星界の輪廻   作:oosima

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あの鷹の人、原作でもよくあの場面であんなことを軽く言えたものだって改めて思いますよね。


053 早まる危機の群れ

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月25日正午(帝国暦952年1月25日正午) 銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 軌道都市(コロニー)ヘリオポリス ヘリオポリス工業カレッジ グラウンド○

 

「君ら、コーディネイター、特に君はアーヴだろ?」

「「「「「!!??」」」」」

 

 アスランが嫌な予感に対する確信へ近づきつつあった数分前、ヘリオポリス内部のその地で彼が気にかけていた二人、ドゥリュースとキラがいる現場はムウ・ラ・フラガが二人に掛けたその問いで言葉を失いつつも驚愕と恐れに包まれていた。

 

「………ッ…は…ぃ!?」

 

 周囲から集まる怯えと嫌悪が滲む視線の雨に押されるように、キラが俯きつつもこたえようとしてその時、彼女の小さな口は同じ問いを投げ掛けられたもう一人の少年に塞がれてしまう。

 

「ドゥ!? ドゥドゥヒュ―――!?」

「その問い、ここでする必要があるものですか?」

「―――ゥ…!!??」

 

 キラはそれに驚き口が澱みだすが、それをした少年ドゥリュースもといリュールの極寒で固まった水銀の刃を思わせる冷たい言葉を聞いて、子供の頃のトラウマを思い出したような表情で固まってしまう。

 

「そして、こちらがその問いに答える必要はありますか?」

「「「「「!!!??」」」」」

 

 言葉が続くとリュールの身から漏れる冷気のような圧迫感は強まってより広がり、それを殺気と覚えた銀連側の兵士達は銃口を向け始めた。

 

「…こらー! お前ら止めんかー! そんなことやってる状況じゃないだろーが!」

 

 だが、その殺気を感じつつも動じる様子を見せないで銃口の前に躍り出た男が一人いた。

 

「ちょ!? りょーさん!?」

 

 ネーナがギョッとした表情を向けたその人物は、日本皇国警察官ながら短期高収入アルバイトに目がくらんで、ここヘリオポリスの工業カレッジで警備員や各種機械の操作被験者として出稼ぎに来て、記憶を失っていた時期のリュールや共に過去の経歴を隠して移ってきた彼の友人達と交友が出来直した両津勘吉であった。

 

「驚かせて申し訳ありませんがまずは銃を下ろしてください。彼はあなた達が思い描いている推測と一致する点が幾つかございますが敵ではありません」

「な!? おいおい今度は王留美かよ…」

 

 続けて王留美が前へ進み出て庇うように立つと、フラガは目を丸くした。

 

「そこまで驚くことでもないでしょう。今回の人類同士の同士討ちというべき戦火に巻き込まれるのを嫌がり、中立国へ逃げる方は出身を問わず少なくありません。彼、リュールはそれに加えて昨年に起きた今の4次大戦の切っ掛けの巻き添えで記憶喪失と障害を受けていた身ですが優秀な科学者ですから、親の代から付き合いのある我がグループ支援下のNGOで治療を受けつつ、ヘリオポリス工業カレッジのモルゲンレーテ組の方へ派遣されていた身です」

(…よくもまあ、次から次にそんな嘘はついてないにせよ本当のことから上手く遠ざける内容の話をぺらぺらと…)

 

 一方、庇われた形となったリュールは王留美の存在で冷静に戻って、彼女に感謝しつつやや引き攣った笑みを浮かべていた。

 

「…銃を下ろしなさい。彼女の言う通り今大戦に巻き込まれることが嫌で中立国に移るのはコーディネイターにも多いわ。特にオーブは帝国との昔からの繋がりで移民するアーヴの数はプラント武装蜂起まで一番多かったもの」

「…はい、それに私は一世代目だし、彼も()()は地上出身のナチュラルですから…」

 

 それに気づかない内にマリューは場の鎮静化に動きだし、キラは自身とリュールの身元情報の一部を明かした。

 

