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「くそがアアアァ! 今度こそだぁアア!」
リュールの駆るバルバトスが、メアリの操るベヒモスとミゲルのザクファントムで挟撃され、その間もイージスに攻撃されながらそれに乗るアスランの説得で動揺していっているキラへの心配で地味に状況が悪くなっていっていた頃、アークエンジェルを撃沈させようとイザークがデュエルの中で苛立ち全開の咆哮を上げていた。
「うおおおおおお! 何のおお! 鼻毛真拳応用ウィンダムV字アンテナガード!!」
そのイザークのデュエルが振るうビームサーベルを、アークエンジェル防衛組に属するウィンダムの一機のV字アンテナが触手のように伸び、それでビームサーベルを器用に操って防いで見せていた。
「おいおい!? 何だよあの機能は!? 形状操作系魔術の応用かぁ…うお!?」
それをバスターの望遠カメラで何度か見つつも、慣れる気配のない微妙な顔をディアッカは浮かべていたが、そこで別のウィンダムのビームライフルが狙ってきたので回避に意識を切り替えた。
「あーもう! うちのビックリ奇人組に目が向いていたからやれると思ったのにー!」
「大変そうだねあんたもー」
そのウィンダムの中でセレーナは悔しそうな顔を浮かべていたが、近くを飛ぶ別のウィンダムの内部で、青いところてんを簡単な人型に切り取ったような姿をした男がのんきにお茶をすすっていた。
彼の名はところ天の助。
食品系の新種の亜人種の出身で、リュール達とはヘリオポリスで知り合って友人になった一人だ。
天の助もヘリオポリス工業カレッジでのMS研究でパイロットも含めてバイト感覚で参加していたので、同じ伝手で参加していたある友人に無理やり引っ張られる形でウィンダムパイロットにされてしまったが、本来は争いごとを好まぬ性格であった。
「まずはあの消極的な感じがする敵の量産機を撃墜します!」
「ぶふー!?」
但し戦闘中のMSの中でお茶を飲むという行為が非常識なのは変わらず、それをオープンチャンネルで見せつけられたニコルが戸惑いつつも搭乗しているブリッツで向かいだすと、天の助はお茶を噴出してコクピット内部を汚した。
「ちょっと待って! 何であの子さ俺を狙いだしたの!? ねえねえ!?」
『泣き言を言っている暇があったら対処しろところ天の助!』
『いい加減まじめにやれー! 鼻毛真拳応用V字アンテナ型スローイングー!』
「ギャアアアアアアアアアア!?」
続けて嗚咽でコクピット内部を更に汚し始める天の助だが、艦橋からナタルが怒鳴りつけ、同じくいらだった様子のサングラスを掛けて黄色いアフロを生やしている青年の駆るウィンダムのアンテナが触手のように伸び、天の助のウィンダムを縛り上げてイージス目がけて投げつけた。
「くっそー! こうなりゃ最終手段! プルプル真拳奥義ー!」
「っ! これは魔術反応!」
そしてやけっぱちになった天の助がウィンダムのバックパックより何かを取り出し、ニコルはそれに警戒を見せるが彼が次に目にしたのは信じられないものだった。
「MSサイズ媚売り!!」
天の助の駆るウィンダムが土下座の姿勢を取ってMSサイズはあるお中元セット風のところてんグッズを差し出したのだ。
「「「「「……………………」」」」」
その予想の斜め上を行く光景に、周囲は敵味方問わず呆気に取られて少しだけだが沈黙と停止に陥った。
(…ふ、完全に決まった…!?)
