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「全員動くな!」
「手を頭の後ろで交差して固めろ!」
アークエンジェルがアルテミス側の通常宇宙に出て早々に同宙域駐留艦隊に拿捕されて数時間後、同艦はアルテミス要塞の軍港へ入港させられて早々に多くのE.U所属銀連兵に乗り込まれ、アークエンジェルクルーたちや避難民達は強制的に移動させられていた。
「中佐! 先ほどの強制的な乗りつけと言いこれはどういうことですか!?」
艦橋もまた同様で、アークエンジェルの兵器管制指揮官を担当するナタル・バジルール大尉が、アルテミス側ゲートを通過した時に包囲するように布陣していた艦隊より乗り込んできた、E.U系列銀連軍のリダルク中佐に詰め寄っていた。
「これも保安措置の一環です。貴艦には船籍登録も我が軍のID登録にも名前がない。先行してきた両津中尉が渡してきた戦闘データなどを元に入港を許可しましたが、まだザフトによる作戦の可能性が拭えたわけではないことをお忘れなく…」
「「………………」」
そのやり取りをアークエンジェル指揮官スメラギ・李・ノリエガ中佐と、副長兼同艦艦長のマリュー・ラミアス少佐は苦い表情で見るしかなく、結局は彼らに護衛という名目で監視を受けながらアルテミス要塞の司令官の元へ連れていかれることとなった。
「ようこそアルテミスへ、私がここの司令官をしているジェラード・ガルシアだ」
十数分後、スメラギ達はアルテミス側の司令官の元へと連れ込まれ、そこで儀礼上の挨拶をすると共に自分達の事情を話した。
「…そのようなわけで、我々は対プラント前線総司令部であるアラスカのジョシュアに向かわなくてはいけません。ここで長居するとこちらにも少なからず被害を出す恐れがありますから…」
「ああ、君たちの懸念はこれかね?」
そこでスメラギはガルシアにある映像を見せられるが、そこにはヘリオスゲートと繋がるアルテミスゲートを数百は数えるザフト艦隊が通過している姿であった。
「っ!? あのマークは確かマネキンのか!?」
「おお、“東洋のワイルド野郎”と言われていた君も知っていたか両津中尉。あの女はかつて我がE.Uの義勇軍部隊の間では優秀な戦術予報士としてそれなりに名を馳せていた。だが、今となっては見ての通り裏切り者だよ」
「それでしたら我々は一刻も早く中心領域付近のアラスカへ向かわなくてはいけません。このままではこの要塞にも被害が、迅速な補給をどうか…」
「被害? 冗談は休み休み言いたまえ! あの女であれ誰だろうとこのアルテミスを落とすなんて出来はせんよ! 君達も母の腕の中に戻れたような感じでしばらく休みたまえ!」
ガルシアは今現在のザフト艦隊を率いていると思わしき指揮官の名を忌々しそうにつぶやくが、アークエンジェル側の求めに対しての答えのように、この要塞が窮地に陥るなど全く予想していない様子であった。
〇
「E.Uって味方のはずでしょう? 大星洋連邦と最近は仲が悪いんですか?」
「そういう問題じゃねーよ坊主たち」
アルテミス司令官執務室でマリュー達の訴えがうやむやにされて数時間後、アークエンジェルの各食堂は集められた乗員や避難民達でひしめき合い、民間やそれから参加した若手たちが質問し、正規軍人のベテランたちが答えるというのが多々起きるようになっていた。
「…何とか外の様子がわかればいいんだけど…何とかして外に出してもらえないかしら?」
「…あー、方法がないことはないというか…」
変化のない状況からくる飽きや焦れも手伝ってミリアリアがぼやくと、フレイが心当たりのありそうな顔を浮かべる。
「え? どうすればいいの?」
「軍人さんって付き合い方次第じゃ融通が利くのよねー。民間人…女性や小さな子供の言うこと…他にもそれ以上にお医者さんとかの話は聞いてくれやすいのよ」
「あー、確かにそんな話は(修技館でも)何度か聞いたことがあるな…じゃー…すみませーん! ちょっと厨房で次の分の仕込みをしなくちゃいけないんで移っていいですがー!?」