「…えーーっと、さっきんビビらせるようなことをして言うのもあれですけどー。ところで僕らはいつごろにあの艦へ乗り込まなくちゃいけないんでしょうかー?」

「…え? リュール…それってどういう…?」

「いやねえ、あの軍の機密ってのを見ちゃったりどころか動かした身でこのまま事情聴衆だけで解放なんて考えられないし、それにさー、もう今この状態だとほとんどのシェルターは閉まっちゃってて入れないだろうから、消去法だけどあの軍艦が一番安全ってことにー…」

「「「「「……‥………」」」」」

 

 だが、続けてリュールがいつものやや抜けた調子で口にしたその問いと補足で、キラを含めてこの場で関わった者達の表情が重くなった。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 軌道都市(コロニー)ヘリオポリス付近 クルーゼ艦隊 旗艦ヴェサリウス○

 

『…そういうわけで、先ほどの奇襲で奪取し損ねた例の新型最後の一機と調査になかったあの機体はこのままにはしておけん。今度こそ奪取、出来なくとも完全破壊をせねばならん』

『『『『『了解!』』』』』

 

 キラ達の自由への制限が強められていた頃、その原因となっているザフトのクルーゼ艦隊では、クルーゼの命令を通信越しに受けてMS・MA隊が再度出撃の準備を進めつつあった。

 

「…おいおい、ガナーウィザードにクラッシャーウィザード装備多数で、更に新型のMAまで出撃かよ」

「何だ? いつからヘリオポリスは要塞になったんだ?」

 

 それを見たディアッカは愉快そうに笑うのに対してメアリは少し目を細めていた。

 

「あれだとヘリオポリスにも相当な被害が…」

「要塞でなくてもあんなの作っていたのがばれれば当然だ。ましてやガンダムフレーム搭載機がもう一機あったとあっては次に何が出てくるかわからん。ところでルイスとアスランにガルマはどうした?」

「ガルマとルイスは今も奪取した新型の解析に託けて調整中だ。アスランの方はさっきからいないが…」

 

 これから起きるだろう戦闘の内容にニコルは表情を曇らせるのに対し、イザークは皮肉そうな笑みを浮かべるが、今この場にいない名を上げた三人に話が移ると表情が訝しんだ。

 

「…全く、ベヒモスの周囲の物体の形状を分子結合レベルで操作できる能力を元に開発したという、この無線操作兵器の捕獲対象のメインコンピュータを操作できるという機能…発想自体はいいのにプログラムに粗やノイズが多すぎて宝の持ち腐れになってるぞ」

 

 一方その頃、この世界ではクルーゼ艦隊所属の赤服エースパイロットの一人であるガルマ・ザビは、電脳調整用頭環(アルファ)を付けた状態で、自分がヘリオポリスより奪取したGの一機であるルーラーのコクピットから愚痴っていた。

 

「きゃ!?」

「ん? どうした? 動いているザクにぶつかったかルイ…!?」

 

 その途中で自分が奪取した機体の調整を終えたルイスの可愛い悲鳴とMSの歩く地響きを聞いてガルマは顔を上げるが、そこで彼が目にしたのは同じGの一機であるイージスがザクに混じって動いている姿であった。

 

「何? アスランが勝手にイージスへ乗り込んで出撃しようとしているだと!? 直ぐにつなげて止め…!?」

 

 艦橋よりその報告を聞いたアデスは叱責するがそれは上官の手で遮られてしまう。

 

「…いや、面白そうだからこのまま参戦を認めるとしよう。データの吸出しも終わっているしな。銀連製機体による戦闘もどのようなデータが得られるか興味深い」

「…は、はあ…」

 

 幾度となく武功を上げつつも気まぐれなクルーゼの即興な思いつきに、アデスは今回もため息交じりに受け入れるほかなかった。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月25日昼(帝国暦952年1月25日昼) 銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 軌道都市(コロニー)ヘリオポリス アークエンジェル○

 

「…お断りします! 何で私達がまたあれに乗って戦わなくちゃいけないんですか!?」

 

