星界の輪廻   作:oosima

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今回の話を書いていて、現実の世界ではよく言われる中立による平和って保つのが難しいって本当に思いました。


054 仮初の楽園の消失

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月25日昼(帝国暦952年1月25日昼)銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 軌道都市(コロニー)ヘリオポリス大気層○

 

「ふはははは! このザムザザーの初陣で落ちる名誉と共に星になれぇ!」

 

 この世界では所属先を中心に幾つかの点で変わった50メートル前後の大型MAザムザザー、その中にいる砲撃手のグレープの咆哮と共にそのハサミが収納されて現れたM534 複列位相エネルギー砲“ガムザートフ”の赤と青を基調とする太い高出力ビームが発射されようとした。

 

「ッ! この角度はまずい!」

 

 それを悟ったリュールはバルバトスを回避させるのではなくその正面に立ち、その四肢など機体にいくつかついたビーム砲やシールドにサーベルなどを付けた複合式兵装“ハーケン”を有線式で発射し、機体の前面で重ね合わせて発射されたザムザザーの大型ビームの方向を変えた。

 

「!? MAであんな破壊力を持たせるなんて…!?」

 

 その結果、人口密集地帯へのビーム砲直撃は避けられたが、代わりにヘリオポリスの天井ミラーの一角に激突し、大きな穴を開けて再び内部の空気が漏れ出し、アークエンジェルの艦長席から見たマリューは驚きを隠せなくなった。

 

「ちぃ! 全くよぉ! あんなの作れるならこっちの新型MSまで欲しがるんじゃねーよ!」

 

 今は同じ環境で指揮を執るムウもその威力に舌打ちしつつ、アークエンジェルの各砲塔を動かしてどうにか迎撃しようとしていた。

 

「ッ! そんな見え見えな砲撃当たるかぁ!」

 

 だが、MS同士での戦闘をあまり想定していなかった一度目の襲撃と違って、デニム達はそれに目ざとく反応して回避するか、もしくはヘリオポリス内部の各構造物を盾代わりに使って防いで見せる。

 

「グレープ! あれらの機体の完全破壊は奪取不可能と判断した場合で今はまだ捕獲が優先だ!」

「も、申し訳ありませんパッション機長!」

「XM518 超振動クラッシャー“ヴァシリエフ” 起動!」

 

 その一方で優勢に見えたザムザザー内部では叱責が飛び、そのやり取りでザムザザーの四肢に付いていた砲塔が収納されて再び巨大なハサミが現れ、真っ赤に高熱化した状態でバルバトス目がけて襲い掛かった。

 

「っ! 今の引き出せる出力限界であれは無理だ!」

 

 その猛烈な勢いで迫りくる赤いハサミを見たリュールはバルバトスを飛び立たせて回避するも、代わりにいた地面のアスファルトがハサミで大きく抉られて周囲に瓦礫や粉塵を撒き散らした。

 

「あいつは放っておけん! ローエングリン準備!!」

 

 それを見たナタルはアークエンジェルに付いている火器で最大の破壊力を持ち、破城砲の異名を持つ陽電子砲を用いようとした。

 

「待って! リュール君がまだ近いわ! それにここはコロニー内部よ!」

 

 だが、マリューが味方誤射とコロニー居住区内での環境汚染の危険さから陽電子砲の使用を取りやめさせた。

 

「…真正面からは無理か。だったら二正面から…!」

 

 一方、リュールはザムザザーの攻撃で生じた煙に紛れて接近し、ハーケンを二方向に分けて射出してザムザザーの真正面とバーニアがある下部分を狙おうとした。

 

「ぬお!? 煙の中から同時に二方向より!」

「ち! 小癪な真似を!」

「甘いわぁ!」

 

 それに砲撃手グレープは驚くが、操縦手アボカドは舌打ちしつつも素早く反応して正面から来たハーケンはヴァシリエフで弾き、機長パッションは別時間軸のとは違って機体の下側にシュナイドシュッツによる陽電子シールドを張ってもう一方のハーケンを弾き返した。

 

「うげ!? 真正面だけじゃなく別方向にもあれは展開可能か…うおおお!?」

 

 それに舌を巻きつつも警戒心を高めたリュールは、別方向からブレイズウィザード装備のザクのビーム砲に狙われているのにも気付いて、いずれもぎりぎりだが躱さねばいけなくなって一旦ザムザザーから距離を取らねばいけなくなる。

 

「リュ、リュースゥ!? 大丈夫…うわぁ!?」

 

 ストライクの望遠カメラでキラはそれを見て悲鳴交じり彼の名を呼ぶが、そこへ再びスラッシュウィザード装備ザクの大型ビームアクス“ファルクス”がその装甲を少なからず削って機体を揺らした。

 