そのフレイの案を受けてリュールはさっそく動き出した。
「…よし、準備が出来たー」
「おい、坊主よ何だこりゃ?」
数分後、厨房の人目に付かない所でリュースはケチャップやマヨネーズなどを駆使して、魔法陣らしきものを描いてマードック達を戸惑わせた。
「…まー見ていてください。さあ…隠し事を出来ぬ濁流の渦より姿を現せ! 蠅を統べる王にして地獄の一角の宰相の一族に名を連ねるものと騒乱の導き手よ!!」
戸惑う周囲の前でリュールは気合の入った表情でその魔法陣に手をかざすと、それは発光しながら回転しだして中心から何者かが姿を現す。
「なぁ!?」
「ちょ!? 嘘ぉ!?」
「しー! 一応は認識阻害の結界を掛けているけど限度はあるし鋭い魔術師がいる可能性がいるかもしれないから!」
それで騒めく周囲をリュールが注意すると、発光が収まってその中から小さな二つの小さな姿が現れる。
「…ちょっとリュース君、君さー呼び出すときは最低でも十分前は連絡を掛けてくれって何度言ったらわかってくれるんや~?」
「そうです。まだ学生だからって早く社会のマナーを身に付けないと後後きついですよ?」
そして現れたのは、縫いぐるみを思わせるオレンジ色の短髪をした犬面にしてメタボ気味体型で下は山羊を思わせる二本足をした関西弁の謎生物と、王子様のような髪型や格好をして背中に蠅のような羽根を生やしたペンギン風謎生物であった。
「…え、えーーっとリュース…は無くてリュール…この生物…何?」
「悪魔だよキラ、それも
「悪魔ぁ!?」
「しー! フレイ! 声がでかい!」
それで驚く周囲を注意したりしながらリュールは説明していく。
「こっちの山羊みたいな足をした悪魔はアツシ・アザゼルさん。見た目はお世辞でも頭が良さそうには見えないけど淫ぽ…じゃなくて“争乱”を職能とする。特技は人を喧嘩させること」
「いきなり呼んどいてあほ呼ばわりすんなや」
「それでこっちのペンギンみたいな方はユウイチ・ベルゼバブさん、“暴露”を職能として地獄では結構なお偉いさんの一族の出なの」
「左様、よろしくどーぞ」
「…あ、ど、どーも…アーヴの魔術師ってこんな人ばかりなわけ…?」
「わ、私に聞かれてもー…」
「まーその辺の詳しい話は後にして、作戦を説明するから、具体的にはー…」
その新たに出現した悪魔なる謎生物であるアザゼルとベルゼバブに周囲は戸惑うが、それに構わずリュールは作戦を話す。
「…とまあ、そんな感じで行こうと思うけど大丈夫?」
「なるほど…我々に最適な作戦です…」
「へっへっへ、今日はどんなんドロドロした内ゲバ見れるんかいな~♪」
「…あ、あんた…その作戦…私達もやるの…?」
「リュ、リュースー……」
「おい…本気かよ坊主?」
説明が終わった頃には、ベルゼバブとアザゼルはそのプリティーな縫い包み風な姿からは想像できない腹黒い笑みを浮かべ、フレイは引き攣った青い笑みを浮かべ、キラは良くない意味で遠くなった親友を見る微妙そうな笑みになり、マードックらほかの面子の多くは疑わしそうなものを見る表情でリュールを見やる。
「そんじゃまー、生贄と移りましょうでんなー。にひひひひ♪」
「ああ、そっちの皿の上にあるから持って行って」
その次にリュールが指さした皿の上には、一つの緑色をしたモノアイのMSのプラモらしきものとカレーのルウであった。
「…えーーっとリュース君…何ですかこれ?」
「プラモっぽいものの方はザフトのMSコンペでザクに負けて計画倒れで終わった後に色々ゴタゴタがあって資料のほとんどが無くなった
「何か傍目から見た感じは普通のプラモとカレールウなのに“
「…ウゥ…同じ食品として…親御さんたちを目の前で失っちまった同胞の悲しみが見えてくるぜ…!」
それらに対するベルゼバブの問いにリュールが妙に細かくて重い説明を披露し、フレイがますます引き攣った笑みを浮かべて、天の助は妙な方向で悲しみの涙を流す。
「…よし、そういうわけでミッションスタートね」
「了解やぁ」
「問題ありません」
そんな周囲などお構いなしな様子で、リュールとアザゼルにベルゼバブは黒い笑みを浮かべて行動を開始した。
