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「…そんな…ヘリオポリスが…」
ザフトと銀連軍の戦闘で崩壊したヘリオポリスの惨状に、キラはストライクのコクピットにて呆然としていた。
有害な宇宙放射線などから守っていたドームのミラーウィンドウは崩壊して瓦礫となって、本来の低いのに戻った重力に引かれてゆっくりと人気の無くなった市街地へ降り注いで粉塵を巻き上げている。
そして、そうした瓦礫を避けるべく避難所に備え付けられていた救命ポッドは人を乗せた状態で崩壊現場からやや離れた場所に続くトンネルから射出されていた。
『キラ! しっかりして! 混乱でザフトも離れていったから今のうちにあの船に戻ろう!』
「…あ、う、うん…あ? あれは…?」
そこでリュールの声が通信で繋げられて現実に戻ったキラの乗るストライクの前に、大型の救命ポッドが故障している状態で流れてきた。
「…おー! 坊主に嬢ちゃん戻って来たかー…って救命ポッドォ?」
数分後、アークエンジェルのMS格納庫のモニターに艦の近くへ戻ってきたストライクとバルバトスが映し出されるが、その両機は先ほど発見した大型救命ポッドを携えていた。
「…全く、この状況で勝手なことを…すぐに救助隊が来るからそのようなものに構うな!」
一方、連絡が入ってきた艦橋ではナタルが即座に苦い反応を示していた。
『そんな!? 安全装置が壊れてて中の酸素量が大幅に減っているんですよ! それに救命信号装置までいつ壊れても可笑しくない状態なんです!』
そんなナタルになんて薄情なというキラの顔が艦橋内通信映像越しに映しだされた。
「…いいわ、許可します」
そのまま両者の時間ばかりかかるやり取りが始まろうとしたところで、マリューがやや重い表情で許可を下した。
「!? 艦長!?」
「今はこんな議論で時間を潰せる余裕は無いの。それに、レーダー障害がお互い出ている今のうちに一刻も早くあのザフト艦隊から離れなくては」
「ありがとうございますラミアス艦長…!?」
それにリュールが安堵の表情を見せたその時、通信機の調子が良くなったのか彼らが拾ってきた救命ポッドから映像越しに通信が繋がってきた。
『た、助かったっショー!』
まず初めに映しだされたのは、Xと書かれたシャツを着て太っている田舎のオタクな風貌をした少年であった。
『助けて~! このままだとパチ美~窒息死しちゃう~!!』
続けて、亜人の一種(?)と思わしきオレンジ入りの金平糖みたいな女性と思わしいものの泣き顔がドアップで映し出された。
『おいおい嬢ちゃん、そんなに顔を近づけたら向こうが驚くぜ』
その珍妙な亜人(?)女性(?)をドラム缶に目と思わしき部分や簡単な手足が付いた機械系種族と思わしい学ランの少年が注意する。
『…ううううぅ! さっきので俺のさおりグッズのほとんどがァアアアア!!』
更に見た目は柔道家を思わせる筋肉質な巨躯と硬派な顔つきでゲームはせいぜい格闘ゲームしかしなさそうな男が、美少女女子高生フィギュアを片手に泣き顔を浮かべる姿があった。
他にも見た目や取っている行動も珍妙すぎる避難民が多く映し出されてきた。
「ご、ご安心ください。すぐに収容しますのでご冷静に…!?」
その避難民たちにマリューはやや引き気味になりながらも軍人としての責任感からマリューは民間人保護を続けようとするが、突如として彼らからの通信映像にノイズがかかって繋がらなくなった。
『艦長、こちらに愚策がございます。即座にこのトラブルの火種になりそうな方々を今回攻め込んできたザフト艦隊が救助回収するように向こうを探してその近くへ流してきます。上手くすれば向こうに多大な混乱が生じてこちらの追跡どころではなくなります』
「…いぃってリュール君!?」
「リュ!? リュースー!?」
代わりにリュールの非常に微妙そうな顔が映し出され、彼が乗るバルバトスが救命ポッドをもって何処かへ飛び立ちだし、それをひったくられたストライクの中でキラが彼を昔の呼び名で悲鳴交じりに呼んだ。
「…うううう! リュール無事でよかったっしょー!」
「助かってよかったなリュールー! これ記念のところてん季節の味セットー!!」
