ不完全なOS頼みなのを見抜くとコクピット内のキーボードを取り出してストライクのOSをその場で調整し始めた。
「あーもう! プラグがあれば電脳と繋げてささっと調整できるのに!」
(…この子、この動きに修正内容…まさか…)
その画面越しでわかるOSの修正のあまりの速度と濃い内容に、マリューのキラを見る眼差しとある仮設から驚きと疑念の色が浮かび上がる。
「ッ!? 何なんだ!? こいつ徐々に動きは細かくて素早くなっていってるぞ!」
「ええい! もう一度囲み直せ!」
それはストライクの動きにも表れ、自分達の攻撃の避けられる頻度や比率が上がっていっていることに、ザフト側はじれったくなって動きが速くなりつつも多少雑になり始める。
「ああ! また囲まれたわ!」
「何か武双はないんですか!? えーーーーーっと…あ、アーマーシュナイダー! これしかないけど…って!?」
ストライクは再び追いつかれ出すとどうにか反撃を試みようとするが、その前にこちらの世界ではザクの一機が大きくビームトマホークを振り下ろしてくる直前となった。
「手間取らせやがって! だがもう終わりだ―――!?」
そのザクを駆るジーンがほくそ笑んだ直後、彼が乗るザクのビームトマホークは何処からか超高速で飛んできた
「「…はい?」」
「「「「「な!?」」」」」
それに救われた勝ちとなったキラとマリューは呆けた顔となり、ザフト兵達は驚愕した。
「―――あ…りぇ? な、何が…あってのわぁ!?」
一瞬後、何が起きたのかわからない状態で意識が現実に戻ったジーンだが、呆けた声を出した直後に彼が乗るザクは水色基調のMSの足で勢いよく蹴り飛ばされた。
「え!?」
「あ、あのMSは…!?」
それに目を見開かせたキラとマリューが目にしたのは、まるで人体と機械が合わさったような有機的な鉛色の巨躯の上に、天翔けるあの眷属のような水色基調の装甲が未完全な状態で付けられて、ストライクと同様に金色のV字状のアンテナが額に付き、その付いた手の一本から青色のワイヤー状エネルギーで括り付けられたMS用大型実体剣を投擲した状態にしているMSであった。
「…何と言うか、あの事件からここへ送られるまでの間に何が起きたかはまだ詳しくは思い出せないけど…、黙っていても悪化しそうなだけだから…、リュール・ソードリュ改めアブリアル・ネイ=ドゥアセク・
そのMSに乗っていたのは、先ほど秘密格納庫内部に取り残されたリュールにして、今もその容姿のままだが中身はあの昨年のユニウスセブンで起きた“血のバレンタイン”で死んだと公表されている帝国皇族ドゥリュース本人であった。
「…何だあのMSは!?」
「あれも銀連軍の新型か!?」
「いや! Gの方と似ているが装甲の隙間が明らかに違う!」
「ガンダムフレームか!?」
「だが、あんなものは報告にはないぞ!」
一方ザフトにとってこの乱入は想定外で、MSの動きからして警戒心が一段と強まっているのが見て取れた。
(…どうしてこれが…細かい違いが色々あるのは別として、この世界にもあるのか…その事は後で余裕が出来た時にでも調べるとして…とりあえずこの世界の“バルバトス”使わせてもらうよ。ミカ…!)
その様子を見て取ったドゥリュースは、一瞬の内だが当世とも最初の生とも異なる脳裏に浮かべた前の生での光景を通し、その頃の友を思い浮かべてから意識を現実へ戻した。
すると、彼が乗るガンダムフレームなるものを使用したMSバルバトスのツインアイを基点に、翡翠色の稲妻がその巨躯を包み込んでいき、その足は地を蹴るような動作を見せた後、粉塵を巻き上げながら音に迫る速度でザクに襲い掛かった。
「は、速い!」
「まるで魔術使いのローラースケーターだ!」
「! いかん! フォーメーション変更! 球体守備陣だ…!?」
そのコーディネイターである自分達でも追いきれない高速機動に驚く中、デニムは即座に対応策を打とうとするも、それが形になる前に彼が乗るザクファントムの頭部がバルバトスに蹴り千切られた。
「のわああああ!?」
「デ、デニム隊長ぉぉぉぉぉ!?」
「ま、待て!? あれに武器はあったか!?」
「そんなの知るか! とりあえず背中を付け合って突かれないようにし…!?」
それに部下達は困惑と驚きを更に強めるが、その内の一機がどうにか対応しようとした時、その頭上にバルバトスが何かを振り上げるような動作で飛び上がると、その掌中に翡翠色の稲妻が生じて塵が集まるようにして巨大な大太刀が生じた。
「!!」
「うわァアアアア!?」
「うげぇ!?」
続いてその翡翠色の稲妻に包まれた大太刀が振り下ろされて二機目が右手と右足を真上から綺麗に切断され、更にその身は別のザクに叩きつけられて両機揃って戦闘不能に陥らせた。
「な、何なんだこいつは!?」
「本当にナチュラルかよ!?」
「違う! この後ろにも難なく対処できている動きはアー…ぶべぇ!?」
そのままの勢いでザク達は次々と信じられない心地で撃破されていく。
(よし! これで残りはあと一機…!?)
だが、あと一歩で少なくともこの場の戦いが終わろうとしたその時、ドゥリュースは額から脳髄に稲妻を撃ち込まれたような激痛に襲われ、転倒を起こしたような感覚に襲われ、それにつられてバルバトスも高速機動中に姿勢が崩れて、そのままの勢いで地面を大きく削りながら倒れてしまう。
「…な、何が…だが! 勝機は今しかない!」
それに残された一機のザクは戸惑いつつも好機と見てビームトマホークをもって駆け出したが、その前を遮るようにあの一機が再び前に出た。
「もう止めて! まだ人だっているんだからぁ!!」
「何ぃ!?」
乗り手をマリューからキラに乗り換えたそのストライクが、その手に持つ短剣型近接兵器アーマーシュナイダーを残りのザクへ突き立て、戦闘不能に追いやった。
「…あのデニム達が…信じられん」
その様子はコロニーの天窓部分付近を飛ぶ白に塗装されたザクファントムのコクピットより、今回襲撃してきたザフトの指揮官クルーゼを驚かせた。
彼は先ほど戻ってきたアスラン達からの報告を受けて、警戒と興味を強めて第二陣を率いてこの場へ駆けつけてきたのだ。
「隊長、あの2機は危険かと…」
「ああ、興味深いが…ダスキンらゲルズゲーはデニム達を救援しろ。残りは私と共にあの2機の捕獲もしくは破壊だ―――!?」
だが、クルーゼ達がこの場に駆けつけて行動を起こそうとしたその時、コロニーの大地の一角が広範囲に内部から爆ぜて、その粉塵から何かが飛び出してきた。
「―――あれは…!!」
大きく立ち上る粉塵の中でもクルーゼはそれを生じさせた原因の姿を見抜いた。
「…あ、あれは…戦艦!?」
「…アークエンジェル!」
その姿はストライクの中からも見えており、キラが戸惑いと困惑を見せ、マリューは薄れ始めた意識ながらもその名を口にすると、薄れた煙の中から大天使の名を冠した全長千メートルを超す、前に2本の足が付いたような白が似合う美しき巨艦が姿を現した。
やっと最後に長らく浮沈艦と謳われていたあのアークエンジェルを出せました。
次回、戦闘はいったん中断して、本作主人公組と原作主人公組の接触シーンに入ります。