星界の輪廻   作:oosima

59 / 97
今回、あのハジケリストがピンチの場面で活躍します。


059 奇計が変える戦場

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月25日夜(帝国暦952年1月25日夜) 銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 デブリエリア宙域付近 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル防衛線○

 

『た、助かったよおお! あのままザフトに連れていかれたら絶対解剖とかされちゃってたよ俺~』

「あーもーその話は良いから。それよりも今は艦に戻った後での言い訳を説明した方がいいよー」

 

 ムウたちによる宙域の地形を一部変えるまでの奇襲作戦が成功してザフトが撤退を始めた時、リュールは乗るバルバトスでキラが乗るストライクと天の助が搭乗しているウィンダム一機を助け、味方と共にアークエンジェルへの帰途についていた。

 

『あ! リュール君達も戻って来れたのね!』

「あーうん、セレーナさん達も無事そうでよか…!?」

 

 だが、両津率いる迎撃部隊がアークエンジェル付近にて防衛部隊と合流したその時、バルバトスがロックオンされたことを報せる警報がその機内で鳴り響いた。

 

「…っ!? この反応は…!?」

 

 リュールが望遠カメラでその方角を見やると、撤退中のザフトMS部隊に混じるデュエルがビームライフルをバルバトスに引っ張られているストライクに向けているのが見えた。

 

「まずい! アークエンジェル! ストライクが狙われているから新たな冷却代わりに他のシルエットを回して!」

『!? 無茶ですわ! こちらから射出しても今からでは間に合いませ…!?』

 

 リュールが艦橋にいる王留美に要請したその時、別のウィンダムが割り込むようにして飛んできた。

 

「俺に任せろ! トランスフォーム!!」

 

 そのオレンジ色の金平糖のような亜人種と思わしい少年が駆るウィンダムが何故か光り出してその中にある影が変わり始める。

 

「こいつで終わりだぁ!」

 

 そこでデュエルのビームライフルに付いている175mmグレネードランチャーを発射した。

 

「な!?」

「いかん!」

「避けろぉ!」

 

 それに気づいた周囲の警告もむなしく、バルバトス及びそれが引っ張っているキラのストライクと天の助のウィンダムの三機は大きな爆炎に包まれた。

 

「ああ!?」

「キラさんにリュール君!?」

 

 アークエンジェルの艦橋にもその光景は見え、ミリアリアとマリューが悲痛な声を上げる。

 

「…ふふ、これで終わったな…!?」

 

 それとは対照的にイザークはニヤリとしたが、それは次に鳴り響いたロックオンされたことを告げる警報で搔き消された。

 

「うわぁアアァアアアア!!」

 

 そして、続けて爆炎の中よりPS装甲が回復したような様子で、オレンジ色の金平糖やらウィンダムが混ざったような巨大なビーム砲を構えたストライクが出てきて、デュエルに向けてその砲火を撃ち放った。

 

「な、何ぃ!?」

 

 イザークはそれに驚きつつも砲口が火を噴く前に全力で回避するが、一部は避けきれずそのオレンジ色の巨大なビームでデュエルは右腕を焼き溶かされてしまう。

 

「キラ! 落ち着いて! 向こうももう諦めが悪そうな残りが撤退を始めたよ!」

「ああ!? リュ…リュースゥ…」

「アークエンジェルに他の皆は戻り始めてる。僕たち戻ろう」

「あ、うん…あ、ありがとう…え? この反応は…?」

 

 そのままオレンジ色のビーム砲を連射しだしてザフトMS部隊の残りを撤退に追い込んだところで、リュールがバルバトスで寄ってきて落ち着かせると、幾分か冷静になったキラの視界にまた新たな姿が入る。

 

「…え? あれってうちの学校の作業用宇宙船…?」

 

