星界の輪廻   作:oosima

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今回はこの世界の歴史が、星界原作の他にも作者を含めた多くの人から人気を得ている各種創作物の歴史設定と絡めた状態で語られるものが中心となっています。


006 青春の最中での新たな憂い

 ○帝国暦949年4月2日昼 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) スュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル)中核星系 ウルス大公国 惑星サンヘリオス軌道上 衛星クィコスト スュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル)別王宮○

 

 この世界の帝国(フリューバル)帝都(アローシュ)ラクファカールの他に、非常時における首都機能移転対象や、各王国の政治や経済に軍事や交通等を円滑に行い、帝都や他の王国との連携をし易くするための中核星系が各王国に一つずつ、帝都へ繋がる(ソード)鎮守府(シュテューム)と寄り添うようにして存在している。

 そして、その中核星系の惑星の軌道上や衛星の表面などに、帝国の八王家はそれぞれの王国内におけるもう一つの王宮を築いていた。

 

「…遂にこの時が来てしまったか…」

 

 その王宮の1つでスュルグゼーデ王家(ラルティエ・スュルグゼーデル)が所持するものの一角より、ドゥリュースは極めて微妙そうな苦笑いを浮かべて頭上の天窓に見える惑星サンヘリオスを眺めていた。

 

「お兄様、そんなに嬉しいのですね。13歳で修技館(ケンルー)に合格して入学できるなんて凄いですよ!」

(…半分違うよ妹よ…。確かに…種族の性で嬉しくもあるが…それ以上に増々死亡フラグ満載コースへ突き進んでしまっている事が悲しいのだよ…。素直に喜んでくれて…自分もそうならんと僕なんかを目標にしてくれる君の素直さと実直さを慰めにしている自身の卑しさに対する自嘲でもね…)

 

 ちなみに、そのドゥリュースと同じベンチに座って真横から尊敬を向けている、短い水色のショートヘアーに金色の瞳をして彼と同様に横へ長く伸びている耳をした少女がいた。

 少女の名はアブリアル・ネイ=ドゥアセク・メルキア子爵(ペール・メリュキィア)・ラマウア。

 ドゥリュースの一才下の妹で彼にとっても造船系でも高い才能の片鱗を見せている自慢の妹である。

 

「お兄様、昨日の約束通りにここ別王宮に用いられている“先駆者”様達の遺跡をご案内ください。夕方まででいいですから」

「あーうん、いいよーラマウア。僕もそっち系で心の安定を得たかっしねー(でもまぁ…正直、ここみたいに…“先駆者(フォアランナー)”の遺跡って…懐かしいような安堵感を覚えやすいんだよな…)」

 

 その可愛い妹であるラマウアのお願いでドゥリュースはここ別王宮で何度目かの冒険に出た。

 この今の銀河系の半分の起源となり、帝国の魔道学で重要用語として扱われてる古エルフ語の1つで“イアス=ステリナ”と呼ばれる天の川銀河には、ドゥリュースの前世記憶にあるHALOに出てくる先駆者(フォアランナー)と呼ばれる者達が超古代に存在していた。

 そもそも、この世界のアーヴとは、星界原作における母都市に当たるこの世界での弧状列島国家の一研究機関が、その先駆者(フォアランナー)の遺跡を発見してその調査や解析で得た技術で、残されていた先駆者(フォアランナー)の遺伝子と自分達の中で優秀な人物のものを組み合わせて誕生させたコーディネイターである(現在は便宜上アーヴもコーディネイターの一種となっているが、当時はその単語はないのでデザイナーベイビーの一種とされた。それとアーヴという名称もコーディネイターよりも先)。

 だが、アーブの祖先が外宇宙への入植地探索の為に送り出された直後に、その研究機関が先駆者(フォアランナー)を神への冒涜とする唯一神教系原理主義組織による爆弾テロでその遺跡ごと崩壊してしまう。 

 当時、この世界のアーブの祖先は遺跡から発見されて改修された先駆者(フォアランナー)製の宇宙船で航行して探索を続けていた最中に、研究機関もまだ発見していなかった残りのデータを見つけて解析し、そのデータにある座標を辿って今の帝都(アローシュ)の原型となったフォアランナーの超巨大遺跡群に辿り着いており、そこの調査及びに居住地とするための改造の途中で研究機関の壊滅を知った。

 そして、研究機関の残した技術や資料と、その起源及びに価値と危険性も知った当時のアーヴ達は、立会人がいない中で独立宣言を行うが、先駆者(フォアランナー)たちが残した遺跡の保護及びに回収や研究も自らの責務と見做した。

 だが、それを行いつつも銀河系各所での交易や探査を行っていた帝国暦以前の末期にて、別の地球人系移民の国家が先駆者(フォアランナー)遺跡を暴走させた結果として、エウシュリー系の亜人種が住むネイ=ステリナ系銀河と接触して融合を起こした。