 ザフト側が進めている再出撃の準備で波乱が生じてから数分後、まだ物資の積み込み作業などが続いている銀連宇宙軍艦アークエンジェルの艦内でキラが声を荒げていた。

 

「…そうは言っても、今現在戦える機体はあの2機しかなくて、それを操縦できるのはあなた達二人しかいないの…」

 

 対峙しているマリューは沈痛とした面持ちで、けれども他に代案がないという様子で言葉を吐いていた。

 

「ラミアス少佐! やはりこのようなことは無茶です! このような子供! 更にコーディネイターで挙句に一人はアーヴである二人に任せるなど!」

 

 一方、キラとリュールには聞き触りが良くない内容混じりながら、また参戦などしたくない二人の立場を押す主張をナタルがしてくる。

 

「じゃーそれではバジルール大尉、代案は?」

「フラガ大尉が乗られれば…」

「おいおい、俺の身体は一人分しかないぜー。それによー俺にあんなのが動かせるわけねーだろ」

 

 それに対しムウは声音こそ軽いままだが瞳の色は深刻そうな感じでナタルの主張を否定にかかる。

 

「この嬢ちゃんにボウズが書きかえっていうOSを見てみろよ。あんなのが普通の人間に扱えるわけねーだろ。特にあのバルバトスってのOSだけじゃなく操縦機器系統とかアーヴじゃなきゃ動かせないように設定されちまってるぜ。それによー映像に残ってる動きなんざしたらそれ以外は良くてシェイクか悪けりゃ中でぺしゃんこだ」

「…ッ…それでしたらストライクを元のOSに戻してフラガ大尉が…」

「俺はよー今回、奪われたのや艦に先へ運び込まれていた量産型も含めたMSのパイロットの新米連中の護衛をした時期にあいつらのシミュレーションや実機演習での動きを見たけどよー。あいつら皆のろくさ動かすだけで四苦八苦って感じだったぜー。そいつらもさっきの戦闘で乗り込む前に輸送船ごと全員お星さまになっちまったけど…仮に乗れていても今頃生け捕りのついでに捕虜になってる頃合いだろうなー」

「何で大事な最新鋭機のパイロットまでそんな不足してるってのに対異夷(ゼビーシュ)戦だけでなく対人類戦争まで始めちゃったんですかあんたら?」

「「「…………」」」

 

 そのムウの軽い口調だが内容が笑えない反論に影響されてか、リュールは同じような口調で辛口で突っ込むが、銀連側の士官三名は表情こそ別だが口籠る。

 

『ラミアス少佐! ヘリオポリスに向けて再びザフトMS部隊の接近が確認されました!』

「…まーその辺の話は後で暇が出来た時の酒場の愚痴でもするとして、バルバトスはここへ乗り込むときに置いた場所のままですか?」

「…え? 乗ってくれるの!?」

「ッ!? リュール待って! 君が行くことは…!?」

 

 だが、その空気が進むのが嫌になったかのように艦内放送が鳴り響いて危険を知らせると、リュールは仕方ないといった表情で歩きだし、マリューの呆けた声やキラの制止に構わず早歩きになる。

 

「…卑怯です…あなた達は…」

「キラさん…」

「どうせこうなるから…自分達がやるしかないって状況に彼がなるのを見越してたんでしょう!!」

「………」

 

 それを見てキラは背を振るわせだし、吐き捨てるようにそう非難した後にリュールの後を追っていった。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 軌道都市(コロニー)ヘリオポリス大気層○

 

「よし!見えたぞ! 銀連軍の新型艦!」

 

 数分後、高機動兵装EX-M ブレイズウィザード装備ザクファントムに乗ったデニム率いる再攻撃部隊は、ヘリオポリス居住区内大気層を飛行するアークエンジェルを発見した。

 

「デニム隊長! 例の銀連軍新型最後の一機及びアンノウンGフレーム使用機を確認!」

「よし! 近接戦兵装EX-K スラッシュウィザード装備機はストライクを狙え! 砲撃戦兵装EX-A1 ガナーウィザード装備機は新型艦足つき! EX-M ブレイズウィザード装備機とザムザザーは私と共に例のアンノウンGフレーム搭載機を狙う! アスランは機体の実戦確認を優先して無茶をするな!」