その中で天の助はMSの中でも綺麗な角度で頭を下げていたので見えなくなった顔にフッとした表情を浮かべるが、それを遮るように彼が乗るウィンダムはガシャンと何かに捕まれた。
「…とりあえずこれもハッキングし捕獲して持って行く。量産機のデータも回収出来るならした方がいいだろう」
「…あ、どうも…」
ガルマ・ザビが操るこの世界でのGの一機でザフトに強奪されたものの一つであるルーラーが、その両肩に就いた巨大な腕部上のマニピュレーターで天の助の乗るウィンダムを拘束し、ハッキングを掛けて動きを封じるとニコルの了承も得てすぐにザフト艦目がけてスラスターを勢いよく吹かしたのだ。
『緊急警告! ところ天の助さんが乗るウィンダムがルーラーに捕獲されて今現在敵艦隊に向けて連行されている途中のようですわ!』
「何だとぉ!?」
「…あー、まず捕虜になるとしたらそうかなーとは思ってたけどまさかこんなに早くと…ぬおおお!?」
その事はアークエンジェルの艦橋要員として加わっていた一人である王留美によって味方のMS隊員に伝えられ、両津は驚いて、リュールは嫌な予感が当たった渋そうな表情を浮かべるが、そこでメアリの駆るベヒモスの蹴りが見た目の大きい体積と質量以上の衝撃を与えてきた。
「リュ、リュールー!」
「君の腕ではあいつを気にしながら戦う余裕は無いぞ! あいつが心配なら観念して来るんだ!」
「うわぁ!」
キラはそれに心配げな声を上げるが、その間にもアスランのイージスに攻撃を仕掛けられて焦燥でもっと疲労が高まっていく。
「…くそ、攻撃を受けるたびに機体が重く…Gフレーム使用機には操縦者が魔術師の場合はその能力を高威力で反映する機能が付いてるけど…これは元から機体の方についてた方か…」
『そこまで教える義理も義務もないな(…気づき始めたか…だが! 対策を打たれる前に沈んでもらう!)』
一方のリュールもキラの心配が出来る余裕が少なくなっていくのを感じ取り、彼女への援護も時間の進行と共に少なくなっていく。
そうなればキラの駆るストライクの動きが激しくなってビームライフルを連射するが、その事で機体が彼女にある警報を発し始めた。
「っ!? 機体のエネルギー供給が追い付かなくなってる!?」
ストライクのエネルギーチャージ残量ゲージが少なくなっているのにキラが気づいて搔いている脂汗の量が増える。
この世界のGは
だが、Gフレーム搭載機であるバルバトスやベヒモスと違い、他のGはエイハブ・リアクター以外が現代技術やそれに基づく
短時間で高出力のエネルギーを引き出すと、それに比例してエイハブ・リアクターから発生される熱エネルギーも飛躍的に増加し、機体のフレームなどにかかる負担が増加するのだ。
そうなったらGは機体の保守のために戦闘などに回すエネルギーを大幅に減らして鎮静化を優先する状態に移行する。
「ああ!? そ、装甲が…」
そして、ストライクの表面を守る
「これは! よし!」
「うわぁ!?」
それを事前の期待解析の情報で見抜いたアスランは即座にイージスの可変機構で高速移動に適したMA形態に移行し、機体前面に就いた4本脚のようになった四肢でストライクを拘束してヴェサリウスへの帰投を始めた。
「こちらアスラン・ザラ! ストライクの捕獲に成功した。これよりヴェサリウスに届けたいので支援を求む!」
『こちらヴェサリウス、通信内容を把握しました。ジーパン隊員とソリッド隊員にファックス隊員、至急イージスの僚機となってストライク回収を援護してください』
そのザフトの素早い動きは当然バルバトスの望遠カメラでリュールも確認して歯噛みさせた。
「っ! させるか! すこし怪我してこっちを恨むかもしれないけどアスラ―――!」
『肝心なところで毎度身の回りが薄くなりがちだ』
リュールはバルバトスの複数の有線式ハーケンを束ねて高出力長射程ビーム砲を撃ち放って、イージスからストライクを引き離そうとするが、その隙を見逃さなかったメアリの駆るベヒモスの大
「―――んってぬおおおお!?」
その一撃の直接的なダメージは装甲とGフレームが持つ魔術耐性強化で避けられるが、消しきれない衝撃波と圧迫感でリュールは直に内臓を殴り飛ばされたようなダメージを受け、嘔吐して意識が大きく揺らいだ。
「待ってたぜぇ! クロープラズマフィールド!!」
それをバルバトスが殴り飛ばされてきた方角へ先に回り込んだミゲルのザクファントムは見逃さず、捕獲やパイロット直接攻撃に特化したハンターシルエットに付いている二つの有線式大型複合兵装クロ―をバルバトスに撃ち込んだ。
「…ぅ…ぐ…!? こ…れは…アアアァ!?」
するとバルバトスを囲むように球体状の雷性質の魔術空間が生じて内部に電流が直接流され、それを浴びたリュールは全身を雷に打たれたような激痛を覚えさせられて身が鈍くなり、機体の動きもそれに比例したようにほぼ動かなくなってしまう。
