星界の輪廻   作:oosima

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今回、無人惑星サヴァイヴでも色々活躍(?)したあのお坊ちゃんが、短くも大きなヘルプ(?)をします。


062 呉越同舟の脆さ

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月27日正午(帝国暦952年1月27日正午) 銀河連合 銀河中心領域付近 E.U所属アルテミス星系 アルテミス・ヘリオス間ゲート アルテミス側通常宇宙出入り口付近 マネキン艦隊旗艦 ドルベッド*1

 

「…傘は一度発動されれば準惑星全体を覆うから、向こうもこっちも攻撃を相手側に通すのは不可能…おとなしく出てくるのを待つしかないってか…くくく」

 

 アルテミスで集団食中毒により大規模下痢(の人災)が起きていた頃、それを睨むザフト側艦隊旗艦ドルベッドの作戦会議室にて、ディアッカが面白そうな表情をしていた。

 

「馬鹿も休み休み言えディアッカ、お前は手ぶらで帰ってやられた者たちの身内に謝罪周りでもするつもりか?」

「冗談にいちいち突っかかるなよイザーク」

「だが、防御兵器としては銀河中を見ても実際に一級品だ。まーそれ以上に僻地にあるからこれまでどの軍も目を付けなかったというのも大きいが…?」

 

 それとは対照的に真面目な顔をしている一人のメアリが作戦会議室に立体映像で映し出されるアルテミスの詳細な図や情報を難しそうな表情で見まわしていると、反対側の席のニコルが自信ありげな表情を浮かべていた。

 

「…ですが、今回捕まえたあのG…特に僕が抑えたブリッツを上手く使えば、足つきをあそこから引きずり出すことができるかもしれません」

「ほう、言ってみろ」

 

 此度のザフト艦隊司令官カティ・マネキンもそれが虚勢ではないことを感じて面白そうな表情を浮かべる。

 

「…僕が乗らせてもらっているブリッツには、PS(フェイズシフト)の他にも、面白い機能が搭載されているんです」

「「「「「………………」」」」」

 

 そして、そうした興味は会議室に集う艦隊所属の各艦の艦長や隊長達も抱き始めた。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月27日昼(帝国暦952年1月27日昼) 銀河連合 銀河中心領域付近 E.U所属アルテミス星系 準惑星アルテミス アルテミス要塞 要塞司令官執務室○

 

「…ううううぅ…ど、どうにか治まったか…しかし、何だったのださっきのはぁ…?」

 

 ザフト側の作戦会議でニコルが何か妙案を出しそうになってから数時間後、ガルシアは今も腹が落ち着かない様子で自分の部屋へと戻った。

 

『司令官、報告が二つあります』

 

 ガルシアが腰を椅子におろしたところで、部下の一人が通信映像を繋げてきた。

 

「何だ? 何か起きた?」

『例のザフト艦隊ですが、対ヘリオス星系ゲートを離れて、対デブリベルトゲートへ向けて進み始めました』

「そうか、いつも通り対処しろ。それでもう一つは?」

『新型艦の方の調査は進んでいるのですが、MSの方がOS にロックが掛けられており、技術者総出で解析に全力を挙げているのですが未だに出来ず、マルカル少佐も加えたのですがそれでも…』

「何だとぉ? ち…」

 

 その報告を受けたガルシアは面倒くさそうだが再び椅子から立ち上がった。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 銀河中心領域付近 E.U所属アルテミス星系 準惑星アルテミス アルテミス要塞 主要軍港区画 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル○

 

「…とまあ、そんな感じで奴さん達はMSの方をそらーもう目が血走った状態であれこれ調べていた最中だったでー」

 

 ガルシアが再び動き出してから数分後、アークエンジェルにある食堂の一つの厨房の物陰で、フレイと共に外へあれこれ調べに出ていた悪魔であるアザゼルが鼻をほじりながら周囲に説明していた。

 