(…あかん、あのヘリオポリスで初めて会った時も初対面のはずなのに…何かギャグ作品で出たトラブルメーカー的なキャラが現実に出てきたのを目にしたような不安感を覚えてしまったこの面子と同じ艦に…。う…ヘリオポリスで色々トラブルの巻き添えにされてきた数々の嫌な思い出が…)
結局、数分後にバルバトスとストライクは救命ポッドをもってアークエンジェルのMS格納庫に戻り、そこで助けた面々に混じる知人らに囲まれてリュールは非常に胃が痛そうな苦笑いを浮かべていた。
「うおー! これが銀連軍初の量産機かー! ストライクに似ているなー!」
「ザクに比べて大分細いな」
一方、両津は同じ救命ポッドに乗っていた友人らとともに、ここアークエンジェルへ先に収納されていたことで強奪を免れていたMSに興奮していた。
この世界における地球起源人間主体ナチュラル中心陣営である銀河連合で初めての正式量産機MSで、こちら側ではGAT-01の型式を持ったウィンダムは多くの人眼を集めていた。
青と白を基調として頭部に付いたV字型アンテナと緑色のバイザー型センサーでかなりヒロイックな姿かたちをしていた。
「おい! 民間人にあんまそれを触れさせんな!」
「坊主に嬢ちゃん! ノリエガ中佐が目を覚ました! 二人そろって艦橋の会議室に来い!」
それに両津達が触れようしたらアークエンジェル整備班が怒鳴りつけ、避難民たちに取り囲まれていたリュールとキラにお呼びがかかった。
「…え、デッキへ…?」
「…やっぱりそう来るか…」
戸惑うキラとやや諦観が混じっている様子のリュールは艦内警備兵に連れていかれた。
「…え? 二人とも何かやったっしょか?」
「あー、それが実はなー…」
二人を引き離された避難民達はそれに戸惑い、両津はやや気まずそうな表情で理由を説明し始めた。
「…なるほどね、あなた達が今回の件で皆を守ってくれていた子達ね。ありがとう…」
数分後、艦橋にある会議室でキラとリュールはある一人の女性に感謝されていた。
癖が強い赤土色の髪と瞳で普段は陽気そうな美貌が似合うが、今は頭に包帯を巻いて重い表情を浮かべている二十代後半の美女だ。
(…うん、代理で艦長職に付いているマリューさんと同じく…ナチュラル地球人間族だけど綺麗で且つすごいメリハリの利いたボデ―――)
『リュール、何かこの場には関係ないことを考えてない?』
(―――ィ…ってあ、すみません…)
その美女にリュールは危険がまだ去り切ってない状況もあってか男の性分を秘かに刺激されるが、キラにジト目を添えて電脳越しに突っ込まれた。
「…私はスメラギ・李・ノリエガ。銀河連合軍大星洋連邦所属です。今現在の状況のためこの艦を含めたここの全戦力の臨時指揮官に着きました」
(…あれ? 何でこの人のこの名前聞いて…僕は疑似星核粒子炉のことを思い出したんだろう…? 今は帝国しかまだないけど…あの研究は僕がいないこの状況でどこまで進んでいるかなー…いけない。今は今の状況に集中しよう…)
リュールは少し奇妙な既視感に近い感覚を覚えるが、そこで会議室にて空中影像が映し出されて現在の状況が星系図なども交えて表示される。
「…ご覧の通り、我々は一刻も早くここヘリオス星系から最寄りの銀連軍司令部のある基地へ向かわなくてはいけません。そうせねばここへ避難している避難民の方々も安全地帯へ降ろすことが出来ません。そして、ここから最寄りの銀連軍司令部基地のある星系は、中心領域付近第八基地です…。途中で補給のためE.U所属のアルテミス要塞に寄港しますが…当然、その航行中でもザフト側との交戦が起きる可能性が高いです。そして、今現在…我々にとって戦える戦力はあの2機しかありません…」
「…それって、まさかまた私達にあれへ乗って戦えと言うんですか!?」
「ええ、その通り、出来なければほぼ間違いなく皆が死ぬわ」
「……う…」
それを示しながら行われるマリューの説明に、キラが反発を見せるがスメラギのきっぱりとした言葉に口籠る。
「すみませんノリエガ中佐。発言の許可を貰えますか?」
「許可するわ、リュール君どうぞ」
「こちらの生存率を上げるにはあのMSで防戦するしかないのはこっちでもわかります。ですけど、あのザフト艦隊も戦力が見た分だけというのはないでしょう。後続や待機しているだろう分と合流した場合を考えるとほとんど焼け石に水です」