 その結果、銀河系各地にあった人類の入植地を含めたあらゆる知性体とその文明が大きく後退か滅亡をしてしまい、それまでアーヴや一部の知性体種族に勢力などが用いていた先駆者(フォアランナー)系の恒星系間超光速技術の類いは使用できなくなってしまう。

 その為、当時は別件でラクファカールに大半が再集結していたアーヴはこれまで研究を積み重ねてきた科学技術や、新たに接触したネイ=ステリナ系亜人種に、地球から出た後にそれまで隠していた型月系と思わしい魔術を移住先で公開して文明発展に用いてきたものを中心とする魔術も組み込んで、平面宇宙航法をこの銀河系で最初に誕生させて今もその分野では最先端となっている。

 そして、当時のアーヴはこの技術が恒星系間戦争を起こす危険性や、何より先の二つの銀河の融合を引き起こして破滅的な被害をもたらした“大星災”を再び起こす可能性があるとみなし、武力を要としてこの技術を独占して星系間戦争を力づくで封じ込めるべく帝国の建国を宣言した。

 

「…本当に古いですねーこの王宮の歴史って、まぁ王宮として使われ出した歴史はここ9世紀くらいらしいですけど…あ! この辺りは古代サンヘイリ文明の頃に使用や改修がされていた区域ですね!」

「よく勉強してるねラマウア、元々は半分神殿みたいな感じで使われていたらしいからあまり騒がないようにね。他にも観光客や巡礼者みたいな感じの人達もいるから…」

 

 そうした歴史を思い返しながら進んでいたドゥリュース達は、そうした歴史がこの別王宮にも表れている区域に入り、その事に興奮しているラマウアを窘め乍ら歴史の回想を続けた。

 当時のアーヴ達は平面宇宙及びに先駆者(フォアランナー)系遺跡の独占を目指して拡大期に入るが、その頃に平面宇宙航法技術を手に入れた勢力は少数ながら存在した。

 その中で当時最大の勢力を持っていたのが、ドゥリュースの記憶にある作品HALOのそれに近いコヴナントで、先駆者(フォアランナー)系のリバース・エンジニアリングの途中で生まれた偶然で平面宇宙航法を手に入れて、自国の再建に入ったばかりの彼らはアーヴと接触してしまう。

 当時、戦力的にはコヴナントの方が上だったがまだ国土再建途中であったこと、彼らがまだ取り戻せなかった先駆者(フォアランナー)時代の戦艦や武装に魔術を手に入れていたアーヴのヒットアンドウェイ戦法や、コヴナント側の心臓部などに痛撃を繰り返し与え続ける戦略に根負けしてしまう。

 その結果、コヴナントは当時の代表者達も先に恭順していたネイ=ステリナ系亜人種の代表達と共にアーヴ貴族に加わること、これからの国政などには自分達の制度を元に整備する事などを条件に帝国と合併した。

 

「あ、確かあの辺はロビタに見せてもらった映像資料にも載っていた合併戦争当時の名残が多く残っていますね…」

 

 それに伴い、当時のコヴナント側が抑えていた先駆者(フォアランナー)の遺跡や遺物なども帝国の管轄下に移ったが、今現在の各王家の帝都王宮や別王宮はそれで得た遺跡を再利用したもので、ラマウアが興奮した様子で指さした柱にある砲撃の痕もそうした歴史の名残の1つであった。

 

「そうだね、当時から続くサンヘイリの人達の勇猛さと戦巧みさは今でも尊敬されているからね…あ、こっちだ」

 

 そうした歴史が見えて且つ一般の観光客や巡礼者などの姿も多く見える区域の一角で、ドゥリュースは遺跡の壁の一角に手を触れさせると、そこが幾何学的な文様に光って彼とラマウアを周囲には気付かれずに飲み込んだ。

 

「凄いですねお兄様、お母様にもうその齢でここまで出来る権限を認めてもらえるなんて…」

「まだ僕も使用や出入りを許されていない区域やシステムも多いから褒められたものじゃないよ」

「ですがー、それでも普通の地上の方々は羨ましがってる人も多いって聞きます。先駆者の方々の遺跡や遺物へ直に干渉できるのは私達生まれついてのアーヴだけと聞きますから…」

「うん、そうだね(…そう、それが今のアーヴの繁栄の基盤であると同時に…色々厄介ごとを招きやすい要因にもなっている面倒な特徴なんだよね…)」

 

 そうして出た前世記憶にあるHALOのフォアランナー遺跡の内部まんまな非公開区域に入れて、瞳を喜びで輝かせるラマウアとは対照的にドゥリュースは微妙な苦笑いを浮かべていた。

 原作HALOにおいては人類であれば先駆者(フォアランナー)の遺跡や遺物のシステムへの干渉が可能となっているが、この世界でそれが出来るのは先駆者(フォアランナー)の遺伝的子孫であるアーヴだけである(但し遺伝的アーヴであればネイ=ステリナ系やコヴナント系の亜人型アーヴであっても普通の人類型アーヴと同程度の干渉は可能となる)。