「「「「「了解!!」」」」」

「…了解」

 

 デニムが目標を素早く発見して指示を出すとザクは素早くフォーメーションを組みながらそれぞれの獲物に襲い掛かるが、アスランは応答しつつも浅くはない葛藤の色が表情に浮かんでいた。

 

「ザフトMS部隊を確認! 数はザク20機! 他に情報にない大型モビルアーマー1機! 更にイージスです!」

「!? そんな…もう実戦投入してきたの!?」

「今はもう敵だ! 切り替えろ!」

「! ゴッドフリートをコロニー内最小被害数値設定で起動! イーゲルシュテルン全機起動!」

 

 それはアークエンジェルの艦橋にあるCICの面子にも伝わり、味方になるはずだった機体が早くも敵として襲い掛かってきたことにマリューは驚くが、ムウが叱咤すると唇を噛みつつも素早く指示を出す。

 

「! デニム隊長! 敵艦足つきの主砲がこちらに向けられています!」

「狼狽えるな! パッション! グレープ! アボカド!」

「「「了解!!」」」

 

 一方のザフト側はそれに気づきつつも動じる様子を見せず、ザク達はその今度は共に出撃してきた新型の大型モビルアーマー“ザムザザー”の背後に隠れるようにフォーメーションを変え始めていく。

 その先頭に立ったザムザザーは、巨大なハサミを胴体から×字状に4本伸ばした緑色の蟹のような形状をしているのは別時間軸と同じだが、この世界では所属が違うためか目に当たる部分には巨大なモノアイが付いており、それがぎろりとアークエンジェルを見据えた瞬間にその砲塔が火を噴いた。

 

「ゴットフリート! 撃て(てぇ)-ーー!!」

 

 マリューの命令を受けてアークエンジェルの二つある主砲二連装ビーム砲で計4本の極大なビーム砲が、ザムザザー目がけて一斉射されようとした。

 

「! パッション機長!!」

「狼狽えるな! “シュナイドシュッツ”使用!」

 

 それをザムザザー機内から察知したパイロット達が機内の空中影像に半透明のシールド状の大きなアイコンを生じさせ、それを押すとザムザザーの前面に薄青い半透明状の光の壁が生じ、それは正面から叩きつけられたアークエンジェルのゴットフリートの大型ビーム砲を四散させて無効化した。

 

「な!?」

「嘘だろ!?」

 

 アークエンジェルクルーは艦内の拡大カメラ映像でそれを見て我が目を疑った。

 

「ふははは! 見たか! このアドゥカーフ設計局最新モビルアーマーザムザザーの威力を! 反陽子砲や陽電子砲の直撃すら弾き返すこの鉄壁の盾“シュナイドシュッツSX1021”で叩き潰してくれるわ! これもあの血のバレンタインで四方八方の恨みを買った貴様らの身から出た錆びだ! ナチュラル共!!」

 

 そのアークエンジェル側の驚愕を見抜いたかのように、ザムザザーを動かすパイロット三人組を率いる機長パッションは、歓喜と嘲笑を全開にしてモニターに映るバルバトスに襲い掛かった。

 

「いや!? その戦艦のビームをMAで弾くのって2年くらい早くない!?」

『この状況で何を言ってるの!?』

「…え、あ…いや…何でだろ…? これと似たような光景をなんかアニメとかで見たことがあるようなー…」

 

 一方のバルバトスに乗るリュールは妙な既視感に突き動かされて機内でそう絶句して、キラから通信機越しに突っ込まれるが、その理由を今の彼はまだ思い出すことは出来ていなかった。

 どうやら、リュールはドゥリュースとしての記憶を取り戻してはいたが、自分が転生者であるということまでは思い出せてはいなかったようであった。




種だけでなく種死要素まで出してしまった今回のお話ですが、次回はあの生え際が心配な種本編副主人公角のあの子の疑惑が確信を得てしまう予定です。
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