「…ええ、そうですがあの2機以外に動かせるMSが…」
「格納庫に積み込まれているあのウィンダムはどうなりますか?」
「…え? あれはたしかにあとはOSの調整をするだけですが…あいにく乗れるパイロットが…」
「ラミアス少佐、こっちに少しパイロット系で伝手があると言ったらどうなりますか? OSの調整はこちらでも多分できますし…」
「…え?」
それに対し、アブリアルのドゥリュースとしての記憶が戻っているリュールは現実に応じて会議に加わるが、その意外な内容はマリューを戸惑わせた。
「…で、私達に用事があるからここに集まってって言われたから来ちゃったけど…」
「まさかそんな内容とは…」
「いやねえ、昨日の晩に夢の中でよくわからん仙人からお前だけ中の人はあのガンダム乗ったことねーだろみたいなよくわかんねーけどメタくせぇこと言われた後ですけどねー…」
数分後、艦橋会議室には苦笑いを浮かべたセレーナ・フレイズ、ジト目を浮かべている両津勘吉、彼と同じく研究所警備員のバイトで来ていたら今回の事件に巻き込まれたショックが収まり切れてないのか何かやばい発言をしている坂田銀時など、避難民の中でリュールに呼びかけられて集まった彼の知人達が集まってきていた。
その人々の前でマリュー・ラミアスは重そうな口調で再び口を開く。
「…えーっと、先にリュール君より聞きましたが、あなた方は先のヘリオポリス崩壊以前に工業カレッジにあるモルゲンレーテの研究班でMS研究に協力しており、その過程でMSアストレイのOS調整や操縦も経験しているとのことですが、それは本当ですか…?」
「えぇ…まあ、たしかにそうですが…?」
「…今現在、我々の今すぐに出撃できるMS戦力はストライクとバルバトスの2機しかありません。格納庫の方には先に乗せていたウィンダムが数十機ありますが、それはOSの調整が終われば戦闘参加できる状態にありますけど、今現在この艦に生き残って登場している乗員で、それと操縦が出来る人員はいない状況でして…」
「ええ~~~!? それって要するに僕らにあれへ乗って戦ってこの軍艦を守ってって言ってるんですかー!?」
その説明の意図に気付いた一人で、両津勘吉の後輩で彼にアルバイトの規定人数を満たすために無理やりヘリオポリスまで連れ込まれた一人である、日本皇国警察官の一人の
「…そうしなければ、この艦は沈む可能性が高いので…!?」
マリューは沈痛な表情を更に強めて説得を試みるが、それは両津のドアップ顔で一時中断させられてしまう。
「うわ!?」
「この状況からして乗るしかないのはわかりますが、
「え? ほ、報酬ですか…?」
「民間人の我々を強制徴兵して戦わせようとしてんだからそれなりにはずんでくださるんでしょうねぇ?」
「そ、それはー…」
「お、おい両津! 我々ってその言い方…お前はともかく俺達はまだ参加すると決めたわけじゃー…!」
「馬鹿野郎! 儂らは今でこそ警官で予備役とは言え昔はBETA共から市民を守る軍人をしていたんだぞ! こんな若い子達を戦わせて安全圏でぬくぬくなど出来るかぁ!!」
そして、場の中心はいつの間にか両津勘吉に移り、話は別時間軸でのある派出所での物語のように強引な交渉が進められていく。
『…ちょっとリューにー、あたし達は事前に説明を受けたから一応納得はしてるけど何であのおっさんを連れてきたわけ!?』
『…ご、ごめん…あの人にはこっそりにしておくつもりだったけど…先に呼ばれて話をされていた時にそれをもうとっくに盗み聞きされていたようで…。自分も連れて行かないと僕の正体をばらすと脅されて…』
『…脅迫に屈するアブリアルをまさかこの目で見られる日が来るなんて…』
それに表向きはじっと見守っている様子を保ちつつ、電脳空間でネーナがリュールを詰り、王留美が微妙そうな眼差しをそのやり取りに向けていた。
(なんかあの子達…とんでもないことに巻き込まれてる…)
一方、そのやり取りは電脳部分の方は聞かれなかったが、両津の大声もあって、廊下の方にて気になって秘かに追ってきたフレイ・アルスターの耳にも幾分か届いており、彼女に気まずそうな表情を浮かべていた。
今回の話の中でちょっとした触れなかったあのスキンヘッド少将がおられる要塞ですが、次回はそこへ入る前の戦闘…の前の準備のパートに入る予定です(…多分)。