 そして、原作ゲームの題名にもなっているリング状人工惑星型“HALO”など重要な施設の中枢システムに干渉できるのは、この世界ではアブリアル一族とその遺伝子を持つものだけとなっていた。

 その為、この世界においてアーヴは星界原作以上に各勢力から良くも悪くも注目を集め、干渉が行われている存在のようにドゥリュースには見えていた。

 

「…それで景気の方はどうだ?」

「おーう、良いぜー。例の緊張悪化が続いているプラント方面から中古でも帝国やサンヘリオス産の兵器に対する注文が増え続けているからなー。まー表向きは部品という形で色々彼方此方を経由してだけどなー」

 

 ドゥリュースがその証である、自分達だけが遺伝子的特性で入れる区域の展望台代わりになっている場所から、今現在の銀河情勢についての雑談が聞こえてきた。

 

「…最近ここへ来られる方は羽振りの良い方も多いですね」

「まあ、特にここウルス大公国は大星災以前どころか地球の紀元前時代から既に星系間航行技術を今とは別の形で確立していた星系だからね。今でも帝国で二番目に豊かな邦国(アイス)だし…。本当にサンヘイリの人達は凄いと思うよ…(こっちとしても良くも悪くもなー…)」

 

 その中で展望台より見える観光客の多くは、HALOシリーズで重要な役どころをしていて、同作中の人類からエリートと呼ばれていたサンヘイリ系が多くおり、彼らはこの世界でもウルス星系を誕生の地とする主流種族であった。

 実際、この世界の帝国の歴史でも帝国が基盤を早期に固めて早くから勢力拡大を進められたのは、大星災の中心地から遠く離れて被害も軽微に住んでいたウルス星系、特にサンヘリオスの工業力と経済力を抑えられたのが大きいとされている。

 今現在でも、ここ別王宮の窓から見える惑星サンヘリオスで生産されている機械部品は、帝国星界軍で使用されている兵器のそれの二割以上を占めいているほどだ。

 住民であるサンヘイリ族は最低でも身体能力や魔術能力は平均的人類コーディネイターに比肩するものが多くて、優秀な科学者や技術者が多く出ているのと、古くから先駆者(フォアランナー)系技術に触れてきたことから来る優位性が大きな理由であった。

 その為、アーブ、特にスュルグゼーデ王家(ラルティエ・スュルグゼーデル)とサンヘイリの関係は深いものとなっている。

 だが、それ故にドゥリュースにとっては良くない意味で前世の記憶と絡んでいるような出来事が多かった。

 

『…三日前、銀河連合管轄下プラント小銀河にて、プラント軌道都市群住民代表評議会による自治権及び貿易自主権を中心とした経済活動自由権獲得を目標とする声明が発表されました。これに対し銀河連合側、特に理事国家群は猛反発を見せ…』

「へー、やるじゃねーか」

「そういやージュール家の小娘はどうしてんだろうな?」

 

 展望台から見える廊下の空中に映し出されているニュース画面とそれを見ている観光客の会話の内容に、ドゥリュースは嫌な意味での既視感と同時に憂いと後ろめたさを覚えた。

 

(……いろいろな経路を辿っているけど、ここ銀河系の外縁部と幾つかの(ソード)でか細くつながっている近隣小銀河にあるプラントへ帝国からの資金や物資の出入りが増え続けている。特にウルス大公国を始めとしてサンヘイリ系が地上人からアーヴ系まで色々多いおかげで帝国八王国において最も軍需産業が強いここスュルグゼーデは特に…。そのせいで隣接している星界原作では人類統合体領域の北辺りにある大西洋連邦…じゃなくて大星洋連邦との関係は時期で程度は違っても基本は悪いし。まあ…今も聖地として地球帰還及び奪還に強くこだわり続けて且つ大星洋連邦始め銀河連合圏内に強い影響力を持つ例の唯一神教民族が…、プラントやコーディネイターとかの問題以前から一方的に敵視してきてるのも多いけど…)

「…お兄様ー、さっきからあまり気分がよろしくなさそうな表情になってますけど大丈夫ですかー?」

 

 色々と自分が知っている創作物の他にも現実の歴史にも悪い意味でリンクしているように見える状況と歴史に、ドゥリュースはラマウアの心配する声が聞こえないまでに気分が落ち込んでいた。

 

「…これ以上思い上がらせはせんぞ…“聖地”を汚す悪魔とその使い魔共が…!!」

 

 故に、展望台区域から見える通行人に混じるその地球人類起源と思わしい男性が、天窓に見える惑星サンヘリオスや星界軍の艦船と鎮守府(シュテューム)に、小さいが深い憎悪を宿した言葉を吐いている事に気づかなかった。




何やら、創作物ヒストリー系だけでなく、こちら側の歴史…それもそう昔ではない系の歴史やニュースネタに関係していそうな描写がありましたね…。
次回は、主人公の帝国における新たな学生デビューに入る予定です。
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