 キラが望遠カメラで確認したその宇宙船は、明らかに損傷した状態で宇宙を彷徨っている状態で、内部から人の反応も感じられた。

 その民間船も連れてMS部隊はアークエンジェルへ戻った後、同艦はアルテミスに向けて平面宇宙へと入った。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 デブリエリア宙域 クルーゼ艦隊 旗艦ヴェサリウス○

 

「くそぉ!」

 

 戦闘が敵に平面宇宙へ逃げきられるという結果に陥ったザフトの艦隊はその後始末に追われていたが、旗艦の内部でイザークが荒れていた。

 

「落ち着いてくださいイザーク」

「これが落ち着いていられるかニコル! あれだけの戦力差で一艦も仕留められずにこの体たらくだぞ!」

「それでやっと捕まえた残りのGも結局逃げられたわ」

「そういえばルイス、アスランとメアリにガルマは何処だ? せっかく捕まえた敵機に逃げられて傷心中か?」

「ディアッカ、三人とも今はクルーゼ提督に呼ばれて艦長室です。何やら、ヘリオポリスから不審な動きが見受けられるとのことで…」

「おい! 4人とも無駄口を叩いている暇があるならさっさとこっちで作業しろ! お前たちの機体も損傷してるんだから次に不良で落ちたくなければキリキリ働かんか!」

「うげ! すみませんデニム隊長!」

 

 そのまま軽口やら怒鳴り声やらを叩き合う赤服の面子だが、ベテランの先輩らに遠慮なく怒鳴りつけられて自分の機体へ回るのであった。

 

「アスラン・ザラ、到着しました」

「ガルマ・ザビも同じく、メアリ・サンディも共に」

「よし、三人とも入り給え」

 

 一方その頃、クルーゼの執務室にイザーク達とは一旦別れた三人組が入室してきた。

 

「戦闘が終わってから休む間もなくすまんな。だが、ヘリオポリスでの敵MS捕獲作戦の時より君たちの行動には不審な行動が見受けられるからな。懲罰を課すつもりはないが話は聞いておきたい」

「「「……………」」」

 

 入室した三人はその問いに苦渋の色を見せて少し口籠るが、やがて口を開く。

 

「…申し訳ありません。ヘリオポリスのMS研究施設侵入の時に思いもよらぬことがありました…」

「ほう? 思いもよらぬ事とは何かねアスラン」

「…あの捕獲に失敗した最後のG…ストライクに乗るのはキラ・ヤマト。そして…新発見されたGフレーム使用機の青い機体に乗っていたのは…リュース・ポートガス*1。彼女と彼は…私とアスランが幼年期に地球のコペルニクスへ留学していた時期の学友です…」

「ガルマの言う通りです。まさかあのような場所で再会するとは思いもよらなくて…それでどうしても確かめたくて…」

「…っ…ほう、そうか。戦争とは皮肉なものだな…」

 

 理由を聞いたクルーゼの声音には、憐憫というより意外そうな色が微かに滲むが、それに三人側は気付くことはなく最後の一人が口を開く。

 

「…左様です。私もこちらの二人とは経緯は違いますが、彼の方…リュースとは幼少期からの親友でした。そして…彼の生まれは非常に特殊で、もしも彼でしたら我が軍にも無関係ではいない重大なものだからです。それを正確に確かめる必要があったので…」

「…メアリ? 産まれとは?」

「私はプラントに移民する以前、帝国で士族として生活していたのはそちらもご存じですが、親が早世して姉もプラントで技師として働いていた経緯で、親が付き合いのあったスュルグゼーデ王家の世話になっていました」

「ああ、それも知っている。確かあそこの王子の一人が君と懇意だったのも含めてな。だが、その御仁は去年のあの事件でお亡くなりになられたと聞くが…?」

「…ええ、私も…あの現場にいた身ですから…そこで最後に見たものですから、私ももう会えないと思っていました…。ですが、ヘリオポリスでまた見るまでは…」

「…………」

 

 メアリの重い言葉が続くにつれてクルーゼの口元に微かにだが興味深そうな色が浮かぶが、彼女はそれに気づかずに最も重要な事を口から放つ。

 