(…! あの連携が取れた動き…星界軍(ラブ―ル)機械甲冑機(ソウォーヴィ)部隊と似ている…! あー、あの時こっちも巻き添えを食った()()()()が無ければ…)

 

 自分とキラを攻撃するザフトMS・MA部隊に連携が取れていることに、リュールはアーヴとして感心しつつ、それを仕込んだだろう同胞(カルサール)及びその多くを激怒させた昨年の事件に恨みを内心で口にした。

 昨年、プラントで起きて第4次星界大戦の始まりとなった“血のバレンタイン”で、銀連軍を退けたザフトも少なからず被害が出たが、民間人の被害についてなら銀連のブルーコスモス過激派の暴走で巻き添えを受けた帝国(フリューバル)が圧倒的に多かったのだ。

 その巻き添えの被害たるや、BETA大戦中であっても、前々回の第二次大戦以前の考え方なら即座に銀連に対して報復戦争を実施し、第二次星界大戦でのドクツ・ゲルマニクスが人道的に見える大航宙復活時代での殲滅報復が実施されていただろうとすら言われている。

 今現在は経済制裁強化で留まっているが、それでも兵器生産で重要なパーツやマテリアルで帝国からの輸入に大きく依存していた銀連圏内の多くは窮乏し、更にザフトが悲劇再発阻止を大義名分としたNジャマー配布による核動力発電使用不可能によるエネルギー不足の深刻化、元から続いている対BETA戦の改善がほとんど見られない戦況もあって、銀連圏の多くの国は“死傷付の死病人”と呼ばれる有様であった。

 他にも、帝国(フリューバル)は国としては第4次星界大戦では(銀連のプラント理事国の多くには超非好意的)中立を保っているが、戦前から帝国外民間からのアプローチでプラントと築かれていたルートを利用し、昨年の事件で激怒した遺族のアーヴ達が続々とプラントに流れ込んで軍事に関する技術や戦法を教え込んでいったのである。

 その結果、別時間軸では個人の高い能力を重んじるばかりにスタンドプレーへ走りがちだったザフト軍は、それを生かしつつもチームワークに基づく戦法を身に付けていたのである(元からこの世界では銀河系辺境などに住まう個々の能力で勝る怪獣やBETA戦でチームワークの必要さはわかっていたので、それを受け入れられる下地があったのも大きい)。

 

「やばい! 二人とも囲まれたわ! バリアント及びヘルダートで支援攻撃!」

 

 それを見たマリューはアークエンジェルの装備で比較的環境破壊の少ないミサイルとレールガンの使用を決意する。

 

「おっと! そうはいかねえ!」

「ああぁ!?」

 

 だが、その動きはアークエンジェル攻略担当組ザクの長射程高威力ビーム砲オルトロスでの攻撃で阻害され、艦橋まで揺れてマリューは悲鳴を上げる。

 

「…まずい、予想以上にザフト側の連携がうまいな。僕はまだどうにか持つけど―――」

『キャアあああああアアァ!?』

「―――おってキラ!?」

 

 その目に見えて悪くなり続けている状況にリュールが今もっとも懸念している存在に触れようとしたその時、そのキラの悲鳴が混乱のあまりに起動したのかオープン回線越しに響いてきた。

 リュールが見やった方角で、キラの乗るストライクが大きくうつぶせで地面に叩きつけられて何十メートルと地面を巻き上げた後が見受けられ、駆動系に異常が出たのか動きがやや鈍くなり始めていた。

 

「(…仕方ない…色々即興で考えたものの中で一番使いたくなかったけど…キラ! ちょっと通信をこっちとだけ繋げて色々聞いて!」

『うわぁ!?』

 

 それを見たリュールは今現在のシステム上の限界を越さない範囲でバルバトスの先駆者(フォアランナー)遺物再利用の魔術科学複合式反重力スラスターを最大限で吹かせ、ストライクの傍によって担ぎ上げると再び飛び立ちながらキラに話しかける。

 

『…ぇええ!? リュリュリュースそれってぇ!?』

「文句があるならもっといい代案を僕に今ここですぐ説明してくれよ!!」

『で…でもぉ…!?』

「あーもー行くから! しっかり気を保って!」

『きゃああああああああ!?』

 

 説明を受けたキラは絶叫マシーンに初めて乗らされそうになった怖がりの子供のような感じになるが、リュールは彼女の賛否がはっきりしないままにストライクを担いだままの状態で、戦闘の影響であちこちに被弾して大分不安定になっているヘリオポリスの重力制御機関兼メインシャフトを兼ねているコントロールタワーから撒き上がっている大きな煙に飛び込む。

 

「…あ、あの動き…微妙な意味での懐かしさを覚える…」

「ええい! 猪口才な真似を! 姿は見えなくても近接用レーダーで位置はわかる!」

 

