○××年 銀河系 某惑星 某戦場○
「…時々、自分が発掘される昔のゲームの中のキャラクターを動かしているような感覚を、今度は自分がされているように感じることはないか?」
それは今の自分が生きているだろう時間軸とは異なる、いつかの時代の銀河の何処かにある無数の多様な時代性を感じさせるガラクタや屍が散乱する戦場で、“彼”は隣で寝転ぶ緑の大きな瞳と黒い短髪をした無表情な少年と共にその言葉を聞いていた。
語り手は、長いウェーブがかった銀髪を伸ばした、まるで絵本の中に出てくる王子のような気高い存在感を抱いた青年で、彼と少年を見やりつつもそれを通して更に奥を見やっているような眼差しを浮かべている。
「…そうだったとして、グリフィスはどうしたいんだ?」
「…ミカ」
その純粋な童らしい疑問を口にする少年ミカの隣で、彼は悩む表情を浮かべているのに対し、青年はとうに答えが決まっているという表情を浮かべる。
「俺は…」
そこで青年グリフィスの背から日が昇り、視界が白くなると同時に彼はこの記憶の世界から今の自分がいる世界へ引かれる感覚を覚えた。
〇
「…ウゥスゥ! リューーースウゥウゥ!!」
「…う…ぐ…うおおおお…!?」
そして、当世ではない前の生での記憶が混じる夢から目を覚ましたドゥリュースが最初に目を覚ましたのは、今にも泣きそうな顔をした幼馴染のそれだった。
「…キ、キラァ…? ど、どうしてここにぃ…?」
「ど、どうしたもこうも…リュースこそ何でこんな所にいるの!? あ、あなたってたしか…去年にユニウスセブンで起きた
それに長らく夢を見ていたあとの気怠さと寝ぼけで気絶する前の記憶が戻り切れていないドゥリュースは戸惑うが、キラがあるワードに触れようとしたところでその口は背後に現れた別の誰かによって塞がれてしまう。
「はいはーい、周りに人がいないし遮音の結界を掛けてるからって一気に聞かれちゃまずいのを言い過ぎよー。さっき説明したばかりでしょー」
「あ、アウぅウゥ…」
その人物は研究所で建物の崩落が原因で別れてしまったセレーナで、彼女に口元を塞がれて注意されたキラは色々と思い出した表情を赤くし始めてうつむいてしまう。
「おい! 怪我人は他にいないかー?」
『ちょっとー、さっきの瓦礫をどけたらまた新たな怪我人が見つかったんですけどー、何処に連れて行けばいいですかー?』
その後、二人が建物を出るとグラウンド上にある倉庫のドアの前に出て、グラウンドには先ほどの戦闘によるものと思わしい瓦礫やクレーターが散乱しており、その中で機械音声越しにネーナがしゃべるアストレイの姿があった。
ちなみに、グラウンドの相当な面積はこの世界にある都合で性能やサイズは色々とアップしている、銀河連合軍所属でここヘリオポリスにて極秘建造されていた強襲機動特装艦アークエンジェルが埋めている姿があった。
「…何故だろう。始めて見る光景のはずなのに…何処かで見たのと似ているような光景が広がっているような―――」
「うわー? 何だこのMS?」
「この角が付いている2機ってなんだろ?」
「うちで導入されたアストレイみたいだなー」
その光景は何故かドゥリュースには既視感があるが、その理由を彼が探る前に今の彼の危機感を刺激する声が割り込んできた。
「何か頭文字からGって呼ぶんだって」
「へー、この色が変わった方はキラが動かしたんだってなー」
「それでキラがこれで持ってきたもう1機とそれに乗ってた人は?」
「あー、今なら機体は裏側の方に仰向けで寝かされてて、乗ってた人はキラにー…」
キラの友人達がそのグラウンドの一角にドンと晒されていたストライクとバルバトスに群がり、コクピットに乗り込んで好き勝手していたのだ。
「―――あって何やってんの君達ーーーーーー!?」
「ってうわぁぁ!?」
当然、それを見たドゥリュースは目玉をひん剥いて止めさせるべくその場へ乱入し、ストライクの方に乗り込んでいたトールを驚かせた。
「ちょちょっと落ち着いてリュース…じゃなくてリュールゥ! あの場で倒れた君をお医者さんがいるここまで連れた時にあのMSから君を出すのに協力したのは彼らなんだからぁ…!?」
それを見てキラもまた驚いてドゥリュース改めリュールを後ろから羽交い絞めにして引き留めようとするが、その場で銃声が鳴り響いた。
「うわぁ!?」
「ひい!?」
「そこの子達! その機体から直ちに離れなさい!」
驚くトールたちが見やった先には、空に向けて銃弾を放ったマリューの険しい顔があった。
更に彼女の背後にはアークエンジェルから降りてきたと思わしい銀連の歩兵隊もいて銃口を向けてきている。
「や、止めてください! あなたをここで手当てしたのはトールたちなんですよ!」
「助けてくれたことには感謝します。けれどもそのストライクは銀連軍の重要機密です。そして、そのストライクを知ったあなた達はその隣りの機体の調査のためにも身柄は拘束させてもらいます」
「んな!?」
それをキラは止めにかかるがマリューはトール達を見据えて穏便ではない言葉を吐いた。
「んな!? 何をそんな勝手な!?」
「ここは中立国でしょ! どうして銀連がこんなところであんなもの作ってるんですか!?」