「…彼、アブリアル・ネイ=ドゥアセク・ソドール子爵・ドゥリュースは、地球留学時代に…リュース・ポートガスと名乗っていました…」

「…ほう! たしかにそれは我が軍にとっても無視できない事実だ」

 

 その重要事項にクルーゼは一瞬だけだが口元に好機を見出した笑みを浮かべたが、すぐに消えて彼女達に寄り添っているような沈痛とした面持ちになる。

 

「…そうか、ならば次から対足つき戦において君達は外そう。あれの対策はおろそかに出来んが、これは我々だけで処理できる案件ではないから一旦本国に戻る必要がある。本国からの超跳躍ゲート座標の調整も直に終わるのに合わせてな」

「…え!?」

「な…」

「…っ…」

 

 そして、クルーゼが寄り添うかのように口にした内容はアスランとガルマを驚かせ、メアリの表情に苦虫を噛んだ色を浮かばせる。

 

「今回の件で帝国とオーブが本国に対し強く抗議しているが、それ以上に今回の銀連軍新兵器極秘開発の件で向こうの両国間は大きく動き出している。それに、今回のヘリオポリス崩壊の件や新兵器の報告のためにもどの道ある程度は戻らねばならん。遺憾だが先の戦闘で多くの被害が出たからその修理や補給もあるからな。君らには銀連軍兵器の報告のためにも一旦本国へ戻ってもらう」

「…お待ちください! それなら我々全員が戻る必要はないはずです! 私にあの二人の説得をさせてください!」

 

 クルーゼは理詰めで命令を補強するが、別の太陽系に人類が留まっていた場合の時間軸と同様にアスランが懇願し始める。

 

「…キラとリュースは…あの二人はきっと利用されているだけです! 友人がいるとか…彼女…キラの両親はナチュラルで…、リュースはその二人の所で長く面倒を見られていたから…! 二人とも優秀だけどお人好しで…利用されていることに気付けていないから私が説得したいんです! 二人ともコーディネイターだからわからないはずがありません!」

「…そうしたいのが当然の気持ちだろうな。だが、説得に応じない場合は…?」

「…その時は…もちろん、私が討ちます…」

「「…………」」

 

 そのアスランがクルーゼに最悪の事態を問われて口にした言葉を、メアリとガルマは重い表情を浮かべるが横やりすることは出来なかった。

 

(…しかし、まさか…あのもはや数えるほどしか残っていない“D”の血脈の一人があれだけの惨劇で生きていたとはな…。昔に比べて我慢強くなっているようだが、思ったよりも帝国には()()()()()に早く加わってもらえそうだな…)

 

 数分後、三人がいなくなった後の執務室でクルーゼは愉悦の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 オーブ連合首長国 ヘリオス星系 デブリエリア宙域付近 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル○

 

「…しかし、戦闘がどうにか犠牲なしで終わったかと思えば、また拾い物をしてくるとは…」

 

 アスラン達がクルーゼに呼ばれたばかりの頃、ナタルは味方MSが戻ってきたぁアークエンジェルのMS格納庫で、呆れの色を見せていた。

 その理由は、クルーゼ艦隊をどうにか退けて平面宇宙に繋がるゲートに入る直前にて、キラがヘリオポリス工業カレッジの壊れたばかりと思わしい作業用宇宙船を救助して同艦へ連れてきたためだ。

 

「…おーし、おっさーん、こっちの壊れた鍵もどうにかばらしたぜー」

「おー、戦闘から戻って来たばかりで悪いな首領(ドン)パッチ」

 

 そして、その宇宙船の壊れて開かなくなったドアを、先の戦闘でキラを助けたオレンジ色の金平糖みたいな形をした亜人種と思わしい少年の首領パッチが、その身を変形させて生じさせたカッターで切り裂いていっていた。

 