 それに地球時代度々あった嫌な思い出が蘇った予感を久々に感じたアスランが乗るイージスの真横を、ザムザザーがシュナイドシュッツを全面に展開した状態で通り過ぎて煙に近づいてきた。

 

「きゃああああああああ!?」

「「「「「…え!!??」」」」」

「…あ」

 

 だが、ザムザザーが煙に目と鼻の先まで近づこうとしたその時、その中からストライクが機内のキラに泣き声を上げさせつつ、投げ飛ばされたような感じで飛び出て、周囲のザフト兵達は驚愕してアスランは嫌な意味で懐かしそうな間が抜けた短い声を上げた。

 

「い、いかん! シュナイドシュッツ解除!」

「は、はい! ヴァシリエフ高熱化解除及び捕獲モード!」

 

 それに驚きつつもザムザザーは素早く対応してビームシールドを解除して急速冷却したクローを伸ばして近づいてきたストライクを掴もうとする。

 だが、そうしてストライクに気を取られた隙をもう一機は逃したりはしなかった。

 

「身代わり付き卑怯クローアタアァアック!!」

 

 そのストライクを投げ飛ばしたと同時にその真下に隠れるようにして煙から飛び出てきたバルバトスが、ザムザザーの懐に飛び込んできたのだ。

 

「なぁ!?」

「そんな無茶な!?」

「し、シール…ドオオオ!?」

 

 それで更に驚きつつもパッション機長達は直ちにバーニアを吹かせて回避しようとするも、その一つにバルバトスは手刀を叩き込んで破壊し、行き場を失ったエネルギーは内部で暴発してコクピット内部でも少なからず衝撃が走って部品が飛び回ってパイロットたちの身を傷つける。

 

「続けてキャアアアアアッチ!!」

「きゃあ!?」

 

 そして、それでずれたクローから離れたストライクをバルバトスは再び捕まえて最高速度で離れだしてキラに再び悲鳴を上げさせた。

 

「リュール君凄い!」

「ゴットフリート! ダメージを負って離脱し始めた新型MAに向けて撃て(てぇ)ーーーーーーー!!」

 

 それは艦橋のマリューを驚かせ、ナタルは生まれた好機を逃さずぐ様に行動へ移った。

 

「き、機長! 敵の新型戦艦に狙われています!」

「か、回避し…ぐアアアァアアァ!?」

 

 ゴットフリートより撃ち放たれた緑色の大型ビームは、バルバトスの一撃で内部危機に不具合が生じて動きがのろくなっただけでなくビームシールドまで使えなくなったザムザザーに直撃し、更に大きな火を吹かせて巨体を墜落させ始めた。

 

「や、やった…え!?」

 

 それにキラは初め安堵の声を上げるが、すぐにそれは不安が再び強く出始めたものに変わる。

 

「「「「「うわあアアアアアアアアァア!!??」」」」」

「しまった!」

 

 火を上げながらザムザザーが落ちたのはヘリオポリスのコントロールタワーの中心部分で、内部にあったシェルターまで巻き込んだ証だろう悲鳴を伴う大爆発による大崩壊を起こし、ムウの悲痛な叫びが上がった直後にタワー全体の急速崩壊が始まりだしたのだ。

 

『緊急警告放送です! 当コロニーヘリオポリスのコントロールタワーに致命的なダメージが生じてメインシャフトと重力制御機関が崩壊しました! それに伴って全天候ミラーウィンドが解体されて居住区は真空状態へ移行します! まだシェルターに避難なされていない方は直ちに最寄りのシェルターへ御避難をお願いします! 及び既にシェルターへ避難なさっている方々はー…』

「…そ、そんな…」

『…おい! その声は…キラ!? やはりキラなのか!?』

 

 その急速な崩壊を始めたヘリオポリスにキラの声音に悲痛な色が浮かんだ時、再び弾みでオープン回線になっていたのか通信機越しにアスランの声が割り込んできた。

 

「…え!? その声は…アスラン!? アスラン・ザラ!?」

『やはりその声はキラ! キラなんだな! どうして君がそんなものに…!? そしてあのGフレーム搭載機に乗っているのはリュース…!?』

 

 キラは当然その幼馴染の声に反応するが、ヘリオポリス崩壊に伴い大気層の外宇宙への流出で生じた乱気流にMSも巻き込まれていく。

 

「…っ…これは…」

 

 その内の1機バルバトスに乗るリュールが急速に崩壊していくミラーの向こうに、漆黒の中に星を散りばめた天然のプラネタリウムのように見え、けれども生身の生物はほとんど生きられない死の世界たる“宇宙”を見た。




この世界の主人公、今の身体になる前の人生の影響からか戦闘はめっぽう強いですけど、かなり泥臭いっぽいですね…。
次回より、あの頭が光る少将殿が守る要塞への道中のパートに入る予定です。
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