「…ねー、お兄ちゃん聞いたー?」
「ん? なんだリィズ?」
数分後、アークエンジェルが繋がれているアルテミス要塞主要港の管制塔で、そこの通信要員をしているリィズ・ホーエンシュタイン軍曹が、両親の養子で義兄であるテオドール・エーベルバッハと、見えるアークエンジェルについてお喋りしていた。
「何かあの不審そうで調べている最中の戦艦だけど…レイラさ…マルカル少佐と同じ移民アーヴの人がいるんだって」
「あー、ヘリオポリスの避難民も乗ってるって話だったからいそうだなー」
「それでねー。実はー…っ!?」
だが、兄妹のその何気ない会話は妹の方が浮かべた苦悶の表情で中断してしまう。
「…ゥ…うううううう…!?」
「!? リィズどうした蹲って!? 具合が悪いのか!?」
「…お、お兄ちゃん…わ、私…ヒロイン以前に…ゲロイン…じゃなくて…ゲリインになっちゃいそ…!?」
「な、何を言って…!?」
そして、そのリィズを介抱しようとしたテオドールにも同様の苦悶の色が浮かび、同様の現象がアルテミス中へ瞬く間に広がり始めた。
「…いくら何でもこの扱いは不当です!」
「またその話? 何度しても変わらないから止めておきなさい」
一方その頃、アルテミス内部の応接間の一つにて留められたナタルは不満を隠さない様子を浮かべ、スメラギはそれに飽き飽きとした様子ながら注意していた。
「…俺が気にしているのは、連中がここアルテミスは絶対に安全だと信じ込んでいるってことだな。通常ならそれで問題はないが…問題は連中に奪われたGにあのブリッツがあることが…!?」
それとは対照的にムウは懸念を口にするが、そこで部屋の外から悪臭が漂い始めてきた。
「…っ? 何この臭い…? それになんか喧嘩の音も聞こえてくるような…?」
そこでマリューがドアを開くと、廊下には彼女の予想の斜め上を行く光景があった。
「おいいい! 早くトイレから出ろぉおお!」
「まだ下痢が止まらないんだよおおおお!」
「あああ! 腸がねじれ…!」
「このトイレは俺のだああああ!」
「ああ!? きたねえぞテメぇ!」
そこには、トイレを前にして何十名もの銀連兵達が詰めかけており、その使用権を手に入れるべく手を尻とライバルの間を行き来させながら争い合う姿であった。
「…何ぃ!? ここアルテミスの兵のほとんどを強烈な集団下痢が襲い掛かってのトイレルームの大半で内輪もめが起きているだとぉ…オオオ!?」
そして、その様子はマリュー達の近くだけでなく、アルテミス中で起きていることが司令官執務室で踏ん反りがえっていた様子が消し飛んだガルシアの狼狽からも見て取れ、彼もまた強烈な腹痛と便意に襲われ出した。
「…ふっふっふ、我が能力“暴露”の応用で今や内臓すらも肛門からぶちまけてしまいそうな絶対便意に襲われてしまえばトイレに行くことを断つなど不可能!!」
「そうして焦燥しきってトイレの順番を巡り睨み合いだしたところで儂の“争乱”で闘争本能を刺激されれば内ゲバを避けることは不可能…完璧な作戦や!!」
その様子はアークエンジェル内部にある食堂の片隅より、キラとリュールが電脳越しにハッキングして繋がった要塞内部各所のカメラでばっちりみられており、それをノーパソ越しに見てベルゼバブとアザゼルは愉悦を浮かべ合っていた。
「…さー、段取り通り行こう。フレイ・アルスター君、さっき医者の手を呼ばれて動き始めた先生に同行する形で外に出て色々様子を見たり話を聞いたりよろしくねー」
「あーもう、こうなったら行くところまで行くだけよ…すみませーん! 私達の方は集団食中毒みたいな症状はないので何かお手伝いできることはありませんかー!? 特に私達は治療系魔術を扱えますから」
そして、その混乱への支援という名目で、アークエンジェルクルー達はようやく拘束から大幅な自由に戻れ、外のことを色々調べ始めるのであった。
今回、出てきた人外系キャラのあのお二人は“よんでますよ、アザゼルさん”の同名キャラ(のこの世界での同位体)です。
次回は、種ガン世界でも問題なシーンがキャラの配役などを変えつつも出てくる予定です。