「え、えーーっとリュース…じゃなくてリュール…あの人は何? 何かさっきもあの人が乗ってたウィンダムが元から乗っている魔術反映機能だけじゃ説明しづらい魔術干渉減少を見せていたし…?」

「ああ、あの人は僕もいたヘリオポリスにモルゲンレーテ研究所支局で被験者も兼ねて働いていた“マルイモノ”って希少な亜人種出身の首領パッチって人。マルイモノって肉体や霊体の構造がシンプルだけどその分発展性が高くて、その応用で一時的に周囲のものを取り込んで融合したり、一時的に進化したりすることも出来るんだ」

「へー、本当にいろんな人たちがいるんだー。不思議ー…」

「おい、開いたぜー」

 

 その首領パッチにキラが不思議なものを見る表情を浮かべて、リュールが説明していると彼女が発見した宇宙作業用船の最後のドアが開いた。

 

「…皆ぁ! やっとドアが開いたわぁ!」

 

 そして、その宇宙作業船の中から出てきたのは、リュールにとって懐かしい顔だった。

 

「…あ、ルナ! 無事だったのねぇ!」

「フレイ!」

 

 宇宙作業船から出てきたのは、崩壊したヘリオポリスの工業カレッジに留学していて、嘗ては地球での帝国と各国の青少年懇親会で銀連側特待生枠の一員として参加した経験があり、その時はドゥリュースという名だったリュールと親交を結んだ一人であるルナ・サヴィアであった。

 どうやら戻ってきたMSパイロットたちの身体魔術チェックで来ていたフレイとは友人のようだ。

 

「…いったい何があったの!? 急に通信障害が出てヘリオポリスと繋がらなくなって…さっきの爆発で飛んできた破片で船も…」

「ひいいぃ!? 何かザフトの船が近くにあったしここにはMSがあるし!? んあんだよこれぇ!? 僕らザフトに捕まっちゃったのかぁ!?」

 

 ある時間軸の無人惑星では遭難しても皆を引っ張る元気さと明るさを持っていたが、戦闘が行われた後のためかルナがさすがに不安と疲労を滲ませた様子でフレイに聞いていると、情けなさが目立つ少年の声が邪魔するように割り込んできた。

 ルナに続けて宇宙作業船から出てきたのは、金髪と同じ色の瞳で黙っていれば俳優にもなれそうだが、行動や声音からして臆病なのがわかる少年だった。

 

「あ、ジョン・ハワード」

「あぁ? 知ってんのか留美の嬢ちゃん?」

「ええ両津様、今回の戦争が起きるまでは大星洋連邦のコロニー建設業界でトップを占めていたハワード財閥の御曹司。けれどそのやり口で安全度外視が多々過ぎて従業員であったコーディネイター達の不満を買いすぎてプラント武装蜂起の理由にもなってそれで経営不振になってしまって私の所をはじめ幾つかの会社に投資を募っていたのですが、ヘリオポリス崩壊前のニュースでとうとう破産手続きの申請を出したのが流れてー…」

「なにこれぇ!? 久々登場出来た感じなのにこの扱いは何ぃ―――!?」

「後ろが閊えているんだから早く出ろ!」

「―――ぃぶべぇ!?」

 

 その少年ジョン・ハワードは半泣き顔でやっと壊れて漂流していた宇宙船から出られて安心しそうになったが再び恐怖を見せ、自身についての酷い解説に心外そうな抗議を上げようとしたものの、後ろから続いて出た黒髪で顔立ちは整っているがきつそうな性格を思わせる少女の蹴りで情けない悲鳴に変えられてしまった。

*1
ドゥリュースもといリュールが地球留学時代に名乗っていた姓名。ポートガスが苗字




次回、ようやくあの女神様の名を冠した要塞のこの世界でのそれと、この世界でも変わらずそこでの司令官をしている、種世界のスキンヘッド(?)枠代表(?)のあの親父殿が登場します。
ちなみに、今回久々に登場したサヴァイヴの子達の姓名ですが、公表されていない部分をこちらで適当に埋めたものです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。