「何でそんなこと?」

「そりゃーキラちゃん、こんだけMSなんてのがブイブイ言わせている時代なんやからそれが懐に来たら欲しくなるのが人情ってもんやろー」

「それもそうだけど、ここまで露骨なのは今の要塞の司令官があのガルシアって人なのも大きいと思うわね」

「フレイ?」

「あのガルシアって人、確か前にあったグリマルディ星系戦役で、ザフトに大損害出させてここの司令に出世したってのが表向きの話だけど、実際のところは左遷らしいからそれを挽回して中央に復帰したいからじゃないかしら。確かあの戦いでサイクロプスって採掘装置がザフトの攻撃の影響で爆発したってのが公式の見解らしけど、実際にはあの人達が自ば…」

 

 それにフレイも加わってきな臭い話も始まろうとしたところで、その話をする今の事態を作った人物の声が響いてきた。

 

「ここアルテミス要塞の司令官ジェラード・ガルシア中将だ。この艦にいるMSパイロット及びその技術者に対して事情聴取せねばいけなくなった」

 

 その声と共にガルシアがキラ達もいる食堂に衛兵付きで姿を現した。

 

「リュール、止めろ」

 

 それを見てリュールが出ようとしてマードックに止められ、少しその場を沈黙と緊張が包む。

 

「MSパイロットと技術者だ! 先に来てもらったフラガ少佐はメビウス・ゼロの映像からして別なのはわかっている! 早く素直に出てきた方が身のためだぞ!」

「なぜ? 我々に聞くのですか? 艦長たちには聞けないからですか?」

「何だと!? 貴様ぁ!」

 

 じれったくなったE.U側銀連兵の一人がきつくなった口調で問いかけると、アークエンジェル操舵手のノイマンが逆に問うて彼の気を逆なでして胸倉を掴まれてしまう。

 

「…ちょっと、友軍同士で…」

「おい! リュール止せ―――!」

「止めてください! そんな乱暴な!」

 

 それにリュールがついにマードックを力ずくで引き離して場に割り込もうとしたところで、その前に思いもよらない人物が割り込んできた。

 

「あれの一機に乗っているのは私でOSのプログラミングをしているのも私です!」

「…あ、しまった」

 

 一番大人しそうなキラがその強情さをこの場で発揮してしまったのである。

 

「ほう? その若い身で彼を庇おうと言うのかね? いやぁ、この艦の司令や艦長のどっちも女性だったな。全然ないということはあるま…!?」

 

 それを見たガルシアは厭味ったらしい笑みを浮かべてキラの胸倉を掴もうとするも、それは別の手であっさり掴み取られた。

 

「止めてください。貴国ならセクハラで訴えられても可笑しくないでしょう?」

「…あ…!?」

 

 厨房の方にいたリュールが身体強化魔術で二人の間に割り込み、ガルシアの腕を掴んでそこから彼の身を一瞬で持ち上げて背骨を掴んだのである。

 

「き、貴様!? 何をする!?」

「何ってセクハラスキャンダルからこの司令をお守りしたところですけど?」

「!? ふざけたことを言うんじゃ…!?」

 

 それに驚き銃口を向けだしたアルテミス銀連兵にリュールは皮肉を返したところで、その内の一人である黒い髪を伸ばして三つ編みにした面貌は整ってはいるがきつそうな少女が拳を振り向けたところで、今度はキラがその手を掴んで彼女を投げ飛ばした。

 

「アアアァ!?」

「何がしたいんですかあなた達は!?」

「貴様ぁ!」

「止めてください! こんなことしても意味はないでしょ…うああ!?」

 

 黒髪の少女は鼻っ面から食堂の机の角にぶち当たって悲鳴を上げ、憤りを見せるキラに他のアルテミス兵が抑えようとしたのをサイが制止しようとして殴り飛ばされてしまい、場はますます混乱を深めてしまう。

 

「いい加減パイロットと技術者を出さんかぁ!」

「ちょっとやめてください! その子が言っているのは本当です!」

「貴様らいい加減にしろ! こんな小娘がそんなわけがないだろう! 本当だというなら理由を言ってみろ!」

「…ッ、それは…!」

 

 気を更に荒立てていくアルテミス側にサイを介抱したフレイが説得しようとするが、さらに問い詰められると口籠ってしまう。

 