「何の権利があってそんなこと…!?」
キラの友人達は当然のごとく反発を見せるが、それに対しマリューが別時間軸と同様に威嚇射撃をして制止しようとしたその時、大きな金属塊がガンっと地面へやや乱暴そうに下ろされる音と揺れが響いた。
『あーすみませーん。さっき不時着してきたこの宇宙戦闘機が道を塞いでて邪魔だったのでこちらへ移しにきましたー』
ネーナが動かすアストレイが破損した状態のメビウス・ゼロを担いだ状態で現れたのだ。
「…いててて、クルーゼの野郎め手ひどくやりやがって…!」
そして、そのメビウス・ゼロのハッチを開いてしかめっ面のムウ・ラ・フラガが出てきた。
「フラガ少佐!」
「おーバジルール大尉、君は大丈夫そうだが他にはー?」
「…それが、艦長以下艦橋要員のほとんどは先ほどザフトが工廠に仕掛けた爆薬の爆発で戦死しました。副官のノリエガ中佐が意識不明の重体で…」
そこへ短く切りそろえられた黒髪をした凛々しいがお堅そうな雰囲気の、銀河連合軍大尉のナタル・バジルールが駆けつけてきたが、彼女からの報告も状況の悪化を告げるものだった。
「…えぇ、私達も先の襲撃でGの大半は奪われました。あそこにいる二人の子がストライクとあの水色のガンダムフレーム搭載型で助けてくれなければ私も…、少年が水色の方でザクを9機、女の子の方がストライクで1機撃破して…」
「ザクをあの間に十機も!? どっちもまだ子供じゃねえか!」
マリューがキラとリュールを紹介すると、アークエンジェルからストライクの回収及び整備のために出てきたごつい如何にも職人とした見た目と雰囲気のコジロー・マードック少尉が驚いた。
「え!? あの子達がザフトを追っ払ったの!?」
「どっちもまだ子供だけど…」
「あれ…あの顔つき…特にあの青みがかった髪に…額まで伸びている耳飾り…まさか…」
それに周囲も軍民問わず驚きを見せるが、その中でムウは興味を抱いた顔で二人に近づき始める。
「さっきの話、本当かい?」
「ええ、まあ…」
「それが何か…?」
今は一時止んでいるとはいえ戦火の中に置かれている不安を見せるキラと、彼女を庇うように前へ出たリュールに、ムウはさらに興味を強めた表情でこう口を開く。
「君達、コーディネイター、特に君はアーヴだろ?」
「「「「「!!??」」」」」
その言葉は周囲の人々の多くを驚き恐れさせ、特にキラは周囲のそれの幾割かが自分達に向けられ始めたことに辛そうな色を見せた。
〇銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系
キラの身に新たな緊張と危険が降りかかろうとしていた時、彼女がいるヘリオポリスを見据えた位置で停止しているザフト艦隊はその動きを警戒しつつ奪取したMSや機密データの解析に勤しんでいた。
「…地球軍が見つけたガンダムフレーム使用機はこれかー。デカいなー」
「おいおい、一つさえあれば最低でもあのシリンダータイプコロニーの電力を普通に賄えるエイハブリアクターを小型のとはいえGに積み込んじまったのかよ。しかも七機も」
「もう一機のものほんのガンダムの方は二つ搭載しちまってるのかー」
「凄いなー。並の戦艦の平均主砲並みの威力を保ったままビームライフルサイズに縮小させたってのか」
「ルーラーのハッキング機能付きポッドの方はー…」
技術者達はこの度運び込まれたMSに驚きと興奮を見せており、疲れを忘れた喜々とした様子で機体やその装備の解析を進めていた。
「…おい、これもいらないぞ。外す」
「のわぁ!? ちょっとそんな
その中にはヘリオポリスからMSを奪取してきたパイロット達も含まれていたが、ガンダムフレーム使用のDNタイプMSベヒモスのコクピットで、それを奪取してきた当人のメアリはやや険しい顔で加わっていた。
「なんだかメアリ、普段に比べて荒れてないか?」
「今回はナチュラルにでも大女呼ばわりでもされたか?」
「…………」
イザークとディアッカはその様子を盗み見てニヤニヤしていたが、自身が奪ったイージスから彼女の様子をうかがっていたアスランは、その理由に心当たりがあって、それ故に愁いを帯びた表情を浮かべていた。
(…あの時、あそこにいたのは…成長していたけど間違いなくキラだった…。そして、耳の形は違ってたけど…あの場で魔術で操られていた水銀は…、それにドゥリュースも今の時代で水銀に体が自然化させられるのは今のところ自分だけだって…、だが、メアリもあいつが
「はぁ!? デニム隊長達がやられてザクが十機ともおしゃかになっただぁ!?」
「は、パイロットはその場に駆けつけたクルーゼ提督達が救援して、その直後に銀連の新型艦が姿を見せたので一時撤退したので全員生還したのですが、ザクが全てやられたと…」
「ああもー! 作戦が作戦だからここにはそこまで多く持ち込めてこれなかったってのに!」
「―――ぃ…!?」
アスランの否定したい気持ちと理性で苛まれる感情はますます強まっていくが、それは整備班から出てきた驚きや文句混じりの声が拍車をかけてきた。
次回、再びコロニー内部で主人公達を荒事が巻き込んでいく予定です。