「こちらミゲル、水色Gフレーム搭載機を捕獲した。こちらもヴェサリウスに回収する」
そして、成功を確信したミゲルのザクファントムも、バルバトスをクローに掴んだままの状態でヴェサリウスへの帰投を開始した。
「アスラン離して! 私達はザフトには行かない!」
『静かに! 君達は僕らの仲間だ! 向こうに…ナチュラルと一緒にいるのがおかしいんだ! あの船に居たら君達も落とさなくちゃいけなくなる!』
「そんなの! あの船には友達がいるのに!」
味方から遠ざかりつつある状況にキラが叫び声をあげるが、通信越しにアスランの苦そうな声が返されるのに比例して増々イージスの速度は上がっていく。
『…あの血のバレンタインが起きた日…あのルーラーに乗るガルマは父を失った…。あちらのベヒモスの彼女は…メアリは姉を…、ルイスは家族全員が亡くなった‥。俺の母も…あれでユニウスセブン中に降り注いだ“業火の
だが、ヴェサリウスの姿が大きく見え始めたところで、その横側に広がるデブリエリアより凄まじい大爆発が起きた。
「のわああああ!?」
「な、何だぁ!?」
「艦首を下げろぉ!」
「各機フォーメーション全解除! 回避を優先だぁ!」
その大爆発はすさまじく、大小様々なデブリが連鎖反応で周囲に高速で撒き散らされ、ゲートの前に布陣していたザフトのクルーゼ艦隊は陣形を大きく崩されていく。
「…!? 今のは…作戦が―――!?」
『おい! 何をぼさっと捕まってるんだこの馬鹿!』
「―――あ…フラガ…少佐…」
「のわぁ!?」
それにバルバトスの内部で今も動けなくなる程度の電流を流され続けているリュールも反応した直後、ムウ・ラ・フラガの駆るメビウス・ゼロが飛んでくる瓦礫に紛れて姿を現してミゲルのザクファントムを撃ち払い、バルバトスを拘束から解放した。
「…! これなら…!」
リュールは電撃から解放されるとまだ痛みが続く体だが構わず動かし、重力制御スラスターを全力で噴かせてストライクを捕まえて進んでいるイージスに接近した。
「キラ! 舌を噛むな!」
「…え!? リュー…うわぁぁ!?」
「ぬアアア!?」
そして、バルバトスはイージスに高出力ビーム攻撃属性を帯びた緑色の稲妻を纏った蹴りを叩きつけ、驚くキラが乗るストライクを拘束から解くとその手を掴んで即座に味方の部隊に向けて全力で逃走しだした。
「おいおい!? プラズマフィールドが効いてないのかよ!?」
『いや…! そんなはずは…(あの時よりも更に丈夫になっているのか!?)』
それにミゲルとアスラン達も驚くが、一方のアークエンジェル攻撃に回っていた方にいるイザーク達も同様であった。
「ヴェサリウスをはじめ艦の多くがさっきの爆発で複数損傷!? 何が起きた!?」
『…どうやら敵はヴェサリウス隣りのデブリエリアに紛れていた廃棄された燃料製造コロニーに別動隊を回して残存燃料を爆発物に変換して起爆した模様! 先ほどメビウス・ゼロ含めた複数の敵量産型が飛来してきたデブリに紛れて飛んできたので恐らくその隊がしたのかと…!?』
イザークの問いにムサイ級突撃艦の一隻の艦橋要員が答えていた最中、アークエンジェルの陽電子砲が全開で撃ち放たれた。
目標は、先ほどの大爆発でザフト艦隊にデブリを多数飛ばした影響で、がれきなどの密度が薄くなっていたデブリエリアの一宙域で、陽電子砲の直線での砲撃を受けたそこは大きく進路を開けた。
「ああ! 先ほどの大爆発でデブリが薄くなった宙域に敵艦の足つきが高速で向かいだしました!」
「我が艦含めて艦隊は先ほどの大爆発で飛んできたデブリ複数に周囲の進路を大きく阻害されて今すぐの追跡は困難です!」
「…ええい! 姿が見えないかと思ったらムウめ! 体勢を立て直す! 全機を艦隊へ呼び戻せ!」
その動きを見ながらもザフト側は状況からして対応できず、苦虫を噛んだ表情のクルーゼの命令を受けてヴェサリウスから撤退信号が出された。
「!? 先ほどのがそこまでのダメージを…!?」
『デ、デニム隊長…』
「全機! 艦隊へ帰投する! 健常機は損傷機を随伴しながらだ!」
それを受けてすぐにザフトのMS隊も即座に撤退を開始するが、その流れに反発するものもまたいた。
「撤退だと!? ここまでコケにされてこのまま手ぶらで帰れるか!」
『イザーク! 艦隊の被害は無視できる状態ではありません!』
「うるさい! せめて連中にも…!?」
その反発しているものの一人の望遠カメラに、先ほどの爆発及び突破口発生を受けてアークエンジェルへの帰投を始めた両津率いるMS隊、特にバルバトスとそれに随伴されて帰投中のストライクの姿が目立って映された。
次回は、今回の戦闘の終わりと以前に搭乗していたあのアニメのキャラ達が久々に登場する予定です。