「そ、そいつらがコーディネイターだからですよ! 特にその司令官を持ち上げている一番危ない奴はアーヴですよ!!」

「「「「「!!!!!???」」」」」

 

 だが、その最もアークエンジェル側が発覚を恐れた事実が状況に怯えたハワードによって暴露されてしまい、場は数秒ほどの沈黙に陥り、周囲に恐れと納得や憂いなどを帯びた反応が出始める。

 

「…コーディネイター…アーヴ…そ、そうか…ふふふ! 下ろせ!」

「……はぁ…」

 

 それを受けて引きつりながらも笑みを浮かべたガルシアを、リュールは観念した表情で下ろして素直に拘束を受けた。

 そして、キラもまた従わされて彼と共にアルテミス側に食堂の外へ連れ出された。

 

「ちょっとあんた! この状況で何を考えてるのよ!」

「キラとあの子がどうなってもいいって言うわけ!?」

「な、何だよ! 本当のことを言っただけじゃんかぁ!?」

 

 ガルシア達が部屋を出て離れた後、ハワードは周囲に責められだした。

 

「今この戦争が何で起きているか忘れてるわけ!?」

「ベ、別にいいだろ! 味方なんだからあいつらが大人しくさえしとけばこれ以上面倒にはならないだろ! 特のあのアーヴがさっきみたいに暴れたりしなければ…」

「で、でも…あのアーヴ…兵隊さんがあれだけで大丈夫なの?」

 

 だが、ルナがハワードを責めようとしたその時、彼の言い訳を別の懸念で手助けする存在が出てきた。

 

「…あのリュールってアーヴ、あの偉い人もためらわず人質にしようとしてたじゃない…。あのアーヴにここで暴れられるよりかは…」

「しゃ、シャアラ…」

 

 ルナと同じく民間用作業宇宙船から救出された一人で、眼鏡を掛けた柔らかそうな短髪をしている気弱そうな少女シャアラのその言葉は、周囲の者達の少なからぬ賛同を無言の視線を通して得られていた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 銀河中心領域付近 E.U所属アルテミス星系 アルテミス・デブリベルト間ゲート アルテミス側通常宇宙出入り口付近 マネキン艦隊 ローラシア級MS搭載艦ガモフ MS格納庫○

 

「…ミラージュコロイドフィールドの連続での活動時間限界はこれが限界か。だが、十分ですね…」

 

 リュールとキラがアルテミス側に拘束されて連れていかれた頃、それから離れつつあるように見えるザフト艦隊の一角で、ニコルがブリッツのコクピットで何かの兵装を確認していた。

 

『報告。先ほどアルテミスの総合防御障壁の解除が確認されました。ブリッツ、発艦シークエンスへ』

「はい、ニコル・アマルフィ、ブリッツ、行きます」

 

 確認し終えた直後にガモフのCICから指示が届き、ブリッツが動き出すと続くようにベヒモスとルーラーもまた動き出す。

 

「しかし、銀連も狡猾なものだ」

「臆病なニコルとそれを放っておけないメアリにはお似合いさ」

 

 それを待機室の窓からイザークとディアッカは小馬鹿にするように評していたが、その瞳には確かな信頼を向ける色が浮かんでいた。

 やがて、ガモフからブリッツ、ベヒモス、ルーラーの順で発艦するが三機はすれすれの近い距離を保ちながらアルテミスへ向かう。

 

「では、ミラージュコロイドのステルスフィールドを使用します。エネルギー消費は抑えたいので離れないでください」

「わかった」

「ニコル、君に任せる」

 

 そして、ブリッツの機体の表面に光る幾何学的な魔術式が浮かんで光線が伸び出て、それは三機を立方体状に包み込んで、やがてその姿を周囲の景色へ溶かし込むように消し去ってしまった。

*1
帝国暦2世紀頃のジラルハネイの高名な農学者の苗字




次回、あの種ガン世界のスキンヘッドキャラの代名詞なガルシア司令の不死身伝説(?)が始まる予定です。
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